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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
237/429

伽虞禰5-熱病

 地下魔界を進行している竜達は、境界通過と

本気で攻撃する為に、竜体で行動しています。

心での会話は、直接話せない兄達の会話を、

サクラが声と話し方を真似て中継しています。


♯♯ 馬車 ♯♯


「しかし……この薬は、興奮作用が出てからでなければ効かないようです」


「なら、準備して待つしかないよな」


「ところで、こちらの方は?」


伽虞禰(カグネ)の城主様じゃ」


「然様じゃ……が、そなた……どこぞで……」


「中の国の静香姫様で御座います」爽蛇、礼。


「然様か! おお、そうじゃ、静香殿じゃな。

して、何故、我が国になど?」


「ハザマの森に向こぅておっただけじゃ」


「あの人拐いの森にと!?」


「これから魔界に向かうのじゃ。

ハザマの森は、ただの通り道じゃ」


「魔界……とな……」


「殿の城にも、魔物の匂いがプンプンしておったぞ。

最近、妙な事は起こっておらぬのか?」


「……あの病も……なのかのぅ……」


「お心当たりが御有りか? 何でも構わぬぞ」


「嫡男が病にかかり、高熱が続いておるのじゃ。

次男が儂の補佐を頑張ってくれておったのじゃが、昨日とうとう熱を出してのぅ。

同じ病やも知れぬのじゃ」


「フジ、炎鉱石の粉って、凍えた時なんかに、ほんのちょっと飲むヤツじゃねぇのか?」


「はい。低体温などの薬として用います。

ですから、健康な方が摂取しますと、高熱が続き、人界の薬では下げる事が出来ないと思います。

ですが、発熱要因など沢山ありますが……

炎鉱石が、どうかしたのですか?」


「桜華様が、炎鉱石を集めてるヤツがいるって言ってたんだよ」


「しかし、この為ではなかろ?

あの量じゃと、人が皆、熱で死んでしまうわ」


「確かに、あれだけの力を発してたのが、全部 炎鉱石なら、人を皆殺しにする量だな……」


「殿には、男子(おのこ)は何人おるのじゃ?」


「四人じゃが」


「三男殿と四男殿は如何しておるのじゃ?」


「三男は城に()る筈じゃが……

四男は乳呑子故、熱が移ったら大事(おおごと)と、城下の西外れの屋敷に、母親や乳母らと共に移ったそうじゃ」


桜華達が戻った。


「桜華様、あの豪華な籠は、城下の西外れの屋敷に入りましたかの?」


「姫様、よく御存知ですのね」にこっ


「おそらく今頃は、三男殿も熱を出されておるじゃろぅよ」


「なんで、そんな事が言えるんだ?」


「クロ達には無縁の話じゃ。

人とは欲深きものなのじゃ。

こちらもまた東の国と同じ、私利私欲じゃよ」


「わかったんなら、すぐ動くのか?」


「夕刻まで待つしかなかろ?

しかとシッポを掴まねば、成敗出来ぬわ」


姫と桜華は紙を広げ、城下の地図を描き始めた。


「皐月、水無月、二人ずつに分かれて、この屋敷と、この屋敷も見張るのじゃ」


「はい、姫様」二人は走り去った。


「紫苑、珊瑚、屋敷の図面を描いたら、この屋敷を見張ってね」


二人は頷き、描き始めた。



 魔界組が曲空して現れ、アオとサクラは、キンとハクを残して消えた。


「様子を見に来たのだが――」

「フジ! 無理すんなって言ったろ!?」


「ハク殿、ムリはさせぬ。しかし必要なのじゃ。

許してはくれぬか?」


「しゃーねぇなぁ。おとなしくしてろよ」

光を当てる。


「それで、こちらは、どうなのだ?」


「フジが()れば、暴動は阻止できまする。

大丈夫じゃ♪」


慎玄が戻った。

「城に祈祷の為、呼ばれましたので、着替えて、行って参ります」


「殿の御子様方の病で、じゃな?」


「はい。町衆を治しておりましたら、お侍様より、お声が掛かりました」


「では、御子様方を護りましょう。

慎玄様、この袈裟を。私が織りましたの」

桜華は瀟洒な袈裟を出し、微笑んだ。


紫苑と珊瑚は屋敷の図面を姫に渡し、出て行った。


「兄貴、ここは任せて、地下魔界に戻ろうぜ」


「夜になれば、怪我人など出るやもしれませぬ。

その頃に、お願い出来ますや?」


「うむ、解った」

「何かあったら千里眼で呼べよ」


アオとサクラが、アカを連れて現れた。

キンとハクが掴むと、五人は消えた。


着替え終わり、高僧と尼僧に扮した二人が、

「お殿様、御子様方は必ずお護り致します」

と声を掛け、城に向かった。



「おそらく、私利私欲の権化達は、今宵は屋敷から動かぬ気じゃろぅよ。

我等は無関係とばかりにのぅ。

城からの知らせで、慌てて登城。

そのよぅなフリをする筈じゃ」


「静香殿、何が起ころうとしておるのじゃ?

儂にも説明してくれぬかのぅ」


「オレにも説明しろよなっ」


フジは苦笑いし、姫は ため息をついて、

「仕方ないのぅ……」説明を始めた。




♯♯ 地下魔界 ♯♯


 地下魔界に曲空した兄弟は、ワン将軍から貰った地図を広げ――


(今、ここだよ~)


(占拠した拠点に色を着けます)


(これから、こっちに進むんだよ)


キンが、占拠済みの拠点と未だの拠点を分ける線を、地図の中程に引いた。

(アカ、この線上に結界を頼む。

闇を通さないものにしておいて欲しい)

サクラが中継する。


(アカ兄、俺は他の道で戻るから遠慮しないでね。

進んだら連絡するから、結界も動かしてね)


(解った)



 四人は結界の拡張を手伝った後、進んで行った。


(マオさんの追加で、大拠点は七つ。

そのうち四つ占拠しちゃったから、そろそろ魔王に当たるかもね~)


(そうだね。気を引き締めよう)


皆 頷き、キンとサクラ、ハクとアオの二手に分かれた。




 二組は中小拠点を落として進み、五つ目の大拠点に集まった。


サクラが目を閉じる。


待っていると――


(アオ、これか? 見てくれ)


(うん。当たりだよ。流石、ルリだね。

開いたけど、まだ無理に使わないようにね。

融合して、俺が伸ばすからね)


(解った。世話になる)


(これから大拠点だから、ルリも攻撃に加わって――あ、探して疲れてなければだけど、大丈夫かい?)


(勿論、大丈夫だ)


(なら、後ろを頼むよ)


(任せよ)



(ハク兄さん、ルリが加わるので、サクラに付いて行ってください)


(天性、もう見つかったのか!?)


(はい)にっこり


(なら、任せた。ルリさん、アオを頼む)


(お任せください、ハク様)


(見えたっ!)サクラが穴を開いた。


四人、サッと入り、飛んで進む。


(ここにも魔王いないね~

最初の大拠点と同じ造りだからね。

また左の通路から下に行けるよ)


(影は、下に……ひとり、正面に二人だね)


(うん。だから、正面には三人で行くよっ)


(解った)(おうっ)(では、下に行きます)


アオが左の通路へと離れた。



(影は同じ部屋にはいないね~)


(ひとり目は近いな)


(すぐ後ろに開けるからっ♪)

サクラが穴を穿った。


ハクが羽交い締めにし、穴から引き出した。

声を上げる隙も与えず、サクラが浄化する。


状況が呑み込めないでいる神竜をハクに預け、キンとサクラは奥の部屋に向かった。




♯♯ 馬車 ♯♯


「ふむ、解り申した。

して、先程の尼僧殿は、真の尼僧なのかの?」


「いや、装束だけじゃが……

ご不安召されるな。治療は得意じゃからの」


「不安など有りはせぬ。

あの女人が出家しておらぬのならば、それで良いのじゃ」にこにこ♪


「出家など、してはおらぬが……」


「して、名は何と?」にこにこにこ♪♪


「桜華様じゃが……」


「桜華殿と。うんうん♪

姿だけでのぅて、名まで美しいのじゃのぅ♪」

にこにこにこにこ♪♪♪


「殿……もしや……」




♯♯ 地下魔界 ♯♯


「アカ様、これは……結界で御座いますか?」


「コギ殿か……闇を通さぬ、光の結界だ。

案ずるな。進行に合わせ、移動する」


「案じてなどおりませぬ。

ただただ素晴らしい御力に感服致しておりましたので御座います」


「向こうに行きたいのか?」


「……いえ……」


「妖狐王様より、アオを護るよう遣わされているのだろう?」


「お見通しで御座いますか……」


「常に世話になっていると兄から聞いた。

通るならば開ける」


「お願い致します」


アカは結界に隙間を作ったが、拡張を止めてコギの方を向いた。


「これまで御護り頂いた事、心より感謝致しております。

アオは既に大きな力を得ています。

もう護られるべき者ではありません。

ご自身の御命を最優先すると、御約束頂きますよう、お願い致します」

深く頭を下げ、拡張を再開した。


「御心遣い、有り難く存じます」

コギは、もっと深く頭を下げ、結界の穴を通り抜けた。





黒「伽虞禰(カグネ)は殿なんだな?」


姫「今更、何じゃ?」


黒「いや、仁佳(ニカ)も東も帝だっただろ?

  だから確かめたんだ」


姫「伊牟呂(イムロ)魯茉丹(ロマニ)も殿じゃぞ」


黒「そうなのか~。涅魁(ネカイ)は?」


姫「帝じゃ」


黒「ふぅん。で、どう違うんだ?」


姫「大した差は無い。

  武家か貴族か、その程度じゃ」


黒「そういや、西の国は?」


姫「領主を民が選ぶのじゃ。

  彼の国は、ずっと昔に魔物に滅ぼされ、

  砂の地になってしもぅたのじゃ。

  それを商人達が栄えさせたのが、

  今の西の国なのじゃ」


黒「へえぇ~。人って、やっぱ強ぇなっ♪」


姫「そぅじゃろ♪」


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