翡翠さん、久しぶりなので楽なミッションの桃太郎と浦島太郎に介入します
ずいぶんと長くお待たせしました.お待たせしすぎたかも知れません。現実に少しトラブルを抱えてみました。月曜日には解決する予定です。あ、月曜日は明日だ。
「おい、青水!」
「え?あ、女神か。」
「女神かじゃねえよ。おまえずっと書いてないじゃないか。」
「あ、そういやそうだった。」
「どうした?スランプか?」
「うん、なんかだらだらゲームしてたらラノベ書くの忘れてた。」
「私の活躍が読めなくて読者さんが悲しんでいるぞ。」
「いや、そんなことはないと思うんだが。ていうか、おまえはもう介入するな。」
「はあ?有り余るこの女神の能力を使わないのはもったいないだろ。」
「有り余ってるから無茶なことをさんざんやるんだよ。おまえならゴジラとタイマン張れるわ。ていうか、さっきソラ2で女神とゴジラのバトル動画を作ってきたわ。」
「貴様、登場人物の承諾もなしに。」
「良いんだよ。おまえも俺がクリエイトしたクリーチャーだからな。」
「人を魔物みたいに呼ぶな。」
「翡翠さんもキャラ固定してたくさん動画作った。翡翠さんカワイイ。喋ると声もカワイイ。」
「いちいち私を下げて翡翠を上げるのをやめろ。前回のラストの台詞、あれ、覚えてるか?」
「いや、ずいぶん昔の話だからな。」
「翡翠は言った。『今回は何から何までお世話になりました。音楽の女神様。』」
「ほお。」
「ほおじゃないよ。私がいたからミッションをコンプリートできたんだ。ロリータの師匠だぞ。」
「まあな、1人でビートルズ並みに楽器を弾きこなすチート能力、たいしたもんだよ。」
「で、次は何を書く?」
「そうだなあ。少し息を抜きたい。お伽噺にでもするか。」
「お伽噺か。今までその路線だと、白雪姫、眠り姫、シンデレラ、かぐや姫、ヘンゼルとグレーテル、赤ずきん、ってところだな。」
「うん、ずいぶん介入して胸くそを潰した。次はどうするか。」
「桃太郎か浦島太郎か金太郎。」
「おまえ、どこぞの通信キャリアの回し者か。」
「いや、ふと思いついただけだ。」
「そもそも金太郎に胸くそ要素があったか?」
「いや、実は金太郎の物語を知らん。キャラだけ知っていてストーリーは皆無。」
「まあそんなもんだ。実は俺も知らん。成長して立派な侍になったとかそういうどうでもよいオチだったような気がする。」
「桃か浦島か、どうする?」
「一度にやるか。前にも2つ同時にってあったし。」
「そうか、では恒例の...」
「やめい!どうせまた妙ちくりんなコスプレをするつもりだろう。」
「どうだ?赤鬼とツーショット。」
「何でワーダーウーマンなんだよ?」
「鬼と並ぶのにちょうど良いかなと思って。」
「違和感しかねえわ。アメコミと日本昔話がツーショットで世界観がバグってるわ。」
「和服のほうが良かったかな?」
「いや、余計な画像はノーサンキューだ。さっさと翡翠を送り込め。」
「翡翠ちゃ~ん!桃太郎と浦島太郎をどうにかしてきて。」
「ふう、昔話の日本の海岸ですね。ロリータちゃんのミッションでずっとアメリカだったから久しぶりの日本でホッとします。ご飯と味噌汁の朝ご飯、そして緑茶。あら?あそこにいるのは...」
「おい、走ってみろよ、のろま!」
「ウサギに勝ったって?ウサギが寝てただけだろ。」
「同じ爬虫類の蛇と競争してみろよ。」
「駆けっこなんてまだるっこしいな。相撲取らせようぜ。」
「亀と何を戦わせようか。」
「こいつ防御力だけはありそうだから、攻撃特化の生物。」
「ワニ。」
「そんなおっかないもの、このあたりにはいねえわ。」
「みんなで空手の瓦割りで誰がこいつの甲羅を割れるかやってみようぜ。」
「おお、それいいな。割れたら煮て食おう。」
「君たち、亀をいじめるのはやめなさい!」
「誰だ、おっさん。」
「私は浦島太郎。海の恵みで暮らす者です。無意味な殺生はやめなさい。海の機嫌を損ねると恵みが得られなくなりますよ。君たちのお父さんが漁に出ても魚が捕れなくなる。」
「それは困るな。」
「でしょう?だから亀を海に帰してあげましょう。」
「わかったよ、浦島のおっさん。」
「お優しいんですね。あら、突然声をかけて失礼しました。巫女の御巫翡翠と申します。」
「あ、こりゃどうも。このあたりで漁師をしております浦島太郎と申します。」
「亀さんも感謝していることでしょう。」
「亀にそんな感情があるんでしょうかね。あるなら明日の漁にたくさん魚を連れてきてもらいたいもんだ。」
「ふふふ、たくさん捕れると良いですね。では私はこれで。この村の社に行って本殿で舞を奉納してきます。」
「行ってらっしゃい、翡翠さん。」
「ふう、これであの方は助けた亀に連れられて竜宮城へ行くことになったわけですね。介入はそのあとで良いでしょう。次は山へ行って芝刈りをしているお爺さんに挨拶しておきましょう。」
「こんにちは。精が出ますね。」
「おや、ずいぶんと別嬪の巫女さんだ。こんな爺でも心がときめくのう。」
「あら、お上手ですわね。奥様は?」
「ああ、婆さんなら川で洗濯をしておる。」
「お元気なんですね?」
「おう、わしより10歳若いからな。ピンピンしとるわい。」
「お子様は?」
「それがな、頑張っておったのじゃが恵まれんかった。種か畑のどっちかがポンコツだったんじゃろうて。」
「これはいらぬことを訊いてしまいました。」
「なあに、夫婦2人でピンピンして働けるから幸せですぞ。」
「そうですか。ご健勝を祈願して実家の神社のお守りを差し上げましょう。さあ、どうぞ。」
「おお、御巫神社、御利益がありそうな名前じゃ。ありがとう。」
「いえ、では私は川に行って奥様にもご挨拶してきます。ご機嫌よう。」
「お爺さん、ああは言ってましたが、心なしか寂しそうでした。お婆さんはどうなのかしら。桃が流れてくるはずだけど、あれって何なの?どんな解釈が考えられるのか気になりますね。」
「お婆さん、こんにちは。旅する巫女の御巫翡翠です。さっき山で芝刈りをしているお爺さんに会いました。奥さんが川で洗濯をしていると言っていたのでご挨拶に。」
「まあまあ、それはご丁寧に。」
「この川はきれいですね。」
「たまに魚が泳いでいるのが見えるので、ほら、この網で掬って晩ご飯に。」
「マスや鮎が捕れるとラッキーですね。」
「はい...おや?」
「なんか流れてきましたね。」
「桃だわ。よいしょっと。あら、大きい!手まりぐらいあるわ。」
「お爺さんへの良いお土産になりましたね。」
「あなたにもわけてあげるから家によって行きなさいよ。」
「ありがとうございます。楽しみだわ。」
「さあ、切って食べようか。」
「おっきいな。桃は好物だからうれしいのう。」
「わくわくしますね。」
「それじゃ行くよ! あ!輝く光が....」
「神々しいですね。」
「消えたぞ。光が消えたらふつうの桃じゃ。早く食おう。」
お婆さんが手際よく切り分けて、一同はみずみずしい果実に齧りついた。
「お、これはこれまでに食べたことがないほど美味い!」
「甘みと酸味と桃特有の舌触り、脳がとろけそうな艶めかしい食感。」
「お爺さん、食レポが上手ですね。」桃を頬張りながら翡翠は微笑んだ。
「なんだか力がみなぎってくるのう。」
「私もなんだか身体が火照ってきました。」
翡翠はしばし考えてから霊力を研ぎ澄ませた。
「これはただの桃ではありません。おそらく天界から落ちてきた果実だと思われます。でも大丈夫。害はありません。むしろ、神々の力に与ることができるようになると思われます。私もみなぎってきました。身体の奥底に”Inner Urge”とでも呼ぶべき衝動が発動しています。いけない、このままではいけない....私はこれで失礼させていただきます。」
翡翠は一礼すると庭に出て、翼を出して飛び立った。
「ありゃ、あの巫女さん、天狗だったのかい?」
「あんな可愛らしい天狗なんていませんよ。天女ですよ、天女。」
「なるほどなあ。神々しくも美しかった。」
「あんた、なんだか息が荒くなっているわよ。」
「火照ってきたんだよ、久しぶりにな。」
「いやだわ、実は私もなの。」
「おまえ、急に色っぽくなってないか?」
「あら、爺さんだってずいぶん若返って精悍になりましたよ。」
「久しぶりに...」
「はい、布団を敷いてきます。」
翡翠は邪気を振るうように翼をはためかせ全速力で飛行していた。
「ふう、私ともあろうものが情欲に飲み込まれそうになりました。とりあえず桃から得られた過剰な精力を霊力に変換しなければなりません。霊力をたくさん放出すれば、この情欲の源になった精力が自然と霊力に置き換わるでしょう。どうするか?いったん異世界へ戻って、ダンジョンで分身を召喚して強い魔物と戦闘しましょう。 女神様!」
「どうした翡翠、いつもと声が違うぞ。」
「至急帰還させてください。」
「かまわんが、声が苦しそうだぞ。」
「異界の桃を食べてしまって...」
「なんだ、絶倫になったのか。それは面白いな。」
「面白いじゃありませんよ。私は巫女ですよ。あってはならないことです。」
「わかった。こっちに戻ってきて思い切り楽しめ。」
「なんか誤解されているみたいですけれど、早く戻してください。」
翡翠さん、天界の桃を食べてしまって、こともあろうに性欲を持て余してしまいましたね。あってはならないことです。巫女なんですから。




