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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
235/429

伽虞禰3-炎鉱石

 一方、馬車の皆は――


♯♯人界 ♯♯


 馬車は伽虞禰(カグネ)城下の直ぐ南の村に到着した。


「既に闇の気が漂ってる。

城下は、かなり染まってるぞ」


「クロ、よく分かるのじゃな」


「染まりかけたからな。分かるようになった」


「いつ、そんな事があったのじゃ?」


「あ……いや……」


「姫様が天界にいらっしゃった間ではございませんか?」

ひっぱたいた人が微笑む。


「さよぅか……そぅじゃろぅのぅ。

ワラワが寝ておった間も、クロは戦ぅておったのじゃなぁ」

しみじみ~と頷く。


「気にすんなって。

ほら、話 聞きに行くぞ」すたすた。


「あっ! 待たれよっ!」


「ほら」振り向かず、手だけ差し出す。


姫が駆け寄り、おずおずと手を取り、歩きだした。


「更に仲良くなられましたな」

慎玄は、そう言って微笑み、托鉢に出た。


「紫苑、珊瑚、鉱山地帯に向かいましょう。

爽蛇殿、馬車をお願い致します。

皐月殿、連絡は爽蛇殿にお願い致します」

妖狐達は東へ向かって跳んで行った。




♯♯ 伽虞禰 城下 ♯♯


 クロと姫が城下に入った時、千里眼が着信を告げた。


「志乃か。如何した?」


「静香姫様、ご機嫌麗しゅう御座います。

黒之介様もご一緒で御座いましょうか?」


()るぞ」クロに千里眼を渡す。


「志乃さん、どうしたんだ?」


「天界より、出版社の方がお見えになっておりまして、天界でも、()の本を出版したいと申しておるので御座います。

如何致しましょう?」


(姫、聞こえたよな? どうする?)


(天界の事はクロに任せるぞ)


「兄弟とリリスさんに相談するから、連絡先を聞いといてくれ」


「畏まりまして御座います」切れた。


「しかし……何故に、あの本の事を知っておるのじゃ?」


「そうだよな……

こっちに来た誰かが見たのかなぁ?」


「さもありなんじゃな」




♯♯ 伽虞禰 東部 ♯♯


 鉱山地帯に入った妖狐達は、魯茉丹(ロマニ)から国境を越えようとしている山賊達を見つけた。


「荷車に積んであるのは炎鉱石(エンコウセキ)のようですね」


伽虞禰(カグネ)には元々少なく、魯茉丹の火神子(ヒミコ)山には豊富ですからね」


「では、火の神の使いにでもなりましょうか」




 妖狐達は、山賊達の前に降り立った。

「その石、如何致すおつもりじゃ?」


「き、き、狐が喋ったーーっ!」

手下達は散り散りに逃げ去った。


「お主が(かしら)か? 我が問いに答えよ」


「おめぇら、何様なんだよ!

消え失せやがれっ!!」


「我等は火の神の使い。

祟りを畏れぬと申すなら、向こうて来るがよい!」


「ヤれっ!!」


……しーん……


頭が振り返ると、そこには誰もいなかった。


「クソッ! ぅおおおりゃあっ!!」


「ほぅ……逃げぬか」フフッ……


頭は見えない何かに弾き飛ばされた。


紫苑が念網で受け止める。


手下達も紫苑と珊瑚が念網で包んでいた。


「さて、お話し頂こうか」


頭がフンッと、そっぽを向いた。


「そうか。口が利けぬか。ならば――」

桜華が極弱で髭を炙った。


「熱っ!! やめっ!! 助けてぇっ!!

話すっ!! 何っでも話しますからっ!!

消してくれぇぇぇーっっ!!」


紫苑が水を浴びせた。


「何故、炎鉱石を?」


「高く売れるからに決まってらぃ!」


桜華が鋭く睨む。


「い、いや、その……

お代官様が集めてなさるんだよ」


「何故に?」


「知らねぇよ。本当だ!

何も知らされてねぇんだよぉ。

ただ、根刮ぎ集めろって言われただけで……」


「ほぅ……それで、お主は改心するのか?」


「はぁ?」


「山賊から足を洗うのか?」


「いや、しかし、真っ当な仕事なんぞ就ける筈もねぇ。……です」


「鉱山で働けばよい。

これ程も()って来られるのだ。

十分、働けるであろうよ」


「いや、それは……()って来ただけで――」


「知っておる。

だが、我が、それを認めれば、仕置きせねばならぬ」


「仕置き……?」


「火神子山の火口など如何か?

少しずつ、少しずつ、炙って差し上げようぞ」


紫苑と珊瑚が念網を引き上げた。


「わ、わ、わ、わ、わかりやしたっ!!

改心いたしやしたっ!!

もーーっ! すっかり真っ当!

真人間でさぁっ!!

採掘人足にさせてくださいやしっ!!!」


「では参りましょう」

桜華は荷車に念網を掛け、引き上げた。



 母の後を追い、宙を跳びながら、紫苑と珊瑚は顔を見合わせた。

(母様って……凄みが……)


(まさに『火の神』でしたね)


(女頭領にもなれそうですよ)


(容赦なさそうですよね)


桜華が振り返った。

二人は慌てたが、降下を始めただけだった。



 三人は火神子山近くの鉱山に降り、人姿になった。

鉱山頭に人足希望者だと言って、元・山賊達を渡した。

荷車は山道で見つけた、とだけ言って渡した。


「火の神は、常に御覧になられております。

真面目に生きなされよ」にっこり


そして、三人は姿を消した。


「消えた……」鉱山頭が呆然と立ち尽くす。


「あの山の、火の神の使いだそうでさぁ」


元・山賊達は、火神子山に手を合わせ拝んだ。

鉱山頭も慌てて拝んだ。




「次は、代官殿にお仕置きねっ♪」


(母様、楽しそうですね)(そうですね)


「ねぇ、さっきから、何を楽しそうに話してるの?

二人だけでズルいわ」母が拗ねる。


「えっ、何もっ」「ええ、何もありませんよ」


「母としては認めて貰えなくても仕方ないわ。

でも……せめて仲間として認めて欲しいのよ」


「母様っ! そんなっ!」二人揃って慌てる。


「可愛いっ♪」あははははっ♪


二人は愉しげに弾む母を呆然と見ていたが、

「母様こそ可愛いですよ」

揃ってそう言い、母の両側に寄り添った。




♯♯ 伽虞禰 城下 ♯♯


「この屋敷じゃ。

ここから強い火の気を感じるのじゃ」


「そうだな。強い力と、闇の気を感じるぞ」


「さて、如何致そうかの。

忍び込むか、堂々と正面から入るか――」


「おい、正面からって……」


「ワラワは中の国の姫なるぞ。

何とでもなろぅ?

クロも少しは頭を使うがよい」


姫は考え始めたが、すぐにクロの方を向いた。

「クロは試練の山で、算術の問題を解いたのか?」


「あ? ……そーいや、あったかな……」


「しかと解けたのか?

合格したのじゃから、解けたのじゃろ?」


「ん~~……あ! 思い出したっ!

壁が迫って来たから適当に押したっ♪」


「はぁっ!? 全て適当に!?」


「ああ。だから、何 押しても開くんだと思って通ったよ♪」


「そんな筈、ある訳なかろぅよ……」

ちょっぴり――たぶん、ほんのちょっぴりだけ、中の国の将来に不安を感じる姫であった。


其処許等(そこもとら)、何を騒いでおる!」

屋敷の門から男が出て来た。


「我等は旅の者。

立派なお屋敷じゃと感心致しておったのじゃ。

こちらは何方様のお屋敷で御座るか?」


「此方は、老中・黒槎柯(クロサカ)様のお屋敷である!

分かったならば、早々に立ち去れ!」


小金以(コガネイ)、何を騒いでおるのじゃ?」

門の内から女性の声が聞こえた。


「大した事では御座いませぬ。

旅の者が、お屋敷を誉めておっただけに御座いまする」


然様(さよう)か。ならば参ろうぞ」

女性が乗っているらしい豪華な籠が出て来た。


もうひとつ籠が出で、門前に降ろされた。

「お代官様、此方に」若い男が開ける。


小金以が乗り込み、豪華な籠を追って行った。



♯♯♯



「母様、瘴気は、あの屋敷からですね」


「あら、姫様とクロ様」


「母様、あちらからは慎玄殿がいらしてますよ」


「集まりましたね」


「降りましょう」「はい」





凜「やっと捕まえた!」


孤「尾を離せ」


凜「質問にお答え頂けるなら♪」


孤「滅するぞ。もしくは元の世界に帰す」


凜「どちらも困ります!

  本当はお優しいの知ってますから~」


孤「フンッ」


凜「どうして、お孫様ではなく、

  アオの周りに、いつもいらっしゃる

  ので――消えちゃった……

  妖狐王様も、シルバコバルト様も

  アオが大好きなのね……」


始【違ーうっ!!】


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