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欲しいもの

 冒険者ギルドを出た俺たちは、市場へ向かう。

 目的は、ショッピングだ。

 旅に必要な道具を揃えるためだ。

 特にキラボシのため、寝袋のような物は欲しい。

 食器や道具、調味料もできれば、欲しい。

 料理を進歩させるためには、まずある程度の物資を手に入れよう。

 資金は、足りるか解らないが、買える分だけ購入しよう。

 僕は、店を探す。



 少し考えてみたのだが、寝袋ってどこに売っているのだろうか?

 まさか、キャンプ用品の専門店があるわけではないだろう。

 異世界でありそうな取り扱い店舗は、道具屋とかだろうか?

 僕は、道行く人に尋ねて、道具屋を探した。


 そして、たどり着いたのは、雑貨屋だ。

 色々な物が売っている。

 統一感のない商品を眺める。

 ありふれた物から見慣れな物まで揃っている。


 寝袋もあった。

 価格は、銀貨二枚。

 レートが不明だが、足りることは解る。

 他には、食器、調味料などなど、欲しい物が売っていた。

 手間が減って、ラッキーだった。

 お金も余裕がある。

 金貨一枚が銀貨十枚分ほどだろうか?

 まだ、金貨が残っている。

 日本円で数十万円ほどだろうか?

 大金だな。


 これならキラボシに何か買ってあげることも可能だ。

 何を買ってあげるか、考えようとするが、欲しい物なんて僕には解らない。

 手っ取り早く、本人に欲しい物を聞いてみよう。

 僕からのサプライズプレゼントは、また今度にするとしよう。


「キラボシ、何か欲しい物は、あるか?」


「あるよ!」


 キラボシは、待ってましたというように飛び上がる。


「何だ?」


「けん!」


 そうか、ケンか。

 ケン。

 県?

 権?

 犬?

 ケンとは、どれだ?


「キラボシ、ケンってどのケンだ?」


 僕は、念のためキラボシに確認する。

 もしかしたら、僕が知らない何かの可能性もある。


「つるぎのこと!」


 うん、剣か。

 なるほど、知っている物だった。

 しかし、剣か。

 危なくないだろうか?


 僕は、悩む。

 刃物は危ないが、この世界なら持っていない方が危ないような気もする。

 それに自衛手段は、必要だ。

 持たせてもいいかもしれない。


「解った。鍛冶屋に行こう」


「やったー!」


 キラボシを鍛冶屋へ連れていった。

 鍛冶屋と言っても、炉があるような工房ではなく、商品を並べた武器屋だ。

 しかし、一定のリズムで鉄を叩く音が聞こえるので、裏にでも工房があるのだろう。


「キラボシ、一本買ってあげるから選びなさい」


「これ!」


 キラボシは、秒で持ってきた。

 選んだのは、鉄で打たれたロングソードだ。

 長さは、キラボシの身長より少し短いくらいだ。

 明らかに子供には、長すぎる。

 当たり前だ。

 子供に剣を与えることなど想定してない。

 しかし、せっかく選んだのなら、無下にするのも忍びない。


 キラボシの剣の持つ姿を見る。

 重量は、大丈夫そうだ。

 不安だが、買ってあげよう。


 僕は、キラボシに剣を買い与えた。

 腰に下げるには、長いので背負える鞘だ。

 本来ならこれは、大人が腰につける物らしいが、キラボシには、背負うのに丁度良かった。


 ここで問題が発生する。

 背中の鞘から剣を抜くのは、とても難しい。

 というか、まず不可能だ。

 しかし、その問題は、鞘の設計によって解決した。

 珍しいが、鞘がほどけるのだ。

 おかげでキラボシでも剣を抜くことができる。

 売っていて本当に助かった。


 さて、準備も終わった。

 旅立ちだ。

 この国からおさらばしよう。


「キラボシ、出発するが大丈夫か?」


「うん。大丈夫!」


 僕たちは、町を去っていった。

 いち早くこの国から去るため。

 この国全てが悪いわけではない。

 ここにいる人は、普通の人だ。

 キラボシを罵ったりしない。

 しかし、この国はダメだ。

 偉い人の中に最悪の人物がいるのだろう。

 国の中の悪性腫瘍。

 除去など考えない。

 位置も数も不特定多数。

 神としてならできるかもしれないが、今の僕はそんなに暇じゃない。

 優先度は、最低ランクだ。


 僕は、町を振り返ったが、特に思うことは無かった。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 暗くなったら、野宿だ。

 木の下で焚火を燃やして、夕食を作る。

 調味料などがあるため、食材の調達はない。

 決して忘れていたわけではない。

 作ったのは、スープだ。

 塩味しかないスープ。

 どちらかと言えば、おいしくないに分類されるだろう。

 保険として購入したパンを添えている。


「キラボシ、無理する必要はないからな?」


 自分で作っておきながら、キラボシへ警告する。

 余ったら最悪、自分で飲み干せば問題ない。


「いただきます」


 僕は、食事に手をつける。

 キラボシは、不思議そうな目で僕を見る。


「お兄ちゃん。いただきますって何?」


 あぁ、そうか、この世界には無い文化なのか。


「これは、食事前の感謝の言葉だ」


「へぇ~。それじゃあ、私もいただきます」


 キラボシも食事を始めた。

 

 美味しそうにスープを飲んでいる。

 キラボシは、本当に大丈夫なのか?

 不安だ。

 もっと、味の改善に努めなければ。

 次は、干物を煮て、旨味でも出してみるとしよう。



「ごちそうさまでした」


 食事が終わって、僕は習慣のように言った。


「ごちそうさまでした」


 僕に続いて、キラボシも言う。

 夜は、寝袋にくるまる。

 魔物の心配は、いらない。

 寄り付かせないし、来ても地平線へ飛ばしてやる。


「おやすみ。お兄ちゃ………………ふぁ~」


 キラボシは、眠そうだ。


「おやすみ」


 キラボシは、眠りについた。

 疲れたのだろうか?

 ゆっくり眠るといい。

 僕は、キラボシを守るように眠った。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 翌日、龍の姿の僕は、キラボシを背に乗せて飛び立った。

 この移動方法には、訳がある。

 実は、こっちの方が速いことを思い出したのだ。

 徒歩と飛行機なら飛行機の方が速いということだ。


「わーい!」


 キラボシは、背で喜んでいる。

 ジェットコースターのような感覚なのだろうか?

 前も喜んでいたし、きっと絶叫系が好きなタイプの子供なのだろう。


 こうして飛んでいるが、実はすでに国境を越えている。

 明確な国境が見えるわけではないが、おそらく脱出しただろう。

 目指す国がある。

 昨日の町があの国でも端にあり、方位としては南にあたる。

 そこからドラゴンスパイラルに沿って行けば、フィデリスドラゴ王国という国へ行けるそうだ。

 少なくともあの国よりは、マシだろうという打算での入国だ。

 そこまで文明が進んでいないから厳しい入国審査が無いのが幸いだ。

 もしあったら、キラボシは強制送還、僕は身元不明で入国などできなかっただろう。


「キラボシ、もうそろそろ下りて歩かないか?」


 僕は、提案する。


「何で?」


「この間は、人に目撃されて騒ぎになったからな。念のためここからは、歩いて行こう」


「わかった」


 地上に下りて、人型へ戻る。


「キラボシは、フィデリスドラゴ王国について何か知ってるか?」


「知らない」


 そうか、知らないか。

 まぁ、知らなくても不思議じゃない。

 子供だしな。


「あっ、でも一つ思い出した」


 おや? 何か知っている可能性が出てきたぞ。


「どんなことだ?」


「知っていることとは、少しだけ違うけど、ノルディック王国は、龍神をあがめない国だって」


 ノルディック王国のことか。

 崇めない?

 つまり、他の国では、崇めているということか。

 龍神、多分ハザデスさんのことだな。

 この時代でもあの地獄みたいな空間にいるのだろうか?

 いるのだろうが、だから何だという話だ。


 二人で進んでいると、道中で魔物に遭遇することもある。

 木の魔物、名は樹木(ウッズ)

 強さは、そこまでだ。

 ハッキリ言って、弱い。

 ドンボアといい勝負をするのでは、ないだろうか。

 サッサと片付けて、魔石でも回収しよう。

 僕が焦りもせずに落ち着いているとキラボシが前へ出る。


「私もお兄ちゃんを手伝う!」


 そう言って、剣を構えた。

 キラボシ?

 何をやっている?

 気持ちはありがたいけど、今じゃない。


「キラボシ、待………………」


 僕がキラボシを呼び止めようとするが、キラボシは、それより速くウッズに切りかかる。

 速い。

 心配を吹き飛ばして、その感想が出てきた。

 ウッズの木の根を避け、本体を切った。


 キラボシって、こんな強かったのか。

 剣を欲しがるのも納得だ。


「エッヘン!」


 キラボシは、誇るようにポーズをとる。

 ドヤ顔で胸を張る。

 ウッズの残骸を台のようにして、登っている。


 まず、何と声をかけようか?

 ここはやはり、これだろう。


「凄いな。キラボシ」


「ほめて! ほめて!」


 キラボシは、僕に称賛を求めて迫る。

 僕は、できる限りの褒め言葉をかけ続けた。

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