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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
202/429

仁佳西3-メル教授

 前回まで:サクラはアオの為の竜宝を集め、

      ハクは護竜槍の本体を探し、

      馬車は岩戸地帯へと進んでいます。


♯♯ 天界 深蒼の祠 ♯♯


 サクラが神竜達と話しながら、水槽に光を当てていると、キンとフジが来た。


「キン兄、ムーントさんは神官なんだって~

だから、この祠お願いしちゃった♪」


「そうか、それは助かるな。

ムーント様、宜しくお願い致します」


「いえ、こちらこそ見習いですのに、祠をお任せ頂けるなど、身に余る光栄でございます」

恭しく礼。


「フジ兄、ペリドルさんは植物学専攻してる学生さんなんだよ」


「では、薬草にもお詳しいのですか?」


「薬草学の研究室におりました」


「フジ兄は薬師なんだ♪」


「そうですか♪」


フジは聖輝煌水を入れ替えながら、ペリドルは光を当てながら、何やら専門的な話に花が咲いてしまった。


「キン兄、トルマリさんは、神界の中古代の歴史学専攻してたんだって♪」


天界の古代史を専攻していたキンの瞳が輝く。

こっちはこっちで花が咲いてしまった。


「ムーントさん、この祠にある神器、説明しますね」

サクラは奥に向かって歩き始めた。

ムーントが続く。




♯♯ 魔界 中立地帯 ♯♯


 キンと交替したサクラは、深蒼の祠から、ソラの部屋の屋根裏に曲空した。

蒼牙の欠片を並べていると、携行用千里眼が鳴った。


「キン兄、なぁに♪」


『サクラ、魔竜王国の女王様より、賜り物が届いたのだが、取りに来られるか?』


「使者さん、まだ居るの?」


『大臣殿だ。長老の山を見学している』


「すぐ行くっ」曲空。



 長老の山に行くと、クロが待っていた。

「キン兄から預かった。

魔竜女王様からだって」


「大臣さん、まだ居る?」


「さっき、シロ爺と蔵の方に行ったぞ」


「ありがと♪ クロ兄♪」


虹藍から届いたのは、魔竜王国中の宝物館への入館、及び、持出し許可証だった。


サクラは急いで、お礼状を書き、シロの気を追った。


「大臣様、お越し下さり、ありがとうございます」


「おお! サクラ王子殿下!

わざわざ、お越しくださいましたとは、感激至極に御座います」


「許可証のお礼を(したた)めましたので、女王陛下にお渡し頂ければと存じます。

それと、こちらは、今後、協力する為に必要となる竜宝です。

他に御入り用な竜宝がございましたら、何なりとお申し付けください」

大臣に布石像を渡した。


 我が国にとって、一番欲しいのは、

 貴方様なのですが……

「サクラ王子殿下に、お選び頂くのが、最善かと存じます」


「では、改めまして、女王陛下とご相談させて頂きます」


「さようですか♪

宜しくお願い致します」満面の笑顔。



 その笑顔の訳を知る由も無いサクラは、ソラの部屋の屋根裏に戻って行った。



♯♯♯



 翌日、大臣に渡した布石像が、虹藍の手に渡った事を察知したサクラは、

(ラン、聞こえる?)話しかけてみた。


(聞こえるわ♪ 近くにいるの?)


(中立地帯。今いいの?)


(部屋で休憩してたの。

だから、他に誰もいないわ♪)


(行ってもいい?)


(もちろん♪)


サクラは、その布石像に曲空した。


「びっくりさせて、ごめんね。

ここ、凄い結界だね~」


「女王の私室だから」笑う。


「これ、布石像って竜宝。

俺は、コレを辿って移動できるんだ。

ランなら竜宝の声が聞けるから、話せると思ったんだよ」


「じゃ、ここに置いてたら、また来てくれる?」


「うん♪ 用があったら呼んでね~」


「話したいだけ、とか……ダメ?」


「もちろんいいよ。友達でしょ♪」


「よかったぁ」


「あ、許可証、ありがと♪」


「王立大学長殿から、お話があったの。

でも、こんな事しか思いつかなくて……」


「すっごく助かるよ♪

俺も、できる事なら何でもするよ。

ひとりで国を背負うの大変でしょ」


「ありがとう、サクラ」


扉が叩かれる。

「女王陛下、お時間で御座います」


「今、行きます」

(じゃ、また来てね)


頷き、微笑んで、サクラは消えた。


虹藍は表情を引き締め、王笏を手に取り、外套を翻して部屋を出た。




♯♯ 人界 岩戸地帯 ♯♯


 馬車は、『岩戸』が点在する地帯に着いた。

岩戸は、一見、ただの岩山だが、修行を積んだ者が、高めた気を当てる事でのみ開く扉が有る。


「ここは仁佳(ニカ)の西部、伽虞禰(カグネ)との国境に近い、荒れた土地です。

精神修行の場として、自然を利用した施設が沢山あります」

桜華が説明した。


「この岩戸が風羅(カグラ)、あちらが雷崋(ライカ)よ。

フジ様、慎玄様に、気の高め方をご説明お願い致します。


クロ様、紫苑、珊瑚、少し待っていてね。


姫様、では、修行を始めましょう」


フジと慎玄は雷崋の岩戸に、桜華と姫は風羅の岩戸に入った。


(姫、その中に居れば、魔物に襲われる事はねぇからな。

何があっても開けるんじゃねぇぞ。

いいか? 絶っっ対! 開けるなよ!)


(解っておる♪

暫し離れるが、寂しがるでないぞ♪)


(寂しがるかよっ!

じゃーなっ! 頑張れよ!)


(おぅよ♪)



 暫くして、桜華とフジが、岩戸から出て来た。


「フジ様、警護よろしくお願い致します。

クロ様、東の国、国境山脈北部にお願い致します」


クロは妖狐母子を連れて曲空した。




♯♯ 魔界 魔竜王国 ♯♯


 サクラは、ソラの護衛をしつつ、魔竜王国の大学や博物館の上空を飛び、残る二つの璧を探していた。


 最南端の大学はあれかな?

 あ♪ 光ってる~♪


女王からの許可証を見せ、宝物館に入ると、ここでも一斉に竜宝達が光り、騒いだ。


そして、刃の欠片が飛んで来た。

「コレも蒼牙だね……」


 天界で、なくしたって聞いてたんだけど……


「豪雷璧か恵雨璧いる?」


璧が、ひとつ飛んで来た。

「豪雷璧、お世話になるよ♪」

璧が嬉しそうに輝く。


「みんなも、これから少しずつだけど、補修するからね。待っててね」


浄化の光で埃や汚れを綺麗にして、外に出た。


 他に竜宝がありそうな場所って……

 大学の図書館で調べてみよ~




 図書館で詳細な地図を見ていると、

「あ、メル教授。丁度、良い所に――」

魔宝学教授に見つかってしまった。


ここでは、サクラ=メルドブルングと、母方の姓で名乗っており、長いので『メル教授』と呼ばれている。


「何でしょう?」にっこり


「先日の、耕運鐸の使い方を、農学の教授が教えて頂きたいと申しているのですが、よろしいでしょうか?」


「はい。他にも農耕用の竜宝が有りましたから、説明致しましょうか?」


魔宝学教授は大喜びで飛んで行った。



 地図を覚えて宝物館に行くと、農学の教授だけでなく、他の教官や学生でごった返していた。

竜宝達も興奮している。


 ソラちゃん、農学じゃないよね?

 ここに いてくれる方がいいんだけど……

 やっぱり恥ずかしいよぉ……


「これは一体……」何事なのぉ?


「メル教授の講義を聞きたいと、学生が集まってしまったんです」

魔宝学教授が困り顔で答えた。


「講義って……

とりあえず、耕運鐸の説明しますね」


 サクラの ひと言で、水を打ったように静まり返った。


宝物館に有る農耕用の竜宝について一通り説明し、ついでに、持ち込んでいた集縮の壺についても、保管用具として説明した。


「この壺なら、大量の水を運ぶ事が出来ますから、干ばつ地帯での農耕にも役立ちます。

増幅系の鏡との組み合わせも、相性が良く、その場で水を発生させたり、希少な種を増やしたりも出来ます」

ひと息つく。


「質問ありますか?」

魔宝学教授は、すっかり司会役だ。


一斉に手が挙がる。


 俺……帰れるのかなぁ……



 夜になっても質疑応答は続き、翌日、大量の壺を運ぶサクラの姿が有った。





凜「あっ! サクラ、待って!」


桜「なぁに~、急いでるんだけどぉ」


凜「何してるの?」


桜「集縮の注文、殺到してるんだよ~

  壺の中に、壺と水筒が たっくさん

  入ってるんだからねっ」


凜「王子様の宅配便?」


桜「そぉなっちゃったぁ~」きゃはっ♪


凜「元気ね……」




 大陸(西部)

       ┏

    ┏━━┛

  ┏━┛   ┌

 ┏┛    ┌┘

┏┛ネカイ ┌┘カグネ

┃ 涅魁  │ 伽虞禰

┗┓    ├───

 ┗┓   │★

  ┗┓──┘岩戸地帯

   ┃

   ┗━┓ 仁佳 ニカ

     ┗━━┓


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