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逆行死神令嬢の二重生活 ~兄(仮)の甘やかしはシスコンではなく溺愛でした~  作者: 猪本夜
第一章

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45 弟の父1

 第三皇子宮への納品が終わり、私はライナを連れて街へ出た。家に帰る予定だったが、ヴェルナーへの納品が少し早めに終わったので、買い物をしようと思ったのだ。

 私の洋服を数点購入し、その後男性用の店に入店した。ユリウスにも何か買って帰ろうと、腕時計コーナーにやってくる。そしてショーウィンドウの中の腕時計を見ていると、横に立つ男性に声をかけられた。


「サーヤ嬢ではありませんか?」


 ショーウィンドウから顔を上げると、東京の父くらいの年齢の男性が立っていた。


「そうですが……」

「おや、覚えておられませんかな。以前、ウィザー伯爵と一緒におられる時に話をしたことがあるのですが」

「……いえ、覚えております。リウ子爵」


 以前、確かに母と街に出かけた時に、リウ子爵と話をしたことがある。

 リウ子爵は満足げに頷く。


「実は先日新聞を拝見してね。サーヤ嬢は婚約を破棄したとか。まあ、男性側の気持ちも分からないではないが」


 リウ子爵は私の上から下までを不躾に見て言う。なんて失礼な男なんだ。


「次の婚約者探しにさぞ困っているのではないかと思ってね。それで提案なんだが、結婚相手に私はどうかね」

「……リウ子爵をですか? 子息ではなく?」

「息子にはもう婚約者がいるのでね。その点、私の妻は亡くなっているから、後妻を探していたのでちょうどいい。サーヤ嬢は見かけは良くはないが、まだ若い。若い妻なら友人にも自慢できるし、私が妻にしてあげてもいいと思っていたんだ。今日会うとは、我々は縁があるとは思わないか?」


 私には若さしかいいところがない、と馬鹿にされている。ライナが怒って手を出しそうなため、私が慌ててライナを抑えるけれど、私も怒りそうである。これはさすがにキレてもいい事案ではないだろうか。年下の、弱い立場の女性に何を言ってもいいと思っている勘違い男は、どこにでもいるのだ。


 悔しくて涙目になっているところに、後ろから声がした。


「これはこれは、サーヤ嬢ではないか。……そちらはリウ子爵か。彼女に何用か?」

「――っ、ハイゼン侯爵! いえ、私は彼女が困っていたようなので話しかけただけで! ……私は予定があるため、失礼します!」


 リウ子爵は、相手がハイゼン侯爵と知ると、そそくさと去っていった。ハイゼン侯爵を見て逃げるとは、自分より立場が強い相手には、決して強気にならない、リウ子爵はますます最低な男であったと思う。


「……ハイゼン侯爵、ありがとうございます」

「いやなに、私の息子の姉である令嬢には、いつでも助けの手は差し伸べると決めていてね」


 ハイゼン侯爵は、実はユリウスの血の繋がった父であった。ユリウスとそっくりの美形でダンディな紳士の姿である。ハイゼン侯爵は私にハンカチを差し出した。私の前髪が長くて目が見えなくとも、泣いているのだと思ったのだろう。


「お気遣いには感謝しますが、結構です。もう涙も引っ込みます」

「そうかね。ところで、さきほどサーヤ嬢が見ていた時計だが、ユリウスへの贈り物かね?」


 この人、いつから私を見ていたんだ。これは絶対リウ子爵に話しかけられる前から見ていたに違いない。少し呆れた顔で見てしまう。


「そうですけれど」

「だったら、私が買おう。君!」


 店員を呼ぶハイゼン侯爵に、私は慌てた。


「私が買います!」

「いや、私が買う。サーヤ嬢に渡すから、君からだと言ってユリウスに贈ってくれないか」

「そんなことをしたら、私がユリウスに怒られます!」


 ユリウスはハイゼン侯爵を無視することが多い。そんなユリウスを知っているから、ハイゼン侯爵は表立ってユリウスに話しかけることはしないが、実はいつもユリウスを気にしている。だからどこかで私を見かけると、ハイゼン侯爵は私に話しかけてくるのである。


「ユリウスに黙っていれば分からない」

「でも……」

「では、先ほどリウ子爵から解放してあげただろう。その見返りだと思ってくれていい」

「……先ほどいつでも助けの手は差し伸べると、おっしゃっていませんでした? 見返りを欲しがるのですか?」

「見返りがいらないとは言っていないだろう」


 この人、全然紳士じゃなかった。しかし、助けてもらったのは事実である。悔しいものの、ハイゼン侯爵の言う通りにするしかない。そう思って口を開きかけた時、ハイゼン侯爵の傍にハイゼン侯爵の部下らしき人が近寄り、こそこそと話をしている。


「ちょうどアテリア菓子店の席が取れたようだ。サーヤ嬢、行こうか」

「アテリア菓子店……」


 アテリア菓子店とは、予約が取れないと有名な、とってもとっても美味しいケーキが有名な店である。


「サーヤ嬢はアテリア菓子店が好きだろう。君をさきほど見かけた時に、すぐに席を取りに行かせたんだよ。ユリウスの話と引き換えに、サーヤ嬢を招待しよう」


 予約が取れない店なのに、どうやって席を取ったんだ。さすがハイゼン侯爵は大貴族である。

 そんなハイゼン侯爵に抵抗するのは諦めた。この人、定期的に私の前に現れては、ユリウスの話をいつも聞きたがるのである。どうせ抵抗しようと連れていかれるのだ。決してケーキに釣られたわけではない。


 私はハイゼン侯爵と共にアテリア菓子店へ向かった。

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