表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

02 : ILLUSION IS MINE

 2.


 ――極めて当然のことだが、

 この世には両手両足が化け物のようになる人間や、二足歩行で歩き、ましてや人語を解すことのできる白ウサギなどというものが一般的に存在しているわけではない。言ってしまえば、あれは例外中の例外だ。そして、例外ゆえにそれは坂下夕莉という人間以外は決して知らない事実であり、世間も知る必要のないことであった。


 あの化け物たちのことを、夕莉は勝手に『幻想人げんそうびと』と呼んでいた。


 幻想人――つまり彼らは、幻想に魅入られた存在なのである。ちなみに付け加えておくと、元は人間である。彼らは理由は定かではないが――とにかく幻想という名の悪魔に取り付かれた。そして、その幻想は取り付いた人間の『願い』や『欲望』を糧に成長し、徐々にその人間の身体に影響を及ぼすようになる。

 特にそれが顕著になるのは、肉体面での話である。

 取り付かれた人間は、肉体面において人間ではない怪物に変わっていく。ただ肉体面が顕著であるというだけで、精神面でも徐々に進行していく。やがて幻想に魅入られた存在は、肉体、精神の両面から本当の怪物となり――間もなく罪もない人間を殺し始める。

 幻想人は、物語の中にしか存在しないような化け物に酷似していることが多い。あの飾磨恭二しかまきょうじを例に挙げれば、彼はフィクション上での鬼が一番近い存在であるし、あの白ウサギに至っては『不思議の国のアリス』が有力候補だろう。

 彼らは化け物である以上――人間以上の身体能力を持っている。それを放置することによって、後々の人間社会にとって与えられる損失は莫大なものだろう。ただ先ほども言ったとおり、その事実を正確に知っているのは坂下夕莉だけだ。


 だから、その解決を願うならば――夕莉は独り、たとえ誰一人味方などいない状況であろうとも、幻想人を殺すしかなかった。

 その先に自身の幸福がなかろうと。破滅しかないと分かっていても。


 それがこの事件の元凶に関わりながら、唯一生きながらえてしまった――。

 愚かな人間の、愚かな選択なのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ