闇拠点5-外周十二祠
前回まで:影と幹部にされていた方々から
魔王について聞きました。
謁見の間での会合は解散となり、アオとサクラは神竜達を長老の山に送った。
「結界を補強しないといけないね」
「もぉ一周 作っちゃう?」
「そうだね。
祠を増やせるか、大婆様に相談しよう」「うん♪」
(お~い、父上がお待ちかねだぞ~)
(ハク兄、言いくるめてよぉ~
俺達、忙しいんだからぁ)
(サクラが、あんな事 言うからだろっ!)
(とりあえず行こう、サクラ)曲空。
――ギンの執務室。
「皆、知っているのか?」睨む。
息子達、おずおずと頷く。
「どうやって知ったんだ? 誰に聞いた?」
「それを確かめて、如何するおつもりですか?
父上が結婚を断固 拒否していた事や、母上と結婚した経緯は有名です。
俺達は、この世に生を受けた事を、心から感謝しています。
もしも拒否したままであったなら、俺達は存在していません。
ですから理由を知りたかった。
それだけです」
「ふむ……」
「それは、知りたくなって当然だと思うぞ」
「コハク、黙っててくれ」
「伯父上に対して、その物言いは如何かと思いますが」
「父に対しての物言いとも思えんが?」
「そうでしょうか?
そのお考えは、二王制の根底を揺るがすとも捉えられますが、如何でしょうか?」
「今はただの親子の会話だ!」
「解りました」それで? な視線。
「兄弟だけに留めておけよ、オネショ王子」
「それは父上の事ですか?」コハクが吹き出す。
「お前だよ、アオ」
「父上も、そうだったと伺っておりますが?
だいたい、物心もつかぬ幼い頃の事を論うのでしたら、同じ程度に下げますけど、情報量は負ける気が致しません」
「父上、やめた方がいいですよ。
アオはモモお婆様にベッタリだったし、アオの神様はスミレ様なんだから」
ハク囁く。
「それにアオは穏やかな性格に変わったのではなく、秘めていただけなのです。
ルリ殿を得た今、魔王すらも舌戦で負かす、あのアオに戻っているのですから」
キンも。
「……本当か?」
キン、ハク、サクラ、神妙に頷く。
「お前ら、こっちに来い」三人を引っ張る。
「スミレが……神様……?」
「はい。
スミレ様は今、神と成られ、俺を支えてくださっています」にこっ
「そうか……スミレは生きているのだな……」
「はい」【あなた……】姿を見せた。
「スミレ……」
コハクとスミレは暫し見詰め合った後、二人で話し始めた。
離れた四人は――
「マジで魔王と舌戦して勝ったのか?」
「そぉだよ~」「マジです」「はい」
「さっきも淡々と……」目が怖かったぞ。
「でしょ?」
「魔王の時より遠慮なかったよな」
「私も、そう感じた」
「あ♪ スミレ様♪」
「ホントだ」
「相変わらず綺麗だ……」
「ねぇ、父上の失恋相手って――」
「言うなって!」
「父上、もうよろしいのですか?」
「これ以上、無理だろ……」スミレに釘付け。
「では、アンズ、行くよ」「うん♪」
♯♯♯
ルリの部屋に入ると、虹藍が待っていた。
「これから大婆様の所に相談に行って、それから地下で隠し部屋 探すんだけど、ランどぉする?」
「隠し部屋は俺達が探すよ。
せっかくなんだから、ゆっくりすればいいよ」
「アオ様、ありがとうございます。
しかし、我が国も無関係ではありません。
お連れ頂けませんか?」
「そうですか。でしたら、ご一緒に」にこっ
「ラン、疲れない程度に、だよ」手を繋ぐ。
――大婆様の部屋。
「大婆様、今日は大勢 押しかけまして、お疲れの所、申し訳ございません」
「よいよい。賑やかになるは嬉しい事じゃ。
虹藍様、またようこそお越しくださいましたな」にこにこ
「お邪魔致します」可愛く、お辞儀。
「早速なのですが、祠を増やし、結界を補強する事は可能でしょうか?」
「二人も、それを考えたか」にこにこにこ
「では、大婆様も?」
うんうん「では、私からも早速じゃが、祠の候補地を見繕ぅてくれるかの?」
「はい!」
「それと、陶芸工房も、そろそろどうじゃ?」
「ありがとうございます!」
「では、少しばかり、女同士の話など、させてくれるかの?」
「え? あ、はい」兄弟、礼をして退室。
「なに話してるんだろ?」
「当然、サクラの事だな」
「ルリ姉も残ったらよかったのに~」
「アオが体から離れられぬからな」あははっ♪
「ルリ……俺の体なんだけど……」
苦笑。「えっと~、まず山の地図だよね?」
「そうだね」
――書庫。
「複写……やってみるか」アオが呟いた。
地図と白紙を並べ、地図に両掌を翳し――
地図が輝き、線から光が浮き上がった。
掌を白紙へと移すと、光の線も移動し、白紙へと降下した。
「俺もやりた~い」
アオはサクラの額に掌を翳した。
「ありがと♪ アオ兄♪」
今度はサクラが、もう一枚の地図を複写した。
「面白い事をしとるのぅ」ムラサキが来た。
ムラサキの後ろに神竜が居た。
「アオ様、サクラ様、それは私にも出来ますか?」
「あ、さっきの側近さん♪」
「オリビンと申します。
こちらの司書をさせて頂ける事になりました」
「光の属性技ですので出来る筈です」
アオはオリビンの額に掌を翳した。
「試してみて~」
やってみる。「……出来ましたね」
「これからは書き写さずともよいのじゃな?」
「はい。ご用命くださいませ」
「爺様達のお世話、よろしくお願いしま~す♪
じゃ~ね~♪」
二人は複写地図を持って、飛んで行った。
「本当に王子様方は、全てに於いて素晴らしいですね」
「あの二人は特別じゃよ。
竜宝の王じゃからのぅ」
「竜宝の王?」
「竜宝達に、せがまれての。なったそうじゃ」
「魔王が欲しがる訳ですね」
一方、大婆様と虹藍は――
「虹藍様、サクラの事じゃが……
天竜王族としても残りたいと申しておる。
両国の懸け橋としてのぅ。
勿論、魔竜王族として手を抜くなど、考える事すら思いつかぬ性格じゃ。
その点は御案じ召されるな。
こちらとしては、
許可したいと思ぅとるのじゃが……
魔竜王族として、許される事なのじゃろうか?」
「その事は、サクラ様より伺っております。
長老も、喜ばしい事と申しておりました。
どうか両国の懸け橋とお成り頂けますよう、お願い致します」
「ありがとうございます。
そこで、じゃが……
虹藍様にも、天竜王族に御名連ねて頂けませんでしょうかのぅ?
こちらの事をなさる必要など、全くございません。
ただ、お迎え致したい。それだけでございます」
「私を……迎えて頂けるのですか?」
「六人、兄ばかりじゃが、増えてもよろしいかのぅ」
「ありがとうございます」涙が流れた。
「長老様のお許しも頂かなければの。
急ぎはせぬ。お断り頂いても、何も変わらぬ」
「はい」
「大婆様、よろしいですか?
祠の位置、こちらでいかがでしょうか?」
アオとサクラが飛んで来た。
「え!? ラン、なんで泣いて――」
「嬉しいだけよ!」
「サクラ、すぐに長老様の所に行きたいそうじゃ。頼んだぞ。
アオ、地図をこれへ」にこにこにこ
大婆様はアオと話し始めた。
「えっと~、行くの?」「うん♪」曲空。
「では、十二祠あれば、強固な結界が成せるのじゃな?
ならば器は任せよ。竜宝は任せたぞ」
「はい、大婆様。ありがとうございます」
「アオ兄、ただいまっ♪」「アオお兄様♪」
「え? なんだか楽しそうだね」
「はい♪ 大婆様、長老は大喜びでした。
これから、どうぞよろしくお願い致します」
「サクラ、虹藍様。
両王族に属し、懸け橋の任、よく励めよ」
「はい!♪」
藤「クロ兄様、何度言えば解るのですか!?」
凜「フジ、ちょっと」手招き。
藤「なんでしょう?」
凜「サクラが、フジに無理させちゃダメ
って言うからね。屋敷に行かない?
クロのでも、フジのでもいいから」
藤「場所が何か……?」
姫「魁蛇殿と箜蛇殿には伝えておる♪」
藤「ああ、そういう事ですか。
では、あのまま運びます」にこっ♪
黒「えっ!? フジ!? 何をっ!?」
凜「頑張ってね~♪
私達、大婆様の所に行くから~♪」
黒「やめろって!!」大暴れ!!
藤「移動するだけですから!
あ……アオ兄様、サクラ……」
黒「アオ! サクラ! 出してくれっ!」
桜「フジ兄♪ お疲れ~」光を当てる。
藤「このくらい大丈夫ですよ、サクラ♪」
青「結局フジが見ていたんだね。
クロ、ヤル気は認めるけど、
あまり迷惑かけないでくれよ」
黒「オレ、ムリヤリ被せられたんだけど……」
青「それで、凜と姫は何処だ?」
黒「知らねぇ。
あ、大婆様んトコ行くっつってたな」
桜「大婆様トコ、いなかったよね~」
青「うん。そうだね」
黒「ついさっき行っ――あ……」
姫「クロ、次はこれじゃ♪」
黒「ゲッ……」
桜「おかわり?」
凜「そうよ~♪」
青「じゃ、頑張れよ」
黒「アオ~、助けてくれよぉ」
青(うん、後でな)
黒(頼むぞっ)




