闇拠点3-影と幹部①
前回まで:魔王の拠点には隠し部屋が有り、
厄介な闇や呪が残っているようです。
♯♯ 天界 深蒼の祠 ♯♯
アオは、魔竜の前王と王子の亡骸を深蒼の祠に運んだ。
「ムーント様、こんなにも大勢、運び込んでしまって申し訳ありません」
「いえ、大丈夫ですよ。
以前、王子様方にお救い頂きました者達も、交替で浄化しておりますから」
「ありがとうございます」
(アオ、天界に来ているのか?)
(はい、キン兄さん)
(今、謁見の間に、影や幹部にされていた神竜と魔人方々にお集り頂いている。
これから話を伺うが、来られるか?)
(はい。始めていてください)(うむ)
「それでは、宜しくお願い致します」礼。
♯♯ 長老の山 ♯♯
(サクラも来ているのだな?)
(うん♪ ランも一緒だよ~)
(ならば尚更だ。謁見の間に、二人で――)
(アオ兄に話してたの聞こえてたから、行くね)
(うむ)
「ラン、天竜王城に、魔王の因子を植え付けられてた神竜や魔人が集まってるんだ。
話を聞くんだけど、一緒に行く?」
「もちろん行くわ」即座に女王の風格が漂う。
サクラが、天竜王城のルリの部屋に曲空すると、ルリが着替えていた。
「わわわっ!」「失礼致しましたっ!」
「構わないよ。もう殆ど終わっていたからね」
「なんだぁ~、アオ兄かぁ」
「許可を得ていないからね」
「そっか……じゃあ」女姿になる。
「えっ!? サクラ!?」
「初めてだっけ?」
「先日は、呼び込む前に戻っていたな」
「よく見てるんだね、ルリ。
やはり女性というのは――」
「客観的に見る良い機会だから見ていただけだ!」
「そっか~」あははっ
「アンズ、早く着替えないと始まるよ。
虹藍様、これは技ですので、お気になさらず。
私達は今、人界の任の最中で、その間は城に立ち入れないんです」
「それで――まあ! かわいいっ♪」
「やめてよ~、ラン」もじっ
「遊んでないで、行くよ。アンズ」
「アンズ、行きましょ♪」
♯♯ 謁見の間 ♯♯
三人が入ると、ギンは嬉しそうに目を細めた。
執事の先導で、三人は前方に向かった。
(父上って、若い頃は『結婚なんぞせん!』って言ってたって聞いたけど……)
(ああ、それか……失恋しただけだよ)
(王子なのに!?)
(サクラもフラれたじゃないか)
(あ……そぉでした~
じゃ、べつに女嫌いってワケじゃないんだ~)
(まぁ、見ての通りだろ)
(そっか~
だからランにも、いいトコ見せようとするのか~)
(何か有ったのかい?)
(毎日、ランに会いに行ってるんだって~
で、昨日は魔物も退治したんだって~)
(ルリの事も気に入ってたよ)
(女嫌いじゃなくて、大好きなんだね~
じゃあ、なんで母上と?)
(自暴自棄の結果だよ)(ふ~ん……)着席。
(キン様とハク様は、そのままなのね)
(王太子だから、政にも参加しないといけないんだ)
(残念っ! 見たかったわ~)
(キン兄は、できるハズだけど、ならないし、ハク兄は、なれないんだ)
(どうして?)
(光じゃないと――属性技だから)
(私も光明を使えば、できるかしら?)
(男になりたいの!?)
(時々そう思うわ……)(あっ、始まるよ)
キンが立ち上がり、
「この場は決して尋問では御座いません。
魔界の深層の事、魔王と我々が呼んでいる龍神帝王の事をお教え頂きたいのです。
どうか宜しくお願い致します」
深く礼をした。
――――――
地下界の半分は、魔神・閻魔族が住む『魔神界』で、残り半分が『魔界』であり、魔神界と魔界は、『異間平原』で隔てられている。
魔界のうち、異間平原との境界に接する側三分の二が、かつて人界であった場所であり、現在、魔王が籠っている場所である。
アオとサクラが考えていた通り、魔王は光を通さない強固な結界を成しており、天神界深層の『深神界』の如き『深魔界』を形成していた。
神竜の基属性は光で、全ての神竜が光を持つ。
影にされると、それは闇に変えられ、魔界にも、深魔界にも入る事が可能となる。
しかし、深魔界に入る事が許されるのは、魔王が選んだ者のみで、影や幹部と言えども、易々入れる場所ではないらしい。
謁見の間には、百人以上の神竜と魔人が集められていたが、深魔界に入れる程の側近は、五人だけであった。
魔王は大拠点に隠し部屋をいくつか作っており、そこで因子の移植や、魔宝の研究をしていたらしい。
リジュンも、そうした隠し部屋に監禁され、研究を強要されていたそうだ。
――――――
(では、他の隠し部屋も探さねばならぬな)
(これが終わったら探しに行こう)
ここまで聞いて、深魔界に入った五人と、大拠点を指揮していた者達を残し、解散となった。
「これよりは、自由で御座います。
天界で最も強固な結界の内にお住まい頂く事も可能で御座います。
元のお住まいに戻られるならば、お送り致します」
と、ルリが伝えたが、神竜も魔人も皆、長老の山に住むと決めた。
ルリとアンズが長老の山に送り、祖父に頼み、団体で大婆様の部屋に向かうのを見送った。
「竜宝作りも、古文書の解読も、早くなりそぉだね~」
「各祠の神官も、して頂けそうだね」
「城の執事も増えるのかなぁ」
「マーさん、大喜びだね」
「執事長の血圧が心配だね~」
二人は笑って、城に曲空した。
――謁見の間。
地図を描いている五人と、ああだこうだと思い出し、話している集団だけが居た。
(父上達どこ行ったんだろ?)気を探す。
(天界には居ないね……)既に探している。
(もしかして――)(魔竜王城だろうね)
(待っていれば戻られるのではないか?)
(いや、ここを任された感があるんだよ)
(王や王太子が放置など――)(あるよ)
(父上だからね~)(うん、そうだよね)
(意外だな……)(内と外では大違いなんだ)
(確かに親子と確信した)(どういう意味?)
(そのままだが)(後で、ゆっくり話そうか)
(そういう所だ)(うん、解ったよ。後でね)
(アオ兄、ルリ姉、遊んでないで~)
(じゃ、話を聞こうか)
ルリとアンズは、話している集団に近寄った。
「まとまりましたか?」
神竜達が姿勢を正す。
「お楽になさってください」にこっ
「私達、ただの竜ですから」にこっ
「『ただの』などと思っておりません」
「神をも凌ぐ御力をお持ちと存じます」
「性別すらも自由とは、敬服致します」
「あ……バレてた~」あはっ♪
「それでは、魔王の研究について、お教え願えますか?」
「竜血環と神禍乱、それと最近は、様々な鏡を熱心に研究しておりました」
「鏡、ですか?」
「はい。
おそらくは、自ら神界に入る方法を模索していたのではないかと存じます」
「ああ、通路用の鏡ですね?」
「はい。
通常は、竜宝や術技を用いても、境界を越える事に変わりは無いのですが、その点を打破しようと、新たな魔宝を作り、神界の境界に歪みを生じさせる所までは成功しておりました」
「しかしそれでも、魔王や、魔王の因子を持つ者は、神界には行けませんでした」
「闇化しただけの魔物であれば、その歪みから入る事が出来るので、同様に真神界まで歪みを作り、侵入して神竜の魂を捕らえていたのです」
「なんで鏡で移動せずに飛んでたの?」
「その歪みを作る鏡では、地下から神界に直接 繋ぐ事が出来ず、天界から下層神界へ、下層から上層へと、ひとつひとつ境界を越える事しか出来ませんでした。
別の鏡でも、人界と天界の境界までならば容易に繋ぐ事が出来たのですが、天界で既に困難となり、ほぼ繋がらず、神界には繋がらなかったのです」
「魔王でも?」
「はい。
光の力が必要だ、と言っていた気がします」
「俺達、鏡から鏡なら、天界でも繋げたよね?」
「そうだね。難しくは無かったね」
「そうですか……鏡から鏡……
私共は、空間に直接 繋いでおりましたから」
「あ……もしかして『闇の穴』?」
「魔物が出て来る穴の向こうは、鏡だったのですね?」
「あ、はい。そうです。
人界に繋いだ鏡を通っていました。
人界側からは……そうですね。
暗い穴のようにも見えますよね」
「鏡が無い側から、穴を穿ってましたよね?」
「はい。鏡に向かって、術で繋いでいました」
「俺達とは違うんだね~」穴、開ける。
「それは、どちらに?」
頭を突っ込み「やっぱり、お茶してる~」ぶぅ
「魔竜王城です。
繋ぐ鏡など無しに、空間から空間に繋いでいます」
「流石ですね……」
「そういえば、マーさんは、空間と空間を繋いでいたよね?
マオも、かな?」
記録していたマーさんとマオが顔を上げた。
「闇属性の魔人であれば、可能かと存じます」
マオが答えた。
「あの二人も幹部だったんだ」
「鏡については、だいたい分かったよ。
ありがとう。
竜血環と神禍乱は、その後どうなったの?」
黒「どこ行ってたんだ?」
凜「すぐに判るわよ♪」
黒「なんだソレ?」
姫「おお、アカ殿。
お忙しい所、誠に申し訳ござらぬ」
赤「ん……」
黒「何やってんだ? アカ――って!
ソレって結界じゃねぇかよ!
やめろよ! おいっ!
てっ! 掌握で小突くなよなっ!」
赤「終わった……」
姫「忝のぅございまする」
黒「おいっ! アカ! 解けよっ!」
赤「フッ……」曲空。
黒「ひっでぇなぁ……ったく~」
白「おっ♪ 見つけたぞっ♪」
黒「ハク兄まで……何しに来たんだよ?」
白「見に来ただけだっ♪」
凜「せっかくだから、ハクも一緒に~♪」
白「ゲッ……いや、俺には必要なぃ……」
姫「問答無用なのじゃ!♪」
白「マズッ!」曲空!




