大阪Lover
環状15号は右折する車の列で少し渋滞していた。
カーステレオからは、彼女が選曲し作ったCDが流れていた。
彼女はたまに音楽に合わせて口ずさみながら、にこやかに、助手席に座っている。
今聞き終えたばかりの歌を
「ねぇもう1回聞いていい?」
と、カーステレオに手を伸ばす。
少し動いては停まるを繰り返している渋滞に、少しあきれながらも、和やかな雰囲気で、彼もザビの部分を一緒に口ずさんでいた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
歌の途中で彼女が何かを言った。
「え?何?」
聞き取りづらかったので聞き直したが、少し照れたような顔をして俯きながら
「んーん」
と言いながら、ギュッと握っていた手を握りなおした。
何と言ったのかはハッキリとは判らなかったが、
流れているその歌から何となくは想像出来た。
車は相変わらず渋滞の中、優しく 大阪Lover が流れていた。
その数ヵ月後、彼女の携帯電話のめざまし音にセットされたその歌を、
毎朝彼女が目覚めるまで聞くとは、その時は全く想像もしていなかった・・・・
今思えば、あの曲で毎朝 止めては鳴り、また止めてを繰り返す彼女との朝のひと時こそ
幸せな時間だったのかもしれない。
当時の彼は、そんな風には思えなかったのだろう。
自分の事なのに、ちゃんと起きれない彼女に苛立ちさえしていた。
今となっては、その歌を目覚ましで聞く事も、左側に彼女の温もりを感じながら寝ることも
もう無いのだろう。
街で流れる、その曲を聞くたびに、彼は思い出に浸る。




