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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
206/429

愛溢れ2-竜宝のフリ

 竜って……トコトン一途です。

何しろ、何千年も添い遂げる生物ですからね。

と、以前にも書きましたが。


 夜が明けた。


【フジは、もう大丈夫だ】

【暫くは治癒の光を当て続けなければならないが、自然に回復するさ】


「ありがとうございます。

グレイスモーブ様、グリッターローズ様」

キンが深々と頭を下げた。


【アオ、サクラ、手の再生は出来るな?】


「はい。お任せ下さい」

抱いていた芳小竜(ルリ)をフジに乗せ、サクラが微笑む。


【困ったら、いつでも呼べ】


【当面の薬だ。

意識が戻れば自身で作るだろう】


【皆、よく頑張ったな】

【では、またな】

偉大なる医師と薬師の魂は、竜骨の祠に帰った。



 フジの体からアメシスが出てきた。

【まだ意識は戻っていませんが、力強く生きようとしていますので、

あとは、リリス殿にお任せしようと思います】


「ありがとうございます、アメシス様」


【ハク、共に参りますか?】


「ありがとうございます! よかったぁ~

曲空どころか、飛ぶ力も残ってないんで助かります!」あははは


アメシスとハクは、神界へと消えた。


(アオ兄、だいじょぶ?)


【疲れは無いよ。体が無いからね】


(そぉ? 深蒼の祠に行こうね)

フジの胸から見上げている芳小竜(ルリ)を抱き上げる。

(キン兄、行こっ)手を差し出す。


「モモお婆様、フジ兄様をお願いします。

すぐ戻りますので」にこっ


(じゃ、アオ兄♪ せ~のっ♪)



「父上、ありがと♪」ぱふっ♪

「うっ!」【あっ!】「おいっ!」

きゃははははっ♪


ギンは息子達を抱きしめ、

「もう大丈夫なのか?」サクラをぽんぽん。


「だいじょぶだよ~♪」


「見舞いますか?」


「いや、無事なら、それでいい」微笑む。


「こちらは何事もありませんでしたか?」


「それなりにな。だが、見ての通りだ。

では、城に戻してくれるか?」


「うん♪

カルサイ様、ドルマイ様。

ありがとうございました!

じゃ、キン兄♪ ここ、よろしくねっ」曲空。



♯♯♯



 サクラはギンを送った後、長老の山に戻り、フジの病室に向かった。


「アオ兄、フジ兄には、暫く治癒の光を当て続けないといけないから――」


【え? まさか……】


「うん♪ 置物のフリ、よろしくねっ♪」


【リリスさん、付きっきりだろ!?】


「だね~♪

だから、アオ兄にしかできないでしょ♪」


【待って! やめろ! 無理だからっ!】


(ちゃんと置物になってね~♪)扉を叩く。


『はい』リリスの声。


「治療に来たよ」扉を開けた。




 サクラは、光の球をいくつかフジに押し込んだ。

「このコね、竜宝なの。治癒の光が出るんだ」


「綺麗な青……かわいいわね」にこっ


「石で できてるんだ。名前はルリ。

少し動いたりもするんだよ。

フジ兄、しばらくは、ずっと治癒の光を当てないといけないから置いてくけど、気にしないでね」

フジの枕元に置く。


サクラの手から離れた芳小竜(ルリ)が見上げる。


「かわいいっ! ずっと置いてていいわ♪

触ってもいいの?」キラキラ


「この部屋の中でなら、ちゃんと光が当たるから、持っててもいいよ」にっこり


「あっ……」

ルリが、ふよふよと上に飛んでいく。


サクラが スッと跳んで 捕まえた

「ダメでしょ。ちゃんと、お仕事しようね♪」

頭なでなで。

「はい♪ リリスさん♪」手渡した。(サクラ!)


「ありがとうございます、サクラ様」にこっ

「突然こんな事になって、凄く不安だったの……

本当は、励ましに来てくれたんでしょ?」


「えへ……

医師として出来る事は、もうやりきったから……

あとはリリスさんしかできないからね」


「え……」頬を染める。


「だから、がんばっ――」「……リ、リス……」


「あ……」「フジ!?」

(フジ兄、起きてっ)

サクラは、もう一度、光の球を押し込んだ。


フジが、ゆっくり目を開け、眩しそうに細めた。

「リリス……サクラ……」


「フジ……良かった……」涙が一筋。


フジが精一杯の微笑みを返す。


「もぉだいじょぶだよ。

それじゃ、ルリ、あとはよろしくねっ♪」

扉に向かう。


「サクラ……姫様は?」


「だいじょぶ」にこっ「クロ兄がついてる」

手を振って、出て行った。


(フジ兄様、命懸けで助けてくださって、ありがとうございました。

リリスさんには、まだ事情を話していませんから……)


(ありがとう、サクラ)


フジは、手に違和感を覚え、掛布から出して見た。

肘から先が覆われている――が、かなり短い。


(サクラ、私の両手は……)


(大丈夫です。元に戻りますから。

先ずは体力を戻して、それから治します。

少しの間、不便ですが……

リリスさんの手を借りて下さいね)


(リリスが持っているのは、あの時の――)


(はい。アオ兄様の解放の時、使った竜宝です。

治癒の光を出せますから置いています)


(ああ……ですから、アオ兄様の水槽に入っていたのですね?

いろいろ、ありがとう)


(腹部も重傷ですから、おとなしく寝ていて下さいね)


(はい。そうします。

宜しくお願い致します。サクラ先生)


(それ、やめてぇ~)


(……笑うと……凄く痛いですね)


(だから真面目に話してたのにぃ)


(ありがとう。安静にします)


(うん♪ じゃあ、また明日――)(サクラ!)

(なぁに? クロ兄)


(この箱、どうやって開けるんだ!?)


(知らな~い。曲空で出れば?)


(あ……そっか……

そっち行ってもいいのか?)


(うん。今、俺ひとりだよ)


クロと姫が現れた。「フジは!?」


「だいじょぶ♪ リリスさんがついてるよ」


「礼を申したいのじゃが……

行ってもよいのかのぅ?」


(フジ兄、クロ兄と姫が会いたいって言ってるけど、いい?)


(はい♪)


「いいって♪ 案内するよ」




 フジの病室へ――


「フジ……ワラワの為に……すまなかったのぅ」


「お気になさらないでください。

姫様がご無事で、本当に良かった……」


「リリス、このよぅな事になってしもぅて、誠に申し訳ない」


「そんな……姫様が謝る事など何も無いわ。

二人共無事で本当に良かった」にっこり


「そういえば、何があったんだ?」


「姫様が岩戸で修行していた間に、魔物の大群が襲来したのです。

上空で応戦している間に、姫様が拐われ、境界まで運ばれてしまい……

天界でなければ治療が出来ない為、そのまま上昇したのです」


「岩戸の中に居たのに拐われたのか!?」


「……いや……不穏な気があったのでのぅ、

様子を窺おぅと隙間を開けたら、黒い煙のようなものに包まれ……

あとは覚えておらぬのじゃ」


「開けるなっつったろ!」


「怒らないで、クロ兄様。

姫様も剣士ですから当然ですよ」


「それで命落としたら、どーすんだよっ!

ったく!

オレと離れてる時は言うコト聞けよなっ!!」


フジとリリスは顔を見合せ、微笑んだ。


「何が おかしいんだよっ!」


「仲がいいから」リリスが笑いながら言う。


「あ……そんなんじゃ……だから……

これは……当たり前だろ……」

赤面して、そっぽ向く。


「姫様、ありがとうございます。

あの時は、私ひとりでしたので、危険を顧みず見てくださったのですよね」


俯いている姫の肩にリリスが手を置く。

「姫様、フジを心配してくださって、ありがとうございます」

背中から抱きしめた。


「リリス……」


「無事だったんですから、それでいいじゃない。

姫様、元気出してくださいね。

クロ様は、怒っているのではなくて、大好きだから心配し過ぎてしまうだけ。

愛情が溢れてるだけなんですから」クスッ


「かたじけない……」


 姫様……無理してそうね……

 きっとまだ起きてはいけないのよね……


リリスが姫から離れる。


「そろそろフジを休ませてあげてね」にこっ


「姫の病室に案内するよ」

光を当てていたサクラが手を下ろした。


「ワラワの?」


「姫も、まだ安静にしないとダメなんだよ。

じゃ、フジ兄♪ お幸せに~♪」


「お大事に、だろっ」

「いや、サクラが正解じゃ♪」

三人、笑いながら出て行った。




「フジ、姫様を護り抜いてくださったのね。

ありがとう」頬に口づけた。


芳小竜(ルリ)が小さく鳴いた。

見ると、腕輪を咥えていた。


「これは……?」リリスが受け取る。


(サクラ、この腕輪は?)


(アカ兄が作り直してくれたんだ。

手と一緒になくなったから。

首にでも、かけといてね。

鎖はルリの首にかけてるから)


 確かに……


「リリス、ルリの首の鎖で、その腕輪を私の首に掛けてください」


(これで、また話せます)にっこり


(申し訳ありませんが……

しばらく全てお世話にならなければなりません……)


(嬉しいっ♪)


(えっ?)


(だって……

全部お世話係さんがするんだろうなって 思って……なんだか寂しかったの)


(でも……大変な事なのに……)


(普段してる事の何が大変なの?)にこにこ


(……では、宜しくお願い致します)赤面。


(はい♪ まかせてねっ♪)「あら? ルリ?」


ルリは窓から外を見ていた。


「出たいの? でも、ごめんなさい。

フジを治してね」なでなで


ルリが振り返り、見上げて首を傾げた。


きゅ~


「かわいいっ!♪」ぎゅっ♪ すりすり♪


フジの枕元にルリを戻し、フジの目を見て――

「やんっ♪ かわいいんだからっ♪」ちゅっ


見詰め合い……ゆっくり、そっと抱き合い……


ルリは背を向けた。


 早く自分の体に戻りたい……


そう、切に願うアオだった。





凜「あ! シルバコバルト様、どちらへ?

  何で逃げるんですか!?」


始【何故、俺を掴む事が出来るんだ?】


凜「私は特別ですから~♪」


始【フンッ……竜骨の祠に決まってるだろ】


凜「その水晶は?」


始【モーブとローズだよ!

  コレの近くでしか動けないんだっ!】


凜「あ……逃げた」


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