絆繋ぐ2-サクラの覚悟
前回まで:アオを体に戻す為の竜宝は
揃いました。
♯♯ 魔竜王国 ♯♯
虹藍は老竜の神殿を訪れていた。
「長老様、大婆様、やっと私の隣に座して頂ける方が現れました」
「虹藍、国の為に犠牲になるという事ではなかろうな?」
「大婆様、ありがとうございます。
大丈夫です。私の……初恋の方ですから」
頬を染め俯く。
「それは良かった。
ああ、もしや、この蔵で竜宝達と話しておった、天竜の王子様の事かの?」
にこにこにこ
ますます赤くなる。
「この新しい結界も、その王子様が成したと聞いたが……
術に長けた御方なのじゃな?」
「はい。
術に長け、竜宝に精通し、武にも秀で、優しくて、明るくて、素敵な方です!」
「幸せそうで何よりじゃ」
「年寄りばかり残ってしもうて、苦労ばかりじゃったからの……
末永う睦まじゅうのう」
「はい♪」
「と……噂をすれば、じゃ」
神官に連れられて入って来たのは、小さな青い竜を持ったサクラだった。
「あ……お話し中、失礼致しました。
では先に、蔵に入らせて頂きたく――」
「まぁまぁ、そう仰らず。
また少しばかり、年寄りの話し相手など、してくださらんか?」にこにこにこにこ
「よろしいのですか?」
「虹藍と並んでくれるかの?」
並んでみる。
「早う、本物を抱いておる姿が見たいものじゃな」ほっほっほ♪
「あ……」二人、芳小竜を見て、真っ赤になる。
「その中に、兄上殿が入っておられるのじゃな?」
「はい。兄夫婦を体に戻す為に恵雨璧を探していて、こちらの蔵に参り、
情報を得、見つける事が出来ました。
感謝致しております」
「そうかそうか。
中のお二人を、兄上殿の御体に込めるおつもりなのじゃな?」
「はい。
義姉上は、既に身体を失っておりますので」
「ならば、晴虹風の三玉も必要ではないか?
元の御体ではないのじゃからの」
「あの三玉……やはり、そうですか!
では、滝瀾の術を重ねて掛ける必要があるのですね?」
「その方が確かじゃと思うが――
キキョウ様にも尋ねてみるがよいぞ」
「はい。お教え頂き、ありがとうございます。
心が晴れやかになりました」にっこり
後は、天界と人界の様子を聞きたいと言うので、話し――
「もちろん、馴初めも話してくれるのじゃろうな?」
と、年寄り達に弄ばれ――
「では、兄上殿と話させて頂こうかの」
芳小竜を残して、どうにか放免となった。
サクラと虹藍は蔵に入り、奏慈器に声を掛け、並んで腰掛けた。
「長老様方、すっごく久しぶりに笑ってたわ♪
サクラ、来てくれて、ありがとう」
「俺、相談に来ただけだから……」
「そうやって、頼って貰えるのが嬉しいんだと思う」
「そっか……ウチの長老達も、おんなじだもんね。
頼れ頼れって、よく言ってる」
「あの中には、お兄様が入っているの?」
「うん。アオ兄と、奥さんのルリ姉。
アオ兄は、魔王に体を乗っ取られて、神様と竜宝達に手伝ってもらって、あの中に。
ルリ姉は、俺が孵化する前に戦死して……
アオ兄の守護神が、剣に魂を込めてくれてて、その剣をつい最近、この国で見つけて、それで今は一緒に、あの中に。
二人は、あの中で結婚したんだ。
百四十年越しでね」
「お二人……今は、お幸せなの?」
「そうみたい。
俺……禁じ手 使ってでも、ルリ姉の身体を作ろうと思ってた。
でも、二人共、今が最高に幸せなんだって。
だから要らないって、そう言われたんだ」
「私も……サクラに、禁じ手 教えてもらおうと思ってたの。
私の代で王家が途絶えてしまうって思って……
自分の複製か何か、竜宝で作れないかな……
なんて、けっこう深刻だったのよ」
「そんなコト考えてたの?
俺なんかと違って、お相手なんて、いくらでも、どーでもじゃないの?」
「ないない!
女王なんて、貰い手いないわよ~
ねぇ……サクラ……本当にいいの?」
サクラが大きく頷いた。
「俺、竜宝の王として、竜の王子として、どっちの竜王国も大事なんだ。
だから絶対! この国を護る!
そう決めたから、言ってしまうけど――
ランの事、健気で、とっても可愛いって思った。
俺が好きになったら、ラン自身も、この国も標的になるって解ってるのに……
それでも、この気持ちは、どうしようもなかったんだ。
魔王を倒すまで我慢しようと思ったけど、それも無理!
ラン、悪いんだけど……
好きになってしまったんだ」
ランの瞳から涙が溢れる。
「あっ! ほんっと、ごめん!
この国は、ちゃんと護るからっ!!
ランも、ちゃんと護るから、ごめんっ!!」
「バカね……嬉し涙に決まってるでしょ!」
「ホントにいいの? 危険なんだよ?」
「私なんて、何代も前のお爺様とお婆様しか、もういないの。
みんな魔王に……
でも……それでも今、とっても嬉しいの!
大バカでいい! サクラ、大好きよ!」
あとは勢い無我夢中。
気づくと唇を重ねていた。
覚悟決まりっ!!
まず護る!
そして絶っっっ対! 倒してやるっ!!
少し離れて、見詰め合う。
微笑み合って……もう一度……
静まり返っていた蔵の中が、大歓声で割れんばかりになる。
(う・る・さ~いっ!!)
【我等が王、万歳!!】大合唱!
♯♯ 長老の山 ♯♯
天界に戻ったサクラが、術を確認する為に書庫に向かっていると、ソラを見かけた。
「あ♪ ソラちゃん、こんちは~♪」
「サクラくん ……こんにちは……」
「学校の帰り?」
「うん」
サクラくん……本当に変わらないんだ……
それなら……私も、そうしなきゃ。
「これから、お茶なの?」
「うん。あ♪ また、お茶 淹れてよ♪
これから、皆さんにお誘いされてるのよ」
「いいよ~♪」
「皆さん、変わらず接して下さって……
嬉しいけど、申し訳なくて。
だからサクラくんのお茶、お礼にってのも変だけど、美味しいから。
皆さん、喜んで頂けるかな、って♪」
「ありがと♪
理由なんて、どーでもだよっ、行こっ♪」
ソラの手を取ろうとしたサクラが止まった。
「ソラちゃん……俺……
ソラちゃんを護りたいって気持ちは変わってないんだけど――
ラン――魔竜女王の事、好きになっちゃった♪
だから、安心してね。
これからも、友達よろしくっ♪」
差し伸べていた手を、握手を求める形に変えた。
「うん♪ ずっと友達よろしくね♪」
にこにこと、しっかり握手。
「じゃあ、サクラくん、王様になるの?」
「まだわかんな~い。
王になるのか、配偶者として補佐するのか、なんて、そんなトコまで決まってないから~
ただ一緒に、あの国で頑張りたいんだ♪」
「ふぅん……なんかキラキラしてるね♪
私も キラキラできる恋 見つけなきゃ!」
「うん♪ ちゃんと幸せになってよねっ」
「もちろんよ♪ 負けないわ!」あははっ♪
「そぉいえば……
ソラちゃん、どぉやって魔界に行ったの?」
「鏡を通って行き来してたわよ」
「鏡?」
「家と叔母さん家を繋ぐ鏡があったのよ。
割れちゃったんだけどね」
「鏡の名前わかる?」
「知らないわ。普通にある物じゃないの?」
「ないない~
見せて――あ、割れちゃったんだね」
「うん。突然、弾けるように割れちゃったの」
「そっか……」
「それっきり買ってくれないから、高価な鏡だったんだな~って思ってた」
「どぉやって天界に戻る気だったの?」
「家にあるくらいだから、どこにでもあると思ってたのよね~
だから、特に考えてなかったわ」
「そぉなんだ~」
調べなきゃ。
あ! もしかして……双掌鏡って――
「ね、皆さん、きっとお待ちよ。
行きましょ♪」
「あ、うん。そぉだね♪ 行こっ♪」
凜「サクラ、三界では『ソージキ』って
これなの?」
桜「凜トコの『ソージキ』って?」
凜「掃除機……」書き書き。
桜「コレが掃除するの!?
もしかして、ここから吸い込む?」
凜「それは蓄音器。掃除機は、これよ」
桜「かわいい~♪ 勝手に動くんだ~♪」
凜「乗るなっ! 猫か君は!」
桜「にゃ~ん♪」くるんくるん♪




