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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
213/429

愛溢れ9-虹藍とサクラ

 次は、サクラの方を――


♯♯ 魔竜王国 ♯♯


 竜宝を探して飛んでいるサクラの携行用千里眼が着信を告げる。


「キン兄、どしたの~?」


『ホントだ、サクラだ♪』


「ハク兄? なぁに?」


『天界に戻れねぇか? 頼みが有るんだ』


「うん♪ いいよ~♪」



 ハク兄に会うなら、先にシトリンさんトコ

 行ってみよ~♪ 器、できてるといいな♪



――集縮工場横の小さな陶芸工房。


「あ♪ サクラ様♪

やっと納得いく物が出来ました!」


「良かった~♪ すぐに見せてくるねっ♪」



――竜宝の国。


 唔器呟(ゴキゲン)に見せると――


【本当に、この色……出しおったか……】


すんなり入ってくれた。


「じゃ、護竜槍、お願いねっ」


【はい。神竜様と話して参ります】


 ハク兄へ曲空♪――



 ハクは翁亀の所に居た。


「ハク兄、コレ、唔器呟って竜宝。

竜宝の魂を運べるんだ。

今、護竜槍が入ってる。

神竜さんと直接 話してもらってね」


【ハク様、お連れくださいますよう、宜しくお願い致します】


「竜の話を聞かねぇ頑固ジジィなんだ。

宜しく頼むよ」


【頑固ジジィで悪かったな】フンッ!


「唔器呟さんの事じゃないからぁ」


【さっさと行け!】【申し訳ございません】


「ハク兄、がんばってね~」



♯♯♯♯♯♯



 魔竜王国の女王・虹藍(ホンラン)は、謁見が途切れ、窓の外の桜並木を眺めていた。


 今は、とっても生き生きとした緑だけれど、

 早く、また咲かないかしら……

 サクラ……今、何してるのかしら?


 あらっ? あの煌めきは……

 他にはいないわ!


 サクラ……まだ探してるのね……

 お手伝いする方法はないのかしら……


 それにしても、やっぱり綺麗だわ♪

 初めて見た時も、あの状況なのに

 美しさに圧倒されたもの!


 それに……強くて、格好よくて……

 とっても優しくて!



――――――



 魔竜王国の女王に即位したばかりの虹藍は、人界での戦の様子を直に見たいと、大臣の反対を押切り、東の国を訪れていた。


 都にて、人々を操り、戦へと駆り立てる禍々しく強い気を察知し、帰国を決めた時、闇黒色の魔物の大群に襲われ、追われているうち、護衛兵と逸れてしまった。



 どうしよう……こんな知らない土地で……


 必死で逃げる虹藍の背後に魔物が迫った。

その時、一陣の花嵐が虹藍と魔物の間に舞った!


――虹藍には、そう見えた。


そして、迫っていた魔物が光に包まれ、かき消えた。


「だいじょぶ? ケガない?」


桜色の絹織物のように美しい竜が、虹藍を、その背に庇っていた。


虹藍が頷いたのを見て、

「俺の背に乗っててね」微笑んだ。


虹藍は、邪魔にならないよう人姿になり、その背に、しっかり掴まった。


「そんな緊張しないでいいからねっ♪

万有甲(バンユウコウ)、展開っ♪」


虹藍は淡い光に包まれた。


「これで落ちないからね♪」にこっ


綺桜の竜は、美しい鱗を陽に煌めかせ、舞うように次々と魔物を蹴散らしていった。


 綺麗……


こんな時なのに、虹藍は怖さも忘れ、ただただ美しさに魅了されていた。


「おしまいっ♪」


あっという間に、魔物の群れは全滅した。




 綺桜の竜は森へと降下し、虹藍を降ろすと、人姿になった。

鱗と同じ色の、結い上げた長い髪が風に揺れる。


「魔物に気づかれないよぉにねっ」

声を潜め、人差し指を口の前に立てる。


「人界は魔物がいっぱいで危険だから送って行くよ。

どこに行ったらいい?」


魯茉丹(ロマニ)の国、火神子(ヒミコ)山の麓に――」


「あ~、あの煙が出てる山?」


「そう、洞窟があるの」


「わかった~♪ 行こっ♪」手を差し出す。


その手を取った瞬間、山の麓に立っていた。


「ここでいいの?」洞穴を指す。


「もう少し北の洞窟なの」


「うん♪」竜体になる。「乗って♪」


ゆっくり北に向かう。


「あの……私はラン。あなたは?」


「俺、サクラ」


「天竜なの?」


「そぉだよ♪ そぉ聞くってことは魔竜?」


「ええ、そうよ。

サクラさんの鱗、とっても綺麗ね♪

キラキラして、とっても格好いいわ♪」


「ありがと♪ 敬称いらな~い。

ランちゃんの鱗、深い海みたくて綺麗だよ♪」


「ありがと♪ 私も敬称いらな~い」


二人で笑った。


「サクラ……友達になってくれる?」


「もう友達でしょ♪ ラン♪」


「また来れたら、案内してくれる?」


「もっちろ~ん♪

中の国の、竜ヶ峰近くの洞窟に住んでるから」


「うん♪ 一番 高い山ねっ」


「そ♪」


「あっ、もうすぐ洞窟があるの」


「ランは、ここの洞窟に住んでるの?」


「ううん、通路よ。

魔竜王国の近くに繋がってるの」


「魔界に行けるの!?」


「竜宝があれば、ね」


「竜宝、なんて名前?」


解空鏡(ゲクウキョウ)。それじゃ……またね……」


「うん♪ またねっ♪」にこにこと手を振る。


虹藍は何度も振り返りながら、洞窟を進んだ。



♯♯♯♯♯♯



 そして、桜が咲く季節――


虹藍は王立大学に新しく迎えた学長の挨拶を受けていた。


「これから、天竜王国で蓄えた知識を我が国に広めてください」


「はい。謹みまして職務に励みます」


「学長殿、天竜の――あの花のような美しい鱗の御方をご存知ですか?」


「桜色……その稀なる御色は、天竜王国の第七王子、サクラ様で御座いましょう。

只今、王子様方は人界にいらっしゃる筈で御座います」


「そう。ありがとう」にこっ♪




 そのやり取りを聞いていた大臣は、密かにサクラ王子について調査した。


報告を聞いた大臣は、

「物凄過ぎる……」

それ以上、言葉が続けられなかった。




 その後、戦禍が激しくなり、自国を護る事に専念せねばならず、虹藍が再び人界を訪れる事は叶わなかった。


天竜王に会い、サクラ王子にツバを付けておきたい大臣も、そうする事が出来ないままであった。




 先日、サクラが竜宝を求めて訪れた時、虹藍が喜んだのは勿論だが、大臣も執務室で小躍りしていた。



――――――



 その大臣は――


魔竜王族が、長老達を除けば虹藍女王しかいない、この国には、サクラ王子を迎える他に道は無いと、独断で再び天竜王国を訪問していた。


「誠に不躾で申し訳ございませんが、サクラ様におかれましては、御婚約など、既にお決まりでございましょうか?」


この場で首を撥ねられても致し方無し、と覚悟して尋ねてみると――


「サクラは、まだまだ子供ですので、まだそのような話はございません。

しかし……婚儀に関しては、本人に任せると決めておりますので、私から話を持ち込むつもりもございません。

女王陛下は、サクラよりもお若い。

焦らず、成り行きを見守っては如何でしょうか」


サクラの父・ギン王が、そう、にこやかに答えたので、大臣は一先ず安堵した。

そして改めて、天竜王国との親密化を進め、サクラ王子を迎えようと心に決めたのだった。



♯♯♯♯♯♯



 サクラが魔界に戻って飛んでいると、再び携行用千里眼が鳴った。

「ハク兄、なぁに?」


『他に手は無ぇのか?』ため息。


「もぉコレしか……うん。

そっち行くけど、俺、下層までしか行けないからね」曲空。




 下層神界入口でハクが待っていた。


「闇も光も、おもいっきり使うから、ちゃんと浄化してね」


「ここでか?」


「深蒼の祠だと、キン兄に心配かけちゃう~」


「そっか……すまないな。

浄化なら、神様、呼んだ方がいいんじゃ――」


「だ~か~らぁ、みんなにナイショ!」


「そっか……」


「最後の手段だからね。

神竜の魂、助け出すからねっ」「えっ!?」


止めようとするハクを無視して、サクラの纏う気が変わる。

「治癒での浄化で十分ですので、即、お願い致します」

光を纏い、闇に変える。


目を閉じ、術を唱え――「見つけた!」


穴を穿ち、光の念網を放ち、籠に掛け、引く!

念網をハクに託し、次を放つ!


数回 繰り返した時、魔物が気付き、迫った!


「最終っ!」


最後の網を引き、強い光を浴びせ、穴を塞いだ。

振り返り、沢山の籠を、強力な浄化の光で包む。


「あと、お願い~」サクラが倒れた。


ハクが浄化の光で包むと、すぐに気付き、

「みんな連れて……シトリンさん達の神様もいっぱい連れて、説得に行ってね」消えた。


(サクラ! 大丈夫なのか!?)


(あとは自力で浄化するよ。

やんなきゃなんないコトいっぱいなんだ。

ハク兄、がんばってね~)


(サクラ、ホントすまない!

必ず護竜槍を手に入れるからな!)


(うん。俺、そっち行けなくて……ごめんね)


(任せろ、今度こそだ。少しは休めよ)


(ありがと♪ ハク兄♪)





 王立大学の学長さんは、どうやら天竜王国から

魔竜王国に行ったようです。

どうやって行ったのか――は、またいずれ。


凜「あ……シルバコバルト様……」


始【また来やがった】チッ


凜「それ……サクラでしょ?」


始【眠らせて浄化してるだけだっ!

  どっか行きやがれっ!】


凜「やっぱり、お優しいのね~♪」


始【うっせーっ!】


凜「はいはい♪ サクラをヨロシク~♪」


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