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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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双青輝4-ルリ目覚める

 あとは、蒼牙とルリを目覚めさせるだけです。


 ルリさんの記憶……ちゃんと戻ってね……


サクラは術を唱え、蒼牙に光を当てて力を注ぎ、受け入れた記憶を流していった。



【サクラ王様……】


(蒼牙、時短しちゃったけど、だいじょぶ?)


【はい。ありがとうございます、サクラ王様】


(これからもアオ兄とルリさんをお願いね)


【はい。お任せください。

今度こそ護り抜きますので】


(ありがと、蒼牙。

ね、蒼牙にルリさんを込めたのって、スミレなの?)


【はい。スミレ様とヒスイ様で御座います】


(神様は? いなかったの?)


【それは……覚えておりません。

しかし、込められたのはスミレ様とヒスイ様で御座います。

お二方は、私が消えないよう留めた上で、ルリ様の魂を込められました】


(そっか……)


 まだ生まれ直してもない二人だから、

 こんなにも不安定だったんだね……


(ルリさんは起きてる?)


【はい。戸惑っておられます。

お話しして頂けますか?】


(うん。ありがと、蒼牙)


サクラは、ルリの様子を確かめ、

(ルリさん……聞こえますか?)

声を掛け、待ったが――


返事が無い。


(……ルリさん?)聞こえてるよね?


【何処から声が……?】


(見えませんか?)


【そこか……見辛いな……】


サクラは蒼牙を顔に近付けた。


【私は……どうなっているのだ?

お前は誰だ? アオか?】


(弟のサクラです)


【アオの弟? そうか……弟も居たのか。

兄が二人居るとは聞いていたが――】


 あ♪ ちゃんと記憶 戻ってる♪


(七人兄弟なんです)


【多いな】はははっ♪


(落ち着きましたか?)


【ああ。だが、ここは何処だ?】


(蒼牙――アオ兄の剣の中です)


【そうか……思い出してきた……

私は死んだのだったな。

どのくらい経ったのだ?】


(俺が孵化する少し前だったそうなので、百四十年くらいだと思います)


【そうか……随分 眠ったのだな。

アオは、どうしている?】


(今は――説明するより、会いに行きますか?)


【そうだな。会えるのなら、頼む】


(行きましょう♪)暗室を出た。



「アカ兄、ありがとねっ♪」

(フジ兄、行っていい? ルリ、借りたいんだ)

(クロ兄、姫、ちょっと朱鳳、借りていい?)

(キン兄、今から行くねっ)

「ハク兄、おかえり~♪」


(ルリさん、俺の兄貴達です♪)


【笑える程そっくりだな。

もしや……あれがアオか?】


(アオ兄の体は今、浄化しないといけなくて……

中身は、こっちなんです)芳小竜(ルリ)を指す。


【そうか。同じような状況なのだな】

      (サクラ、誰と話しているんだい?)


(奥に行きますね。二人きりにしますので)


【ふむ……気を遣わせるな。ありがとう】

     (二人きりって……どういう事だい?)


サクラは奥の祈祷室に行き、

蒼牙と芳小竜を置いた。   (返事してくれよ)


 あ……もしかして……

(蒼牙、俺……できるかな?)     (サクラ?)


【可能かと存じます】   (蒼牙が話して――)


(やってみる。手伝ってね♪)(説明してくれよ)


【はい。勿論でございます】    (サクラ!)


サクラは術を唱えながら、蒼牙の上に

芳小竜(ルリ)を乗せた。


(サクラ!? 何を!?)


(アオ兄、この手 繋いで、引っぱってね♪)


(先に説明して欲しいんだけど――)手を繋ぐ。


(この方が、お話しし易いでしょ♪)


(えっ!? だから待って!

サクラ!? 何を――!?)


(引っぱって♪)


(え? ……あ、うん)引っ張る。


(は~い、完了♪ ごゆっくり~♪)


サクラは蒼牙を持って、出て行った。




(アオ……)


(ルリ……?)


(まさか、再び会えるとはな)


(本当に……ルリなのか?)


(残念ながら本当だ。

私は眠っていたから、昨日の事のようだが、長い時が過ぎたのだな……)


(ルリの歳を越えてしまったよ……

護れなくて……救えなくて……すまなかった)


(謝るな。アオの悪い癖だ。

すぐ自分を責める。

私は体を失ったが、死んではいないようだ。

これから蒼牙と共に、アオを護ってやる。

形は違ったが、ずっと一緒だ)


(ずっと一緒……そうか……)


(そうだ。私の願いは叶ったぞ。

しかし、『試練の山』とやらを越える事は出来なくなってしまったな。

アオの話は聞けなくなったという事だな?)


(いや、共に戦うなら話したい。

聞いてもらえるだろうか?)


(ふむ……ならば聞こう)


(アオ=メル=シャルディドラグーナ、これが俺の本当の名だ)


(やはりな。

あの時――キン様を間近に拝見した時、似ていると思った。

先程、アオの兄弟を紹介してもらっているうちに確信した。

キン様もいらっしゃったしな)


(流石、ルリは動じないな。

もうひとつの話は――

卒業前に言いかけた続きなんだけど……

やはり、きちんと言葉にしたい)


(いや、しかしそれは――)


(ルリ、生涯、共に歩んで欲しい。

俺の妻として)


(だから、それは……)


アオはルリの手を両手で包んだ。

(ここでなら、こうして触れる事も出来る)

引き寄せ、抱きしめる。


(ルリを失って、俺の心は色を失い、空っぽになっていた。

今やっと……充たされたよ……

もう、表情を取り繕う必要は無い。

ルリが俺の感情を揺り起こしてくれたから)


(アオ……王子なのに、死人を妻になど……

許される筈がなかろう?)


(結婚するもしないも自由だと父上が――王が言ったんだ。

俺には、ルリの他に考えられないんだよ。

ルリは……俺では駄目なのか?)


(そんな事……生きていた時も、結婚などと考えた事が無いのだ。

ましてや、死んだ今となって考えるなど……

だいたい、私なんぞに何が出来ると言うのだ?)


(俺の心の支えになれる女性はルリだけだ。

他の誰にも出来ない事だ)


(王子なのだから、可愛いくて、女らしくて、気立ての良い娘が選び放題であろう?

それなのに……本当に……いいのか?)


(何度でも言ってやる。

俺には、ルリしかいないんだ)


(やけに強引で、しつこいな。

アオらしくもない)


(当たり前だ。一度 失ったんだからな。

ルリを失って絶望し、失意のどん底にずっと沈んでいたんだ。

一生そこから這い上がる事など無いと思っていた。

この機に想いを伝えずしてどうする?

二度も失いたくは無いからな)


(まだ一度も得てはいないのでは?)


(……確かに)


(納得するのか?)


(その点は……

なら、改めて、これから再び双青輝として、そして、俺の妻として共に生きて欲しい)


(話を戻したか……)


(当然だろ。もう一度 言おうか?)


ルリが視線を逸らし、ため息をついた。

(困ったものだ……)


(何が?)


(断固 断るべきなのに……

アオの幸せを願う気持ちも大きいのに……

断れないのだ)


(俺の幸せを願ってくれるのなら、困らなくていい。

今、どうしようもないくらい幸せだから)


(アオ……私は……

今、どうしようもないくらい恥ずかしいぞ)


(何故?)


(捨てた筈なのに……

自分が女だと痛感している事が……だ)


(いつもルリは、ちゃんと女性だったよ。

『男勝り』も『女伊達』も、女性だからこそ言われる事だろ?

頑張ってる姿が可愛くて仕方なかったよ)


(最初も思ったが……マセたガキだな)


(それも……認めざるを得ないな)


二人、声を上げて笑った後、見詰め合う。


(このまま……

体に戻らず、ここに居たくなった)


(それは、やめておけ)


(ルリは嫌なのか?)


(逆だから――これ以上、言わせるなっ!)


(だから可愛いんだよ)


(言うなっ!)


(それなら――)(んっ……)



 ルリ、こらからずっと一緒だよ。

 もう離れないし、離さない。

 何があっても護ると誓うよ。




 アオ、大人になったのだな……

 変わらぬ芯の強さを包む優しさの

 とてつもない大きさを感じるぞ。


 ずっと……幼い頃からずっと、私は……

 まだ見ぬアオを求めていたのでは

 ないだろうか……


 この優しさと共に生きたい。

 だから私は、これから、

 アオの剣にも盾にもなる!




(ルリ……愛してる……)(ぁ……)


ルリは染まった頬を見せまいと、アオの胸に顔を(うず)めた。

アオは愛おしそうに、ルリの髪を撫で続けた。





桜「あとは二人の世界だから~

  ここまでねっ♪ 凜、わかった?」


凜「うん。そうするよ。

  あっ! サクラ! 何処へ!?」


桜「アオ兄に伝えないといけない事が

  あるんだから、ついて来ないでっ」


凜「でも、邪魔するのは――」


桜「とっても大事なのっ! じゃ~ねっ」


凜「ふ~む……」



?【属性の光と闇、天性の光明と闇障は、

  互いに相反するものであり、

  且つ、引き合い、惹かれ合うものである】


凜「えっ!? 貴方様は!?

  ――行っちゃった。

  あ、カルサイ様! 先程の方は?」


カ【私の従兄です】


凜「さっきの御言葉は?」


カ【いずれ判りますよ】


凜「なんで、それをここで?」


カ【本編外だからこそ、言える事も有るのです。

  私の息子の予言も有るのですよ。

 『二つの闇障と、その間に光が輝いた時、

  闇の神は、この世から消え去り、

  平和が訪れる』――と】


凜「二つ……

  サクラとシルバコバルト様ですか?」


カ【さあ……どうでしょう】


凜「待っ――消えちゃった……

  あ、妖狐王様、どうしたんですか?」


孤「これでアオは翼を得た……これからだ。

  これから、アオは羽ばたくのだ」ニヤリ


凜「えっと……私の報告を聞きに?」


孤「それは、またいずれでよい。

  アオの様子を見に来ただけだ。

  では、またな」


凜「皆さん、好き勝手言って

  消えちゃうんだからぁ」むぅ


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