仁佳西5-襲撃
前回まで:魔竜が作った結心の弓矢が
見つかりました。
♯♯ 魔界 中立地帯 ♯♯
サクラは、アカの工房から魔界に戻り、大学からソラを追いかけ、屋根裏に入った。
あ、隅っこの光 確かめなきゃ。
淡く光る箱を引っ張り出し、開けて見た。
この細かい金属は……もしかして……
並べていた蒼牙の上で、箱を持ち、
「元の場所に戻ってね」術を唱えた。
蒼牙と、箱の中の欠片達が輝き、箱から光の粒が浮き、蒼牙に吸い込まれていった。
箱が空になった。
「ぜんぶ蒼牙だったんだね」なんで ここに?
あ♪ 蒼牙、仮止めしとこ~♪
術を唱えていると、また、ソラが上がって来た。
ソラは術が終わるのを待ち、
「サクラくんって……いろいろ凄いね……」
ため息をついた。
「そぉ?」にこにこ
「探し物……見つかったら、もうここには来ないの?」
「そんなコトないよ~
ソラちゃんが天界に来てくれるまで、ずっと来るよ」
蒼牙を緑の竜綺で包んだ。
「ありがとう……」
「元気ないね。なんでも言って?」
「迷惑……これ以上かけられないよ……」
「まだ、な~んにも迷惑ないない~」
「なんで?」
「なにが?」
「なんで、そんなに優しいの?」
「それは――」
言ったら、ますます危なくなるよね……
「――俺が迷惑かけてるから」
「そんな事ないからっ!
……サクラくん……私……」
「……うん」
「ごめんっ! やっぱり言えない!
ごめんね……」
「うん……頼りにならないよね……俺……」
「そんなんじゃないからっ!!
あの……ね……
その石像、私の部屋に置いていい?」
「え!?
そんなことしたら、俺、またトートツにソラちゃんの部屋に現れちゃうよ!?」
「いいよ」布石像を持って、下りて行った。
え~っと……俺、どうすればいいの?
って!! 今!? こんな時にっ!!
ソラの部屋で、闇の穴を消し、即、曲――
「ここにいてよ! お願い……」涙が溢れる。
「ソラちゃん……」肩を抱こうとして手を止めた。
正面からソラの両肩に掌を置き、治癒の光を当てる。
「心まで届くのか分からないけど……」
「ありがとう……あったかい……」
ソラは、サクラの胸で泣いた。
サクラはソラの背には触れず、そっと治癒の光を当てた。
ソラちゃん……俺で、ごめん……
ソラちゃんが会いたい人って誰?
教えてくれないと探せないよ……
♯♯♯
その日の夜中も、サクラは竜宝を求めて低空飛行していた。
つい、ため息……
あーっ! ダメダメ!
こんなじゃダメなんだからっ!
昨日よりヒドイよっ! 俺っ!
でも、ため息……
だぁーっ! もぉっ!
感情 動かしちゃダメなんだからっ!
切り換えるっ! はいっ!
両手で頬をパシッと叩いた。そして前を向く。
蒼牙の中には、やっぱり誰か封じられてる。
切先が見つかったら判るのかなぁ?
早く見つけたいな……
蒼牙が、ちゃんと復活したら、
アオ兄の心は、元気になるんだ。
俺のカンが、そう言ってるから間違いない。
アオ兄……いっぱい傷ついたから……
絶っっっ対! 俺が見つけるんだ!
あ♪ また光ってる♪
ここは、ソラちゃんの地図にあった、
遺跡の発掘調査現場かな?
降下。
初代魔竜王の最初の城と軍事施設は、魔物の襲撃で破壊され、魔竜王国の中枢は、より東に移さざるを得なかった。
今は魔竜王国の西端に広がる、ただの荒れ地となっていた、この場所の調査を始めたのは虹藍女王だ。
ランは何かを探してるのかな?
そういえば、竜宝について知りたいって
言ってたよね。
すっごく悩んでる色してたけど……
何を悩んで――ん? 色……って……
俺、兄貴達しか見えなかったハズなのに、
どうしてランの――あ……掘らなきゃ。
地面が光っている場所に立ち、思いに耽ってしまっていた。
勝手に掘っちゃって、ごめんなさ~いっ♪
荒らさないよう、掌握で探った。
璧じゃなかったね~
武器いっぱいだね~
ここ……武器庫跡なんだね……
竜宝だけを選び、掌握で取り出して抱えた時、
もぉ~っ! しつこいっ!!
ソラの部屋に曲空した。
♯♯ 人界 岩戸地帯 ♯♯
空を覆い尽くすように、魔物が迫っていた。
宵闇とは違う、闇黒の集団が月をも見えなくしている。
これは……本気の攻撃のようですね……
少しでも減ればよいのですが……
フジは、聖輝煌水を紫炎に乗せ、波紋状に拡散した。
しかし、魔物は減らない。
やはり、傀儡兵や獣化兵では無いですね。
初めてですが、グレイスモーブ様の技、
使ってみましょう!
魔物の直中に、シュッと飛び込み、
極炎豪放!!
夜空が一面の紫炎で輝いた。
もう一度、極炎豪放!!
魔物が疎らになり、退却し始めた。
もう一度――あれは!?
地上から黒い塊が、勢いよく天に向かった。
その先には――
闇の穴!
フジは、黒い塊を追い越し、闇の穴の前に立ち塞がった。
黒い塊が急停止する。
!!
岩戸から出てしまったのですか!?
大きな翼の魔物が、ぐったりした姫を掴んでいた。
魔物は闇の穴に向かうのを諦めたのか、勢いを増しながら、真っ直ぐ上に飛んだ。
豪速でも追い付けないなんて!
境界が近い!
追い付かなければ姫様がっ!!
魔物が境界に差し掛かる。
姫が赤みを帯びた光に包まれた。
朱鳳の光!? 姫様を護って!!
フジは魔物の翼に、鋭い炎を矢の如く放った。
魔物の速度が落ちる。
魔物の足や翼に、続けざまに炎の矢を放ちながら迫った。
尾を掴み、引きずり落とす。
紫炎を刃に変え、斬りつけた。
姫様が落ちる!
フジは護竜甲を姫に放った!
「姫様に展開っ!!」
魔物に豪炎を放ち、姫を追った。
姫を掴む。「熱っ!!」
【既に境界に入っております!
私では、お護りしきれません!】
(私も包みます!)
腹部の鱗と、両手で姫を包んだ。
掌の内で、紫炎を氷に変え続ける。
凍鉱石! 聖輝煌水に溶かして氷に!
【天界でなければ治療出来ません! 上へ!】
熱に耐え、豪速を極大にして、全力上昇した。
♯♯ 魔界 魔竜王国 ♯♯
サクラは、ソラの部屋に曲空したついでに、屋根裏に竜宝達を置いて、遺跡に戻った。
宝物庫跡は、どこかな~♪
神眼で見ながら、地面スレスレを飛ぶ。
(竜宝達~、返事して~)
眠ってるみたいだね……
!!
何……? 誰か、俺を呼んでる?
……アオ兄!?
気を限界まで高め、アオに向かって伸ばす。
掴んだっ! (アオ兄!?)
(サクラ! フジに向かってくれ!!)
(うんっ!!)人界との境界へ!
♯♯♯♯♯♯
フジは豪速で上昇し続けていた。
抱えている姫の熱が下がっていく。
【天界に入りました】
フジは速度を落とすことなく、長老の山まで飛び続けた。
♯♯♯♯♯♯
これは!? フジ兄!?
姫が相当ヤバいっ!!
(フジ兄!! すぐ行くからっ!!!)
サクラはフジに向かって連続曲空した。
――長老の山の最終結界。
「遅くなって、ごめんっ! 姫を!!」
サクラが現れ、両手を広げた。
フジは姫を渡すと、気を失い、落ちていった。
(兄貴達!! 助けてっ!!!)
始【またかよっ! 妖怪ジジイ!!】
孤(お前の子孫は、常に狙われているのだ。
四の五の言わず助けよ。
鎖に抗え。手遅れになるぞ)
始【っせーなっ!】
孤(今日は殊の外、鎖が強いな……
已むを得ぬ。眠っていろ)
始【おいっ!! 妖――……】
孤(モーブ、ローズ、此奴に代わり、
子孫達を頼んだぞ)
妖狐王が動かすシルバコバルトは、
二つの水晶を手に、長老の山の上空で留まった。
そして、爆発的に気を高め、大きな供与を注いだ。
 




