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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
205/429

愛溢れ1-救う!!

 この回が、惨状としては最大です。

姫とフジの現状は、あまり想像しないでください。


(兄貴達!! 助けてっ!!!)

サクラは姫を治癒の光で包み、術を唱えながら叫んだ。


「何があった!?」クロが現れた。


(フジ兄が落ちた! この下にっ!

長老の山に運んで!!)


サクラは言いながら長老の山へと曲空した。


「シロお爺様! 医師を集めて下さい!!」




♯♯深蒼の祠♯♯


【私達は、こちらでよろしいのですか?】


【妖狐王様にお任せ致しましょう】


【でも、あの子を連れて行くなんて……】


【姿を見せるのではないでしょうから、大丈夫です。

ご指示通りに動きましょう】


 カルサイとドルマイが、アオの必死な気を感じつつ、水槽に光を当てていると、ギンを連れたキンが現れた。


アオが入っている芳小竜のルリが明滅する。


「父上、私は長老の山に向かいます。

こちらも襲撃を受けるかもしれません。

申し訳ございませんが宜しくお願い致します。


カルサイ様、ドルマイ様、ムーント様、

アオの体を宜しくお願い致します」


キンは芳小竜(ルリ)を水から出すと、曲空した。




♯♯ 長老の山 ♯♯


 姫とフジへの治療が始まった。


キンがルリ(アオ)を連れて治療に加わり、ハクも神界から戻って来た。


サクラは姫を治療していた。

そのサクラに、グリッターローズの魂が重なっている。


【サクラの頭に、ルリを乗せて下さい】

芳小竜(ルリ)からアオの声が聞こえた。


乗せると、サクラの光が増した。

(クロ兄! 力を貸して!)


(オレに何が出来るってんだ!?)

部屋の隅で踞り、領域供与を発動していたクロが、心の苦痛で歪む顔を上げた。


(姫を引き止められんの、クロ兄しかいないでしょっ!!)


(オレ……だけ……医者じゃねぇのに……)


(そんな事、関係ないからっ!

しっかりしてっ! 姫は生きてるからっ!!)



 クロがバッと立ち上がり、治療台に駆け寄った。


(これが……姫……?)


(早くっ!!)(……ク……ロ……)


「姫っ!!」

クロは小さな塊を抱きしめた。

「死ぬな! オレを置いてくんじゃねぇっ!!」


(……ク……ロ……ど……こ……じゃ……)


(ここだ。どこにも行くな……戻って来い!)

クロが光を帯びる。

(ずっと一緒にいてくれよ……なぁ、姫)


(クロ……聞こ、え……る…………が……)


(ああ。何だ? オレには、聞こえてるぞ)


(何、も……見……えぬ……真……暗じゃ……)


姫の塊に口づけた。


クロの体から、力が輝きとなって迸る。


その輝きを全て姫に向けた。


……ドクンッ……


(姫!?)


……ドクンッ! ドクンッ!!


(早く戻れ! ここだっ! 姫!!)


まだ実体を持たぬ姫の手が、クロを抱きしめるように、その背に現れては消える。


(まだ光が足りねぇのか? 見えねぇか?)

クロの輝きで、医師達には二人の姿が見えなくなった。


見えているのはサクラだけ。


(クロ兄、心の中で、手を伸ばして!

そう! もう少し……頑張って伸ばして!)


サクラがクロの手を握る。


(姫、そのまま進んで……うん、そうだよ。

今、向いてる方向に。俺の声に向かって。

クロ兄は俺と一緒にいるからね。

大丈夫だよ。進んで……前に手を出して――)


今度は、姫の手を握る。


サクラは気を極限まで高め、心の中で、二人の手を近付けた。

(クロ兄、姫。ほら、手を取って。

俺が離したら、引き寄せてね。

心の中だから、遠慮しないで。

何も壊れたりしないから、おもいっきりねっ!

二人共、しっかりねっ!)


クロと姫の手を繋がせ、覆っていたサクラの手が離れる。


(クロ兄! 今だよっ!)


クロは力の限り、姫の手を引き寄せた!


姫が、クロの胸に飛び込んで来た。

(姫!)(クロ!)



 サクラは極大の光の球で二人を包み、その光を姫に押し込んだ。


(もぉ、だぃ……じょぶ、だ……よ……)

サクラは兄達に伝え、崩れ落ちるように倒れた。


芳小竜(ルリ)から発せられた光が、サクラを包む。

【サクラ、ゆっくり休んで】


【アオは、フジを助けよ】

グリッターローズも芳小竜(ルリ)の中に入った。


芳小竜(ルリ)が、フジの胸元に曲空し、強烈な光でフジを包んだ。


【兄上、腹部の穴を六花膏(リッカコウ)で埋めてくれ。

アオ、六花膏を内臓に行き渡らせるぞ。

治癒の光を当て、浄颯の術を唱えよ】


アオが唱え始めた。


【モモ、颯竜丸を聖輝煌水に溶かし飲ませよ】


【兄上、次は手だ。

六花膏と真芯粒(シンシンリュウ)でどうだろう?】


【それ以外に考えられんな】


【よし、また笛が聴けるよう、しかと治すぞ!】


【ハク、私に、その手を貸せ】

グリッターローズは、芳小竜(ルリ)からハクに移った。


【キン、サクラを頼む。そなたにしか出来ぬ。

静香は、クロと医師達に任せればよい】


【アメシス様、フジの意識は如何ですか?】


【私の中に保護しております。

私が代わりに、フジの体の生命力となりますので、御存分に】


【ありがとうございます。それでは――】


【アオ、今は、己が体が無い事を、最大限利用するのだ。

全ての力を解放せよ!】


芳小竜(ルリ)が咆哮を上げる。

皆の治癒の光が渦となり、立ち昇る。


芳小竜(ルリ)が上昇し、その渦を吸収して輝く。

両掌の間に、輝きを集め、小さな虹光の球を生んだ。


渦の収縮点が、虹光の球に移る。


芳小竜(ルリ)は、フジの腹部の穴に向かって急降下し、虹光の球を、その穴に押し込んだ。


虹光の球が六花膏の中で明滅しながら、渦を集め続ける。


【よし。後は医師達の体力勝負だ。

ハク、まだいけるか?】


(問題ありません。続けて下さい!)


【上げるぞ!】(はい!)

「先生方! 治癒を上げてください!」



(アオ、出来たぞ!)


(アカ、解った!)

【クロ、アカの気に、姫を連れて曲空だ!】


アオの声で、クロは引き戻され、曲空した。



♯♯♯



 クロが曲空した先には――


アカ、ワカナ、リ姉弟が大きな箱を囲んでいた。

「入れ」


姫を抱きしめたクロが駆け込む。


「再生を加速する箱だ。供与で助けろ」

扉が閉められた。


(姫、元に戻してやるからな)


(クロ……かたじけない……)


(頑張ろうな)(うむ)



 クロの内では、天性の殻に亀裂が入り、割れた欠片が散り続けていた。

供与の力が迸る。


箱の外で、アカと話すキンとサクラの声が微かに聞こえた。


キンとサクラが、箱に掌を当てたのが、何故か見えた。

二人の掌から、治癒の光が放たれる。


クロは供与を箱の外まで拡げた。


(姫、大丈夫か?)(大丈夫じゃ♪)


供与を極大にする為、クロは竜体に戻った。


 境界に散った姫の欠片よ!

 元の場所に戻れ!

 オレの力、何でもくれてやる!

 戻って来い!!


供与が爆発的に発動した。


殻の破裂が連鎖する。


そして、もうひとつの天性が目覚めた。


クロの意識は、姫の欠片が散らばる境界に飛んでいた。


 よし、見えたっ!

 姫の欠片! ここに集まれ!!


無数の小さな光が、クロの意識に吸い込まれる。


 姫、一緒に戻ろう!


クロが目を開けると、箱の中に戻っていた。


(集めてやったぞ。受け取れ)

 欠片達よ、元に戻れ!!!


小さな光の粒達が、箱の中いっぱいに広がる。

(キラキラと……綺麗じゃのぅ……)


(これ、お前だよ)クロが笑う。


(これが? ……ワラワなのか?)


(そうだよ。集めるぞ、吸い込め!)


(あい解ったっ!)



 姫の塊に、光の粒が吸収され、次第に形を成していく。


まだ、透き通る姫の体を壊してしまわないように、クロは人姿になり、腕の力を抜いて、優しく抱き直した。


(もう少しだ)

姫が頷くのが見え、クロは微笑んだ。


竜の力が姫に流れ込み、一度、強く輝くと――


姫の体が、元に戻った。


(まだ不安定だからな。

もう少し、このまま我慢してくれ)


(我慢など……)


(何だよ?)


(クロは……我慢しておるのか?)


(あ……いや……)


(嫌なのか?)


(んな事あるかよ)


(ならば……このまま……)


(ああ。このままな……)


二人は、吸い寄せられるように、顔を寄せた。



♯♯♯♯♯♯



(キン兄、だいじょぶ?)


(なんとかな。サクラは?)


(俺は だいじょぶ~♪

キン兄、さっきは ありがとねっ♪

クロ兄は……もぉ ほっといてもいいのかも~)


(どうしたのだ?)


(うん……もぉ 治療じゃなくなってるから……)

サクラが頬を染める。


(そうか……ならば、フジの方へ行こう)


(うん♪

あ、コレ送り込んどかなきゃ)


(何だ?)


(姫の服~♪

姫自身しか集められないでしょ?)


(そうなのか……)今度は、キンが赤面。




 キンとサクラは、フジの治療に戻った。


「出たくなったら曲空するだろ」

アカ達も、各々の仕事に戻った。





 カルサイとドルマイは、姫とフジを

治療するに至った経緯をギンに話した。


銀「そういう事でしたか……」


カ【はい。ですので、こちらも――】

ド【来ましたね】


カ【ですが、こちらは、神の光の内です。

  魔物は入れません。故に――】

銀「王都かっ!!」


ド【参りましょう! あっ、お祖父様――】


?【私が王子達を護る。行け!】


 カルサイとドルマイはギンを連れて消えた。


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