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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
231/429

試練山8-助けたいのじゃ!

 場面うろうろも、これで落ち着きます。

あ、いや……そうでもないかも……


♯♯ 試練の山 ♯♯


「姫様、最後の試練で御座います。

荒地から森を抜けた所が、最終地で御座います」


「また、とにかく着けばよいのじゃな?」


「はい。その通りで御座いますぅ」


「あい解った! いざっ!!」


姫は荒地へと踏み込んだ。


禍々しい気が、空を覆う。

「魔物か……」

闇黒色の魔物が、無数に飛来していた。


 ワラワとて、助けられるものなら助けたい!


集縮の水筒を取り出し、栓を抜く。

溢れる聖輝水を竜巻に乗せ、上方に放った。


魔物達が色を戻し、落ちる。


 このままでは地に激突じゃ!


地に風を当て、巻き上げた。

そして風竜と炎竜を喚んだ。

「落ちてくる者を助けよ!」


三本目の水筒が空になった時、魔物の飛来は止み、空に居た魔物達は退却した。


姫は、召喚竜達が地へと降ろした者達に、駆け寄った。


「皆の衆! この水を飲――」

降りた者達は、皆 微笑みながら消えた。


「そぅじゃった……試練じゃったな」

ホッとして、また進み始めた。




 少し進むと、俄に雲が垂れ込め、稲光が走り、大粒の雹が襲いかかるかのように降り、地に落ちては転がるので、走る事も儘ならなくなった。


 また雷かっ!

 しかし、前より遥かに強力じゃ。

 しかも雹とは……

 これでは思うよぅに動けぬではないか!


竜を喚び、足に掴まり飛んでいると、降り注ぐ雹で炎が消され、突風に煽られ、風も打ち消された。


地に落ち、転がっていると、雷が狙いを定めて迫った来た!


手を突き、転がる方向を変えて雷を避けた。


雷は、すぐ側の木に引き寄せられるかのように落ち、燃え上がった炎が拡がり、囲まれてしまった。


 消して進むか……それとも跳ぶか……


立ち上がってみたが、転がる雹で足元が おぼつかなく、膝を突いた。


次の雷が眼前に迫り、視界が真っ白になる!


――が、


衝撃は無く――


「およ?」立ち上がる。


 ここは……森???


「姫様ぁ♪ こんなに早く!

流石で御座いますぅ♪」


「ミズチ……」森……の出口か?


「姫様♪ 早く こちらにいらしてくださいませ♪」

爽蛇が嬉しそうに手招きしている。


 もしや……咄嗟に曲空したのか!?


爽蛇に向かって駆けて行く。


「これでよいのかのぅ……」森から出る。


「合格で御座いますよねっ♪ 審判様♪」


「はい。技も術も、ご自由に」

竜が現れ、微笑んだ。


「クロ様は、本当に素晴らしき方と、ご縁を得られましたな」

もうひとり、竜が現れ微笑んだ。


「その声は案内人殿!

お世話になり申した」ぺこり


「いえいえ、あれしきの事。

後進に伝えるべき素晴らしい戦い振りでございました」


「お褒めに与り、光栄至極に御座いまする」


「中橘 静香様、合格証でございます」


「更なる精進を重ねる所存にて、有り難く頂戴仕りまする」深々と礼!



♯♯♯



 試練の山の領域を去ったとたん――


(姫! 無事かっ!?)


(クロ~、無事に決まっておろぅ?)


(爽蛇に伝えろ。薫風の祠に来いってな)


(すぐ行くからの)

「ミズチ、ワラワは曲空を覚えたぞ♪」


「それは、難しい技なのでは――」


 クロの気、掴んだ! 曲空!



――薫風の祠。


「クロ♪ 只今、戻ったぞ♪」胸に飛び込む。


「姫……今、曲空したのか!?」


「したぞ♪ それと、ほれ♪」合格証を出す。


「姫なら当然だけど……やっぱ よくやったな♪」

にこにこなでなで♪


「あ、おい、爽蛇。どこ行くんだよ。

ちょっと手伝ってくれよ」


「お邪魔かと――」


「何 言ってんだよ。

来てくれ。姫も」姫の手を引いてスタスタ。


「何をするのじゃ?」


「アオが奥さんと交互に攻撃する練習してたんだよ」


「アオの奥さんじゃと!?」

「アオ様に奥様で御座いますかっ!?」


「あ……知らなかったのか……

おいっ! 爽蛇っ!!」尻尾 掴む!


「待てって! アオの居場所 分かるのかよ」


「あ……深蒼の祠では?」


「今、城に居るよ。

で、オレ達も練習したいんだよ。

爽蛇、特別 頑丈なマト、作ってくれねぇか?」


「それでしたら、丁度良い竜宝が御座いますので、少々お待ちください」


「どこにあるんだ?」


「長老の山の蔵に――」爽蛇を掴んで曲空。


「便利で御座いますねぇ」蔵に入る。


出て来た。「こちらで御座――」また曲空。


「――います……では」ぽいっ


頑丈そうな壁が聳え立ち、半分程 地に潜った。

それでも木々より遥か上まで壁が有る。


「これでしたら大丈夫かと存じますよ」


「ありがとな、爽蛇♪

引き止めちまって、すまなかったな。

アオの所に行っていいぞ」


「待て! ミズチ、アオとサクラがこちらに来ると言ぅておる!」


「姫様、どうやってお話ししていらっしゃるので御座いますか?」


「オレと同じなんだ」照れる。


「然様で御座いますか……」


アオとサクラと虹藍が現れた。


「ラン、クロ兄と静香姫だよ。

静香姫は人界の姫だから、クロ兄は人界で殿になるんだ」


「はじめまして」可愛くお辞儀した。


「愛らしいのぅ。

サクラのお相手なのじゃな?」


「うん。魔竜王国の女王なんだ」


「ならば、サクラは魔界で王になるのか?」


「はい。そう願っております」頬を染める。


「でね、クロ兄。

ランは本当に、ひとりで統治してるんだよ。

だから俺、婚約だけは急ぎたいんだ。

婚儀は魔王を倒してからって思ってるけどね。


それで今日は、ランと父上を会わせたんだ。

だいたいの予定も決めた。

アオ兄の婚約から婚儀もね。


クロ兄、どぉするの?

クロ兄も婿入りだから、俺と同じでしょ?

一緒にしない?」


「サクラ……お前いつの間に、そこまで……」


「うん、確かに急に展開したかもだけど、俺なりに、ちゃんと考えてるから。

俺なんかに、どれだけ出来るのかなんて、力も自信も、なんにもないけど、それでもランを護りたいし、助けたいんだ。

それには、堂々と傍にいられるようにしなきゃならない。

それだけなんだよ」


虹藍が嬉しそうに、更に頬を染める。


「そっか……堂々と傍にいられる立場か……

ん。ありがとな、サクラ。

オレも決めた!

姫、オレで本っっ当に、いいのか?」


「クロ……真か?

中の国を担ぅてくれるのか?

ワラワに異存などあるものか!

どうか、宜しくお願い申し上げる!」


「姫、良かったね~♪」にこにこ♪


「サクラのおかげじゃ。

誠に感謝致すぞ」うるうる




「あ! 姫、さっきの合格証、見せてくれ」


「これか?」


「ああ。中橘 黒之介、か……」


「名など、殿になれば変えるのが常じゃ。

好きに名乗ればよいぞ」


「そうなのか?

でも、このままでも悪くない」にこっ




「じゃ、俺達は他の兄貴達トコに挨拶しに行くからね~」

サクラと虹藍は消えた。


「爽蛇、妻を紹介したいから、深蒼の祠に行こう」

アオと爽蛇も消えた。




「姫、オレ……どうしても心配はしてしまうけど、姫が やりたい事を反対なんてしねぇからな。

もう、黙って消えるなよな」


「うむ。これからは真っ先に申すからの。

今日の事は、許して頂けるか?」


「許すも何も、怒ってもねぇから」ぎゅっ


「本物のクロじゃ……」包まれて呟く。


「何か言ったか?」


「ワラワは幸せじゃ」上を向いて、にっこり。


「そうだな……幸せだな」微笑み返す。




「静香……」


「その名は――」


「ちゃんと姫の名だ。いい名だよ」


姫は恥ずかしげに俯いた。


「静香、これから、もっとずっと幸せにしてやるからな」

姫の顎を掬い、顔を寄せた。





凜「サクラの試練は、どんなだったの?」


桜「知らな~い」


凜「え? 受けたんでしょ?」


桜「ぜ~んぶ曲空したから~♪」


凜「岩窟は、どうやって終点へ?」


桜「神眼で探したよ。とーぜんでしょ」


凜「あ……そ……

  最短記録は、そうして生まれたのね……」


桜「うんっ♪

  兄貴達は、ちゃんと受けたらしいけど~

  ハク兄とクロ兄とアカ兄は

 『試練の山』壊しちゃったって~


  ハク兄が上りの洞穴で暴れて、

  山の上半分が爆発しちゃって~

  アオ兄は後回しにせざるを得なかった

  って言ってた~♪


  クロ兄は最終の場所、ぜ~んぶ

  おっきな穴に変えちゃって~


  アカ兄も山頂ふっとばしたって♪

  水竜に襲われて、火球ドーン! って♪


  凜、聞いてる?」


凜「あ……うん。

  それで、アオは受けるの遅くなって、

  サクラは忘れてたんだよね?」


桜「うん。アオ兄が受けた時、一緒に受ければ

  よかったんだけど~

  他の試練とか試験とか、

  ぜ~んぶ合格しなきゃダメだったからね~」


凜「人界に行くって、そんなに大変なんだね」


桜「竜にとっては最前線だからね~」


凜「あ……その最前線に戻さねばっ!」


桜「あ~っ! 1回だけ待ってぇ!」


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