仁佳西4-ユンおばさん
魔竜王国には、竜だけでなく様々な種族の魔人が住んでいるようです。
♯♯ 魔界 中立地帯 ♯♯
その後も、サクラは蒼牙の欠片をあちこちで見つけた。
どぉして、天界で なくした蒼牙が
魔竜の国でバラバラに見つかるんだろ?
不思議に思いながら、ソラの部屋の屋根裏で、蒼牙の欠片をもう一度並べてみた。
アカ兄が再生に使ったのって
どこなんだろ?
(蒼牙、教えてくれる?)
中程の空間が蒼い光で埋まる。
ってことは……
まだ切先が見つかってないんだね。
夜中に空から探してみよ~
微かな足音が聞こえ、サクラは隠れた。
あれ? 隅で何か光ってる……
後で確かめなきゃ。
「サクラくん、いるんでしょ?」囁き声。
「うん」顔を出す。「落ち着かない?」
「そうじゃなくて、顔が……見たかったの……
いつも近くにいる筈なのに、見えないから……」
「不安?」
「ううん。信頼してるから不安なんてないよ。
ただ、顔が見たかっただけ」
「何かあったの?」
「探し物は順調?」
「まぁね。ねぇ、何か悩み事?」
「なんでもない……邪魔してゴメンね」
階段に向かう。
「講義、かっこよかったよ」にこっ
下りて行った。
何を隠してるんだろ?
天界に来れない理由?
探し物? 何を?
……もしかして……好きな人?
そうだよね……その可能性あるよね……
心が苦しくて……痛いよ……
♯♯♯
夜中、サクラは魔竜王国を、ゆっくり低空飛行していた。
あ! 何か光ってる!
降下。
畑だね……光は土の中。
けっこう深いね……
波動を細く当て、掘り下げていく。
途中からは掌握で探り、取り出した。
眠ってる……けど、光ってるのは――
三眼、四眼、君達が光らせてるんだね?
(鳳雅、起きて……)浄化の光を当てる。
鳳雅が放つ光が、赤く変わり、宙に浮いた。
(目覚めてくれて、ありがと~♪)
ほぼ完全な形で見つかった鳳雅の柄には、大玉が二つ。
(ってことは、大玉ひとつの剣があるんだね?)
三剣が輝く。
(もっと仲間がいるの? 五眼とか?)
反応が微妙だ。
(ん? なぁに? もしかして、未完成?)
輝く。
(どこにあるの?
魔界? ……神界? ……天界?)
天界で輝いた。
(一眼は、どこ? 魔界?)
輝いた。
(その二つも探すねっ)
嬉しそうに輝く。
♯♯♯
再び低空飛行し、光を見つけ、降下した。
民家の物置……まいったなぁ……
布石像を庭に隠し置いた。
でも、流石、竜の国だね~
竜宝が、あっちこっち いっぱいだねっ♪
♯♯♯
翌朝、上空から、竜宝が有る民家を観察した。
おばあさん、ひとり暮らしなのかな?
他に気を感じない。
あの角……ネイカさんと おんなじみたい。
山羊族なのかな?
聞いとけばよかったなぁ……
庭に水を撒いている老婦人を眺める。
片付け始めたので、家に入る前に声をかけようと、降りてみた。
「あの、すみません」門から声をかける。
「あら、どなた?」
「はじめまして、天竜のサクラと申します。
探し物をしていて通りかかったのですが、その……角が、友人の妹さんと、そっくりなので、同じ種族の方かと思いまして――」
「ご友人さんのお名前は?」
「リジュンと――」
「まあ! 懐かしい!
その妹さんはネイカちゃん?
弟さん――ホウくんだったかしら?」
「はい! そうです! ご存知なんですね♪」
「でも、随分前の話だからねぇ……
昔、隣に住んでいたのよ。
ここに越して来て、一度だけジュンくんが訪ねて来てくれたけど――」
「ちょっと待っててくださいね!」曲空。
――長老の山。
「ネイカさん、ホウさん、ちょっと来てっ」
二人の手を掴んで――
――再び魔竜王国。
「え!? ユンおばさん!?」ネイカとホウ。
「あらまぁ! 立派になって!」
懐かしい話に花が咲く。
しかし、ユンの夫と息子は戦で亡くなっていた。
その寂しさ、辛さが常に見え隠れする。
「サクラ様……」
「うん♪ いいよ、ネイカさん♪
ユンさん、天界にいらっしゃいませんか?」
「一緒に暮らしましょう?」
「そんな……ご迷惑な……」
「何も迷惑なんてありませんよ」にこにこ
「来てよ、おばさん♪」
「愛着のあるお家でしたら、まるごと運びますよ。
ご遠慮なさる必要はありません。
こちらも、特にお構いもしませんので」にこっ
その後も、遠慮しまくって渋るので――
「とりあえず遊びに来てよ。
療養してる兄さんにも会ってよ」
と、ネイカが立たせ、そのまま天界へと連れて行った。
「のどかで素敵な所だねぇ……」
「でしょ♪ だから一緒に暮らしましょ♪」
そんなこんなで、ユンおばさんは、ネイカとホウの家の隣に住む事になった。
「お家、ここでいい?」本当に、まるごと。
「物置こぉかな?」
「お庭の木~♪」
「薔薇の花もねっ♪」
サクラが次々運んで来るのを、ネイカとホウが魔宝を使って据え付けた。
サクラとしては、持ち主と仲良くなってから、竜宝の話を持ちかけようと思っていたのだが、
ユンが、どうしてもお礼をしたいと言うので、物置の中の物をひとつだけ頂きたいと言ってみた。
「何に使うのか、さっぱり分からない、義父が集めたガラクタばかりよ。
いいの?」
三人は嬉々として、物置から ひとつずつ竜宝、魔宝を持って出て来た。
「そんなに喜んでもらえるなら、みんな持ってってちょうだいな」
「ホントにっ!?♪」三人、大喜び。
「あ……代わりにコレを」集縮の小壺を出した。
サクラが使い方を説明している間に、ネイカとホウが箱を抱えて来た。
「これと交換してね♪」
生活が便利になる竜宝、魔宝が、古代の遺物達と入れ替わりに物置に入った。
この物置で光っていたのは、一対の弓矢。
おそらく、魔竜達が使おうと作った、結心の弓矢。
光ったって事は、使える筈!
サクラはペリドルを連れて、アカの工房を訪れた。
「アカ兄、コレ」鳳雅と結心の弓矢を渡す。
「魔界に有ったのか……」
アカは、結心の矢に手を翳した。
「そうか……この木も代替材料か……
この木なら人界に有る筈だ。
サクラ、クロを呼べ」
(クロ兄、アカ兄トコ来れる?)
(ああ、すぐ行く)
間もなくして、クロが曲空して来た。
「クロ、この木を探せ」紙を渡す。
「手がかりは?」
「人界なら、まだ絶滅していない筈。
それだけだ」
「ありました!」
ペリドルが古文書から顔を上げた。
「炮六杉は、温帯域の高山に自生するようです」
「温帯の山なのか……って事は……
サクラ、この木、どんな木だ?
……よしっ! 行ってくる!」人界へ曲空。
「鳳雅は復元しておく」赤い布で包んだ。
「ありがと、アカ兄♪
あ、一眼のは、なんて名前なの?」
「琉雅だ」
「未完成の五眼は?」
「そうか……伝説ではなかったのだな……
繝雅と名付けられる予定だったらしい」
「なんで華雅だけ、対になってるの?」
「短剣、長剣、双剣、大剣なだけだ」
「そっか~
琉雅は魔界、繝雅は天界にあるんだって。
見つけたら持って来ていい?」
「うむ。頼む」
サクラが工房から出た所で、背の華雅が光った。
「どしたの?」
【サクラ王様、鳳雅をお救いくださり、ありがとうございました】
【鳳雅を保つ事で精一杯にて、無言となり、申し訳ございませんでした】
「いいよぉ、そんなコト。
で、もぉだいじょぶなの?」
【はい。竜綺にて、お包み頂きましたので】
「あの赤い布?」
【はい。護竜宝の仲間に御座います】
「へぇ~、アレも護竜宝なんだ~♪
色は何かあるの?」
【はい。赤は活化の色で御座います】
「じゃあ、いろいろあるの?」
【はい。御座います】
サクラは工房に駆け込んだ。
「アカ兄♪ 竜綺ぜ~んぶ見せて~♪」
アカが箱を指す。
サクラは卓に出し、竜綺達と話し始めた。
黒「竜ヶ峰と、東と中の国境山脈、
どっち先に探した方が良さそうなんだ?」
桜「ん~~、竜ヶ峰かなっ」
黒「んじゃ、そっち先なっ」
桜「って、ただのカンだよぉ」
黒「オレも、なんとなく竜ヶ峰だと
思ってたから、それでいいんだ。
ありがとなっ」
桜「ん♪」




