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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
214/429

愛溢れ10-サクラの恋

 最近、魔王は?

――書いていないだけで、襲撃されています。

  妖狐王軍が頑張っているようです。


♯♯ 長老の山 ♯♯


「ソラさん、少し、よろしいかしら?」


「ボタン様……どうかしましたか?」


「昨日、魔竜王国の大臣様が御見えになられて、サクラ様の御婚約は決まっていらっしゃるのかと、御尋ねになられたそうですの」


「はい……」


「ですので、ソラさんの御気持ちを確かめたくて……

正式な事になさるのでしたら、もう、時間があまり有りませんわよ」


「私…………皆さんと違って……

王子様に一生ついていこう、って覚悟があって、ここに来たんじゃないんです。


友達としてなら、サクラくんの事、大好きなんだけど……

恋人とかって考えられなくて……

だって王子様なんだもん。

いろんなサクラくんを見て、カッコいいと思ったけど……

でも、普通の生活を捨ててなんて、やっぱり私にはムリだし……

だいたい、お妃様なんてガラじゃないし……


だから……それもあって、ここに来るのも、とっても迷って……

でも……ウェイ先生の故郷が焼け野原になってるの見て、私の街も、こうなってしまうのかな、って怖くなって……

サクラくんに、すがり付きたくなってた時に、ウェイ先生が、ここにいるって聞いて……

それで……来てしまったの……」


「そうでしたのね……」


「はい……でも……護ってもらってるのに、そんな事……とてもじゃないけど言えなくて……」


「随分、悩んでいらしたのね……

サクラ様には、私からお伝え致しましょうか?」


「いえ、私が言わなければならないと解っています。

その機会が与えられた、って気がします」


ボタンがハッとする。


「ソラちゃん、大丈夫だよ。

思い詰めないでね」


ソラは背後からの声に、目を見開き、

「サクラくん……」

躊躇いつつ振り返る。


「俺、言ったでしょ?

俺に目が向いてなくてもいい、って。

だから、今まで通り、ここに住んでね」

数歩 近寄って止まる。


「俺、強いから、だいじょぶ♪」にこっ


「……ごめんなさい」


「謝らないで~。だいじょぶだから、ね?

俺は王子を辞めるなんて出来ないから、普通を手離せないソラちゃんと、おんなじだよ。

俺は、どんな形でも、ソラちゃんが幸せに生きててくれたら、それでいいんだ。

だから、気にしないでね」にこにこ


「サクラくん……本当に、ごめんなさい」


「だから~、いいって~。

友達は続くでしょ? なら、俺、じゅーぶん♪

じゃ、また明日ねっ♪」

サクラは、ソラに向かって、にこにこと手を振りながら飛んで行く。


「サクラ様っ!」ボタンが追って飛んだ。




「サクラ様、お待ち下さい!」


「ボタンさん、俺、本当に大丈夫ですから。

ソラちゃんの気持ち……知ってたから。

キン兄にも、心配しないでって伝えて下さい」


「出過ぎた事を……お許しください」


「ううん。ご心配ありがとうございます。

俺、ランの事も嫌いじゃないし、俺が魔竜の王様になったら、ソラちゃんが狙われる事もなくなるでしょ」にこっ


「そこまで、ソラさんの事を――」


「幸せにする方法は、いろいろ有るって事♪

俺は、三界の為に生きてるんだから~

王子って、そういう存在でしょ」にこにこ


「サクラ様……」


「ボタンさん、ありがとね。

俺、行かなきゃなんないから。じゃ~ねっ」

手を振りながら消えた。


 サクラ様……その笑顔は……

 泣き顔にしか見えません……



♯♯♯



 人界と魔界の境界で、ため息ひとつ……


「落ち込むの、おしまいっ!」

サクラは顔を上げた。


(ラン、今、会える?)


(いいわよ♪)


(そっち行くね)魔竜王城に曲空した。



 虹藍は自室に居た。

「いらっしゃい♪ 今日は、どうしたの?」


「『どうしたの?』って……

昨日、大臣さん来たんだよ」


「そうなの? 何の為に?」


「じゃ……ランの希望って訳じゃないんだ……」


「だから何?」


「俺に婚約の予定は無いのか、って確かめに来たんだよ」


「え? ……それって……」両掌で頬を覆う。


「だから俺、ランの気持ち、確かめに来たんだ。

無理矢理だったら可哀想だから」


「サクラには、お相手……いないの?」


「いないよ」たった今、フラれたし~


「こっちに来てくれるの?」


「それもいいかな~」


「私の事は?」


「正直、まだ俺コドモだから……

そゆの、よく分からないけど……

嫌いじゃないよ。友達ってなら好き♪

ランは?」


「私……言葉にしたら迷惑かけるから……」


「今なら、俺しか聞いてないでしょ?」


「いいの?」


「うん」またフラれるのかなぁ……


「あの……ね……」


「うん」流石に、続けて二人に、となると――


「東の国で助けてもらった時からずっと――」


「うん……」俺、泣いちゃうよぉ……


「ずっと……好きだったの!」

顔を覆って、後ろを向いた。


「え!?」ホントにホント?


 なんで? あ……


虹藍が、不安そうにサクラを見上げた。


「えっと……ラン、俺なんかの、どこが?」


「優しくて、聡明で、強くて、格好よくて、とっても綺麗なんですもの!」


 そんなに誉められても……あは、は、は……


「もうっ! なんとか言ってよ!」真っ赤。


 この色……そんなに俺なんかの事を……

 だったら、ちゃんと応えなきゃ。

 この結界の中なら、たぶん大丈夫だから――


「ラン、俺にはまだ、やらなければならない事が有るんだ。

それが終わったら、この国の為に頑張るよ。

ランと一緒にね」にっこり


「いいの? 本当に、それでいいの?」


「今、そうしたいって思ったんだ。

これ以上言ったら、ランに危険が及ぶから……

だから言えないけど、待ってて欲しいんだ」


「はい♪ お待ちしております♪」にっこり


「あ……コレ、着けてくれる?」


「腕輪? 綺麗ね♪」着けて、眺める。


サクラも着けた。


「お揃いなの?」頬を染める。


「そう。コレも竜宝なんだ。

着けている二人だけを繋ぐんだよ。

だから――」サクラが緊張を解く。

(こぉやって話が出来るんだ♪

布石像より話し易いでしょ?)


(うん♪ よく聞こえるわ♪

嬉しい! いつでもお話しできるの?)


(できるよ♪

特に、この部屋なら何でも話してね。

相変わらず、凄く強い結界だからね~)


(でしょ♪

あ……この布石像は持ってっちゃうの?)


(置いといていいの?)


(よかった~♪ また来てくれるのね?)


(もちろんだよ♪)こんなに喜んでくれて……


(あ……

腕輪 貰ってから、好きって言えばよかったぁ)


 だったら、俺、本当に――って、ラン?

 どうして睨んで――あ……


 ふくれちゃう女王様ってカワイイ~♪


(ニヤニヤしてぇ、イジワルなんだから!)


 上目遣いで睨まないでっ!


(もうっ!)


 可愛すぎて限界だよぉ!


(ごめんよぉ、カンベンしてぇ~

俺が好きになったら、標的にされちゃうから、ダメなんだってばぁ)


(あ……)また真っ赤になった頬を掌で覆った。

(でも、ここでなら……)


(外でも好きが溢れちゃうからっ)


 もぉ遅いかも……どぉしよ……


 俺って……フラれたばっかで、こんな……

 しかも同じ失敗を、またぁ~

 ダメダメな大バカだよぉっ!!!


(ダメだぁ……)頭抱える。

(ちょっと宝物庫 行ってくる)(キョッ)――


(え? 待っ――)サクラの腕を掴む。


――(クウ)



(――って! 一緒に行くから!

城内をひとりで――って、ここ……)


 宝物庫だわ!

 サクラは、こうして移動しているのね……


(何するの?)あ……真顔……凛々しい……


サクラは、ランの横で上方を睨む。

(この国全体に結界を張るんだ。

俺のせいで滅ぼす訳にはいかないから)


(そんな事が……)やっぱり凄い……


(竜宝達、可能ですか?)

問いかけると同時に、大器を発動する。

知識と情報の海に漂うような感覚に襲われる。


【我等が王、私と、天界に御座います伐鼓(バッコ)が力を合わせれば、広域の結界が可能と成ります。

伐鼓の数だけ、結界を重ねる事が出来ます】


翠惺玉(スイセイギョク)、ありがとう。

それなら、長老の山に有るね)


【はい。翁亀様の蔵にも御座います】


(他に必要な物、有る?)


五彩(ゴサイ)が御座いましたら、出入り用の鍵と成ります】


(長老の山で使っている鍵だね。

代わりになる物は無いの?)


三彩(サンサイ)でしたら、代わりと成り得ますが――】


(竜宝の国だね。つまり、形が無いのか……

じゃあ、翠惺玉、鍵は後にして、先に結界だけお願い出来る?)


【はい。活躍の場をお与え頂き、光栄の至りに御座います】


(じゃ、すぐに伐鼓を持って来るね)

(ラン、ちょっと天界。すぐ戻るから)曲空。




 言った通り、サクラは、すぐに戻って来た。


(じゃあ、翠惺玉と伐鼓達、お願いね)


サクラが術を唱えると、伐鼓が、ひとつ、またひとつと消えていった。


最後の伐鼓が消えると――


(ラン、翠惺玉を神殿に置きたいんだけど)


(ついて来て……)

 どうしよう……怖いくらい格好いい……


(ありがと)


 神殿に行き、祭壇に翠惺玉を奉ると、サクラは、もう一度 術を唱えた。

(翠惺玉、魔王との戦が終わる迄、この国を護ってください)


【お任せください。我等が王】


サクラが振り返った。

(この結界の鍵は、これから作るから、今夜は出入り出来ないけど、大丈夫?)


(これからの時間なんて、誰も出入りしないわ)


(よかった)にこっ


(よかったぁ、やっと笑ってくれた♪)


(あ……ごめんね、ラン。

ホントにヤバかったから……)


(ありがとう、サクラ♪

やっぱり格好いいわ!)にっこり♪


サクラは照れまくりながら、

(じゃ、鍵、大急ぎで作るから!)消えた。


(ねぇ、今度は、どこに行くの?)


(竜宝の国だよ。待っててね~♪)


 忙しい方ね……


クスッと笑うと、女王に戻り、神官長を呼んだ。


「先程、この翠惺玉に依り、我が国全土に強固な結界を施して頂きました。

以後、この竜宝を、しかと護って下さい」


「畏まりました」恭しく礼。




 そして、謁見の間に移動し、大臣を呼んだ。


「御呼びで御座いますか? 女王陛下」


「そなた、昨日、天竜王国に行っていたのですね?」


「はい……

報告が遅れまして、申し訳御座いません」


「先程、サクラ様より、直々に御返事を頂きました」


「勝手な事を致しまして、誠に申し訳御座いません」


「よい。感謝しています」


「は? と、仰られますと……

善き御返事が頂けたので御座いますか?」


「今は、天竜の王子として成さねばならぬ事が有る故、直ぐには話を進める事は出来ぬが、いずれ共に、と仰って頂けました。

そして、両国が所蔵する竜宝を用い、我が国全土に、強固な結界を施して頂きました。

今宵は出入り出来ませんが、よろしいですね?」


「はい。そのように、各所に申し伝えます」





 今回、ちょっと長くなりましたが、

腕輪を渡す相手が変わってしまった

サクラなのでした。



桜「もおっ! そっとしといてよぉ!」


凜「あ、サクラ♪ 虹藍女王の事は――」


桜「かわいいから――って!

  もおっ! 聞かないでよぉっ」


凜「あらら~♪ お幸せに~♪」


桜「や~ん」曲空!


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