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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
241/429

伽虞禰9-魔王

 追い詰めました。


♯♯ 地下魔界 ♯♯


 天竜の兄弟は、目指す部屋の扉前にも張ってあった結界を突破し、その余波で扉も破壊した。

中では、寝台に人が横たえられ、神に似た闇黒色の靄が浮かんでいた。


その背後には大小数枚の鏡が有り、水晶玉のような物が、いくつも見える。


闇黒色の靄が竜の形になる。


【たかが竜の分際で……】


「その、たかが竜を依代としなければ生きていけないお前が何をほざくか」

アオが淡々と言った。


【竜如きに何が出来る!】闇が拡がった。


「たかが竜? 竜如き?

そう言わねばならぬとは、負けを認めたようなものだな」

瞳に冷光が宿る。


アオは魔王の懐に曲空し、

(輝神竜牙!!)

ルリと共に闇の一点に鋭い光を射ち込んだ。


【グオッ! 】闇が一瞬、揺らぎ、薄れた。


サクラも曲空し、別の一点に鋭い光を射ち込む。

アオが再び曲空する。


二人が次々と曲空しては光を射ち、キンとハクも加勢する。


闇が薄れ、後退していく。


【離せっ!】


(全て確保した。存分にヤれ)

アカが掌握で捕らえていた。


クロの供与が加わる。


アカは、四人の攻撃中にクロが集めた鏡や水晶、魔王の依代の前に結界を張った。


【卑怯な竜共め!】


「卑怯の権化が何をぬかすか。

俺達は、お前との力量差を(わきま)えている。

協力は必須。それだけだ」


(魔王は俺の光を持っている。

定着はしていないようだから、今のうちに、サクラ、ルリ、それを闇に変えるぞ)


キンとハクが後退し、供与を発動した。

アオとサクラが、神眼で魔王の中の光を捕らえ、闇障で闇に変えていく。


【何を!? ……やめろ!!】


(勝輝、魔王の闇を吸い取ってくれるかい?

最初は気付かれない程度でね)

【畏まりまして御座います】


「使えもしない光など無用の長物だろう?

お前の大好きな闇に変えてやるよ」


【お前の方が『魔王』に相応しいな】

魔王はアオを闇に染めようとし始めた。


「無駄だ。俺には、もう傷は無い。

知っているのだろう? お前の負けだ」

ルリがアオに侵入する闇を、光明で光に変える。


【我が闇の強化、有り難く受け入れよう】


「強がるのも、そこまでだな。

さっき俺に注いだ分程も無いだろう?」


【口の減らぬ小童(こわっぱ)め! 思い知れ!!】

魔王が闇の気を爆発させ、アカの掌握から抜け出た。


――が、爆発は大した事は無く、アカは空かさず再び掌握で捕らえた。

ハクも続いて双璧で真似、押さえ込んだ。


「たかが竜の光だからな。

大した強化にはならないよ」クスッ


魔王が悔しさを滲ませ、足掻く。


(キン兄、ハク兄、も~い~よ♪)


(閃煌激放!!)

キンが昇華した光を炸裂させ、ハクも、それを双璧した。


(みんなで浄化、せ~のっ! 浄癒閃輝!!)

アオとサクラも光明を昇華し、その空間は光で満ちた。


【その程度で消せると思うな!

我が依代は、ひとつでは無い!】


(逃げたぞ!)


輝きの中、闇の突風が吹き抜け、アカの掌握が追う!


離れた所に闇黒色の染みが出来、拡がり、人の姿になった。


(アカ! サクラ! 魔王を掴め!)

言いながらアオも神眼と掌握を発動した。


【無駄だ】鎌を笛の如く構えた。


(魔笛だ!)アオとサクラも笛を構える。


双方の笛の音が激しく衝突し、打ち消し合う。



アカは回収物から大鏡を抜き出し、術を唱え始めた。


キンとハクは光の牆壁で魔王を囲み、攻撃を始めた。


(あの体、光を持ってる!)

サクラが叫んだ時、魔王が深く被っていた帽子を(いかずち)が弾いた。


(アオ!?)


「実験体か。光が発現していようが問題無い。

所詮は擬物(まがいもの)

本物()に勝つ事など不可能だ」

アオとサクラが闇障を爆発的に発動した。


(なんか、ちゃんと入れてない感じ~)

(そうだね。魔王と依代が反発しているね)

(追い出せるかなぁ?)

(笛を何とかしてからだね)(だね~)



アカが鏡から太鼓を取り出した。

「どこから出した?」「クロ、叩け」

「何だ? この太鼓」「鼓武羅(コブラ)。破魔と強化だ」


アカはクロに(ばち)を投げ「供与に乗せろ」

もうひと張り取り出し、笛に合わせ叩き始めた。



アオとサクラの音に、更に笛の音が重なった。

(フジ兄だ♪)(通じたね)微笑み合う。


魔笛に亀裂が走り、弾け散った。


「叩き続けろ」

アカは叩くのを止め、掌握を発動した。


兄弟の一斉攻撃で一瞬よろけた体から、弾き出された魔王を掴む。


攻撃の焦点が魔王に移った瞬間、クロが曲空し、依代を奪った。


クロが結界の内に戻った時、魔王と依代を繋いでいた気の紐が燃え切れた。


【赦さぬ……】


最初(はな)っから、お前の許しを乞う気なんぞ、さらさら無い」


魔王が怒りを露にし、闇が炸裂した。


攻撃していた四人が飛ばされ、掌握が打ち消された。


魔王は即座に何かを発動しようと闇の気を高めた。


(勝輝! 今だ!)

勝輝が輝き、立ち込める闇を一気に吸い込み、魔王を引き寄せ始めた。


【勝輝かっ!? 何故、意識を――】


四人が体勢を立て直し――

(もっかい! 浄癒――あ……)


――魔王の気が消えた。


コロン、コロロン、コン……


青い光が瞬く玉を残して――




「逃げちゃったね~」


「これだけ奪還出来れば上出来だよ」

(勝輝、ありがとう)【有り難き御言葉】


「魔王の気が全く感じられないのだが……」

「アイツ、どこ行ったんだ?」


「『深魔界(フカマカイ)』とでも言ったらいいのかな?」

「そぉだね~、神界の真似っこだよね~」


深神界(フカシンカイ)の境界が闇を通さないのと同様に、魔王が作った、光を通さない境界の向こうです」


「この向こうに、昔、地下人界として栄えていたトコがあるんだ。

たぶんソコ」指す。


それを見て、アカが結界を張り直した。

「魔王、閉じ込められる?」「わからん」


「これは?」クロが転がっている玉を指す。


「アオ兄の因子。

光あるから持ってけなかったんじゃない?」


「ふうん……

しっかし、久しぶりに『アオ』が炸裂したなっ♪」


「何だよ、それ」アオがムッとして睨む。


「サクラ、あんなアオ、初めてだろ?♪」


「兄貴達が言ってたアオ兄ってコレなんだ~って思った~♪」


「まだまだ、あんなものではなかったがな」

「ルリまでっ」


「体ひとつで夫婦喧嘩はヤメてくれよなっ♪

だが、確かに百分の一くらいだよなっ♪」


「ハク兄さん……」鋭く睨む。


皆の笑い声が、拠点に明るく響く。


「冷静さを欠いて貰わないと、太刀打ち出来ないと思っただけなんですが……

まだ若そうで煽り易そうだったから……」

ぶつぶつぶつ……


「お陰で、これだけの成果が有り、誰ひとり怪我すらも無かったのだ。

そのくらいにしてやれ」キンも笑っている。


「だよねっ♪

コレ、天界で浄化しないとでしょ?」玉を指す。


「なぁ、こっちの色とりどりの玉は何なんだ?」


「たぶんね~

それで俺達の心を見てたんじゃない?」


「そっか。確かに同じ色だな」


「んで、この依代だった二人も、天界に連れて行くのか?」


「勿論だ。浄化してアオの因子を――

それは、この二人に確かめてからにしよう。

クロ、二人を連れて、船で行って欲しい」


「解った」二人を抱えて消えた。


「あとは皆で運ぼう」「はい」


鏡に太鼓を入れていたアカが振り返り、

「工房と繋がっているが――」

言い終わる前に、ハクとサクラが、ガチャっと全部 押し込んだ。


アカが二人を睨み、ため息をつき、鏡を通った。

ハクが笑いながら続いた。


「サクラ、魔竜王国から神竜方々を天界に連れて行って欲しい。

アオ、この鏡を持って来て欲しい」

言いながら、キンも鏡を通った。


サクラが鏡に掌を当て、術を唱え、

「じゃ、アオ兄、後でね~♪」鏡を通った。


アオとルリは笑って鏡を持ち、曲空した。





凜「あっ、コギさん!」


儀「ああ、凜殿」


凜「お疲れ様で~す。

  アオに魔王の事、教えたんですか?」


儀「いいえ。アオ様はご自分で魔王の性格を

  見抜いたのです」


凜「コギさんって強いんですね~

  ひとりで魔王を追い詰めたんでしょ?」


儀「今回は魔王が弱っていましたからね。

  無理矢理にアオ様の光を我がものに

  しようとした報いでしょうが。

  弱っていなければ私なんぞ――」


凜「ダメですよ~、無茶しちゃあ。

  梅華様を悲しませてはいけませんよぉ」


儀「あ……それは……」


凜「もうアオは強いんだから大丈夫よ~

  お幸せに~♪」


儀「あ……はい……」


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