表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
242/429

伽虞禰10-待機

 魔界組は、これで落ち着くかなぁ。

ということで、伽虞禰の方を進めます。


♯♯ 伽虞禰 老中屋敷 ♯♯


 夕刻、蔵にクロが曲空して来た。


「動き、あったか?」「いや、まだじゃ」


「オッサン達は?」キョロキョロ


「馬車の中じゃ。

イザとなったら、丸ごと曲空で運べるじゃろ?

魔王が来たならば、逃げねばならぬからの」


「考えてるな」「クロも、少しは考えよ♪」

「あのなぁ~」「何じゃ?」「いや、いい」


「あ、フジ~」逃げた。


フジは水薬を壺内で増幅し、集縮の水筒に吸い込ませていた。


「クロ兄様、お帰りなさい」にこっ


「アオとサクラが、笛の音 重ねてくれて、ありがとうって言ってたぞ」


「笛の飾りから聞こえてきたんです。

重ねなくてはならない気がして……」


「魔王の笛に対抗して、二人が吹いてたんだ。

フジが加勢してくれたから魔笛が砕けたよ」


「そうですか……よかった……」


「一緒に行けなくて悔しかったんだろ?」


「そんな事――いえ、そうです」俯く。


「誰だって同じだから、落ち込むなって。

皆それぞれ後処理に追われてるから、これから、こっちのはフジが主役だ。

他の誰にも出来ねぇ事やるんだからなっ」


ぱしっとフジの肩を叩くと、

フジが「うっ……」と、お腹を押さえた。


「あっ! フジ 、悪りいっ! 痛むか!?

医者 連れて――」フジがクロの袖を掴んだ。


「大丈夫ですよ……傷は塞がっていますから。

ありがとうございます、クロ兄様」


「ホント悪りいっ! すまんっ!!」拝む。


「フジを苛めたら容赦せぬぞ!」

姫が朱鳳を構え、気を溜めている。


「誤解だっ! 勘弁してくれ~っ!」逃げる!


「逃げられると思うな!」曲空!



 二人は宙で曲空を繰り返し、姫は続けざまに炎を放ち、風で加速した。


「マジかよ!?」竜体になって飛んで避けた。


「ならばじゃ」背に曲空し、炎を打ち消し――


「まさか!?」「その通りじゃ♪」なでなで♪


「やめっ! 落ちる! 姫っ!」

激突寸前、地に風を放ち、黒竜(クロ)を巻き上げた。


――無事 着地。


「姫様の方が使い熟していませんか?」


「さよぅじゃ」クスクス♪

「逆鱗 撫でられただけだっ!」


「薬の準備、出来ましたよ」


「もぅすぐじゃのぅ」夕闇の空を見上げた。




♯♯ 伽虞禰 礼拝堂 ♯♯


 礼拝堂は(ざわ)めいていた。

興奮し始めた人々が城に向かいたがる。


「今暫し待たれよ!

時を此方の味方とせねば、事、成らぬぞ!

祈祷の間、静かに待たれよ!」


騒めきは収まらない。大きくなるばかりだ。

教祖の声も届いていないようだ。


「皆が興奮する迄、待ちたいのだな……

皐月、姫様に、そのように伝えよ」


皐月は頷き、走った。




♯♯ 伽虞禰 老中屋敷 ♯♯


「姫様っ」


「水無月か。如何じゃ?」


「陰陽新道の巫女達は、西の屋敷にて乳母に仕える者達でございました。

今宵は、西の屋敷の者は皆、乳母の(めい)に依り、外出を禁じられましてございまする」


「うむ。思ぅた通りじゃ♪

おぉ皐月、如何じゃ?」


「信者達は興奮し始めております。

教祖は予定通り、事を運びたく、宥めておりますが、聞く耳、既にございませぬ」


「では、早まるやもしれぬな」


姫は二人に耳打ちし、二人は走った。




「フジ、城に向かう信者達への散布は、任せても大丈夫かの?」


「少しばかり飛ぶだけでしょう?

大丈夫ですよ」にこっ


「ならば任せるぞ。

地上の事は、紫苑と珊瑚に任せよ。よいな?」


「はい。ありがとうございます、姫様」


馬車に向かって弾んで行き、

「ミズチ、フジを頼んだぞ。

さて、では各々方、城へ参るぞ♪」

姫は袋を抱え、クロはオッサン達を抱えて曲空した。




 入れ替りに、桜竜(サクラ)赤竜(アカ)を連れて現れた。


「フジ兄~♪ 笛 吹いてくれて、ありがと♪

すっごく助かったよ♪」光を当てる。


「サクラ、呼んでくれたのでしょう?

関われて嬉しかったのですよ。

ありがとうございます」


「ホントに吹いて欲しかったんだよぉ」


「そうですか……聞こえてよかった……」


「フジ兄、無理はできないんだからねっ」


「解っていますよ、サクラ先生」


「それ、やめてってばぁ」二人で笑う。


「アカ兄様は何を?」


「念のため炎鉱石に結界。

そのあと魔界で結界するの」

(終わったぞ)(あ、うん♪)


「じゃ、行くね~♪」

赤竜(アカ)に抱きつき、手を振って消えた。




「爽蛇殿、私達も近くまで参りましょう」


「はい♪ フジ様♪」大きな袋を背負う。


 紫苑殿と珊瑚殿は……見つけました!


爽蛇の手を取る。


 その上空に……曲空!


「フジ様も、とうとう……」


「クロ兄様から頂きました♪」にっこり♪




♯♯ 伽虞禰城 ♯♯


 クロと姫が、桜華の近くに曲空すると――


桜華の傍には、念網で包まれた侍が十人程、転がっていた。


「あら、老中様は正気に戻られたのね。

でしたら浄化しましょ♪」


放った御札が侍達の額に貼り付き、闇を吸い取り、煙となって消えた。


「お殿様、この方々は操られていただけ。

御咎め無しで、お願い致します」にこり


「うんうん、よう分かったぞ」にこにこ♪

桜華の手を取り、撫でる。


「さて、好色ジジ――いや、殿」


「ん? 何か申したか?」


「お願いがあるのじゃ」


「何なりと申せ」


「ご子息方をお借り致したいのじゃ」


「病は?」「治りましてございます」

「そうか」にこにこ♪


「兄弟、力を合わせる事こそ、これからの伽虞禰の国にとっての(かなめ)


「その通りじゃな」うんうん、と桜華に。


「我等がご子息方を必ずやお護り致す故、御心配召されるな」


「うむ。宜しくお頼み申す」桜華に、ぺこり。


「では参ろぅぞ」ため息……


「あの……何処へ?」黒槎柯と小金以、戸惑う。


「ご子息方の寝所に決まっておろぅ?

先ずは話をせねばならぬじゃろ?」すたすた。




「失礼致す」言いながら開ける。


「これより、兄弟、力を合わせ、四男殿をお助けするのじゃ」


三人が驚き、起き上がる。


「およ? これはまた、随分と年の離れた――」


 三十路半ば、二十歳そこそこ、未元服少年か?


「四男殿は乳呑子と聞いたのじゃが……」


「その通りじゃよ。あとは皆、姫でのう」


「一体 何人、姫が居るのじゃ!?」

「嫁いだ姫様が……十四人」指折り数える。

「こちらに居られる姫様が、八人」

「いえ、先日、もうおひと方……」

「九人になり申したのか!?」

「もぅよいわ……」


「なぁ姫、人って、ひとりずつ産むんだろ?」

「だいたい、そぅじゃな」

「どうやって、そんなに?」

「側室が大勢おるに決まっておろぅ」

「ソクシツ??」

「嫁じゃ!」

「嫁が大勢???」

「後で説明するっ!」


ごちゃごちゃ言っている間に、ご子息方は着替え終えていた。


「殿は何故、寝間着のままなのじゃ!?」


「儂も行くのか?」桜華に尋ねる。


「しかと見届けねばならぬじゃろ!?」


「お殿様、ささ、着替えましょう」

殿は桜華に手を引かれ、奥に行った。


「おヌシら、その格好でよいのじゃな?」

姫に睨まれた老中と代官も、大慌てで着替えに走った。





凜「アオ、竜の国は、一夫一婦制なの?」


青「明確な決まりなんて無いよ」


桜「竜は、そんなの決めなくても

  問題 起きないから~」


青「そうだね。

  そもそも、争い事が嫌いだからね」


凜「でも……クロを見てると、けっこうな

  独占欲だと思うんだけど……」


青「うん。クロが、あんなふうになるなんて

  思わなかったよ」

桜「だね~」


凜「クロは特別なの?」


桜「どぉだろね~」


凜「アオとサクラは、どうなの?」


青「それなりに有るとは思うけど……」

桜「あそこまでは、ねぇ……」


青「あ……もしかして……」


桜「アオ兄も、そぉ思う?」


青「可能性は有るよね」


桜「うん」 (せ~のっ)


凜「ちょっ! どこ行くのよぉ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ