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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
233/429

伽虞禰1-黒猫マオ

 お茶会が宴会になった翌朝です。

次に向かうのは、ハザマの森入口が在る

伽虞禰(カグネ)の国です。


(兄貴達みんな~♪ 朝だよ~っ!)

サクラの元気な声で兄達が起きた。


前夜は、そこそこ遅くまで、食べて話して楽しく過ごし――


各々が、婚約者を送って行くとバラけ――


結局いずれの二人も美しい星空を眺め――


そして兄弟は、夜中にアオの屋敷に押し掛け、泊まったのだった。



 クロと爽蛇が朝食を運んで来た。


「なんでアカまでアオの屋敷(ここ)に泊まったんだ?」


「理由など無い」


「見送りたかったんだよなっ」


「今後の話が有るかと思っただけだ」


「そういや次の矢は、いつ出来るんだ?」


「明後日だ」


「その次は?」


「材料が無い」


「あの大木 使っちまったのか!?」


「あの木からは、二本しか出来ない」


「じゃあ、もう一本 探さねぇと!」


「だいじょぶ~♪ 苗木 出来たから~♪

あとは壺以鞠(コイマリ)に育ててもらうからね。

それと壺美善(コビゼン)が再現できたら、魔界の矢が復元できるから心配しないで~」


「コ――なんとかって、竜宝なのか?」


「うん♪ 育成の壺と、修復の壺だよ。

それでね、キン兄にお願いがあるんだ」


「何だ?」


「壺美善、シトリンさんが再現してるんだけど、絵付けして欲しいんだって~

絵が、と~っても難しいらしいんだ」


「後で図案を見せて欲しい」


「うんっ♪」


「で、アオ、これからハザマの森に向かうんだよな?」


「そのつもりだよ。

出来るだけ早く地下魔界に行きたいんだ」


「まだ力不足じゃねぇのか?

神とも繋がってねぇし」


「地下魔界に入っても、まだまだ、魔王に辿り着くには道のりが遠いんだよ。

その間に、更に力を付け、神とも結べると思っているんだ。

進んで行けば曲空も出来るようになるし、敵の拠点も潰す事が出来るだろうしね。

それに……今、魔王は動けないでいるから、今のうちに進んでおきたいんだ」


「そういや静かだよな。

でもなんで、そんな事が分かるんだ?」


「この体に残っている『記憶』と言うか、『痕跡』と言うか……そんなものから感じるんだ。

それに、リジュンさんも神竜の魂も奪還したし、影も減ったからね」


姫が曲空して来た。

「クロ、ミズチ、船の時間じゃ。参ろぅぞ」


「あ、そうだな。んじゃ、馬車で会おう」

クロは、姫と爽蛇を掴んで消えた。


「姫様……曲空して来たよな……」


「昨日、試練の山で会得したらしいよ」


「たぶんね~、再生した時、不足分をクロ兄が補ったんだと思うよ~。無意識にね。

だから、クロ兄ができることは、ぜ~んぶできちゃうんだ。天性は別だけどね」


「クロってスゲーんだなっ♪

気付いてない所がクロらしいなっ」あははっ♪


「クロの良い所でもある」皆、頷く。


「サクラ、そろそろ行こうか」「うん♪」


「キン兄さんとハク兄さんは、これから城ですよね?」


「今度はマオの話を聞くんだっ」


「また流すから、一緒に聞いて欲しい」


「はい。ありがとうございます、キン兄さん。

アカ、色々頼んでしまったけど、宜しく。

フジ、あと少しだから、しっかり治すんだよ」


静かに聞いていたアカとフジが頷いた。


「それじゃ、いってきま~す」

アオとサクラは、手を振って消えた。




♯♯ 人界 岩戸地帯 ♯♯


 馬車は、風羅の岩戸に入れてあった。

そこでは皐月が待っていた。


「アオ様、サクラ様、お待ち致しておりました」


「どぉしたの? 皐月さん」


「はい。伽虞禰(カグネ)の国にて、不穏な動きがございます」


「これから進む所だね。

もうすぐ皆、揃うから、詳しく聞かせてください」




♯♯ 天竜王城 ♯♯


「執事長、今日はマオを借りるからな」


「はい。ギン王様の執務室に向かわせます」


キンとハクは、廊下で出会った執事長に声を掛けて、ギンの執務室に向かった。



 執務室で待っていると――


元・黒猫のマオが茶を運んで来た。

青みがかった銀灰色の毛並みを艶めかせ、風雅に茶を差し出す。


「本当は、そんな色だったんだなぁ」


「綺麗だろ。

サクラが戻した時には、俺も驚いたよ」


「マーさんが大喜びしてそうだなっ」


マオが一瞬 迷惑そうな表情を見せた。


「やっぱ、そうなのか?」


「いえ、そのような――」


ああ、そうなんだ、と三人は思った。


「マオ殿、お座り下さい。

魔王について話して頂けますか?」


「はい。キン王太子殿下、何也と」

恭しく一礼した。


「我々は龍神帝王を『魔王』と呼んでいる。

ここでは、それでいいな?」


「はい。国王陛下」


「魔王は何故、アオを執拗に狙うのだ?」


「アオ様の御体が、依代として最適であると聞きました。

その上、アオ様を闇に染めれば、サクラ様の御力も得られるので、最強の存在になれるとも。


サクラ様を狙わなかったのは、光と闇、両方をお持ちの為、捕らえても無駄であると。

境界を含め、全ての結界を通り抜ける事が可能ですので、お逃げになられると考えていたのではないでしょうか。


それと、アオ様の御心には、傷を付けているので、闇に染める事が出来るとも――

サクラ様は闇をお持ちですので、直に闇に染める事は困難であるとも聞きました」


「アオの心に傷を付けたと言ったのか!?」


「はい。確かに。

依代として最適と判明した時点で、影を使い、自らも出て付けておいた、と――

最も大切なものを奪ったので、その傷が消える事は無いと言っておりました。


私も、アオ様の御体の傷――『通路』と呼んでおりましたが、そこに潜んでおりました時、御心の奥に隠していらっしゃいました深い傷を確かめました。

そして、事ある毎に、その傷に触れさせ、闇を注ぎ、闇に染める手助けをしたのです」


「影にさせられてた神竜達は、魔王の因子を植え付けられたせいで、誇りをもって影をしていたと言ってたが、マオもそうなのか?」


「はい……そうです。

『因子』……確かに、そう呼ぶのが適していますね。

魔王に、それを移植されると、忠実な下僕となってしまいます。

疑う事も、抗う事も、思いも寄らない。

考えるに値しないと……そう信じて、行動してしまいます」


「アオの体には、その因子は植え付けられていないのか?」


「私が存じておりますのは、最初に移植しようとした時のみですが、その時は失敗しました。

原因までは存じませんが――

あの……

このような事を、想像だけで軽々しく申し上げるのは、誠に畏れ多いのですが――」


「言えよ」


「はい……では……

魔王は、自身だけでなく、他人の因子をも抽出する事が出来るかのような話をしておりましたので――」


「まさか、アオの因子を――」


「はい。可能性が有ると存じます。

勝手な想像では御座いますが」


「でも、アオの体は空っぽだったんだろ?」


「いや、天性と属性は切り離せないと、サクラが言っていた。

そうなると、魔王が光を手に入れてしまう」


「現在の依代に、アオ様の因子を付加すれば、限りなく最適に近くなると存じます。

その上、光を得られれば――

サクラ様と同じ、光と闇を持つ竜となり、全ての境界、結界を通り抜ける事が可能となります」


「いや、だが、サクラは闇を持っているから、上層神界には入れねぇと言ってたぞ」


「方法が御座いますので、神竜の魂を捕らえに行く事が出来たのです」


「それに、竜宝の国は、最奥の真神界に在る」


「入れるって事か……」


「現在の依代とは?」


「竜の血族である人で御座います。

その依代に、アオ様の因子を付加していたならば……

あと数日で定着し、発現すると存じます」


「それ待ちで静かなんだな?」


「――そう、私は懸念致しております」


「事を急がねばならんな」


「他に急を要しそうな情報は有るのか?」

「拠点など、新たな情報が有れば、この地図に記して欲しい」


「最も急を要しそうな事は、先程お話し致しました通りで御座います。

地図の方は、承りまして御座います」


「じゃ、また来るからなっ」キンを掴んで曲空。




「ギン王陛下、もうひとつ、気になる事が御座いますが――」


「二人を呼び戻すから、待っ――」

「いえ、申し訳御座いません。

ギン王陛下にのみ、お話し致したいので御座います」


「ふむ。では、聞こう」


「ひとつ……試させて頂いてもよろしいですか?」


「試す? いいだろう」


「ありがとうございます。では――」

マオはギンの額に掌を翳した。


マオの手が闇を纏う。


ギンの左上腕が光を帯びた。


「やはり……」


「何をしたのだ?」


「この闇は、ただの魔人の属性の闇で御座います。

ですので、何も害は御座いません。

ただ……

この闇ですら、陛下は反応してしまいました。

闇に反応する何かが、ギン王陛下の内に存在しているので御座います。

魔王の闇には、くれぐれもお気をつけください」


「魔王の闇で、俺は、どうなるのだ?」


「アオ様の『通路』に潜んでいた時の私は、魔王の闇を持っておりました。

その闇に呼応した陛下は、アオ様を闇に落とす手助けをなさってくださいました」


「どういう事だ!?」


「アオ様を疲弊させ、闇に染め易くしてくださったのです。

つまり、ご自身の意志であるかの如くの行動をなさっておられたのです」


「操られていた、と?」


「その通りで御座います」


「俺は……操られて、あのようにアオを女性にし続けていたというのか……」


「はい。操られている事すら気付かない、抗いようのない状態に陥ってしまうのです。

ですので、魔王の闇には近寄らぬよう、お気をつけください」


「ならば、あの時……祇竜の神殿に幽閉された時に、脱出しなかったのも――」


「ああ、マーに囚われた時でしょうか?

おそらく、同様で御座いましょう。

アオ様が間に合わなければ、王都のみならず天竜王国は壊滅。

アオ様は死罪となったでしょう」


「そんな……俺は……」


「魔人は闇に敏感で御座います。

救って頂きました、この命を賭して、陛下をお護り致します」


「……頼む……俺を、ではない。

アオを護ってくれ!」


「御意に」胸に手を当て、礼。





凜「アオ、サクラ、地下魔界に行くの?」


桜「行くよ~♪」

青「今が好機だからね」


凜「あのぉ……大陸編なんだけど……」


青「馬車の位置なんだよね?」

桜「馬車、まだ大陸だよ~」


凜「じゃあ、どこから魔界編に?」


桜「ハザマの森からで いんじゃない?」


凜「じゃ、そうするねっ」


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