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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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伽虞禰7-老中屋敷の蔵

 伽虞禰の怪しい人達は、老中・黒槎柯(クロサカ)

代官・小金以(コガネイ)、豪華な籠の女、

それと、地下礼拝堂の教祖。

この四人のようですね。


♯♯ 伽虞禰城 ♯♯


 侍に連れられ城に入った慎玄と桜華は、城内に漂う闇の気を浄化しながら進んだ。


嫡男の寝所に通され、桜華が掌を翳す。

「間違いなく炎鉱石です」

人には聞こえぬよう話した。


慎玄は頷き、

「他にも熱の高い方が居られますな」

いかにも高僧らしく話した。


「は、はっ」


「この部屋に、お運びくだされ」


「許しを得て参りますので、お待ち下さい」


御付きの侍が出ようとした時、初老で威厳のある男が入って来た。


黒槎柯(クロサカ)様っ、如何なさいましたかっ」

御付きの者達が控え、平伏する。


慎玄と桜華も頭を下げた。


「高僧様に、若様の病をお治し頂きたく、お願いに参りました」


言葉は丁寧だが傲岸不遜で、治せるものなら治してみよと言わんばかりであった。


「ご丁寧に、ありがとうございます。

拙僧共にお任せください」合掌。


黒槎柯がフフンと笑った気がした。


偉そうな一団が去り、

「あの老中は、影ではないけれど……

人に魔王の因子を加えると、ああなるのかしら?

初めて感じた気だわ」桜華が呟いた。


二人で嫡男に纏わり付く闇を浄化し、体内の炎鉱石を凍鉱石で中和すると、熱は嘘のように下がった。


「この毒を仕掛けた者を炙り出しますので、今暫し、熱のある振りをお続け下さいませ」

桜華が耳打ちすると、嫡男は小さく頷いた。


次男、三男が運び込まれた。

「やはり、三男殿も……」


二人の熱も下げ、嫡男と同じく病の振りを続けて貰った。


慎玄は読経を続け、桜華は城内の浄化をすると言って、侍達に案内させ、出て行った。




♯♯ 伽虞禰 代官屋敷 ♯♯


 代官・小金以(コガネイ)の屋敷を見張っていた弥生と皐月は、慌てて駆け込んで来た侍から、身を隠した。


屋敷内が(ざわ)めき、慌ただしく人が行き交う足音がする。


裏門から荷車が三台、飛ぶように走り去った。

弥生がそれを追った。




♯♯ 伽虞禰 老中屋敷 ♯♯


 黒槎柯の屋敷も同様に騒めいており、黒塗りの艶やかな籠が急いで入って行った。


「焦臭い事、甚だしいですね」


「クロ様と姫様は馬車のようね」

珊瑚が跳び、向かった。


紫苑は姿を消し、屋敷に入った。


「炎鉱石は運び出せるようになっておるか!」


質問と言うよりは、叱責に近い声が聞こえた。


 籠の前に来た早馬で知らせたのは

 屋敷の主であったのか……


 それにしても、この老中、闇が濃いですね。

 濃いと言うよりは同化しているのでしょうか?


 さて、炎鉱石を何処に運ぶのでしょう……


蔵には、炎鉱石を詰める専用の箱が、次々と運び込まれていた。


しかし、出て行く気配が無い。


 これは……もしや!


クロ、姫、珊瑚が現れた。


「クロ殿、炎鉱石が運び出されるようです。

もしかしたら、魔界へと運ばれているのではないでしょうか?」


「そぅやもしれぬ……火の気が減っておる!」


「姫様っ」人影が駆け寄る。


「弥生、如何した!?」


「代官屋敷より荷車が到着致します」

弥生が指す先から、荷車が裏門へと駆け込んだ。


「荷は炎鉱石じゃな」


「あれだけの大きな力、魔王に渡すワケにはいかねぇ! 行くぞ!」


「弥生は、ここを見張れ!」「はい!」


四人は蔵に向かった。




♯♯ 地下魔界 ♯♯


(魔王いるね)


最後の大拠点に入った天竜の四人は、頷き合い、奥へと飛んだ。


(この向こう、物凄い熱気だな)


(増えていってねぇか?)


(コレぜ~んぶ使う気なのかなぁ)


(まだそんなに必要なんだろうか……)


(とりあえず入る?)サクラが壁を指す。


兄達が頷いた。


サクラが穿った穴の向こうは、大量の炎鉱石で灼熱になり、空気が揺らいでいた。


(集縮、炎鉱石は大丈夫かい?)


【勿論で御座います、我等が王】


(全部、頼むね)


【畏まりまして御座います】


次々と集縮の大壺が現れ、炎鉱石を吸い込み始めた。


山が低くなり、向こうの壁に闇の穴が開いているのが見えた。

その穴から、箱が運び込まれている。


箱は宙で開き、炎鉱石を撒いては、穴の向こうに戻されているようだ。


(穴の近くに魔物がいるよ)


(こっち側の炎鉱石が減ってるのに、気付かねぇのかよ)


(魔王が回収している、とでも思っているのではないか?)


(そぉかもね~)


(集縮、回収を加速出来るかい?)


【勿論で御座います】壺が増えた。


(壺だらけだ♪

これは、どっちがやってんだ?)


(アオ兄だよ~♪ そろそろ気づいちゃうよ)


(んじゃ、行くか♪)


熱気が減ってきたので、アオを残し、三人は魔物に向かって飛んだ。




♯♯ 伽虞禰 老中屋敷 ♯♯


 蔵に向かった四人は――


蔵の中で、汗だくで炎鉱石を箱に詰め、奥へと運んでいる男達を、姿を消した紫苑と珊瑚が放り出し、


姫を乗せた黒輝の竜(クロ)が入ると、外に出て扉を閉め、その前で姿を現した。


「狐だっ!」「化け物ぉ!」


「慣れはしましたけど」

「やはり傷付きますね」


「喋ったぁ!」「お助けを~」


人足達は腰を抜かし、震えながら拝み、

侍達は必死の形相で剣を構え、カクカクと定まらぬ切先を二人に向けていた。


白妖狐達(紫苑と珊瑚)は、やれやれと肩を竦め、ため息をつき、顔を見合せた後、御札を放った。


御札が貼り付いた人々が固まった。


「皆様には、闇の気が付いてしまっております」

「浄化しますから、おとなしくしていてくださいね」




 一方、蔵の中では――


姫が、フジから貰った凍鉱石の粉を撒いて道を作り、黒竜(クロ)は奥へと進んでいた。


(あれは闇の穴だな)


(つまり、魔物が()るのじゃな)


「早く次を運ばぬか!」

奥から、怒りと焦りの露な声が飛んで来た。


(屋敷の(あるじ)じゃねぇのか?

熱いのに頑張ってるんだな)


(あの者が闇の穴を穿っておるのじゃな)


(って事は、魔物だな)


(ならば――)水筒銃を取り出す。


炎鉱石の山に隠れつつ、そっと近付き――


聖輝煌水を浴びせた!


黒槎柯が悶絶し、闇黒色に変わった。


黒槎柯は直ぐに気付き、立ち上がろうとした。


しかし、その時――


姫が抱えている特大の水筒銃から放たれた聖輝煌水の洪水が達し、

それと同時に、

浄化の光が、闇の穴の向こうから闇黒色の黒槎柯を包んだ。


闇黒色の被膜が剥がれるように、黒槎柯が再び色を取り戻した。


「姫~♪ クロ兄~♪」

闇の穴から綺桜の竜(サクラ)が顔を出し、手を出して振った。


瑠璃の竜(アオ)が穴をくぐって現れ、

小壺を出し「凍鉱石を集めて」、

大壺を出し「炎鉱石を集めて」と指示した。


そして、炎鉱石が無くなった空間に、金華の竜(キン)白銀の竜(ハク)が壺を並べ始めた。


「クロ! 見てねぇで手伝えよ!」


言われて、慌てて穴をくぐろうとすると、


「姫は通っちゃダメ~」

穴を保っていた桜竜(サクラ)に、姫を離された。



 青竜(アオ)は壺をあちこちに置いた後、黒槎柯の浄化を始めた。


「悪い夢を見ていたようだ……」と呟いた後、


「いかん! 若様の御命がっ!」

黒槎柯は叫んで、立ち上がろうとした。

しかし、足に力が入らず、ペタンと座り込んだ。


「大丈夫じゃ。

あの僧侶も、尼僧も、ワラワの仲間じゃ」


姫が黒槎柯の前に仁王立ちし、微笑んだ。



 白狐(紫苑)が、小金以を咥えて入って来た。


青竜(アオ)の傍に降ろすと、

「浄化、お願い致します」外に出た。


青竜(アオ)を挟んで座り込む二人に浄化の光を当てていると――


「口封じされる前に、狐に捕まって良かったのぅ」わははははっ♪


姫は、今度は小金以の前に仁王立ちしていた。


振り返り「そぅなのじゃろ?」にやり


「申し訳ございません」黒槎柯、平伏。


「しかし、やったのは、全て魔王じゃ。

老中殿も代官殿も操られておっただけじゃ。

殿にも若君にも、しかと、そぅ申しておく。

ただし、再び私利私欲に走らば、次は容赦せぬぞ!」


「ははぁ~っ!!」

黒槎柯と小金以、平伏しっぱなし。





凜「竜体の時って、どうやって話してるの?」


桜「フツーに話してるよ」竜体になる。


凜「いやいや、竜にとっては普通だろうけど、

  人には謎だよ」


桜「どゆイミ?」


凜「ほら! それよ、それ!

  口、ほとんど動いてないでしょ?

  隙間くらいしか開いてないし。

  そもそも大きくなってるのに

  声が低くなるとか、何もないし~」


桜「言われてみれば~」きゃははっ♪


青「人の常識からは、かなり外れているの

  かもしれないね。

  竜体だと、喉の声帯を使ってはいなくて、

  鼻の奥、眉間の辺りに有る『人声帯』を

  使っているんだよ」


凜「声帯が二つ有るの!?」


青「正確には、人が考える『声帯』は

  喉のものだけなんだけどね、

  近い働きをする小さな器官が有るんだよ」


凜「じゃあ、喉の声帯は?」


 サクラが咆哮を上げた。


凜「うわっ!? 急に何よっ!!」


桜「喉の使った~♪」


凜「鳴き声になるんだ……」


桜「竜らしいでしょ?」


凜「うん……竜だったんだ……」


桜「目の前にいるの何だと思ってたの?」


凜「竜……だね」


青「だから、口は動かさなくても、

  もっと言うと、開けていなくても

  話せるんだよ」

桜「開けてないと、鼻から声出る~♪」


凜「へ? じゃあ、竜体の時は

  「」じゃなくて【】?」


青「なんか、紛らわしいから、

  あまり深く考えないでよ。

  俺達が話すんだから「」でいいよ」

桜「竜宝とか神様とか増えるんでしょ?」


凜「確かに、そうだね……」


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