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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
225/429

試練山2-風はクロじゃ!

 試練の山は閉ざされた場所です。

姫は単独で進んでいますので、ツッコむ相方なんて居やしません。

ですので、読みながら、ツッコんであげてくださいませ。m(__)m


♯♯ 深蒼の祠 ♯♯


(ルリ、居心地はどうだい?)


(悪い筈が無かろう?)


(なら、良かった)


(あの竜宝の中と同じように、アオの姿が見えるのだな。

なんだか不思議な気分だ)


(見えるようにしているんだよ)


(そうなのか……しないと、どうなるのだ?)


(こうなるな)


アオの姿が見えなくなり、ふわりと、アオの気配に包み込まれ――


(何とか言って欲しいんだけど――)


(……無理だ……これは……)


(どうして?)


(これは……恥ずかし過ぎる)


(ってことは――)気配を濃くして、すっぽり♪


(やめろ! ばかっ!)


(うん。やめない♪)


(ちゃんと聞けっ!! やめろって!!)


(ちゃんと解ってるって♪)


(離せっ! やめっ! んんっ! ん……)




♯♯ 試練の山 ♯♯


「姫様、次は、この荒地で御座います。

こちらは、緩やかな斜面。

登って行き、向こうに一本だけ見えております杉の木まで達すれば合格で御座います」


「とにかく、杉の木まで行けばよいのじゃな?」


「はい。

『手段は問わない』との事で御座いますぅ」


「あい解った♪ ならば、いざっ!」



 姫が荒地に踏み込むと、(にわか)に低く暗い雲が出、稲光が走り始めた。


近くの岩を目標にして走る。


姫に向かって、(いかずち)が飛んだ。


寸前で躱し、着地。また躱す!


近くの岩が砕かれ、弾ける!


跳んだり、転がったり、とにかく躱すしかないので、なかなか前に進めない。


 普通に走っておっては、到達出来ぬな……


躱しながら考える。


 雷か……ならばっ!


三剣を地に放ち、炎と風の竜を呼び、その足に掴まった。


「あの杉まで飛ぶのじゃっ!」


召喚竜は三剣をその身に包み、雷を打ち消しながら 、姫をぶら下げて飛んだ。


姫が手を離し、杉の枝に降り立つと、召喚竜は天に昇り、三剣は鞘に収まった。


「ミズチ~♪ これでもよいのか?」


「はい♪

手段は問いませんので、合格で御座いますぅ♪」


「容易いではないか♪ 次に参るぞ!」

ひらりと爽蛇の背に乗った。




♯♯ 深蒼の祠 ♯♯


(で、ここにも馴染んだ事だし、ルリ、この体を動かしてみてよ)にこにこ♪


(どうすれば――)見上げる。半ば睨んで。


(俺が 引き下がるから、生きていた時と同じように自然に動かしてみて)


スッと、アオの気配が薄れた。


 今……なのか?


上体を起こす……手を、指を動かしてみる。

目で見ている景色を確かめ、立ち上がってみた。


「いけそうだな……」


蒼牙を手に取り、構え、振ってみた。


剣舞の如く、続けざまに振り払う。


(体、重くはないかい?)


(気にはならぬが……)


(ちょっと待ってて)

アオが主となり、気を高める。

(この方が動き易いかな?)


(軽くなったな……ん? ……えっ!?)

手でパタパタと体を確かめる。

「女!?」


(気にせず、動かす練習しててね)


(気になるだろっ!)


(そういう技だよ)


(何に使うつもりで覚えたんだ?)怪訝。


(ん~、逃げる為、だったかな)あはは……


(何だ? それは……

まぁいい。外で術を使ってもよいのか?)


(かまわないよ。牆壁で的を作るよ)


広い場所に出、牆壁を立てた。


(これに当てよう。

入れ替りながら、交互に術を放つんだ)


ルリが唱え始め、少し遅れてアオが唱え始めた。


交互に主となり、術を放つ。

次第に、その回転を速くしていく。


(融合すれば、互いの知ってる術や技は、どちらが放っても有効になるんだ。

ちゃんと出し方も分かる。

それと、併せ技も出来るんだよ)


(融合とは……アレか?)真っ赤。


(ああ、そうか。本当は、こうだよ)クスクス♪

アオが引き、ルリを主にした後、アオの気が覆い被さるように重なった。


(何をしたいのかが手に取るように分かるだろ?)


アオが蒼牙を構え、振り下ろす。


炎と水が絡み合った青竜が飛んだ。


(融合と、切り替えを上手く使って戦う。

それが、これからの双青輝だ)


(よしっ! 隙を生じぬよう、鍛練するぞ!)


(そうだな。始めるぞ!)




♯♯ 試練の山 ♯♯


「ミズチ、次は何じゃ?」


「ここが入口です。

この洞穴を進んで下さいませ。

私は出口でお待ち致します。


見ての通り、山肌には幾つもの穴が御座います。


外に道が有り、他の穴と繋がっている穴も御座いますが、ただの行き止まりも御座いますので、落ちぬよう、お気をつけ下さいませ」


「とにかく進み、外にミズチが()れば、合格なのじゃな?」


「はい♪」


「では、行って参る!」




 姫は朱鳳の光を頼りに、洞穴を進んで行った。


「ここまで一本道じゃった筈じゃが……」


ぐるりと壁面に沿って、光を当てる。


「行き止まり……なのじゃろうか?」


地面も、上方も塞がっている。


「はて……?」


目を閉じ、気を高める。


「風……? 確かに風じゃな」辿って行く。


「壁から吹いておるのぅ。

――が、隙間も無い……」


目を閉じ、手を突き出してみた。


 風が吹くならば、ここには穴が有る!

 ワラワは風を信じるぞ!


すると、目の前に有った筈の壁面には当たらず、真っ直ぐ伸ばすことができた。


そのまま進んで行った。


目を開け、振り返ると、歩いた筈の道に壁が有った。


壁に近寄り、手を突き出す。


手が壁に めり込んだ。


「マヤカシか……ここには何も無いのじゃな」


納得し、先へと進んだ。




 およ? ……地鳴りか?


耳を澄ませ、地面に掌を突き、振動を感じ取る。


 何かが、こちらに近付いておるな……


先を照らす。

が、曲がっていて、向こうは見えない。


曲がり角まで走り寄る。


 !!


踵を返し、全力で走り始めたが、追いつかれるのは必至と、走りながら頭巾を被り、朱鳳を壁に突き刺した。


刹那、激流が襲いかかる!


あまりの勢いに息が出来ない。


 いや……しかし、これは……


確かに水を感じ、流れの力も感じているのだが、微かに――ほんの僅かに風を感じるのだった。


 先程の壁も、マヤカシじゃったからのぅ……


 ワラワは、この風も信じる!

 ここに水など無いっ!


激流が暴風に変わる!


気を高め、壁面に踏ん張り、ジリジリと地に足を着け、朱鳳を頼りに立ち上がる。


 風はクロじゃ!

 ならば、ワラワを襲う道理は皆無!


「この風も、マヤカシじゃっ!!」


暴風も、かき消えた。


感じるのは、頬を撫でる微かな風のみ。


姫は安堵の息をつき、また進み始めた。



「分岐か……分岐は右と決めおこぅぞ♪」


しばらく進むと下り始めた。


 出口は上じゃった筈じゃが、

 このまま進んでもよいものか……

 ま、行き止まるまで進んでみよぅかの♪


どんどん下へ下へと向かい、傾斜がキツくなり、自然と駆け足になる。


 これは……既に、これまで登ったよりも

 深く下ったのではないじゃろぅか?


そう思いながら角を曲がると、光が見えた。


光に向かい駆け下る。


「およっ!? こんな上に……」


ずっと下っていた筈であるのに、景色は雲の上であった。


 これも……マヤカシか?

 しかし、どちらが、マヤカシなのじゃ?

 下った感覚か? この景色か?


目を閉じ、風を感じる。


 この風は……湿った土の匂いがせぬ。

 クロの背に乗り、頬に当たる風と同じ匂い。

 間違いない! 空の風じゃ!

 ならば、下った感覚が、マヤカシじゃ!


 して……道は?

 ここにはミズチが居らぬぞ?





黒「凜! どこだっ!? 凜!!」


凜「何よぉ?」


黒「姫は無事かっ!?」


凜「楽しそうに進んでるわよ~」


黒「凜には見えてるんだろ!?」


凜「もちろんよ~♪」


黒「教えてくれっ!!」


凜「いいけど~」


黒「……けど?」


凜「栗きんとんと団子♪」


黒「何でも作るからっ!」


凜「ありがと~♪」


 読んだクロの顔が緩む。


凜「嬉しそうね~」


黒「そりゃあ……オレの事……こんなに……」


凜「良かったね~」


黒「お、おう♪」にへら~♪


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