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みかんのきもち  作者: 名前はまだない
6/20

5.8時45分ジャスト

 時刻(じこく)は、朝の8時半。私、パジャマ。ベットの上。

 何故(なぜ)こんな事になったのか、思い出してみてほしい。


 皆さん、お気付きになっただろうか。夜更(よふ)かしをしたからだって? いえいえ、問題はそこじゃ無いんだよね。もっと前。

 もうお分かりですね。はい。スマホの充電器抜いたままでしたね私。電池切れ。あるあるだよねー。


「うちの学校って始業時間、8時45分だったよね……」


 まあ、皆勤賞(かいきんしょう)を目指している優等生(ゆうとうせい)でもあるまいし、遅刻の一つや二つで(あわ)てふためいたりしない。

 出席日数(しゅっせきにっすう)を計算しなくてはいけない程、学校を休んでいるわけでもない。

 こういう日もあるさと割り切って、いつもよりのんびりした時間を過ごそうと決めた。

 ベットの上で上半身(じょうはんしん)を起こし、「んっ」と()びをする。

 「ふあぁ」と大欠伸(おおあくび)をしながら、水色のカーテンを開けて()の光を浴びる。


「ま、(まぶ)しいぃ……これがスペシウム光線(こうせん)かあ……」


 なんて、誰も聞いていないのをいい事に、おじさんくさい事を口にしながら、両目を左手で(おお)う。


 「おろ? あれは……」


 やっと薄眼(うすめ)を開けれた時に、飛び込んできたいつもの見慣れた風景(ふうけい)の中に、朝っぱらからブンブンと腕を振る、なんともユニークな青年(せいねん)が……いや、少年か……。


 外側にくるんっと跳ねた薄めの茶色い髪を、手で軽く抑えながら、カラカラと窓を開け、その青年(せいねん)に手を振り返す。


「おはよー修斗(しゅうと)。朝から元気いいね〜」

「元気いいねじゃないよー! 遅刻するよ?!」

「あー、ごめん。寝坊(ねぼう)したから、先に行ってて?」

「えー! 急げば間に合うって!ハリーハリー!」

「えぇー……zzZ」

「こ、こら! 美柑(みかん)、寝るなー!」

「あはは。冗談だってー。()()えず着替えるから上がっててよ」

「急げば間に合うからね?!」

「はいはーい」


 寝惚(ねぼけ)(まなこ)で、着ていた長袖のパジャマのボタンを上から一つづつ外し、ベットの上にパサリと投げ捨てる。

 あ、カーテン閉めるの忘れてた。両手を腰に当てて振り返り、修斗(しゅうと)の姿を確認するけど、もう玄関(げんかん)を通って(うち)の一階に入っていたみたいだ。

 そっとカーテンを閉めて、パジャマのズボンも脱ぎ捨てる。

 ああ、やっぱり着ているの物を脱ぐと涼しいなあ。特に寝起(ねおき)きはいつもと違う独特(どくとく)解放感(かいほうかん)がある。


「とてもいい事を思いついた。このまま二度寝しよう」


 再びこの身体をベットの上に……


美柑(みかん)ー?! まさか二度寝しようとしてないよね?!」

 突然階下(かいか)から声が(ひび)く。

「ちっ。勘のいいガキは嫌いだよ」


 仕方(しかた)なく、チェックのスカートを履き、真っ白な夏用のカッターシャツに(そで)を通す。その上に薄手(うすで)のベストを重ねる。

 髪をミストで()らし軽く(ととの)え、メイクは……今日はいっか。

 紺色(こんいろ)のソックスを()き、首に赤いりぼんを(たず)さえて……準備完了!

 修斗(しゅうと)の待つリビングへと向かう。


「時間は……8時45分ジャストか。よし」

「よし、じゃないでしょ?! 普通に遅刻(ちこく)じゃん!!」

「女の子はねー、色々準備が大変なの。てか私、めちゃくちゃ早い方だと思うけどなー。はい、お茶」

「わあ、ありがとう。じゃなくて、起きるのが遅いんだよー! 電話しても(つな)がらないしさあ」

「そうそう、昨日充電するの忘れちゃっててさー。たまにあるよね?」

「そりゃあるけどさあ、目覚まし時計は使ってないの?」

「え? 修斗(しゅうと)目覚まし時計とか使ってるの? まじ?」

「普通使うでしょ! え? みんな使わないの?」

「いや、知らないけど。と言うか、前にも言ったけど、私が寝坊した時まで律儀(りちぎ)に待ってなくていいよ? 普通に置いて行ってもらった方がこっちも気が楽なんだけど」

「そんな(さみ)しい事言うなってー。ま、一限(いちげん)(あきら)めるとして、二限(にげん)からはちゃんと出るからね?」

「えっ?」

「えっ? じゃなーい! 何その『折角(せっかく)なんだから昼までゆっくりすればいいのに正気かコイツ……』みたいな顔!」

「人の心を読まないでよ! えっち!」

「いや俺はエスパーじゃない! はぁはぁ……」

 ちょっとからかい過ぎたかね。修斗(しゅうと)で遊ぶのは楽しいから割と好きだ。

 なんでこんな私とずっと仲良くしてくれるんだろーなーって疑問(ぎもん)がないでもないけど、少ししてすぐに考えるのをやめた事を思い出した。

 人の気持ちなんて、(じつ)(ところ)その人にしか分からないのだから、考えるだけ時間の無駄だ。

 それでも、修斗(しゅうと)には多くの事で助けられているのは間違いない。本当に色々(いろいろ)な意味で。

 勢いよく飲み干され(から)になった修斗(しゅうと)のコップにお茶をコポコポと補充する。

「ふぅ。あ、ありがとう」

「ううん、こちらこそ」

「こちらこそ? 何が?」

「ふふ。何でもない」

「?」


 差し出されたお茶を再び飲みながら、不思議そうにこちらを見ている。

 無意識で人に善意を与えられるって凄いなあ。ある意味才能(さいのう)だと思う。


「あ、そー言えばさ、高橋(たかはし)さん。お昼ご飯をこれからも一緒に食べたいんだって。どうする?」


 私の不意(ふい)の一言に、お茶を飲んでいた修斗(しゅうと)の動きがピタリと止まる。

 そのまま静かにコップを机に置き、(おそ)(おそ)様子(ようす)(うかが)仕草(しぐさ)を見せる。


「そ、そうなんだ! えっと……ごめん。美柑(みかん)こういうの(いや)だったよね?! 怒ってる……?」

「怒ってないよ? 私が修斗(しゅうと)に怒るわけないじゃん」

「ほ、ほんと?」

「ほんと」

「良かったー。でも意外だったなあ。高橋(たかはし)さん、そんなに積極的(せっきょくてき)なタイプに見えなかったんだけど……」

「そうだね。修斗(しゅうと)狙いかもよ?」

「ま、まさかぁ! まあ、美柑(みかん)が良いなら俺は全然オッケー!」

「そっか。じゃ、しばらくは三人で食べよっか。てか、私もよく使うけど、全然の(あと)に、肯定文(こうていぶん)を持ってくる事に違和感(いわかん)を感じなくなっている自分が少し(いや)だね」

美柑(みかん)ってさ、たまにオヤジっぽい事言うよね!」

「……怒るよ?」

「あ、あれぇ? 話が違うなあ……」

朝令暮改(ちょうれいぼかい)って言葉、知ってる?」

「まだ日が(のぼ)ったばかりなんですが……」

「お前をライジング・サンしてやろうか?」

無駄(むだ)にカッコいい! けど意味不明(いみふめい)!!」

「で、どうするの? 結局、学校行くの?」

「……ま、美柑(みかん)がそこまで言うならもうちょっとゆっくりしても良いけどー」

「まじ? やった」

「まったく、美柑(みかん)には(かな)わないよ……」

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