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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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西航行12-告白

 前回まで:スミレはハクに色々話しました。


 竜が、神竜の事を知り、神竜と手を結ぶ事は、

 魔王にとって大きな脅威であり、

 なんとしても避けたい事。


 だからこそ、魔王は、どんな手を使っても

『知る者』を排除しようとする。


 翁亀様は、そう言っていた。


 既に神竜と結び付いているアオとサクラは、

 脅威そのものだよな……


 だから狙われる。


 護る為の封印か……


 まだ解いてはいけないのか……




 この前、俺は睦月に、知る事で、

 知恵を使う事で、人界を護れと言ったが……


 竜も同じだよな……

 もっと神竜の事、知らなければならないな。


 今は、知る事が危険過ぎる両刃之剣だが、

 いずれは俺達だけにとっての

 最強の剣にも盾にもしてやる!



ハクは洞窟の自室でスミレの言葉を聞き、考え込んでいた。


 急いではいるんだが……


 やりたい事だらけになっちまったな……


 頭ン中、整理しねぇと動けねぇよ……




(ハク兄……今、いい?)


(どうした? サクラ)


(ヒスイから聞いた。

ハク兄、スミレから聞いたんだよね?)


(お前なぁ『様』くらい付けろよ)苦笑。


(だって~ 友達なんだもん♪)


(しょーがねぇヤツだな……

聞いたよ。

まだ話して貰えない事もあったが)


(うん。まだ、言えない事あるんだ……

でも、スミレが言ったなら、俺も……少しだけどね……話していい?)


(ああ。言えない事は、無理しなくていいぞ)


(ありがと、ハク兄。部屋、入っていい?)


(もちろんだ)


サクラが曲空して来た。


(お前……曲空……)


(うん。できるけど、気にしないで。

目の前だけど、声には出せないから、このまま話すね……)


ハクが頷く。


(俺……アオ兄が囮になって落ちるまで、ただ、兄貴達に甘えてた。

年が離れてて末っ子だから、どんなワガママでも許されてトーゼンだと思ってた。


あ、矛盾してる、って疑ってる色だ……


うん。確かに兄貴達には会ってなかったよ。

でも、それも、甘えてたからなんだ。

俺、公務も、な~んにもないし、好きなコト、自由にしてていいんだって思ってたんだ。


兄貴達、みんな人界に行くって聞いて、ひとり置いてかれたくなくて……

それだけの理由で、俺の中にある竜宝達の力 使って、ズルして試練の山 合格して、ムリヤリついて来てしまったんだ。


俺が……バカだったから……

アオ兄を苦しめ続ける事になってしまって……

アオ兄とは特別に繋がってるから、それ……ぜんぶ伝わってくるんだ……)


(サクラ……お前……ずっと、ひとりで……)


(俺は、自業自得だから……

それに、ひとりじゃない。

ヒスイも一緒だから。

ヒスイも、アオ兄を護りきれなかったって、封印する事になってしまって、すまないって、いつも言ってる。


でも……ヒスイが護りきれなかったのも……

俺が、落ちていくアオ兄を見て、暴走して、竜宝の力、ぜんぶ解放しそうになったのをヒスイが止めてくれてたから……

だから、アオ兄のトコに行くのが遅れたんだ)


(そんなに……全部、自分のせいにすんなよ)


(ありがと……でも……

どう考えても、ぜんぶ俺のせいなんだ……)


ハクはサクラを抱きしめた。


(そんなに自分を責めるなって。

皆、サクラのせいだなんて思ってねぇよ。

皆、自分のせいだと思ってるんだからな)


(うん。知ってる)


(そうだったな……

俺達の気持ち、筒抜けだったな……)


(だから……兄貴達、大好きなんだ……)


(そっか……)


洞窟(ここ)で目が覚めた時、アオ兄の居場所がわからなくて……

そんなこと、それまで無かったから、混乱して泣いてたら、ハク兄が『死ぬワケねぇだろ』って言ってくれて……


それで落ち着けて……

よく考えたら、俺が生きてるってコトは、アオ兄も生きてるってコトだよね……

って、気づけたんだ。


それで、ヒスイ 呼び出して、ぜんぶ聞いて、アオ兄と俺の力は、影響し合うから、俺も封印してもらったんだ。

アオ兄には、竜だってコトも忘れててもらわないといけなかったから、記憶と力が封印されたけど、

俺は、アオ兄の呪を刺激しないように、竜の力のうち強い部分と、力の成長を封印してもらったんだ。


竜宝の力は、使っても影響しないから、今の俺は、自分の力 少しだけと、竜宝の力と、ヒスイの力で、竜として動けてるんだ)


(時々、翼が有るんだってな。

ヒスイ様の力か?)


(ハク兄にも見える?

ヒスイの力、いっぱい使うと、出ちゃうんだ)


(俺には見えねぇよ。アオが見たっつってた)


(うん。アオ兄なら見えるハズだよ。

俺……

何かの間違いで、アオ兄の封印が解けてしまったら、全力でアオ兄を護るから)


(捨て身には、なるなよ)


(大丈夫。なれないよ。

俺が死んだら、アオ兄も死んでしまう。

それに、ヒスイが神に成れないから)


(ああ、そっか……

あとは、サクラが成人しなきゃ条件が揃わねぇんだな?)


(うん)


(今、モモお婆様とウェイミンが、封印解放の術を解読しようとしてるんだが……)


(それは、進めてほしいんだ。

アオ兄のも、俺のも、何重にも封印してるから、もう、ヒスイにも鍵がなければ解けないんだ。

たぶん、その術が鍵だと思うんだ。

ただのカンだけど……)


(解った。続けて貰うよ)


ハクは額をくっつけて、サクラの目をじっと見詰め、

(お前、ちゃんと成長してたんだな。

今まで騙しやがって~)


(ごめん……

でも、出来るだけ、力 使わない為には、こうするしかなかったんだ。

まだ暫くは、ガキのフリしてないといけないけど……笑わないでよね)


(たぶん笑う)ぷっ♪


(もおぉっ! 笑ってるし~)ぶぅ~


(見つからないように笑うさ)あははっ♪


(絶っっ対! 見つかったらダメなんだよっ!)


(わかった、わかった)はははははっ♪


(俺がハク兄の秘密、いろいろ知ってるコト、忘れないでね)じーーっ


(あ……)マジかっ!?


(あ♪ ハク兄、今度『俺』やってよねっ♪)


 ・・・ちょい待てっ!!


(いや、そ、それ……ムリだからっ!

もう笑わないからっ! 勘弁してくれ~っ!)


(誰がやるのか決めるの、俺じゃないし~♪)


「コイツッ!」


きゃははははっ♪

(ハク兄♪ 大好きっ♪)


(俺もなっ♪ 愛おしくって仕方ねぇよ!)

あはははははっ♪




「船に戻るが、サクラ、どうする?」


「いっしょに行くっ♪」

(その前に~ キン兄トコ行こっ♪)ニコッ


(そうだな。顔見せとかねぇとなっ)ニカッ



♯♯♯



「キン兄~♪」ぱふっ♪


「サクラ、もう大丈夫なのか?」


「うんっ♪ どっか行くの?」


「長老の山だ。シロ爺様に呼ばれたのだ。

ハクは何か有ったのか?」


「ああ、これを」檻を見せる。


「私の部屋は、鳥籠置き場では無いのだが……

そうだな……長老の山に運ぶとするか」


キンは檻を袋に入れて担いだ。


「んじゃ、そこまで一緒に」


「ああ」


「いっしょ~♪」




 三色の竜が楽しそうに絡みながら朝陽を浴び煌めき、天に昇るのを見て、

アカは微笑み、鎚を振るった。





 スミレが神界に逃げ帰った後、

 ヒスイはサクラに、ハクに知られた事を話した。


翡【ごめんね、サクラ】


桜(ホント、どこまでいってもスミレだねぇ。

  また、カッコつけて話しちゃったんでしょ?

  光景、浮かんじゃうよぉ)


翡【どうするの?】


桜(ん~ そぉだねぇ……

  ある程度、話して、それとなく釘刺しとく)


翡【怒ってないの?】


桜(スミレに怒るのって、大人げないでしょ)


翡【封印解いたら、滅したりしない?】


桜(俺が? スミレを? しないよ~

  アオ兄もしないよ。

  困ったコだけど、妹だからね。

  あ……伯母上だっけ?)


翡【伯母だって自覚、ぜんぜん無いよ】


桜(知ってる~ いつまでもコドモ~

  ……でも、俺も……おんなじ……

  人界に来るまではコドモだったよね……)


翡【それは……】


桜(ううん、わかってる。

  俺が、あの時、もっとオトナだったら、

  アオ兄は、あんな事にならなかったんだ)


翡【私も……同じだから……

  スミレを連れて行けなかったから……】


桜(ヒスイのせいじゃないから。

  俺がスミレとケンカしちゃったから、

  スミレが拗ねて閉じ籠っちゃって、

  アオ兄に呪が……

  あの時、スミレが来てれば、防げたんだ)


翡【サクラ、それは――】


狐(それは、防げぬ事だ。

  サクラが悔やむ事ではない)


桜(妖狐王様……でも――)


狐(もしも、スミレが、あの場に居れば、

  飛んで来た刃は四本であったろうよ)


桜(えっ……それは、どういう――)


狐(長く生きておるとな、避けられぬ事が有る

  と何度も思い知らされてしまうのだ。

 『時流』に乗ってしまうと逃れられぬ。

  その場では逃れても、いずれ同じ結果が

  訪れてしまうのだ)


桜(では、どうしても兄は呪に掛かったと

  いう事ですか?)


狐(儂は、そう思う。

  だから、悔やむ暇が有るのならば、

  己を高めよ。そして、アオを護れ)


桜(……はい! ありがとうございます!)


狐(儂も協力する。裏方は任せよ)


桜(妖狐王様が……?)


 妖狐王はニヤリとして消えた。


桜(あっ!

  ありがとうございます、妖狐王様っ!)


 そして、サクラはハクに声を掛けた。


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