仁佳西3-メル教授
前回まで:サクラはアオの為の竜宝を集め、
ハクは護竜槍の本体を探し、
馬車は岩戸地帯へと進んでいます。
♯♯ 天界 深蒼の祠 ♯♯
サクラが神竜達と話しながら、水槽に光を当てていると、キンとフジが来た。
「キン兄、ムーントさんは神官なんだって~
だから、この祠お願いしちゃった♪」
「そうか、それは助かるな。
ムーント様、宜しくお願い致します」
「いえ、こちらこそ見習いですのに、祠をお任せ頂けるなど、身に余る光栄でございます」
恭しく礼。
「フジ兄、ペリドルさんは植物学専攻してる学生さんなんだよ」
「では、薬草にもお詳しいのですか?」
「薬草学の研究室におりました」
「フジ兄は薬師なんだ♪」
「そうですか♪」
フジは聖輝煌水を入れ替えながら、ペリドルは光を当てながら、何やら専門的な話に花が咲いてしまった。
「キン兄、トルマリさんは、神界の中古代の歴史学専攻してたんだって♪」
天界の古代史を専攻していたキンの瞳が輝く。
こっちはこっちで花が咲いてしまった。
「ムーントさん、この祠にある神器、説明しますね」
サクラは奥に向かって歩き始めた。
ムーントが続く。
♯♯ 魔界 中立地帯 ♯♯
キンと交替したサクラは、深蒼の祠から、ソラの部屋の屋根裏に曲空した。
蒼牙の欠片を並べていると、携行用千里眼が鳴った。
「キン兄、なぁに♪」
『サクラ、魔竜王国の女王様より、賜り物が届いたのだが、取りに来られるか?』
「使者さん、まだ居るの?」
『大臣殿だ。長老の山を見学している』
「すぐ行くっ」曲空。
長老の山に行くと、クロが待っていた。
「キン兄から預かった。
魔竜女王様からだって」
「大臣さん、まだ居る?」
「さっき、シロ爺と蔵の方に行ったぞ」
「ありがと♪ クロ兄♪」
虹藍から届いたのは、魔竜王国中の宝物館への入館、及び、持出し許可証だった。
サクラは急いで、お礼状を書き、シロの気を追った。
「大臣様、お越し下さり、ありがとうございます」
「おお! サクラ王子殿下!
わざわざ、お越しくださいましたとは、感激至極に御座います」
「許可証のお礼を認めましたので、女王陛下にお渡し頂ければと存じます。
それと、こちらは、今後、協力する為に必要となる竜宝です。
他に御入り用な竜宝がございましたら、何なりとお申し付けください」
大臣に布石像を渡した。
我が国にとって、一番欲しいのは、
貴方様なのですが……
「サクラ王子殿下に、お選び頂くのが、最善かと存じます」
「では、改めまして、女王陛下とご相談させて頂きます」
「さようですか♪
宜しくお願い致します」満面の笑顔。
その笑顔の訳を知る由も無いサクラは、ソラの部屋の屋根裏に戻って行った。
♯♯♯
翌日、大臣に渡した布石像が、虹藍の手に渡った事を察知したサクラは、
(ラン、聞こえる?)話しかけてみた。
(聞こえるわ♪ 近くにいるの?)
(中立地帯。今いいの?)
(部屋で休憩してたの。
だから、他に誰もいないわ♪)
(行ってもいい?)
(もちろん♪)
サクラは、その布石像に曲空した。
「びっくりさせて、ごめんね。
ここ、凄い結界だね~」
「女王の私室だから」笑う。
「これ、布石像って竜宝。
俺は、コレを辿って移動できるんだ。
ランなら竜宝の声が聞けるから、話せると思ったんだよ」
「じゃ、ここに置いてたら、また来てくれる?」
「うん♪ 用があったら呼んでね~」
「話したいだけ、とか……ダメ?」
「もちろんいいよ。友達でしょ♪」
「よかったぁ」
「あ、許可証、ありがと♪」
「王立大学長殿から、お話があったの。
でも、こんな事しか思いつかなくて……」
「すっごく助かるよ♪
俺も、できる事なら何でもするよ。
ひとりで国を背負うの大変でしょ」
「ありがとう、サクラ」
扉が叩かれる。
「女王陛下、お時間で御座います」
「今、行きます」
(じゃ、また来てね)
頷き、微笑んで、サクラは消えた。
虹藍は表情を引き締め、王笏を手に取り、外套を翻して部屋を出た。
♯♯ 人界 岩戸地帯 ♯♯
馬車は、『岩戸』が点在する地帯に着いた。
岩戸は、一見、ただの岩山だが、修行を積んだ者が、高めた気を当てる事でのみ開く扉が有る。
「ここは仁佳の西部、伽虞禰との国境に近い、荒れた土地です。
精神修行の場として、自然を利用した施設が沢山あります」
桜華が説明した。
「この岩戸が風羅、あちらが雷崋よ。
フジ様、慎玄様に、気の高め方をご説明お願い致します。
クロ様、紫苑、珊瑚、少し待っていてね。
姫様、では、修行を始めましょう」
フジと慎玄は雷崋の岩戸に、桜華と姫は風羅の岩戸に入った。
(姫、その中に居れば、魔物に襲われる事はねぇからな。
何があっても開けるんじゃねぇぞ。
いいか? 絶っっ対! 開けるなよ!)
(解っておる♪
暫し離れるが、寂しがるでないぞ♪)
(寂しがるかよっ!
じゃーなっ! 頑張れよ!)
(おぅよ♪)
暫くして、桜華とフジが、岩戸から出て来た。
「フジ様、警護よろしくお願い致します。
クロ様、東の国、国境山脈北部にお願い致します」
クロは妖狐母子を連れて曲空した。
♯♯ 魔界 魔竜王国 ♯♯
サクラは、ソラの護衛をしつつ、魔竜王国の大学や博物館の上空を飛び、残る二つの璧を探していた。
最南端の大学はあれかな?
あ♪ 光ってる~♪
女王からの許可証を見せ、宝物館に入ると、ここでも一斉に竜宝達が光り、騒いだ。
そして、刃の欠片が飛んで来た。
「コレも蒼牙だね……」
天界で、なくしたって聞いてたんだけど……
「豪雷璧か恵雨璧いる?」
璧が、ひとつ飛んで来た。
「豪雷璧、お世話になるよ♪」
璧が嬉しそうに輝く。
「みんなも、これから少しずつだけど、補修するからね。待っててね」
浄化の光で埃や汚れを綺麗にして、外に出た。
他に竜宝がありそうな場所って……
大学の図書館で調べてみよ~
図書館で詳細な地図を見ていると、
「あ、メル教授。丁度、良い所に――」
魔宝学教授に見つかってしまった。
ここでは、サクラ=メルドブルングと、母方の姓で名乗っており、長いので『メル教授』と呼ばれている。
「何でしょう?」にっこり
「先日の、耕運鐸の使い方を、農学の教授が教えて頂きたいと申しているのですが、よろしいでしょうか?」
「はい。他にも農耕用の竜宝が有りましたから、説明致しましょうか?」
魔宝学教授は大喜びで飛んで行った。
地図を覚えて宝物館に行くと、農学の教授だけでなく、他の教官や学生でごった返していた。
竜宝達も興奮している。
ソラちゃん、農学じゃないよね?
ここに いてくれる方がいいんだけど……
やっぱり恥ずかしいよぉ……
「これは一体……」何事なのぉ?
「メル教授の講義を聞きたいと、学生が集まってしまったんです」
魔宝学教授が困り顔で答えた。
「講義って……
とりあえず、耕運鐸の説明しますね」
サクラの ひと言で、水を打ったように静まり返った。
宝物館に有る農耕用の竜宝について一通り説明し、ついでに、持ち込んでいた集縮の壺についても、保管用具として説明した。
「この壺なら、大量の水を運ぶ事が出来ますから、干ばつ地帯での農耕にも役立ちます。
増幅系の鏡との組み合わせも、相性が良く、その場で水を発生させたり、希少な種を増やしたりも出来ます」
ひと息つく。
「質問ありますか?」
魔宝学教授は、すっかり司会役だ。
一斉に手が挙がる。
俺……帰れるのかなぁ……
夜になっても質疑応答は続き、翌日、大量の壺を運ぶサクラの姿が有った。
凜「あっ! サクラ、待って!」
桜「なぁに~、急いでるんだけどぉ」
凜「何してるの?」
桜「集縮の注文、殺到してるんだよ~
壺の中に、壺と水筒が たっくさん
入ってるんだからねっ」
凜「王子様の宅配便?」
桜「そぉなっちゃったぁ~」きゃはっ♪
凜「元気ね……」
大陸(西部)
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┏┛ ┌┘
┏┛ネカイ ┌┘カグネ
┃ 涅魁 │ 伽虞禰
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┗┓──┘岩戸地帯
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┗━┓ 仁佳 ニカ
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