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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
232/429

試練山9-挨拶回り

 前回まで:姫は試練の山を合格しました。


♯♯ 長老の山 ♯♯


(フジ兄、具合どぉ?)


(もう大丈夫ですよ。

サクラ 、毎日ありがとうございます)


(入っていい?)


(もちろんですよ)


「フジ兄、リリスさん、こんにちは♪

ラン、入って♪」


「サクラ様、いつもありがとうございます」


フジの腹部に手を翳す。

「もぉだいじょぶだね。

明日から少しずつ普通にね。

リリスさん、無茶しないように見ててね」


サクラはフジから離れ、虹藍と並んだ。

「魔竜王国の虹藍女王様。

俺達、婚約します」にこっ


「サクラが婚約ですか!?」


「うん。ランは、ひとりで頑張ってるから。

俺、とにかく支えたいんだ」


フジとリリスの驚きの表情が笑みに変わる。


「虹藍様、サクラをよろしくお願い致します」


「私の方が支えて頂くのですから……

フジ様、どうぞよろしくお願い致します」


「それじゃ、また診察しに来るからね~」

サクラと虹藍は、次に向かった。



――会議室。


「キン兄とボタンさん。ハク兄とミカンさん。

キン兄とハク兄は、王太子なんだ」


「サクラが護りたい方ってぇのは……?」


「そ♪ 魔竜王国の虹藍女王様♪

竜宝で城を繋いだから、挨拶回りしてるんだ」


「やるな~♪ 竜宝の王様っ♪」

「では、魔界と繋がったのか?」


「魔界と言っても地上界だから、魔王がいる地下界には、簡単には行けないんだ。

倒しに行くのは、ハザマの森からになるよ」


「ふぅん……地上にも魔界が在るのかぁ」


「虹藍様、今後は両国の交流を密とし、互いに発展し合えるよう尽力致しましょう」


「はい。ありがとうございます。

キン様、ハク様、今後共どうぞよろしくお願い致します」


「ボタンさん、ミカンさん。

ランもお茶に誘ってあげてね。

よろしくお願いします」


「いいの?♪」「この後のご予定は?」


「今日はもう公務も謁見もないよね?」


「ないわ♪」


「じゃ、これからアカ兄トコ行くから、ワカナさん連れて、いつもの中庭に行くねっ」


「準備して待ってるわね♪」二人、立ち上がる。


「え~っとね~

リリスさん、だいじょぶだよ。

姫は……ちょっと、声もかけらんない」あははっ


「クロは一緒に儀式するのか?」


「そのつもり~♪ やっと決心したよ♪

あと、アオ兄も母上がノリノリで準備してる~」


キン、絶句。ハク、爆笑。


「じゃ、アカ兄トコ行くから~」曲空。



――赤虎工房。


「アカ兄、ワカナさん、こんにちは♪」


「ん……」作業続行。


工房の奥からパタパタと足音が駆けて来た。

「あら♪ サクラ様、こんにちは♪」


「俺達も婚約します♪

魔竜王国の虹藍女王様です♪」


アカが手を止め、顔を上げた。

そして奥に向かった。


「サクラ様は婿入りなさるの?」


「うん♪ ランを支えたいんだ♪」


「遠くに行ってしまわれるのね……」


「ちゃんと竜宝で城を繋いだから、すぐそこだよ♪」


「もうひと組、補修出来たぞ」


「ありがと♪ アカ兄♪」


「それも双掌鏡?」虹藍が覗き込む。


「そ♪ 友達の家にあったのが割れたらしいんだ。

お世話になったから、あげようと思ってね」


アカが虹藍の前に立った。

「サクラを宜しくお願いします」深く礼。


そして作業に戻る。


「こちらこそ、よろしくお願い致します!」


アカは、サクラ達の方を向いて微笑むと、作業を再開した。


「アカ兄は、めったに声出さないし、表情も変えないんだ。

だから今、とーっても喜んでるんだ」


「よかったぁ……」


「ワカナさん、これからお茶するから一緒に行こ~♪」


「行ってこい」「ありがとう、アカ」



――中庭。


「お茶 淹れるね~♪」


「サクラ様、いつもありがとうございます」


「いいから~♪」


「だから手慣れてるのね♪」「えへへ~♪」


「サクラ様が淹れてくださると香りが違うの!」


お茶を並べて、

「俺、ソラちゃん() 行ってくるから、ランは楽しんでてねっ」

虹藍に鏡を示す。


「えっ!?」皆さん固まる。


「行ってきま~す♪」手を振って飛んだ。



――ソラの家の玄関。


「こんにちは」にこっ♪


「サクラ様!? あのっ、あっ、ソラ!

いるんでしょ!? ソラ!!」母、大慌て。


ソラが出て来た。

「慌てて、どうしたのよ~

あ、サクラくん、いらっしゃい」にこっ♪


ソラの母は、わたわたと引っ込んだ。


「鏡、これだと思うんだ。使ってね」


「え!? それ……高価なんじゃ……」


「まだあるし、作れるから、だいじょぶ~

どこに掛ける?」


「でも叔母さん家、行けないでしょ?」


「もうすぐ行けるようになるよ♪

俺、婚約するから♪

そしたらもう狙われないと思うんだ」


「婚約!? サクラくん、その歳で!?」

「サクラ様っ、玄関なんかで……こちらへ!

あ、あの、申し訳ございませんっ」母、戻る。


「お母さん、サクラ様、ご婚約だって♪」


「へっ!? ソラ……あなた……と?」


「何バカなコト言ってるのよ~

サクラくんは王子様なのよ。

私なワケないでしょ」あははっ♪


「そ……そうよね……」複雑な ため息。


「鏡を持って来てくれたの。

魔界に行く鏡、割れちゃったでしょ」


「あ……とりあえず、お上がり下さい。

お茶を――」


「淹れますね」にこにこ♪


「いえっ! あのっ!」




――結局、サクラが淹れる。


「以前お持ちでした鏡は、何故 割れたのですか?」


「それが……妹の家に行こうとしたら、黒い魔物が見えて……怖くて花瓶を――」


「お母さんが割ったの!?」


「ええ。つい、投げてしまって……」


「申し訳ございません。

おそらく、私との接触が原因だと思います。

ですが、もう婚約を公表しますので、魔物は二度と現れません」


「そうですか……

あ、でも、その鏡は特別な物なのでしょう?」


「集縮などと同じ竜宝です。

割れた原因も私ですので、お受け取り頂かなければなりません。

この鏡も、現状では珍しい物ですが、これから量産に向けて動きますので、いずれ、どこにでも有る物になります」


「前の鏡は、妹が友人から頂いたと……ですから価値も分からず割ってしまって、妹には二度と手に入らないと叱られて……

本当に、ありがとうございます」恐縮至極。


「いえ、私の方こそ、多大なる御迷惑をお掛け致しまして、誠に申し訳ございません。

まだ暫くは、念の為こちらでお過ごし頂きたく存じますが、出来る限り早急に、元の生活にお戻り頂けるよう努めますので、不自由お掛け致しますが――」


「いいわよぉ、サクラくん。

ここ、とってもいいトコだもん。

毎日 楽しいわよ♪

私、卒業するまでお世話になっちゃうから♪」


「はい♪ ずっと居らして下さい♪」




 そして、玄関の外で――


「皆さん、中庭でお茶してるんだ」


「でも……」


「俺の彼女、紹介するから~♪」


「じゃあ……挨拶だけね」興味津々。


「うん♪」曲空。



――中庭。


「そろそろ、おかわり いかがですか~♪」

「お邪魔しま~す」


「ソラさん、ごきげんよう」ビミョ~な空気……


「ラン、友達のソラちゃん♪

俺をフッたヒト~♪」きゃははっ♪


「え……」一瞬 固まり……ぷっ♪ あはははっ♪


「サクラくん! その言い方ってないよぉ~

サクラくんがダメなんじゃなくて、王室がムリなんだってば!」


「あ、ソレ解る~♪」笑ったままの虹藍。


「ランまでぇ」


「私は、そこに生まれちゃったから仕方ないけど、『普通』って憧れるわ♪」


「私『普通』を捨てられなくて……

それにサクラくんって、カッコよすぎて……

なんか、遥か彼方~な感じなんだもん。

そもそも王子様なんて、私には別世界。

おとぎ話の架空の生き物だよ~」


「なんか解る~

確かに『カッコよすぎ』よね♪」


皆さん、ハラハラして見ていたが、二人は、なんだか意気投合して盛り上がっている。


「サクラ様、上手く仰ったわね」

「どうなる事かと思ったわよ~」

「人徳ですよね。あ……竜徳ですか?」

「竜徳って……あるのかしら?」

「あの……全然 違う話なんですが――」

「「「何?♪」」」

「サクラ様って、いつもあのように移動――」

「してるわ。ハク様もするわよ♪」

「やっちゃったぁ」手で顔を覆った。


「ワカナさん、何があったの!?」


「ちょっと、失敗……夢だと思って――」


「何?」「それで?」


「アカ様に……どうしよう! 私……」あああ~


そして、こっちはこっちで盛り上がった。




 夕刻になっても、おしゃべりは(とど)まる所を知らず――


「女王様って、お堅くて威張ってるのかと思ってた~」


「ミカンさんっ!」


「ですよね~

だから私、結婚なんて諦めてたんです」


「その若さで!?」一斉!


「だって六年間、一度もお話が無かったのよ。

一度もよ! そりゃ諦めるわよ~」


「全てはサクラ様に巡り会う為の道だったのね~♪ 素敵ね~♪」


「サクラ様が、お城に伺ったのがお出会いですの?」


「いえ……即位直後に、無理矢理 人界に視察に行って、魔物に襲われた所を助けて頂いたんです」

恥ずかしくて俯く。


「魔物に囲まれて窮地!

そこに颯爽と現れる、美しい鱗の王子様!

ますます素敵よねっ♪」


サクラでも、これは恥ずかし過ぎると俯く。


「で、カッコよく倒しちゃったんでしょ♪」


「……はい」ぽっ


「そして月日は流れ、予期せぬ再会!

これも本にしたら売れるわよ♪」


「そぉいえば、リリスさん、あの本は?」


「はい、好評だそうです。

昨日、クロ様から、第五刷のお知らせを頂きました。

絵本は、もう第七刷が出ているそうです」


「凄いわね~」


「どんな本なの?」


「あとであげる~♪」


「私も、絵本 見てみたいわ」


「じゃ、持って来る~♪」消えて――


――戻る。「これ♪」ドサッ


手に手に読み始める。


「サクラくん、私も貰っていい?」


「もっちろ~ん♪」


「じゃ、そろそろ帰るね。お誘い、ありがとう」


「送るよ」握手して消え、

すぐに「ラン♪ ただいまっ♪」戻った。



 クロと姫が現れ、

「サクラ、ちょっと教え――お邪魔しましたっ」

逃げようとしたが――


「クロ様も、お座りになって♪」

「静香様、おめでとうございます」

「お茶 淹れるね~♪」

引っ張り込まれた。


(サクラ、もう皆の所を回ったのかい?)


(今、お茶してる~♪ ルリ姉も来てよ)


(そういうのは苦手だ)


(でも挨拶はしなきゃ、ねっ)


(挨拶か……やむを得ん)


ルリが現れた。「サクラ様、挨拶だけ――」


「はい、お茶♪ 座って~♪」

「あら♪」「アオ様?」「ルリ姉だよ♪」


サクラが説明し、ルリは暫く所在なさげにしていたが、やがて慣れ、和やかな光景を眺め始めた。


「ミカン、打ち合わせの続きは、こっちって――」


「キン兄、ハク兄、座って~♪」お茶係♪


アオが女姿のまま、フジを連れて来た。

リリスが駆け寄る。

「もう大丈夫そうだからね」


クロが、アカを掴んで現れた。

ワカナがボタンの後ろに隠れる。

「おい、ケンカ中か?」アカを睨む。


「いや、何も無いが……

誤解されるだろ、どうしたんだ?」

アカが焦っている。


「ワカナさん、仰ってくださらないのよ~

アカ様、何があったのですか?」


「何も無――あ……うむ……何も無い」


「絶対イイコトあったのよ♪」

「確定ですわね」

「仲良くされるのは素敵な事ですよ」

「そうよね~♪」


女性達は揃って、にこにことワカナを見る。

そしてアカを見る。


「お幸せに~♪」一斉。


「皆様も、です」ルリが微笑む。


揃って赤面。


「こりゃいい♪ 流石だなっ」あははっ♪


「今のはアオなのか? ルリ殿なのか?」


「さぁな♪」アオとルリ。


(皆、明日は人界に戻るから、今宵は大いに楽しもう。

せっかく揃ったんだからね)


兄弟は顔を上げ、そして笑顔で頷いた。





黒「今回イカツク長いんじゃねぇか?」


藤「また2回分 繋げたそうですよ」


桜「俺が1回だけ待ってもらったから~」


青「それにしても、いつもなら少し削るのに

  ほぼそのまま繋げたらしいよ」


黒「凜らしいなっ♪」


凜「皆で何かヒドイ事 言ってなぁい?

  地上に話を戻さなきゃ、って

  思っただけなんだけど~」


黒「絡まれるぞ! 逃げろ!」

藤「失礼します!」

桜「凜♪ またね~♪」

青「また俺の屋敷かい?」

桜「うんっ♪ せ~のっ♪」


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