闇拠点4-影と幹部②
魔王の因子って、真面目なマオをあんな風に
変えていたんですね……
そういえばマーさんもハイでしたね。
「竜血環と神禍乱は、その後どうなったの?」
「リ博士が眠って以降、進んだのですか?」
「いえ、どちらも頓挫しておりました」
「竜血環の大量生産だけは続けておりましたが、既に時間稼ぎにもならない事は分かっており、仕方なくでした。
他に有効な物が見つからなかったので……」
「リ博士の代わりは見つからなかったのですか?」
「そのためにも魔王は、王子様方を捕らえたかったのです。
依代として、頭脳として、戦闘力として」
ルリとアンズは顔を見合わせた。
「ですから、皆様を監視しておりました」
「やっぱりね~
あの俺達色の玉は、どぉ使ってたの?」
「どう作ったのかも、術も存じませんが――」
「その玉は『者見玉』で御座います。
作り方は、後程、説明させて頂きます」
マオが深く礼をしていた。
「知ってたの?」
「サクラ様の者見玉を作りましたのは、私で御座いますので……」
「凄いねっ♪ あとで教えてね~」
「いえ……あの、はい。畏まりました」
神竜達に向き直る。
「それで、どう使っていたんですか?」
「王子様方の周りの景色や会話、心の動きを主に見聞きしておりました」
「心の動き?」
「色が変わるのです」
「あ~、心の色かぁ。それなら俺も見えるよ」
「うん、最近は、兄弟でなくても見えるよね」
「アオ兄も? 一緒だね~♪」
「流石ですね……」
「あ、俺のって、いつ作ったの?」マオに。
「皆様を異間平原に送りました直後で御座います。
それを魔王が見つけ、持って行ってしまいました」
「では、我々が預かった玉は――という事は、貴方が……そうでしたか……」
神竜達、何やら納得。マオは有名人らしい。
「ああ、失礼致しました。
我々は魔王から、預かった玉をよく観察するよう言われておりまして……
お二方が同調している事も判ったのです」
「やっぱり~」
「それで、俺と同様に、闇に染め易くする為に心に傷を負わせようと、心の色を見て標的を決めていたんだね?」
「その通りです」
「恥ずかし~なぁ、もぉっ」
「しかし、それも闇の力ですので、光の結界の内に入ってしまわれると追跡出来ず、魔王は怒っておりました」
「じゃあ、失恋したことも、あれもこれも知らないんだ~♪」
「王子様が……失恋?」
「するんだよね~、父上♪」「ん!?」
(サクラ!)(よせっ!)(言うなっ!)
「お前ら……皆、知ってる顔だな?」
ルリがサッと寄り、耳打ち。
「落ち着いてください。今は、王なのですよ」
「バラしたのはアオか?」小声で言い、睨む。
「何の事でしょう?」極上にっこり。
「ギン、アオの言う通りだ。
後にしなさい」コハク、半笑い。
「コハクまで~」うぬぬ……「後で執務室だっ」
「話を戻しましょう。
魔王は、神なのですか?」
「おそらく、神ですが……きちんと神に成ったのではなく、何らかの方法で、無理矢理に神化したのではないかと存じます」
「やはり、そうですか……
俺は、魔王は何代か存在していて、初代は神界から追われた神。
以降は、その神が神化させていたのではないかと考えていたんです。
次代以降の神竜は、子孫なのか、捕らえて来たのか、神界を追われた者なのかは分かりませんが」
「お考えの通りだと存じます。
私は、魔王が『先代』と呼ぶ、神らしき魂に会った事があります」
「その時の事を詳しくお願いします!」
「会ったのは二回ですが、いずれも人払いされましたので、たいした情報はございませんが……
先代は、自由に現れる事が出来るようでした。
ですので、まだ力を持っている、比較的 新しい隠居神であろうと感じました。
どうやら、神界に早く入るよう、急かしているようで、魔王は先代を疎ましく思っている、そんな感じを受けました」
「隠居神?」
「神は、存在としては永遠ですが、時が経てば力が衰え始めます。
若い神は次々生まれますので、それを自覚した時、後を託し、隠居するのです」
「ってことは、どこかに歴代魔王がいるの?」
地図を描き終え、後ろで話を聞いていた五人に、サクラが尋ねた。
「こちらにどうぞ。
丁寧な地図をありがとうございました」
五人は輪に入り、地図をアオに渡した。
「最奥の城に居ると思います」
王子達は地図を確かめた。
「その城周辺には、更に強い結界が有り、『真魔界』とでも申しましょうか……
厳重に護られた領域になっております」
「そこには影も入る事が出来ませんので、仕えているのは、闇属性のみの魔人が元の幹部ではないかと存じます」
「だから魔竜を依代にしようとして――あっ」
「構いません。私も真実を知りたいのです。
お続けください」
「天竜には、闇属性は有りませんので、魔竜に目を着けたようです。
依代としてだけでなく、影としても」
「神界に行く為に光の天竜、
真魔界に行く為に闇の魔竜を依代に、か……」
「なんで男性ばかりなの?」
「理由は存じませんが……
女性には魔王の因子が定着しないのです。
依代にしようとしても入る事が出来ず、魔王は適した女性を見つける度に、歯噛みしておりました」
「満緋月の光で男性を定着させても駄目なのですか?」
「駄目です。
おそらく光属性と同様に、変えたとしても何かが残るのではないでしょうか」
「この状態の俺達って?」
「女性ですので……」
「じゃあ、一度でも女性になったら、魔王にとっては使い物にならないの?」
「おそらく、そうですね」
「マオ、なんで俺達を異間に送ったの?」
「存じていなかったのです。
ただ『捕獲せよ』と命じられておりましただけですので……」
「魔王は、その事を知らないんだね?」
「はい。魔王に消される程の失態であると影から叱責され、秘密にせよと……
その時は、取り逃がした事を指していると解していたのですが、そういう事だったのですね……」
「なら、もう、その心配は無いのか……
マオ、ありがとう」「いえ……」顔を伏せる。
「やっぱりキン兄も、一度なっとかなきゃ」
「その心配は無い」
「だって俺達の元なんだよ?」
「いや、だから――」
(きっと、お試し済みなんだよ)(そっか~)
二人、にこにことキンを見る。
「私の事はいい。話を戻して欲しい」赤面。
「あとは、ハク兄とアカ兄だね~
因子 持ってかれたら大変だから、異間に行く?」
「アカ様の因子は定着しませんでした」
「もう試したのですか!?」
「リ博士の代わりとして、竜宝を作らせるべく、アカ様を捕らえようとしたのですが失敗し、因子を得て利用しようとしたのですが、それも失敗したのです」
「なんでだろ?」
(もしかしたら……)(なぁに?)
(ガーネ様はヒスイ様を込める為に、性別も変えたんじゃないだろうか……
何しろ、かなり厳しい条件での分割だったようだからね)
(じゃあ、アカ兄って……)二人、想像する。
(何、二人でニヤニヤしてるんだ?)
(ハク兄は異間に行かなきゃ、ねっ♪)
(しゃ~ねぇなぁ。一瞬だけだぞ!)(うん♪)
「リ博士の因子は?」
「採取すら出来ませんでした」
(御紅守かな?)(たぶんね)
「誰かに化けるアレは、因子じゃないの?」
「成り代わったり、潜入する時の『写身体』の事でしょうか?
それでしたら術技です。
対の鏡が有り、各々を写すだけです」
「元の人が亡くなったら解除される?」
「はい、そうです」
(だから、元の人達は生かされてたし、他の呪に邪魔されて、かけられなかったんだね~)
(そうだね)
「いろいろわかったね~♪」
「もうひとつ。
深魔界は人界だった場所ですよね?
それなら、地上の人界とは、直接 行来は出来ないのですか?」
「通路は有る筈ですが、見つからないのか……通れないのか……
使用しているとは思えません」
「他に有りますか?」見回す。
ハクが身を乗り出した。
「ひとつだけ!
闇化した傀儡兵。
竜血環によって魔獣化された獣化兵。
コイツらは、浄化で俺達でも救える。
だが、この他に、浄化出来ない魔物兵がいるんだ。
ソイツらは皆、魔王の因子を移植された人々なのか?」
「はい。
影や幹部より、ずっと少量ですが、魔王の因子を込められている兵士達です」
「では、救うには――」
「私共同様となります」申し訳無さげに俯く。
「アオとサクラだけかよ……」
「方法は有りますよ」アオとサクラ、微笑む。
黒「おっ♪ フジ、教えてくれるのか?♪」
藤「はい。キン兄様から、そう――」
黒「チャチャッと教えてくれっ!
んで、出してくれっ!!」
藤「分かりましたよ。
早く出たいのですね?」
黒「あ……」マズったかな? 目の光が恐ぇ……
藤「手加減なしです!」キラーン!




