愛溢れ3-供与し過ぎ
前回まで:姫もフジも助かりました。
♯♯ 天界 長老の山 ♯♯
姫の病室では――
「のぅ、クロ……
リリスが居るおるという事は、ここは真、天界なのじゃな?」
「そうだよ。さっきフジが言ったろ?」
「さよぅか……」窓の外を見る。
「見覚えあるだろ?」
「そぅじゃな……
前も思ぅたが、のどかで美しい所じゃな」
「ここは山だからな。
元気になったら、また街に行こうな」
扉が叩かれた。
「はい」クロが応えた。
扉が開き、人姿のボタンとミカンが入って来た。
「こんにちは♪」二人揃って優雅にお辞儀。
「お見舞い、ありがとうございます」
クロが丁寧に礼を返す。
「ご無事で何よりでしたわね」
まだ心配そうなボタン。
「お元気になられたようで……って、やっぱり堅苦しいの苦手~
ねっ♪ 今度お茶しましょ♪」
ミカンが場を和ませる。
「う……うむ」茶の道も苦手なのじゃが……
「美味しいお菓子も、色々用意致しますわ」
「リリスさんとワカナさんも一緒に、ねっ」
「姫の国の茶とは違うから安心しろ」
「さよぅか……ならば、お招きに与ろぅぞ♪」
「静香様の国のお茶は、こことは違うの?」
「ええ、茶葉は発酵させていませんし、お菓子も異なります。
今度お持ち致しましょうか?」
「ええ、ぜひ♪」興味津々。
ボタンとミカンは、王妃修行の合間に来たようで、すぐに出て行った。
「ワカナ殿も、ここに居るのか?」
「アカの工房にいるよ」
「さよぅか、一緒に居るのじゃな」
「フジも、暫くは一緒にいられるな」
「そぅじゃな……」
「オレも――いや……何でも……」
「何じゃ?」
「姫……何度も危ない目に遇わせてしまって、すまねぇ。
全てオレのせいだ」
「そのよぅな事……
いつも、しかと護って貰ぅておる。
じゃからワラワは幸せじゃ。
ワラワが おとなしゅうせぬから、いつもクロには心配やら、迷惑やらをかけてしまうのぅ……」
「迷惑なんかねぇよ。
心配は……どうしようもねぇな」ははっ
(なぁ、姫……
心配だから離れたくない……なんて言ったら、迷惑か?)
(そのよぅな事……)
(うん?)
(……嬉しいに決まっておろぅ)掛布を被った。
「およ?」
「どうした?」
「腕輪が無いのじゃっ!」顔と手を出した。
「なんで話せるんだ?」
「ワラワが聞きたいわっ」
(サクラ、腕輪が無いのに姫と話せるんだけど……何でだ?)
(今頃 気づいたの?
でも、俺に聞かれてもねぇ~
クロ兄の天性なんだよぉ~
だから想像だけど――
姫の中に、クロ兄の力が い~っぱい入ったから、クロ兄がクロ兄と話してるみたくなってるんじゃない?)
(ふぅん……そんな事が起こるのか……)
(姫、俺とも話してたよ~
クロ兄が濃すぎだよ)
(なんか……聞いてると恥ずかしくなってきた……)
(そろそろ俺、魔界に入るからねっ)
(クロ兄、姫、お幸せに~♪)
(なんじゃっ!? サクラか!?)
(おいっ! サクラ!!)
二人、真っ赤になった顔を見合せ、暫し沈黙……
「クロ……ワラワはサクラとも話せるのか?」
「そうなると、アオとも話せるだろうな……」
「便利……では、あるのぅ……」
「誰と話したいか、姫がマトを絞ればいいだけだから、困る事はねぇよ。
ま、今は試せねぇけどな。
アオは眠ってるし、サクラは魔界だ」
いや……起きているし、
勝手に流れて来て困っているよ。
アオはフジの病室で、そう思っていた。
「アオとサクラだけなのか?」
「ああ。アイツらだけ、この特技を持ってるんだ。
腕輪ナシで、兄弟の誰とでも話せるんだよ」
「何故、ワラワとも?」
「オレの力を分けたから……らしい」照れた。
「さよぅか……」いたたまれず、また被った。
この、勝手に流れ込んでくる諸々は……
治療の時、全ての力を解放した影響だろうか?
そういえば、サクラは兄弟の色々な事を
知っていたな……
こういう事だったのか……
早く調整出来るようにならないと、
俺……もたない……
体が無いので、疲れない筈のアオは、どっぷり疲れていた。
♯♯ 魔界 中立地帯 ♯♯
サクラは、ソラの部屋の屋根裏で、遺跡から持って来た竜宝を確かめていた。
浄化の光で、泥や汚れを消していくと、竜宝達が輝き始めた。
あった! 琉雅だ!
今夜また遺跡に行ってみよ~♪
(琉雅♪ 起きれるかな?)
サクラの背で華雅も輝く。
何度か呼び掛けると――
【王? ……そうですか。
我等が王、ありがとうございます】
(三眼、四眼、ありがと♪
琉雅、ちゃんと補修するからね。
これからヨロシクねっ♪)なでなで♪
【有り難き幸せにて――王っ!?】
(友達だからぁ~♪)すりすり♪
♯♯ 天界 深蒼の祠 ♯♯
ハクは水槽に光を当てながら、神竜達と話していた。
「じゃ、神竜ってのは、御先祖様を守護神にしてるのか?」
「はい。近い祖先と絆を結びますと、その祖先の絆神共々守護してくださいます」
「その神様方をお借りする事は出来るのか?」
「はい。王子様方にでしたら喜んで」
「そうか♪ どんだけ呼べるんだ?
深神界に入りたいから、多い方がいいんだ」
「各々十神ほどでしたら、直ぐにでも呼ぶ事が出来ますが――」
「そんなにも!? 凄ぇなっ♪
何度か入らなければならねぇ筈だ。
交替で、宜しく頼むっ!」
「いつでもお申し付けください♪
あ、シトリン、器は出来たのですか?」
焼物を抱えたシトリンとアマリンが来た。
「ハク様、サクラ様に、器をお渡ししたいのですが、次は、いつ頃お見えになられますか?」
「次、交替だから、もうすぐ来るんじゃねぇか?
あ、ほら――」
「シトリンさん、アマリンさん、できたの?♪」
現れたサクラが、弾みながら近寄る。
「試作一回目が上がりましたので♪」
「じゃ、見せてくるね~♪
ハク兄、待っててねっ♪」消えた。
――竜宝の国。
「唔器呟さ~ん♪ 試作一回目、見てよ~っ♪」
【また賑やかじゃのぅ。そこに置け】
樫の木から魂が出、並べた器の上で留まった。
【ふむ……なかなか……これは……】
「どぉ? 試しに入ってみる?」
【あ……いや! まだまだじゃっ!
簡単には入らんからなっ!】
「どこ直したらいいの?
大きさ? 形? 色?」
【ぜ、全部じゃっ! やり直しじゃっ!】
「どんな色がいいの?」
【お前さんの鱗色が出せたらな。
考えてやらんでもない】
「この色なんかがいいの? こんなんで?」
【そうじゃ。その色、出してみよ。
出せるものならな】
「形は、これでいいの?」
【もっと完璧な円にせよ!】
「大きさは?」
【深さが足りんわい!】
「わかった~♪
ありがとねっ♪ 唔器呟さん♪」
何じゃい。楽しげに帰りおって……
【唔器呟よ。
実は、その試作で満足しとるのではないのかな?】
【壺美善!? いつの間にっ!?】
【竜でありながら、神竜と友となり、これだけの物を一発で持って来おった。
実は、感服しとるのではないのかな?】
【煩いわいっ!】
【我等が王は、優しい御方だが……
秘めたる御力は計り知れぬ。
若輩者と侮るなかれ。
怒らせると恐いと思いますぞ】
【そのくらい……わかっとるわい!】
【素直になりなされよ。
嬉しかったのではないのかな?】
【それは……】
【次は、妙な無理難題など言わず、素直に入りなされよ】
【うむ…………わかったわい】
【それでこそ、徳高き唔器呟殿ですぞ】
凜「あーっ! シルバコバルト様!
今度は火神子山――通路ですよね?
魔竜王国からの帰りですか?
って! 無言で逃げないでくださいよっ!」
始【煩い! どっか行けって!】
凜「魔竜王国にはサクラしか行けないのでは?」
始【俺も行けるから、出て来たんだよっ】
凜「で、何をなさりに?」
始【サクラが居ない時には魔物が出ないとでも
思ってんのか?】
凜「じゃ、サクラの代わりに
ソラちゃんを護ってるんですか?」
始【悪いかよっ】
凜「いえ、お優しいんですね♪」
始【煩いっ!】
凜「消えちゃった……
初代王様、けっこう裏で
動いてらっしゃるのね~」




