試練山4-変わるのじゃっ!
大陸編――ですが、
ここんとこずっと天界ですね。
大陸でも動きは有るんです。
ただ、主役が天界に居ますので……
もう暫く天界でのお話が続きます。
♯♯ 試練の山 ♯♯
「姫様、次は山頂まで到達すれば合格で御座います」
「ここから、ミズチが居る所まで行けばよいのじゃな?」
「そうとしか書かれておりませんねぇ」
「竜は、それを読んで、ひとりで進むのか?」
「そうで御座います。
天界の文字で書かれておりますので、人が単独で行かれる場合でも案内は付きますよ」
「さよぅか……
クロは、ひとりで行ったのじゃなぁ」
「はい。竜は飛べますので。
王子様方は、皆様 一度で合格されました。
姫様も、私は移動のみのお手伝い。
おひとりで、ここまで合格されましたでは御座いませんか」
「しかし、こうして話せておる。
それだけで心強いのじゃ。
それに甘えぬよぅ、気を入れねばなるまいな」
「それがお解りですので、姫様は大丈夫で御座います」
「ミズチ♪ やはり、ワラワの代の家老は、おヌシで決まりじゃな♪」
「え!? 何故そこに至るので――」
「クロも、殿になってくれそぅじゃし♪
我が国も安泰じゃな♪」
姫は爽蛇を置いて、弾みながら進んで行った。
聳え立つ柱のような岩々を抜け、上へ上へと――
崖――唐突に地面が裂けていた。
底が見えぬ……
「また竜を喚ぶか……」剣を置き、気を高め――
炎と風の竜に乗って渡ろうとしたが、中程で、下からの突風に煽られた。
風に捕らえられ、地の裂け目に引き込まれる!
落下の途中で、召喚竜が打ち消された。
この風が、ワラワの風を上回るのじゃな……
クロは、同じ属性ならば、
強い者には敵わぬと言ぅておった。
じゃから二属性は強いと……
変化させられれば、更に強いと
言ぅておったな……
ならば、炎の竜を喚べば、
打ち消されずにすむのじゃな。
それにしても、深い谷じゃな。
まだ落ちておるとは……
最早、真っ暗で底も何も見えぬな……
さて――
気を高め、
ならば、炎のみじゃ!
と念じる。
三剣が光を放ち、炎の竜が現れた。
竜の背に乗り、上昇して渡りきった。
「熱くはないのじゃな」背を撫でた。
「行ける所まで 飛んでくれるか?」
低く小さく鳴いて、召喚竜は飛んだ。
石柱の森を抜け、川を越えようとした時、水が迫り上がって竜となり、炎の竜を包んで消した。
流れに呑まれる!
そぅか!
炎は水に弱いのじゃったな。
ならば今度は、風のみの竜じゃ!
風の竜に掴まり、水流から脱出した。
風と水に襲われたのぅ。
次は火が来るのかのぅ。
――と思っていると、その通り。
目の前に火柱が立ち上ったかと思ったら、ぐるりと囲まれてしまった。
召喚竜が消える。
つまり、水でなければ、
太刀打ち出来ぬのじゃな……
ワラワの力で変える事が出来よぅか……
炎の壁が迫って来る。
やるしかないわっ!
火よ! 風よ! 水に変わるのじゃっ!
朱鳳を振り下ろすと、竜巻が炎の壁に穴を開けたが、それは一瞬で塞がった。
そぅは簡単に水は出ぬか……
しかし! 諦めぬぞ!
もう一度、朱鳳を振り上げ、構えた。
水に変われっ!
振り下ろす!
と――炎を巻き込んだ竜巻が、炎の壁に当たる寸前、水流に変わった。
「いくのじゃーーーっ!!」
水流に変わる点が、切先に近くなっていく。
それに伴い水流が太くなり、勢いを増す。
ほんに消火じゃのぅ♪
そのまま進み、炎が途切れた箇所から囲みの外に出た。
汗を拭き、振り返ると、炎はすっかり消えていた。
残るは雷か?
警戒しつつ登っていると――
「姫様~♪」爽蛇が両手を大きく振っていた。
駆け寄る。「山頂なのか?」
「はい♪」
くるくると景色を眺める。
「高い山なのじゃな~♪」
「姫様、こちらを」握り飯を差し出した。
「かたじけない♪」ぱくっ♪
「頂で食べるは格別じゃのぅ♪」
♯♯ 深蒼の祠 ♯♯
竜宝の国から戻ったアオとルリは、鍛練を再開した。
「性別を切り替えるとは、よく考えたものだ。
意外と力を使うのだな」氷牙撃!
「他の事にしようか?」紅蓮撃!
「いや、これしき出来ぬは、実戦で攻撃が出来ぬ事に等しいだろう。
だから、今の私には丁度良い」炎神竜牙!
「しかも話しながらだし、水も光も使えている。
やはりルリの戦闘力は凄いな」凍刃激流!
「誉めても何も出ぬぞ」輝光撃!
「誉めてなどいないよ。
思ったまま言ったんだ」極烈火!
「アオ……やわらかくなったな……
大人になった、という事なのか?」爆流撃!
「残念?」爆炎を豪速で押す!
「いや、そうではない。ただ……」浄癒閃輝!
「……何?」極輝迅に氷華凍刃!
「本当に歳を越されたのだな、と……
実感したまでだ」緋炎槍に極水流!
「これから一緒に歳を重ねよう。
ずっと一緒に……ね?」水神竜牙に輝神竜牙!
「ああ……そうだな」白輝槍と蒼氷槍に極氷河!
感慨に耽りながらも、攻撃は的確で、牆壁が一枚 弾け飛んだ。
「うわっ!」声の主が飛び退る。
「クロ、さっきから、そこで何をしているんだ?」
「ちょっと教えて欲しい事があって来たんだけど……誰と話してたんだ?」
「ああそうか、初対面だよな。妻のルリだよ」
「つ……ま……? って、奥さん!?」
「他にどんな『妻』があるんだ?
ルリ、弟のクロだよ」ルリに変わる。
「クロ様、はじめまして。
死したる身ながら、アオ様に迎えて頂きました。
どうぞ宜しくお願い致します」
「いつの間に……?
てか、お前、体に戻ったばっかだろ?」
「うん。一緒に入ったよ。
サクラが魔界で、ルリが込められていた蒼牙を見つけてくれたんだ」
「そっか……良かったな、アオ。
お前が背負ってた影が消えてホッとしたよ。
皆の婚儀で奔走しながら、お前自身は結婚しねぇ気なのかって心配してたんだ。
ルリさん、結構 面倒なヤツだけど、ヨロシクお願いします」ぺこり
「面倒って……」睨む。「知っている」笑う。
「ルリまで……」ムッ!「そう怒るな」更に笑う。
「仲良過ぎ……邪魔したなっ」
「何か聞きに来たんだろ?」
「いや、いい。自分で探ってみる。
オレの天性なんだから。
それに、二人の攻撃 見てて、オレも考えたくなったんだ」
「クロも、姫と組むんだね?」
「この先は、姫ひとりじゃムリだからな」
「護るだけじゃ、姫は納得しないよ。
共に戦う事を考えろよ」
「サクラにも、そう言われた。
姫は今、試練の山に挑んでるんだ。
だから上手く護りながら、共に戦えってさ」
「クロなら出来るよ。
神眼、頑張って伸ばせよ」
「オレ、サクラに言われるまで気づかなかったのに……
皆、気づいてるんだな……」
「それだけクロの神眼は、大きな力なんだよ。
外からなら、その大きさが見えるけど、内にいると見えない。
それだけだよ」
「そっか……ま、頑張るのみだっ!
いい勉強になった。ありがとなっ」
クロは何処かに曲空した。
「アオ、天性とは?」
「生まれ持ってる能力だよ。
ルリにも有る。まだ眠ってるけどね。
自分で見つけて開かなくちゃならないから、手助けだけするからね」
「まだ力が有るのだな? 嬉しい事だ」
ルリは体を失っているから、補助的に
天性竜宝を取り込む必要があるな……
ルリの嬉しそうな顔を見て、もっと嬉しくて頬が緩むのを感じながらも、アオは真剣に計画を練っていた。
凜「たっくさん技が出てきたけど……」
青「光と水と火の直線的な技ばかりだよ。
他属性に変化させてもいないしね。
あ、中には出し方に依っては放射状にも
出せる技もあるけどね」
凜「組み合わせたりもできるのね……」
青「後押しして加速したり、強化したり、
複属性にして耐性を高めたり、
いろいろ出来るよ」
凜「奥が深いのね~」
青「そうだね。同じ技でも気の高め方とか
修行の仕方で強さや範囲に違いが
出てしまうからね。
だから、どこまでも修行してしまうんだよ」
紫「そうなのです。
修行に終わりは無いのです」
珊「私共も高き頂を目指しているのです」
桜「うん♪ いっくらでも上があるよね~」
瑠「確かに、新たな高みを見つける度に
そこに着きたくなるな」
桜「そぉだよね~♪」
金「新たな高みを見付けた時の喜びも
大きなものだ」
藤「そうですよね。
次は、そこに! と、嬉しさが溢れます」
慎「それが、どれだけ遥か彼方であっても
目指したくなるのでございます」
赤「皆、同じ思いである事も嬉しい」
桜「そぉだよね~♪」
凜「修行大好き集団だわ……
姫は試練の山に隔絶されてるけど……
ハクとクロは?」
桜「勉強嫌い~ 修行も嫌い~」
黒「修行は嫌いじゃねぇっ!」
白「ちょい遅れただけだっ!」
凜「勉強は?」
黒「うっ……やるべき……だよな……」
白「まぁ……これから……かなぁ……」
 




