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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
247/429

闇拠点2-負の感情と闇

 地図や人物紹介、言葉の説明などは、

『ぱられる三界奇譚』の『はじめに』の方に、

まだ少しですが、書き加えています。

こちらには、各章の終わりにと考えていますが、

とりあえず、そちらをご参照ください。


♯♯ 地下魔界 ♯♯


 アオ、ルリ、サクラは魔王の隠し部屋で、魔竜の前王と王子の亡骸の浄化を急いでいた。


「あ、サクラ♪ 探したのよ~」


今だけは来て欲しくない者の声がした。


「ラン……なんで、こんな所に……」立ち尽くす。


アオは隅に置いていた幕布を広げ、寝台を覆うべく放った。

(サクラ、そっち引っ張って!)


しかし、サクラは動けず、虹藍が入って来た。

アオは幕布を引く為、サクラの傍に曲空したが――


「えっ……その個紋……見せてください!」


「これは複製体です!

浄化中ですから近寄らないで!」


「複製? ……父の?」


「ここに御遺体が有る筈がありません。

そうですよね?

ここは魔王の実験室のようです。

魔王は依代を得る為に様々な試みをしていたようです」

(サクラ、しっかりしろ! 乗り切るんだ!)


(……赦せない……)


(それは後にしろ!)サクラから闇が!?

(アオ、闇の力が反応しているぞ!)


「今……布の中が光ったわ……」


「危険です! お逃げください!」

アオは虹藍を庇いながら通路に向かった。


(サクラ! 後ろだ!)


幕布が持ち上がる。

中の手が幕布を除け、上体を起こした。


「お兄様!?」


「複製体です! お逃げください!

護衛兵! 女王陛下を安全な場所へ!」


引き渡し、部屋に戻り、牆壁で穴を塞いだ。


(サクラ! 闇に呑まれるな!)


アオは亡骸とサクラの間に割って入り、サクラを闇に染めようとする力の元を掌握で掴み出そうとした。


ルリはサクラから流れ込む闇を、アオの光明で打ち消していた。


 元から断たねば、アオの浄化が間に合わぬ。


(アオ、そっちは任せたぞ!)「サクラ!」


(えっ? ルリ、その声――)(似ているか?)

(虹藍様が戻って来たのかと思ったよ)(よし)


「サクラ! 目を覚まして!

私は大丈夫よ。

ちゃんと死から立ち直ってるから!」


「ラン……」サクラが、ゆっくり顔を上げた。

虹藍を探して視線を漂わせる。

「でも……俺、赦せないんだ……」


「その気持ちだけで十分よ。

ありがとう、サクラ」


 駄目か……侵食が止まらぬ。

 闇障を持つサクラをも蝕むとは……


(アオ、骨折くらい治せるな?)


(もちろんだが、何をする気だ?)


「だから、しっかりしてっ!!」


ガッッ!! ドッ!! ゴグシャッ!!


アオが一体の内から膨れ上がった闇の力を掴み出した時、尾に激痛が走り、サクラが壁を突き破った。


「った~~っ! なに? これ?」

瓦礫を掻き分けて出、頭を抱える。


(アオ、すまぬっ!)

ルリはアオに謝りながら振り返り、空いている手で、もう一体の闇の力を掴んだ。


サクラは慌てて立ち上がると、光の球を、アオが両手に持っている闇の力に被せた。

そして、もうひとつ大きくして、自分がその中に入った。


「ルリ姉、ごめんよぉ」うるうるうる~


「いつもは冷静なのにな」治癒、始める。

「闇に魅入られてしまっていたね。

ルリ、一体 何をしたんだ?」


「お前ら兄弟が闇に堕ちそうになったら、頬をブン殴れと桜華様から伝授されたのだ」


「いつ、そんな……」恐ろしい事を……


「お茶会で、皆 集まっていた時だ。

女性全員に、一斉に伝わったようだ」


「闇には気をつけよう」「うん」頷き合う。


「アオ兄、それ、コレに入れて」器を出す。


「浄禍器か」光の球ごと入れた。


「コイツは、すっごく小さな負の感情を増幅して、闇に染めようとするんだね……」


「しかも、その力を吸収して、自らも強大になるようだ。

おかげで見えたけどね」


「御遺体……複製って事にしたんだね。

ランは……複製でも見たいんだろうか……」


「本人に確かめたらどうだ?」

(ルリ、もう少し優しくね)(あ? ああ……)


「うん……」(ラン、大丈夫?)


(大丈夫よ。サクラこそ大丈夫なの?)


(うん、俺は大丈夫だよ。

ラン……複製でも見たいの? 怖くない?)


(本当に、お父様とお兄様だったら怖くないし、会いたいけど……複製なのよね?

あ、また動いたりしない?)


(もう動かないよ。闇の力は取り除いたから。

あと少し浄化したら、色も元通りになるよ)


(そう……行ってもいい?)


(いいよ)「アオ兄、牆壁 解除して?」

サクラは虹藍を迎えに行った。


アオは亡骸を寝台に横たえ、二人を待った。




 サクラと虹藍は、静かに入って来た。


「本当に、そっくりね……

色も……さっきは黒かったのに……

触ってもいい?」


サクラが頷いた。

(アオ兄、だいじょぶだよ。

ランの属性は闇だから。

魔王の闇とは別物だけどね)


(属性が闇で、天性が光明なんだね。

サクラと、ちょうど逆だね)(良い相性だな)


(アオ兄とルリ姉だって、そぉでしょっ)真っ赤!


(火と水か?)(光明と闇障もね♪)

(……そうか)(うん。いい相性♪)


「魔王は、どんな方法で複製を作るのかしら……」

虹藍が呟いた。


「術とかは知らない。

でも禁じ手には違いないんだ。

核となる物に、因子を植え付けて作るんだよ」


「この複製には、父の因子が込められてるの?

少しは父なのね……

これは……これから、どうするの?」


「きちんと浄化して、調べたら……ラン、どうしたい?」


「父と兄が少しでも含まれているのなら、それぞれの傍に埋葬したいわ」


「うん、そうしよう。アオ兄、いいよね?」


「ああ、そうしよう」




 亡骸は、アオが運んで行った。


「私……紫紅(ズーホン)お兄様を初めて見たの……

あ、肖像画は、毎日 見てるわ」


「同腹ではないんだね?」


「母が違うの。

兄と前王妃、そして二人の姉は、一緒にいる所を襲われ、亡くなったと聞いたわ。

伯父一家も亡くなっていたから、父は私の母を迎えて――」


サクラはランを抱きしめた。


「ごめん。辛い事なんて話さなくていいから」


「ありがとう、サクラ。

平気でもないけど、大丈夫よ」にこっ


「そう……」でも、笑顔がツラそうだよ……


「そんな、心配そうな顔しないで。

私は、もう大丈夫。

だってサクラが居てくださるんだもの」


「ラン……」治癒で包む。


「ありがとう、サクラ……」


サクラは虹藍の髪を優しく撫でた。

虹藍は目を閉じ、サクラの胸に頬を寄せた。


暫くそうしていたが、

「サクラ、私は、もう幸せになったわ」

顔を上げ、サクラを見詰めて、何かをふっ切るように微笑んだ。


「あ、それにねっ♪

たくさん お兄様とお姉様ができたから今は、とってもとっても幸せよ♪

ギン王様も毎日いらしてくださるのよ♪」


「毎日!?」


「ええ、まだ鏡を置いて数日だけどね♪

昨日なんて、飛んでいた魔物を退治してくださったのよ!

『父なのだから当然だ』って♪」


「そんな事があったの!?

あ、それで、今日も約束してるの?」


「いいえ、まだよ」


「これからの予定は?

あ……そういえば、なんで ここに来たの?」


「午後の予定が変わって、空いたからサクラに――

何でもないわ! 視察よ! 視察っ!」


「俺に、なぁに?」ぱちくり。


「何でもないからっ!」


「へ??? ん~、まぁいっか。

何も無いなら、天界に行く?」


「サクラは、いいの? 忙しくない?」


「ランの時間が空いてる方が珍しいよ。

行こっ♪」


「うん♪」


鏡を覗く。「工房だ。ここから行こう」手を繋ぐ。




「アカ兄、お邪魔しま~す」「こんにちは♪」


アカが無言で何かを差し出した。


「ありがと♪

絵付は、今朝、キン兄がしてくれたから、も少し待っててね~」


「それは?」「昇華器(ショウカキ)って竜宝♪」

サクラは、それを水筒に取り付けた。


水筒の口を外に向け、栓を抜くと、水は勢いよく飛んでいった。


「よく飛ぶのね♪」「でしょ♪」


ワカナが入って来た。「サクラ様、これも」


「ワカナさん、ありがと♪」組み立てる。


「水鉄砲?」


「そう。中に増幅鏡も入ってるから、無限に放てるんだ。

聖輝煌水を入れれば、姫の武器になるんだよ」


「聖水で戦えるのね……」


「まさか、って感じでしょ?

攻め込まれた時には、壺爆弾で応戦したんだ。

中身は、聖輝水と、治癒と浄化の光♪」


「それなら魔人にも無害ね♪」


「そうだ! 後で魔竜王国にも配備しよう」


「うんっ♪」





青「クロ、何をしているんだ?」


黒「見ての通りだよ……勉強だ……」


青「どうして相殺なんかに閉じ込められて

  いるんだ? ヤル気になってたろ?」


黒「いや……凜から逃げようとして……」


青「納得したよ。で、凜は?」


黒「姫と一緒に、どっか行った」


青「そう……頑張れよ」


黒「アオ、出してくれよぉ」


青「逃げても無駄だからね。

  全部 解くしかないだろ」


黒「う……だよなぁ……」


青「相変わらず、答えだけ埋まっているんだな」


黒「解けねぇけどな。浮かぶんだ。

  ってか、この力 鍛えたの、アオじゃねぇか」


青「だったな。うん、全部 合っているよ」


黒「なぁ、アオ――って!

  どこ行くんだよっ!」


青「凜と姫が――ほら」曲空。


黒「ゲッ……戻って来やがった……」


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