表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
215/429

愛溢れ11-蒼牙

 前回まで:サクラは虹藍と歩むと決めました。


♯♯ 魔竜王国 ♯♯


 上空で結界を補強していたサクラは、木々の隙間に小さな光を見つけた。


 竜宝、見~つけたっ♪


補強を終え、降下した。


 大きな神殿だね。

 でも、ここ……

 地図には神殿の印しか載ってなかった。

 こんな大きいのに、不思議……


 光は、あの蔵の中だね。


「失礼します」神殿の入口で声を掛けた。


「どなたですかな?」老齢の神官が現れた。


「天竜のサクラと申します。

竜宝を探しているのですが、こちらの蔵を拝見する事は出来ますか?」


「サクラ――メルドブルング教授殿でしょうか?」


「あ……はい。そうです」赤面。


 学長さん、どこまで広めちゃったんだろ……


「どうぞ、こちらに」

神官は奥へと入って行った。


奥には、大きな竜が二体、並んで座していた。


 大婆様よりは、お若いけど、

 かなりなお歳だよね……


「長老様、お客人で御座います。

王立大学のメルドブルング教授――と申すより、天竜王国のサクラ王子様と申した方がよろしいでしょうか」


「えっ……それを何故……」


「こちらは、魔竜王族の長老様で御座います」


「これは失礼致しましたっ!」跪き、礼!


地図には神殿名が記されてはいなかったが、そこは、天竜の『長老の山』に当たる、『老竜の神殿』であった。


「よいよい。

内々しか知らぬ、名もなき神殿じゃ。

楽になされよ。

して、如何用ですかのう?」


「はい。

私は、竜宝を求めて、天界より参りました。

こちらの蔵に、求めている物の ひとつが有るようですので、出来ましたら、お譲り頂きたく、お願いに参りました」

虹藍女王から受けた許可証を提示する。


「そうか……虹藍とも会うたのか。

何なりと持ってゆくがよろしいぞ。

ただ……ひとつ頼みがありますのじゃ」


「何でしょう?」


「虹藍には、もう家族が居らぬ。

ひとりきりで国を治めておるのじゃ。

どうか……友となってはくれまいか?」


「もう、既に友達です」にこっ


「そうか……それは良かった」にこにこ


「はい、いずれ、両国の発展の為に尽くしたいと存じております」


「そうかそうか。

いつでも、何でも、お持ちなされよ。

年寄りの話し相手なども、頼んでもよろしいかのう?」


「喜んでっ♪

どうか、魔界の事をお教えください」


 そしてサクラは、長老から魔竜王国の古い話を聞き、また来る約束をして、蔵に向かった。




 蔵では、いつものように竜宝達が輝き、騒ぐのを宥め、浄化した。


恵雨璧(ケイウヘキ)いる?」


しーん……


「恵雨璧の居場所、知らない?」


【東の国境付近に御座います、小さな祠に、沢山の璧が奉られております。

何か手掛かりが掴めるやもしれません】


「ありがと♪ 留尊鐸(ルソンタク)♪」


【私の名を……有り難き幸せに存じます】


「みんなも、ありがと♪」光に向かって歩く。


「みんなが、ここに居る事、ちゃ~んと覚えたからね~♪

その時が来たら助けてねっ♪

あった♪ 蒼牙の切先♪」


 蔵を出、窓越しに、蒼牙の切先を掲げ、礼をして飛んだ。




 ソラ達が引っ越した今も、拠点として使わせてもらっている屋根裏に行くと、蒼牙の切先も仮止めした。

そして、置いていた竜宝を全て抱え、サクラはアカの工房へと曲空した。



――赤虎工房。


「アカ兄、コレ」包んでいた緑の竜綺(リュウキ)を開く。


「蒼牙だな?」


「うん。魔界に有ったんだ」


「再生蒼牙を持って来てくれ」


「うん」仮止めした蒼牙を渡す。


「これは……誰か入っているな」神眼発動。


「そうなんだよ。アカ兄、誰だか判る?」


「蒼牙に天竜の魂……

という事は、アオの相棒かもしれん」


「アオ兄に相棒さんなんていたの?」


「サクラが孵化する少し前にな」



――――――



 アカは鍛冶の修行を優先していた為、修練は他の兄弟に比べれば、かなり遅く、七十歳(七人歳)で入った。

しかも、修練よりも鍛冶修行を優先したままだったので、特級卒業は成人の儀の直後、百五十歳(十五人歳)であった。


 アカは武力は突出していたが、鍛冶の修業を主とし、軍事大学にも通っていた為、少しでも自由な時間を得ようと、ずっと第一班の副長をしていた。



 他の兄弟が第一班長を維持し、卒業したにも拘わらず、アカとしては最強だと信じているアオが、特級修練でも副長を続けている事が不思議でならず、他人の動向には無頓着なアカだが、アオの事だけは気に掛けていた。


 アカが上級に上がったばかりの頃、アオは特級の第一副長で、その班長と組んで実戦に出ており、二人の活躍は軍内に轟いていた。


 そして、アオの相棒は修練卒業の数年後、戦死したという噂を耳にした。

その噂は、当時、兄弟の中では唯一修練をしていたアカだけが知り得たものだった。

アカはアオを心配し、探したが、アオの消息は掴めなかった。



――――――



「サクラ……俺の勝手な想像だが――」


「ん?」


「隠さぬ事にした。前に進む為に。

アオの気持ちも、前に向かせたい。

サクラの気持ちを少しでも楽にしたい」


「アカ兄……」


「アオには特級修練の頃、相棒が居た。

あのアオを副長にしていた、第一班長だ。


アオが姿を消したのは、修練卒業から五年程経った頃だった。

丁度その頃、その相棒が死んだという噂を聞いた。

しかも、その場には、キン兄とアオが居たのではないか、とも。


数年離れていたとは言え、息の合った相棒を助けられず、医師でありながら救えなかった。

その事が、アオを変えてしまったのだと、そう思っていたのだ」


「そんな事もあったんだ……」


「『も』とは?」


「アオ兄が隠してる色は、深い愛と悲しみ。

友愛じゃなくて恋愛の愛……

大切な人を失った悲しみ……

だから、恋人さんだと思うんだ」


「そうか……

念の為、キン兄にも確かめてくれ」


蒼牙をサクラに戻した。


サクラは受け取った蒼牙を見詰めた。


「アカ兄、神眼と掌握、一緒にお願い。

もっと見たいんだ」


「ふむ。暗室に行くか?」「うん」




♯♯ 深蒼の祠 ♯♯


 キンがアオの体に浄化の光を当てていると、サクラが現れた。


「キン兄、コレ見てくれる?」


「蒼牙か!?」受け取り、気を探る。


「この気……

ルリ殿は、ここに込められていたのか……」


「やっぱり、ルリさんだったんだ」


「見えたのか?」


「アカ兄と一緒に見たんだ。

竜の女性だって事は判ったけど、アカ兄も知らないヒトだったから、それ以上は探れなくて……」


「それにしても……この状態は……」


「込め方が不完全だよね?

不安定って言うか……ギリギリ保ってる感じ。

それもあって、掌握を使えなかったんだ」


「そうだな。触れようが無い状態だな。

この状態では、ルリ殿が目覚めたとしても、記憶の保証は無い」


「俺を中継すれば大丈夫だよね?」


「サクラ、しかしそれは――」


「アオ兄と同じ心の傷を負う事になるんでしょ? 俺の場合。

でも、他に方法は無いよ。

アオ兄の心の傷が消えるなら、

俺、何でもするよ!」


「私に出来たなら――」


「ありがと、キン兄。

今の俺なら大丈夫だと思うんだ。

ルリさんは、アオ兄の恋人さんで、既に亡くなってる……それだけで十分、アオ兄の傷の深さが解るから……

俺も解るようになったから。

あ……アカ兄は、相棒さんだって言ってたけど、ルリさんは、相棒さんでもあったの?」


「そうか……

二人は軍人達から『双青輝(ソウセイキ)』と呼ばれていた」


「ルリさんの事、よく知ってるの?」


「いや……

私がルリ殿と直接会ったのは、彼女が命を落とした戦いの時だったからな。

護る事が出来なかった……

今でも悔やまれて仕方が無い」


キンは更に蒼牙の気を探った。


「サクラ……

これが出来るのは、確かにサクラだけだが……

この記憶……本当に中継して貰っていいのか?」


「うん。アオ兄は俺だから、何でもするよ」

決意の眼差しでキンを見詰めた。


「ありがとう。頼りにしている。

私には何も出来なくて……本当に、すまない」


「そんなこと……俺はキン兄がいないと何も出来ないんだよ」


キンは自嘲気味にフッと笑った後、真顔に戻り、目を伏せた。

「辛い記憶だが――」


「アオ兄の事だから。俺、頑張るよ」


「では、手を重ねて。

ルリ殿と蒼牙の記憶を流すが、ルリ殿の側からは触れぬように。

蒼牙から、ルリ殿の記憶を引き寄せるのだ。

いいな?」


「うん」


 サクラは、キンの手に掌を重ね、蒼牙の記憶の中に残る、アオの心に気持ちを重ねた。

そして、ルリの記憶を受け入れるべく、心を開いた。


アオが感じた悲しみや苦しみを、等しく受ける覚悟を以て――





 屋根裏から曲空しようとしたサクラを掴まえた。


凜「サクラ! 待ってってばっ!」


桜「なんで、追っかけて来れるのぉ?

  凜って、やっぱり魔物なの?」


凜「魔物じゃないけど、

  そこ、ツッコまないの!

  サクラがよく言ってる、

 『アオ兄は俺で、俺はアオ兄』

  って、どういう事?」


桜「まんまだよ~、そのうち判るよ♪」


凜「アオは嫌がらない?」


桜「どゆイミ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ