双青輝2-アオとルリ②
区切りの良い所まで進めたら、勝手ながら、
年末年始は『ぱられる三界奇譚』のみの投稿と
させて頂きます。m(__)mスミマセン。
『第一から第三班に要請!
直ちに修練場に集合!』
教官の声が、夜の宿舎に響き渡った。
教官に率いられ、修練生達が飛び立つ。
魔物の気が、彼方の上空を埋め尽くしていた。
「第一班は、この場にて戦線維持!」
「はいっ!」
教官は他班を率いて遠ざかった。
「横展開! 一匹たりとも魔物を通すな!」
ルリの指示で班員達が展開した。
アオは少し前に出、様子を見ていた。
「アオ、この場合、横一列より――」
「うん。奇数番を一歩前、偶数番を一歩後ろに動かしたらどうだろう?
二列では、幅が足りないからね」
「突っ込んで来たら囲める、という事か?」
「そうなる前に蹴散らすから、まぁ、どっちでもいいけどね」
「そうだな……だが、並べさせておく」
「任せるよ」
ルリは班員達の方へと下がった。
魔物の一団が、向かって来た。
「まだ突っ込むなよ!」
班員に指示し、アオは更に前に出、蒼牙に気を込め、大きく振った。
蒼牙から水竜が放たれ、魔物を呑み込んでいく。
続けざまに水竜を放つ。
「術も使えるのか!?」
班員達を整列させ、ルリが寄って来た。
「まぁ、こっちの方が得意かな」
「帰ったら教えろ!」
「ああ、班員が突っ込む前に終わらせよう」
「そうだな。行くぞ!」
二人は班員達を留め、敵中に飛んだ。
アオが放った波動が、海原を拡げるように煌めき、魔物を包み、塵と化す。
水竜と波動を逃れた魔物達が迫り、接近戦となる。
蒼牙を手にしたアオと、愛槍を構えたルリが、背中合わせを基点に斬りかかる。
二つの青い煌めきが飛び交い、海原の如き輝きが何度も拡がり、闇黒色の点は、見る間に減っていった。
魔物が退却し始めた。
「そこの二人! 深追いは無用だ!」
将校が寄って来た。
「貴様等、所属は?」
「特級修練生、第一班長ルリ=カムルです」
「同じく、副長アオ=メルドブルングです」
アオは母方の姓で名乗った。
「修練生だと!?」
そこに大将が来た。
大将はアオに気付き、近付いたのだが、王族が身分を伏せて修練する事は慣習なので、目で敬意を表しただけに留めた。
将校が大将に敬礼する。
「二人は修練生でした!」
「そうか。勲章は修練場にて受けよ。
諸君らの今後の活躍に期待する。
応えられるよう、命を大切にな」
「はっ!」二人、ピシッと揃って敬礼!
この後も活躍を続けた二人は、そっくりな瑠璃色の鱗を煌めかせて戦う為、軍人達から『双青輝』と呼ばれる事となる。
「アオ、気を見てくれるか?」
毎日、ルリはアオから技や術を習っていた。
連日、修練場の上空で、額を付け合っていたので、その光景は何人もが見ていたが、あまりの気迫に、噂が立つ事など無かった。
年の離れた姉弟という噂なら、いくら否定しても跡を断たなかったが――
「流石だね。もう十分、自在に操作できてる。
じゃ、この剣に気を込めてみて」
「これは?」
「俺の蒼牙の仲間で『朱牙』。竜宝剣だ。
ルリは属性が火だから、この剣が適している筈だ」
「私は火なのか……どうして判ったのだ?」
「気を見れば判るよ」
「アオは水なのだな?」
「そうだよ」
「同じではないのか……」
「相棒としては異なる方がいい。
水が効かない相手に、二人共が水だと戦えないからね」
「そうか♪
しかし、鱗の色で決まるのかと思っていたぞ」
「鱗の色も無関係ではないよ。
ルリなら、きっと青い炎が出る筈だ」
「ますます面白い。では、やってみる!」
ルリが朱牙を構える。
「手に気を集めて――そう――それを朱牙に移す。
どんどん溜めて――振り下ろし様、一気に放つ!」
青く煌めく炎の帯が、真っ直ぐ飛んだ。
「凄い……初めてなのに……」
あまりの見事さに、二人共、暫し呆然。
「出来たぞ!」「やったな! ルリ♪」
抱き合って喜んだ。
♯♯♯♯♯♯
そうして、揃いの剣を持ち、実戦では『双青輝』と呼ばれて活躍し、ずっと一緒に過ごしていた二人にも、卒業の時が近付いた。
「入って来たのは随分と後なのに、卒業試験は同日だとはな。
まったく、アオは凄いな」
「ひとり残されても仕方ないから、受ける事にしたんだが……マズかったか?」
「いや、嬉しいよ。
お互い、一発合格で良かったな」
「ありがとう……そして、おめでとう。
でも……寂しくなるな……」
「しょげるな。また会えるさ。
だが……これから、どうするのだ?
医者に戻るのか?
……共に 軍人に――いや、何でも……」
「俺には、まだ、これから成すべき事が有る。
とりあえずは『試練の山』に合格しなければならないが――」
「成すべき事とは?」
「人界の任に就く。すぐではないが」
「最前線に赴くのか!? 軍医としてか?」
「いや、戦う為だ」
「私も共に戦いたい!
どうすれば行けるのだ?」
「俺も、ずっと共に居たい。
ルリは、あと『試練の山』さえ合格すれば、志願できる」
「ならば、義務赴任が終わり次第、その山に挑む!」
「ありがとう、ルリ……嬉しいよ。
義務赴任の間は、ひとりだが……
無事でいてくれよ」
奨学金を受けたルリは、一定期間、戦地に赴任しなければならなかった。
自分と互角の戦闘力を持つルリならば、大丈夫だと言い聞かせても、不安が拭えないアオは、ルリを抱きしめた。
「ルリは強い。でも……無茶するなよ。
ルリが試練の山に合格したら、話したい事が有る。
だから何が何でも生きていてくれ」
「大丈夫だ。無茶などせぬと約束する。
私もアオと、ずっと共にいたいからな」
暫くルリは、おとなしくしていたが――
「私は……両親が魔獣に喰われた時、女を捨て、軍人学校に入ったのだ……
生きていく為にな。
だから容易くは死なぬ。安心しろ」
「捨てなくてもいい。
女性としても傍に居て欲し――」
「それ以上は言うな。そろそろ離せ」
ルリは両掌でアオの胸を押し、体を離した。
そして、背を向け――
「少なくとも、義務赴任が終わるまでは戦わねばならぬ。
先の事を考えるのは、それからだ。
待っていて……くれるか?」
「もちろんだ」
自分の地位を利用すれば、義務赴任を帳消しにする事など容易い。
だが、それは自分自身にも、ルリにも、納得の出来る事ではない。
解っている。解っているんだ……
互いに、少しの間だと自分に言い聞かせ、特級修練を卒業し、それぞれの道に進んだ。
――――――
あ……ルリさんの記憶が……
蒼牙が一緒じゃないから、
見えなくなっちゃった……
でも、少しだけ伝わってきてる……
コレって……アオ兄を想ってる時?
離れてるルリさんの気持ちを
蒼牙が拾ってるのかな?
アオ兄も、ずっとルリさんの事……
だから、蒼牙が拾っちゃうんだね。
もう一度、後で探らなきゃ……
まずは、先に進もう。
凜「アオって……おマセさん?」
桜「そぉかも~♪」
凜「この時、8人歳だよねぇ?」
桜「うん♪」
凜「やっぱり、孵化する前から大人だったのね~
で、ルリさんは、この時 何歳?」
桜「言えな~い。
アオ兄より強いヒトなんだからねっ」
凜「そっか……お姉さんなのは確かよねぇ」
桜「普通に修練して、特級までいったら、
けっこう上だよ。これ以上、言わないよっ」
凜「うん。よく分かったよ」




