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故郷の美少女ッ!!!

「――さあ、一狩りと行こうぜ!」


「うおおお!」


■PM2:30■

■カメ朗を含むモンスター討伐隊は、ダンジョンへと突入した■


「いやー、まさか試験に一発合格とは……さすがだな! カメ朗!」


「ふ、筆記はともかく実技はバッチリよ!」


 カメ朗は酒場の常連たちと共に薄暗いダンジョンをいく。

 酒場組と外部の助っ人ナイトを合わせて、その数は数十名。

 数名が魔導による照明を発生させ、先頭を近接戦闘部隊が歩く。

 カメ朗は後方で待機しているが……。


「こ、これはっ」


「気づいたか。同士よ……」


 カメ朗は気づいてしまった。

 同行メンバーに【美女】が多いことに。


「偶然じゃない。セッティングしたのさ……人選は自信あるぜ。ナイトの中でもよりすぐりだ!」


「なるほどな。これが男の夢……」


「はっ、存分に堪能しな! 今回は過去と比しても、すんごい美しいナイトぞろいだ!! もう理想郷だぜ! これ!」


 広い一本道を進むナイトたちの前に、様々なモンスターが出現していく。

 それを前衛の美女ナイトたちが対応し、カメ朗たち酒場の男衆が観戦に徹する。

 大したレベルのモンスターはいないため、前衛だけで充分に対応できていた。


「ふぅ、あんまり強くないですね。このダンジョンのモンスター」


「本当ねー。これで高い報酬もらえるなんてラッキー! 美容♪ エステ♪ 化粧水♪」


「ちょうど欲しい服があったし。小遣い稼ぎには最適です~。むふふ」


 とても目の保養になる、美しき女性たちの和気あいあいとした光景。

 カメ朗たちは合コン気分で彼女たちに見ほれている。


「右の娘いいよな……。こう腰のくびれがさ! な!」


「いや左端の娘だな。彼女は性格いいって聞くぜ。逆にあっちの娘は……」


「この後どうするよ。合コン開催しちゃう? うおお!」


 もはや何の目的で来たのか分からないアホ男衆。

 配偶者がいるカメ朗すらもノリに飲まれて、高校生男子へと変貌していた。


「……やれやれ。本当に……このカメは……」


「へ?」


「結婚したと聞きましたが……変わってませんね……【カメ朗】……」

 

■いつの間にか、女性ナイトがカメ朗のすぐ後ろにいた■


「おわぁ! ヒナ!?」


「お久しぶり……でス……。あいかわらずの……軟派男……。なんで結婚……できたんデス?」


「そりゃあ、おれが心身ともにイケメンだからよ!! へへ!!」


「へへ……じゃないんですヨ……。すぐ調子に乗る……変わらない……」


 フードを深く被った、黒い外衣で上半身を包んだミニスカ少女。ちらりと見える髪の色は清涼さを持つ水色。

 彼女の名前はヒナ。カメ朗の故郷である村の仲間。

 カメ朗はヒナの豊満な胸に視線がいっている。いつも通りである。


「……相変わらず暗いなお前ー。まったく存在感を感じんかったぞ」


「余計なお世話……。その変な視線をやめて……エロカメ……」


「おれは健全な男子なだけですー。特別エロくはありませんー」


 仲が良いのか悪いのか、あまりよく分からない二人の会話。

 陽と陰の組み合わせといった感じで、ちぐはぐな印象を他者に与える。


「そういや【クライス】の奴は元気か? ストーカーしてるから、よく分かんだろ~」


「ちがいます……ストーカーじゃありません……っ」


「ははは、またまたー。夜這いはほどほどにしろよ!」


「むむむ……。そんなにしてません……! せいぜい一週間に5回……!!」


「多いだろ!!」


 カメ朗は村の友人の近況をヒナに聞く。

 その友人こそ彼女の想い人であり、ストーカー相手ということになる。


「うぅ……禁断症状が……!」


「おい、どうしたヒナ?」


「すーはー……スーハ―……フフ……これだから……これはやめられません……! 刺激的……!」


「……」


 いきなりふるえ出したと思ったら、すこしうす汚れた布袋を取りだし、その中の匂いを嗅ぎはじめたヒナという美少女。

 その顔は恍惚でそまり、息が異常に荒くなっている。

 興奮して火照ったような顔でよだれをたらす狂人の姿に、さすがのカメ朗も袋の中身を問うことができなかった。


「おとなしそうに見えて……やばいやつだよなおまえ。クライスが気の毒に思えてきたぜ。こんなストーカーに狙われてよ」


「だから……ストーカーじゃありま……せんヨ???」


 ヒナ自身はストーカーを否定しているようだが、すでに村人たちの間ではそういう認識になっていた。

 見た目だけなら、自身の配下であるうるわしきメイドたちにも劣らないのにと、カメ朗は惜しく思った。が、メイドたちも大概であったことに気づく。


「おいカメ朗! クライスってあのクライスか!?」


「【世界最速の男】! 異世界競技のスター!!」


「ん、そうだが? なんだなんだ?」


 クライスという名に反応する酒場の男たち。

 何故ならその名は、【異世界競技】という競技で有名な選手と同一なのだ。

 カメ朗はさらりと彼と友人関係であるという。


「サイン欲しい! 頼むー! 後生ー!!」


「いやー、と言っても……最近連絡取ってないし……」


「なにぃ、仲違いかよ!?」


 たしかにカメ朗は最近、友人である筈のクライスと音信不通になっていた。

 しかしそれは不仲とかではない。

 

(あのナマケモノにマメに連絡とか、ないない)


 単にカメ朗がクライスの連絡先情報をど忘れし、そのまままあいっかで来ただけのこと。

 今度村に帰郷する予定もあるため、その時に会えればOK精神である。というかクライスの方も、そんなマメに連絡するタイプではない。


「村に帰るの楽しみだなぁ。せっかくだし、帰郷したら村長の連絡先とか教えてもらおう……あ」


「……なんです? わたくしは連絡先知りませんヨ……」


「だろうなぁ。陰キャだもんな! 根暗マックス! HAHA!」


「なにをぉ……! と、ともだちは……います……!!」


「ははは! 何人? 何人いるんだいヒナちゃん?」


 笑うカメ朗とすこし怒ったヒナの会話。

 じゃれ合っているようにも見えるそれは、同郷故の親しみのようなものを感じさせる。 

 ヒナからすると忌々しい宿敵に再会した……ようなものかもしれない。


「はぁはぁ……まったく、【ドラゴン】退治前に無駄な体力使わせないで……!」


「なぬ?」


「ドラゴンですよ……今回の討伐対象……! 狩る相手すら調べず……来たんでス……? カメ朗らしい……といえば……らしい……でス」


「さっぱり分からんかった。なんとかなるだろと思って! じゃ、説明よろしく! ハハ!!」


「……このやろう……! なぐりたい顔……しやがって……!!」


 ヒナが言うには、このダンジョンの奥には長い年月を生きるドラゴン種がいるらしい。

 よく見ればダンジョンの壁にはドラゴンらしき壁画が描かれていて、進む先の方からは凶暴な唸り声が聞こえてくる。

 普通気づくが、カメ朗はアホなので例外だった。


「そのドラゴンの爪は……とても大きな音を発し……敵を怯ませると言われています……!」


「猫だましみたいなもんか。面白いな!」


「ですが……それなりの強敵……! 油断は禁物でス……。とかいっても……どうせ油断する……アホだから……」 


「がはは! おれは最強だ! 油断でちょうどいい!」


 だんだんとカメ朗の耳に聞こえてくる唸り声が大きくなっていき、討伐対象の接近がよく分かるようだ。

 ナイト達は覚悟を決めながら、ダンジョンの最奥エリアへと足を踏み入れた。

 そして、カメ朗は完全に調子に乗っていた。まるで反省していないこの男。


(それが命とりになるか……はてさて……見物でスね……)


■未知の運命をたのしむように、ヒナはすこし邪悪な笑みをうかべた■


(D……いや、もしかしてEはあるか……!??)


■カメ朗はさりげなくヒナの胸を観察しながら、ムダに真面目な表情をうかべた■

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