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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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愛溢れ5-ウェイレイ

 年末年始……どうしましょ……


 サクラは人界と魔界の境界に置いた布石像(フセキゾウ)に曲空した。


そこで暫く佇んで考え込んでいたが、意を決して顔を上げ、ソラの部屋に置いた布石像に曲空した。


「こんにちは♪」


「そろそろ来ると思ってたわ♪」


「ソラちゃん、やっぱり 天界には来てくれないの?」


「ん~とね……やっぱり行けない……」


「なんで? 俺には言えない?」


「言ったら迷惑かけそうだから……」


「俺、迷惑かけるの得意だけど、迷惑って感じたことないから。ねっ?」


「だって……ホントに迷惑だから……」


 これまでは、ここでやめてたけど、

 もぉ引き下がってる場合じゃないんだ。


と、サクラは頑張って食い下がり、やりとりを続けた。


「いつもそんなふうには聞かないのに、今日はどうしたの?」


「こないだ、クロ兄の大切な人が、魔物に襲われて死にそうになったんだ。

俺達と接触すると、魔王に目を付けられる。

だから……心配なんだよ」


「サクラくん……」


「今、兄貴達の婚約者さん達は、みんな、おんなじ所にいるんだ。

何重にも結界が張ってあって、天界でイチバン安全な所に。

ソラちゃんも、俺と接触してしまったから、そこで暮らして欲しいんだ。

もちろん、おじさんと、おばさんにも」


「恋人ですらないのに?」


「なら、恋人になったら来てくれる?」


「そんな、簡単に……」頬を染める。


「俺……この戦が終わるまで、そゆのナシって決めてた。

でも、護るために必要なら……

ソラちゃんが、俺でいいと思ってくれるなら、恋人になる」


「待って。それって……

サクラくんの気持ちは?」


「……そうだね、イキナリだよね。

ごめんね。ちゃんと話すよ」


 でも、好きだとは言えないけど……


「俺は、一度 決めた事は、絶対 守る。

でも、初めて揺らいだんだ。


クロ兄の大切な人は、まだ正式に婚約者じゃないんだ。

でも、もう何度も命を狙われてる。

今回、本当に危なかったから……だから……


自分が決めた事とか、どーでもいい。

なんとしても護りたい。そう思ったんだ。


もし、ソラちゃんに好きな人がいるのなら、その人と一緒に来てくれたらいい。

護れるなら、俺に目が向いてなくても構わないんだ。


今、誰か探してるんだよね?

その人が好きだから……だから、天界には来れないんだよね?


俺が、その人を探すから。

天界に来てよ……お願いだから」


「サクラくん……知ってたの?

私が人を探してる事……」


「考えて、辿り着いたんだ」


「そう……」


「ねぇ……ウェイミンさんって知ってる?」


「えっ!? どうして……?」


「良かった……知ってるんだ……」


「良かった?」


「うん。天界にいるんだ。

ソラちゃんに行って欲しい所に」にこっ


「先生……天界にいたの?」


「そっか。学者さんだもんね。先生なんだ……

ソラちゃん、魔宝学じゃなかったの?」


「古典文学よ。尊敬してる先生なの。

お休みの時に帰省して、それっきり戻って来なくて……


この前、サクラくんの講義 聞いてたら、どうしても会いたくなって……

先生の故郷に行ってみたら、焼け野原で……

でも……諦めたくなくて……」涙が流れる。


「ごめんね。もっと早く言えば良かったね」


「ううん……私が相談しなかったから……」


「会いに行く?

住むとかは、後で考えたらいいから」


「うん! 奥様も一緒に、いい?」


「へ!?」


「友達のお姉さんが、先生の奥様なの♪」


「ソラちゃんの好きな人じゃ――」


「ないわよ!」今度は笑いだした。


「そぉ……なんだ……」


「先生の家に行きましょ!♪」



 ソラがサクラの手を取る。

二人でウェイミンの家まで飛んで行った。

「レイ姉さん! 天界に行きましょ♪」


(やつ)れた女性が驚いて出て来た。

「どうしたの? ソラさん、その方は?」


「ウェイ先生の居場所を知ってる人♪」


「本当に……?」大粒の涙が溢れ落ちた。


「とりあえず行きましょ♪」



 サクラは二人の手を取って、布石像から布石像へ、そして長老の山へと曲空した。

書庫の中庭に出ると、ウェイミンが、大池で翁亀と話していた。


「ウェイミンさ~ん!」大きく手を振る。


振り返ったウェイミンが目を見開き、慌てて転びそうになりながら駆けて来た。


レイが涙を煌めかせながら抱きつく。


サクラとソラは、目を潤ませて二人を見ていた。



「ここ、大学もあるからさ。編入しなよ」


「うん」


「おじさんと、おばさんに話しに行く?

それとも、ご両親に先に話す?」


「えっ!? 両親に!?」頬が染まる。


「ん? だって、引っ越すなら、知らせとかないと――」


「あっ! そっちねっ!」焦りまくり。


「サクラ、何の騒ぎだ?」クロが来た。


「ウェイミンさんの奥さん、見つけた~♪」


「え!? 奥さん、いたんだ……」


「クロ兄、姫がお待ちかねだよ♪」


「ばっ! んな事、ヒトいるトコで言うなっ!」

逃げるように飛んで行った。


 追い返し成功♪

「家、王都だったよね? 行こっ♪」

手を取って……見つけたっ♪ 曲空した。



――ソラの家の玄関。


「お母さん、ただいま♪

お父さんは書斎?

サクラくん、入って――」

サクラの方を振り返って、ソラが固まった。


 なんか……別人?


「失礼致します」丁寧に礼。


「も、もしかして……サクラ王子様!?

あなたっ! あなた、早くっ!」

わたわたと奥に走った。


バタバタと両親が玄関に戻った時、まだサクラは頭を下げていた。


「あのっ! 王子様、そんなっ、あの!

下げないでっ!」


「お母さん、慌て過ぎ」ため息。


「と、とっ、とりあえず中へ…」


「お父さん、同級生として来ただけなのよ」


居間に落ち着く――いや、落ち着いていないが――


カタカタカカチャッ…


ソラの母が茶を淹れようとしたが、手が震えて、どうにもならない。


「私にお任せください」

サクラが慣れた手つきで優雅に茶を淹れる。


「これ、いつものお客様用の?」

ソラが母の耳元で、そっと尋ねた。


母が頷く。


 香りが、ぜんぜん違う……


そのままの優雅さで、卓に茶を置き、

「爽やかさと、ふくよかな深みのある香りが素晴らしいお茶ですね。

私も頂いてもよろしいですか?」にこっ


両親、こくこくと頷く。


 お茶を味わい――

落ち着かれましたでしょうか? と前置きし――


「突然お邪魔致しまして、申し訳ございません

お詫びと、お願いを申し上げねばならず、こうして伺いました次第にございます」


「お詫び……ですか……?」不安が過る。


「はい……

私は、魔界に君臨する者に命を狙われている身でございます。

それ故、接触した方々も、同様に標的となってしまう可能性がございます。


挨拶を交わす事すら慎重にならなければならないのに、迂闊にも、ご令嬢様と接触してしまいました。


兄達が接触した方々、特に女性には、その方との関係性の如何に関わらず、『王子の弱点』と勝手に認識され、標的とされる為、厳重な結界を幾重にも施している場所に住んで頂いております。


私の不心得な行動により招いた事で、ご令嬢様の御命に危険を及ぼしました事、

如何に陳謝しようとも慙愧の至りでございます。


ですが、この上は、先んずるより他に方法はございません。

誠に勝手なる事でございますが、ご令嬢様にも、その場所に移り住んで頂きたく、お願いを申し上げます」

再び深々と頭を下げた。


沈黙……


「お父さん、お母さん、聞いてる?

サクラく……様、謝らないでください」


「あ、ああ……すみません。混乱して……」

父、やっと口を開く。


「私が声をかけてしまったの。

サクラ様は何も悪くないの。

魔界で、まさか、同級生に会えるなんて!

って、嬉しくて……つい……」


「声をかけて……?」母も、どうにか。


「お話しして、魔界で探し物してるって仰るから、地図をあげたりとか……」


「お話ししただけ、なのか?」


「そうよ」


「それだけ……なの?」


「それだけでも十分、標的となる事が、つい最近、兄の友人が襲われた事で判ったのです。

私の考えが、そこまで至らず、大変な事になってしまい――」


「まだ、一度も危険な目に遇ってないから、そんな御大層に言わないでよ~」


「これっ! 王子様に失礼なっ!

この娘は もうっ!」


「大学の学位に関しましても、その場所にて取得可能ですので、どうか、移住のお許しを――」


「私の先生も、そこに住んでるから、私、引っ越しますからねっ」


「ソラが、そうしたいのなら、好きにすればいい。

サクラ様、娘がご迷惑をおかけ致しますが、宜しくお願い致します」


「つきましては、御両親様にも、お移り頂けましたら、安心出来るのですが、如何でしょうか?

勿論、外界と遮断する訳ではございませんので、お仕事にも支障無きよう、整えさせて頂きます」


「娘と一緒に住むのに、異存も何もないわよねっ♪

王子様をお待たせしないように、決めちゃいましょ♪」


 え~っと、ソラちゃん?

 俺が、何度 誘っても、動こうとしなかったの

 だぁれ?


「まぁ……一緒に暮らせるのも――」

「――嬉しいですよね、あなた♪」

「そうだな……うむ……」



 そんなこんなで、引っ越すと決めたソラは、半ば以上強引に、両親と叔父・叔母と共に、長老の山で暮らし始めた。





凜「サクラのイカツイ長セリフ、

  怖いんだけど~」


桜「なんで怖いのぉ?」


凜「だって、いつもはタ~ラタ~ラまったり

  話すでしょ?」


桜「うん。まぁね~」


凜「そっか、それ、フリだもんね」


桜「う~ん……俺にも、どれがフリなんだか

  わかんなくなっちゃった~」


凜「素直に話すって、サクラには無いの?」


桜「どぉだろ~ね~」


凜「たまには素直に、おねーさんに話しなさい」


桜「お……ねぇ……???」キョロキョロ


凜「それは、前にもやったからっ!」


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