伽虞禰6-ルリの天性
前回まで:ルリの天性が開き、
フジは伽虞禰鎮圧に加わりました。
ルリはアオの内では『副』の存在なので、
身体を伴わず、自由に動けます。
♯♯ 地下魔界 ♯♯
アオは下の階を奥に向かって進んでいた。
(アオ、近くから、アオに似た気を感じるのだが……いや、これは……
似た、と言うよりアオそのものなのか?)
(うん、そうだね……不思議な感じだよ)
(これがアオの『因子』というヤツなのか?)
(そうかもしれないね。回収しよう)
(そうだな)
話しているうちに、アオらしき気を感じる部屋の前に着いた。
(試してみるか……
ルリの天性を使うけど、ルリは無理しないようにね)
(解った。開くから存分に使え)
(ありがとう)
ルリが気を高め、天性を開いた。
融合したアオが、それを引き出しながら光明を発動し、循環させて強め、光の穴を穿った。
(出来たね。ルリの天性は大きいね)
(褒めるな。くすぐったい)
(正直に言ってるだけだよ♪)
穴の向こうを探る。
(気を抜くなよ)
(解ってる♪ 誰も居ないね……)入る。
(たった今まで誰かが居たようだな)
(そうだね……強い闇が残ってるね。
この強さ……
ここに魔王が居たのかもしれない)
(アオと同じ気は、あの玉だな)
光が落ちている。
警戒しつつ近寄ると――
水晶玉のような透明な塊の中に、青い小さな光が瞬いていた。
纏っている闇を浄化し、手袋を着け、拾った。
(確かに『アオ』だな……)
(本当に取り出せるんだね……)
部屋を見回す。
(この鏡……竜宝ではないが、強い気を感じる……魔宝なのかな?
リジュンさんから、魔宝の知識も貰わないといけないね)
(魔宝とは? 竜宝と、どう違うのだ?)
(元々は同じだよ。
神や神竜の創造物なんだけど、境界で行来が阻害されて以降、魔界独自で発展した物を『魔宝』と呼ぶようになったんだ。
それと、歴代の魔王が生み出した物も、魔界産だから『魔宝』と呼ぶようになったんだよ)
(では、竜にとって、害を成す物ばかりではないのだな?)
(そうだね。
でも、これが、どちらなのかは判らないから、とりあえず浄化の光で包んでおくよ)
他には寝台があるだけのガランとした部屋の壁や天井、床を調べたが、取り立てて異常は見つからなかった。
(魔王は何を持って行ったんだろう……)
(魔王を見つけた時に判るさ)フッ
(そうだね)クスッ
(この奥には、また炎鉱石があるようだな)
(うん。また山積みしてそうだね)
と、奥に通じる扉を見た時、その扉が開き、影が現れた。
(来てくれたね)(手間が省けたな)
「そこで何を――」
言い終わる前に、二人で浄化の光を放った。
ルリがサッと後ろを向き、半円状に光を放つ。
背後に迫っていた魔物達が消え失せた。
サクラがキンを連れて現れた。
(アオ兄、この鏡の向こう、行ってみる?)
少し遅れて、ハクが神竜を連れて飛んで来た。
(キン兄、ハク兄、この鏡を通って魔王が逃げたんだ。たぶんね)
言いながらサクラは手袋を着け、鏡面に掌を当てた。
アオも同様に掌を当てた。
(これは……闇を持たない者は通れないんだね?)
アオはサクラにだけ言った。
(そぉみたいだね)サクラもアオだけに言った。
(でも、この向こうからは大きな気を感じない)
(うん……もっと遠くに行ったのかなぁ?)
アオとサクラは両掌を鏡に突き、目を閉じた。
神眼で鏡の向こうを確かめる。
遠くに……遠くに……
(行ってみよう)(うん)二人は鏡をくぐった。
――ガランとした部屋に出た。
(やっぱり、誰も居ないね)神眼で周囲を窺う。
(ここ、拠点だよねぇ?)
目を閉じ、地図と照合する。
(変だな……配下の魔物すら居ない)
(次に落とそうとしてた大拠点だよ~)
(影も居ない)
(そぉだね……)(ってことは――)
(ここを俺達の棺にしようとしているね)
二人、揃って言って微笑み、気を引き締めると、神眼で魔宝や結界の有無を探った。
(光を拒絶している結界が有るね)
(この真下に魔宝があるよ♪)
(この鏡は一方通行なんだね)
(想定内でしょ?)(もちろんサクラもだろ?)
(落ち着いているが、どうするのだ?)
(襲っても来ないだろうから、着実に駒を進めるだけさ)
(誰も来ないだろ~けど、ワナだらけかも~)
(もちろん、そうだろうね)
(竜宝達、下にいる魔宝は、だぁれ?)
【闇の力を吸う壺、勝輝の壺で御座います】
(つまり、闇障を使うと、消耗するだけなんだね?)
【はい、その通りで御座います】
(光と闇を封じたら、無力だと思われているね)
(俺は、そぉかも)きゃははっ♪
(なんて、思ってもいないだろ?)
(もっちろ~ん♪)
(なら、外に出ようか。
まずは光を使えるようにしないとね)
(魔王いないしね~)
二人は外に出、結界を探った。
アオが蒼牙を構え、気を込めた。
(ルリ、亀裂が入ったら、炎で破壊してね)
(解った)
蒼牙を天に向かって突き上げると、細く鋭い水流が放たれ、結界の天頂を打ち続けた。
結界が清められているかのように煌めき始め、その蒼き光は、天頂から下へと拡がり、結界全体が煌めきに覆われると、天頂から放射状に亀裂が走った。
蒼牙から放出している水流に、青い炎が絡み、勢いを増して天頂を激しく突いた。
アオとルリが、水と炎を雷に変えた。
青く鋭い雷は結界を貫き、天頂部が弾け散った。
結界は天頂の穴と亀裂から、青く煌めきながら消えていった。
(さっすが~♪ キレイだね~♪)
(サクラ、供与、ありがとう)アオとルリ。
(バレてた~♪)(当然だろ)三人、笑う。
(じゃ、壺を浄化しようか)(うんっ♪)
壺の側に曲空し、浄化の光を浴びせる。
(闇を吸うのなら貰って行こう)
(これで包む~♪
手袋と同じ素材の風呂敷♪)
二人掛りで包み終えた時、
(やっと追い付いたぞ)ハクが入って来た。
(心配しても仕方ないだろうと思ったので、周辺の中小拠点を占拠しておいた)
キンも。
(ありがとうございます!)弟達。
(話し掛けても返事が無かったのは、さっき消えた結界のせいなのか?)
(そぉだよ~、なんにも聞こえなかったもん)
(その大きな包みは何だ? 壺のようだが)
(勝輝の壺という闇を吸い込む魔宝です)
(俺達、光と闇を封じられちゃってたんだ)
(別に平気だろ? 魔王がいねぇのならなっ)
(うん♪ 魔王いても、闇使えなければ怖くないかも~)
(その魔王は、最後の大拠点ってこったなっ。
顔を拝みに行こうぜ)
アカが来た。
(新たな結界で、最後の拠点を囲む)
(ここを浄化したら移動するよ)
(うむ)
四人で浄化を始めた。
アカは外に出、残る大拠点を囲む、闇を通さない強固な結界を張る為、術を唱え始めた。
(大師匠様、御力、お借り致します)
四人の気が、背後の大拠点から移動した事を確かめ、アカは堅固を発動した。
【赤虎、この拠点の炎鉱石を、後ろの拠点に運んだならば、ここで待機じゃ】
(はい、大師匠様)
四人は、最後の大拠点から少し離れた場所に出た。
アオとサクラは、勝輝の壺に両掌を当て、話し掛けた。
(勝輝、聞こえる? お願い。返事してよ)
【貴殿方は、竜宝の王なのですね】
竜宝達も話し掛けているらしい。
(返事してくれて、ありがと♪
キミは魔宝? どぉしたら発動するの?)
【私は、魔王に対抗する為に作られた魔宝。
しかし、悪しき闇に閉ざされておりました。
浄化して頂き、ありがとうございます。
長く意識を封じられ、闇を蓄える為に使われておりましたが、
今こそ本領発揮する時!
私の力、御存分に御使いください】
勝輝から術が流れて来た。
アオとサクラが頷き合う。
(本当に行くのだな?)(無茶はナシだぞ)
今度は兄達に頷き、二人で穴を開いた。
『二つの闇障の間で輝く光』
神の予言が示す三人が揃ったという事なの
でしょうか?
青「ルリには、他にも天性が有るんだよ。
属性も隠れているけど、その属性は、
今は開かない方がいいから教えないよ」
凜「って、ルリさん、聞いてるんじゃないの?」
青「今は眠ってもらっているよ。
休める時には休んでもらわないとね。
天性を開くのは、大きな力を要するんだ。
しかも闇障だから、消耗し過ぎたんだよ」
凜「あ、補助的に竜宝を、とか言ってたよね?」
青「闇障鐸なら、もう取り込んでいるよ。
あれは天性を得る為よりも、
闇障強化の為の竜宝みたいだね」
凜「アオって、やっぱり凄いわ……」
青「ルリの為なら、何でもしたいんだ。
失った分より遥かに、二人で得ていく
つもりだよ」
凜「ルリさん、幸せね~」
青「俺の方が幸せにしてもらっているからね」
凜「あーっ! もおっ! ご馳走さまっ!」




