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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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愛溢れ4-アオにも……

 前回まで:アオは芳小竜に入れられたまま

      フジに治癒の光を当てています。


♯♯ 天界 長老の山 ♯♯


「フジ兄、今日から、手を再生するねっ♪」

サクラが瓶を二つ抱えて、入って来た。


「中身は軟膏ですか?」透明ですが……


「うん、六花膏(リッカコウ)

それと、白い粒が真芯粒(シンシンリュウ)

形が出来てきたら、六花膏を昇華膏(ショウカコウ)に入れ換えてね」


「はい♪」


 両手を包んでいる物を取ると、腕は、まだ細いが、手首近くまで伸びていた。


「肘まで入れてね。

ルリ、お手伝いヨロシクねっ♪」なでなで♪


 左手の瓶に芳小竜(ルリ)が、ふよっと乗った。

サクラと芳小竜(ルリ)が瓶に両掌を当てる。

サクラが術を唱え始めると、真芯粒が輝きながら移動し、骨の形になっていった。


(フジ兄、真芯粒、追加できる?)


(はい♪)瓶の中に、新たな白い粒が現れた。


フジの腕が、真芯粒の骨を包みながら、伸びていく。


まだ半透明だが、きちんと手の形になった。


 早いね……アオ兄が時短してるのかな?

「ルリ、だいじょぶ?」


きゅるる~♪


芳小竜(ルリ)が楽しそうに頷く。


(いけそうだから続けるね)

サクラが唱える術が変わった。


六花膏が、フジの半透明の手に吸収されていく。


(昇華膏をお願い)


(はい♪)


透明な六花膏が全て吸収され、新たに赤みがかった半透明の軟膏が湧いてくる。


昇華膏の淡い赤が、フジの手に吸収され、しっかり手が形成された。


サクラと芳小竜(ルリ)が目を閉じ、全身から放つ光を各々の手に集め、一気にフジの手に流した。


「今日は、ここまで~」

サクラが額の汗を拭った。


 サクラが汗を……珍しいですね。

 そんなにも大変な術だったのですね……


「サクラ、ありがとうございます」


「ここまで二、三日かかると思ってた~

さっすがフジ兄だねっ♪

薬が勝手に出てくるから楽だったよ♪」


「私は何も……

本当に、ありがとう、サクラ。

ルリも、ありがとうございます」にこっ


きゅ~♪


サクラが芳小竜(ルリ)の頭を撫でる。

「いいコだね~♪ がんばったねっ♪」


芳小竜(ルリ)は嬉しそうに目を細め、首を竦めた。


「サクラ、ルリからアオ兄様の気を感じるのですが……」


 あ……バレた?


「うん。ソレあると思うよ。

ルリはアオ兄の写し身だから。

それに、今はアオ兄の力の一部を、ルリの中に保管してるからね」


「だからですか……

アオ兄様が傍にいてくださっているようで、安心出来ます」

目を閉じ、安らいだ表情で微笑んだ。


 フジ……


「俺も、アオ兄 大好きっ♪」ルリを抱きしめた。


 サクラ……って、ちょっ! サクラ!?


すりすりするサクラの頬を、芳小竜(ルリ)が両手で突っ張って、首を横に ふるふるしている。


フジが吹き出した。


「あら♪ 楽しそうね♪」

リリスが入って来た。

「サクラ様、毎日ありがとうございます。

あら?」瓶を見て、近寄る。「手が――」


リリスが瞳を輝かせ、フジと目を合わす。

「治ったのね!」抱きしめる。


サクラは、芳小竜(ルリ)を持ったまま、そっと病室を出た。


(フジ兄、今日は、まだ動かないからね。

そのまま浸けといてね。

ルリは後で返すからね)




(アオ兄、休憩だよ。毎日ありがとねっ)


(サクラの苦労が、よく解ったよ)


(なぁに? 苦労って?)


(皆の心が、勝手に流れ込んでくるんだ)


(とうとう……アオ兄も……)


(どうやって調整してるんだい?)


(できれば……いいんだけど、ね……)


(もしかして……)


(うん……俺にも、まだ……わかんないんだ)


二人で、ため息。


(子供の頃は、まだ よかったんだけどね。

最近、本当に困ってるんだ……)


(よく解る……)


(姫まで流れてきちゃうようになったから、本当に、なんとかしたいんだけどね)


(二人で探そう)


(そだね♪ 一緒に探したら見つかるかも~♪

竜宝達にも相談しよっ♪)


(その為にも、早く体に戻らないとね)


(うんっ♪ 俺、魔界に行ってくるね!)


(ソラさん、こっちに連れて来ないのかい?)


(う~ん……なんでか、来てくれないんだ。

接触してしまったから、魔王にカンチガイされて、狙われるんじゃないかって心配なんだけど……)


『カンチガイ』ね……


(また……勘で、こんな事 言って悪いんだけど――)


(なぁに?)


(ソラさんは、ウェイミンさんと繋がりが有るような気がするんだ)


(聞いてみる! アオ兄♪ ありがとっ♪)


歩きながら話していて、庭に出ていた。

フジの病室の真下に行く。

「窓まで飛んでね~♪」芳小竜(ルリ)(はな)った。


そして、サクラは魔界に向かった。




♯♯ 人界 岩戸地帯 ♯♯


 岩戸での修行の進み具合を確かめる為に、開ける事を決めていた時が来、

慎玄が雷崋の岩戸から出ると、フジではなくキンが待っていた。


「私の属性が雷ですので、フジと代わりました。

気を拝見致します」


 竜の血は、薄い筈なのに、

 こんなにも発現するとは……


キンは驚きつつも、丁寧に気の扱い方を伝え、

供与で竜の力を強めた。



 そして、次に開ける時を決め、桜華に報告する為に、神楽の風穴に向かった。


「桜華様、こちらの進み具合は如何ですか?」


「ひとつ越えた所でございます」にっこり


キンは、アオ、フジ、姫の現状を伝えた。


「でしたら、こちらは腰を据えて、しっかり伸ばした方がよろしいですね」


「はい。足止めしてしまいまして申し訳ございませんが、そのように宜しくお願い致します」


「いえ、狙われる事は重々承知。

慎玄様にはコギを付けておきます。

こちらの事はお任せください」にっこり


頼りになる桜華の存在に、気を張り詰め続けていたキンは、初めて安堵出来た。




♯♯ 深神界 ♯♯


 その頃、ハクは――


案の定、話すら聞いて貰えない深神界の神竜の態度に、頭を抱えていた。


見かねた神達も説得に当たってくれたが、それでも『家宝だから』の一点張りで、挙げ句、屋敷に籠ってしまった。


 『家宝』つったって、蔵で埃たんまり

 被ってるのによぉ……

 魂が入ってねぇ事すら気付いてねぇし、

 (たち)が悪ぃったってありゃしねぇ!


 サクラが何か当たってくれてるのを

 待つしかねぇのかな……


助けてくれた神達に、丁寧に礼を言い、ハクは天界に戻った。




♯♯ 人界 神楽の風穴 ♯♯


(あなた達、いい加減に休憩しなさい)


(あ……母様……)二人、ピッタリ。


(どうして揃うのよ?

そこ、真っ暗闇よね?

それに、音なんて聞こえていないんでしょ?)


(そうなのですが……

それに、揃えようなどとは思っておりませんよ)

一音たりともズレない。


(もういいわよ)クスクス♪

(とにかく、定期的に休まなければ、かえって効率悪いのよ)


(はい。休みます)どうしても揃う。



(紫苑、母様の声、よく聞こえるようになったと思うのですが……)


(そうですね。

これが、この風穴での修行の成果なのでしょう)


(紫苑の声も、よく聞こえるようになったわ。

竜宝も術も使えないなんて、この風穴は、どうなっているのかしら……)


(そこは、俺達の祖先が、人界の任の最中に、天性や属性を鍛える為に作った修行の場ですよ。

その風は、実際にも吹いていますが、気に対しても吹いているんです。

だから、術を心で唱えても、かき消され、竜宝達は気を乱されるのを嫌って、閉じ籠ってしまうんです。

ただし、天性と属性を使う為に高める気には、影響しないように調整されているんです)


(アオ殿……ですね?)


(聞こえてしまったんです。

割り込んでしまって、すまない)


(いえ、お答えくださり、ありがとうございます)

(今、どちらにいらっしゃるのですか?)


(まだ天界です。

体の闇が消えるまでは動けないんですよ)


(そうですか。

しかし、お元気そうな声が聞けて、嬉しいです)

(私達は、こちらで修行に励みますので、しっかり闇を消してくださいね)


(はい。俺も気を高める修行に励みます)


(お互い、新たな力を掴みましょう)揃った。


(はい。頑張りましょう)



(アオ殿には――)(負けられませんね)

互いの顔は見えなくても、同じように微笑んでいる事は確かだった。


(始めましょう)また揃った。


(あなた達、ご飯よ。出ていらっしゃい)


(おや)(あら)

(参りましょう)どうしても揃う。


暗闇で掌を合わせ、気を高める。(騎流(キリュウ)!)


ここでの移動の為に、編み出した技で、外に出た。



「良い技ね♪」「二人は風なのか?」


「いいえ、闇だそうです」

「クロ様、いつもありがとうございます」


「でも、風でも使えると思うわ。

やってみたらどうかしら?」


三人、喜び勇んで風穴に入ろうとする。


「もちろん、食後よっ!」「あ……」





凜「やっぱりいた~♪ シルバコバルト様♪」


始【また追っかけて来やがった!

  ついて来るなっ!】


凜「キン様が動いたから、今度は

  雷崋の岩戸だと思ったのよね~♪」


始【だから、どっか行けって! あ……】


凜「消えちゃった……

  キン様が戻って来たからなのね~」


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