復活の場ッ!!
「――この計画によって、100パーセントカメ朗は倒せる」
大魔導連盟の暗躍は止まらない。
カメ朗たちを打倒するために、彼女たちはあの手この手を用いてくる。
そして今、完璧なる計画が遂行されようとしていた!
「ふふふは、お見せしてみせましょう。このプランの恐ろしさを……! そして幹部へと至る!」
■少女の高笑い響く時、人知を超えた計画が始動する——■
●■▲
■この異世界で死んだ場合■
■肉体はあとかたもなく消える■
「ではっ、こちらのっ、用紙にっ」
■それを復活させるため■
■カメ朗は、【蘇生場】といわれる施設を訪れていた!■
(えーっと、あいつが消滅した場所は)
■申請用紙に、消滅した人物の名前・職業、消失場所・時間などを記入し■
■それを受付に提出■
「ええ~、はいっ。受け取り~ましたっ」
朝一で施設を訪れ。
どうにも滑舌が悪いお爺さんに用紙を手渡したカメ朗は、受付カウンター前に複数列並んだ椅子の、最前列の中央へと座る。
柔らかい感触を体に感じながら、カウンターの右隣りに見える扉を見た。
「あの先に……」
■白銀の輝きを放つ、分厚く頑丈そうな両開き式■
■【接続の場】に繋がる扉だ■
「そわそわ」
今まで無縁だった蘇生場に緊張している様子のカメ朗。
いや、違う。
彼はそんなセンチメンタル人間……ロボではない。
(まいったな、まさか友の存在を忘れるとはっ)
ブレインのことを放置していたことで、カメ朗の心にも僅かな罪悪感的なのが生まれていた。
いや別に、自分が死んだら生き返らせてくれと頼まれたわけではないのだが。
(あいつ、どうやら家族がいないようだし……おれがやるしかないよなぁ)
短い付き合いではあるが、ブレインとはかなり気の合う仲間であった。
なのでかなりの金を払って復活させることも苦ではない。
(ジゼルには好きにお金を使っていいといわれているが、メイド長にはなぁ)
【友達のためですか……分かりました、ある程度のお金を渡します】
(ケチめ……紳士カメ朗さんが信じられないとは)
今までの彼の行動を考えると当然の結果である。
事実、余分なお金を渡されたら趣味に使いまくる可能性高い。
基本的に金遣いは荒い男なのであるからして。
(ハァーあ、正当な評価がされないって悲しいよ。こんなにも心優しきナイスガイをつかまえて……みんな白い目で見るのだから)
やれやれと溜息を吐くカメ朗は、復活が済むまでの間、この施設内で待っていようと思っている。
きちんとフードコーナーやゲームエリアなどの、長時間待機用の場所もあるので、そこらへんは安心だ。
(復活に掛かる時間は、個人差ありか……)
こんなことなら、ブレインにどのぐらいかかるのか聞いておけばと思ったカメ朗。
少し聞いた話では、前にも何度か死んだことがあるらしい。
「どんな感じなんだろうな……それって」
あんまり味わいたくはない経験ではあるので、別に知らなくてもいいカメ朗。
まあもっとも、自分を破壊できるような強者がそんなにいるとは思えないが。
「いま世間を騒がせている不動のGとかいうモンスターは……強そうだなっ」
不動のGとは新種モンスター。
なんでも喋ることが出来るモンスターで、腕の一振りで町を半壊させ、屍の山の上に立ったとか……いう噂を信じているカメ朗。
しかし、かつて自分の村を救ってくれた英雄と名前が被っているのが気になる。
「まあたまたまだろ。なんせ、不動のGは町の住民を残さず喰らいつくし、かわいい女騎士がいればさらっていくとかいう、紳士の風上にも置けない外道やろうだッ。許せないぜっ」
特に女騎士をさらっていくとか、どう考えてもエロゲー的な展開を行っているとしか思えない。
そんな羨ましくもないこともないことを許せはしないと、彼の中で正義ささやく。
「いつか……おれの手で討伐してやる――」
■最近読んだ漫画のイケメン主人公の台詞を、そのまま使用した■
●■▲
「さて、時間がきたわけだが」
受付に呼ばれ、白銀の扉の前で待機しているカメ朗。
ここで本人とご対面という流れになっている。
(ブレインのやつ……すねてないといいが)
やはりそわそわしてしまうカメ朗。
その時は、どうやって弁明と言う名の言い訳をするかと頭が動く。
(金がなくて……は無理だな。ていうか【復活保険】ぐらい入っておけよな)
■色々考えている内に、扉が開いた……■
「ぶ、ブレイン。あのなっ」
「あぁンッ!?」
■リーゼント頭で、両拳に鎖を巻き、凄まじい眼光を放つブレイン■
■何故か学ランを着ている■
(なんてこった、ぐれてしまった)
■カメ朗は困惑するしかない……■
●■▲
「ふー、だからよっ。感謝するぜ? ブレインじゃねェがッ」
「あー、そうか事情は分かった」
「おうよ、んなわけでアバヨ!」
「今度は死なないようになー。ばいばい」
■施設から去っていく謎の男性■
■カメ朗は手を振ってそれを見送った後、呟く■
「まさか人違いとは……」
■まあ、当然の可能性ではあるが■
(よかった……ぐれてしまった友はいないんだな!)
フードコーナーの一角でうどんをすすりながら、さきほどの事件を思い返しているカメ朗。
受付に確認したところ、あちら側のミスによってあんなことが起きたらしい。
結局、復活作業はやり直しとなり、また待機することになってしまった。
カネはかからないが、その場合、復活の順番は後回しになってしまう。
「おっと、それなら……」
■カメ朗の右腕の一部が開き■
■0~9までの数字が書かれた、複数のボタンが出現!■
「サポート番号は……ほいっと」
■それなりに手慣れた動きで、ボタンを押していく■
「……おっ」
数秒後、カメ朗の目の前に小さな画面が出現。
そこに映っているのは彼の愛しのジゼルである。今日はケモ耳が生えていた。さらに白を基調としたメイド服を着用(カメ朗の趣味!)。
「あ、カメ朗様っ。どうかされましたか? なにもなくても別に構いませんが!」
「ふ、そんなに喜ぶなよ……。イケメンだからって」
「カメ朗様は、何時でも超イケメンです!」
「よせよ、事実だからって……恥ずかしい」
いきなりイチャイチャし始めるジゼルとカメ朗。
画面の奥でメイド長が白い目を向けている。
メイド長はどうやら洗濯物を運んでいる様子で、すぐに画面外に消えてしまった。
「それで、なにかありましたか? ブレインさんは?」
「実は、復活に失敗してな……」
「ええ? そんなことあるんですのッ」
「いや、失敗とも少し違うか……?」
カメ朗は蘇生場で起きたことを説明した。
ジゼルは少し呆けた様子でそれを聞いている。彼女も蘇生場とは縁がないため、それなりに興味はありそうだ。
数分ほど話をした後……。
「で、少し帰りが遅くなりそうだ」
「……そうですの。そうですの」
(ケモ耳が垂れさがっている。かわいい)
分かりやすいジゼルの反応に和むカメ朗。
ジゼルはケモミミ族と言われる種族。彼等は全種族トップの癒し系種族として有名で、ライバルはモフモフ族。
カメ朗もまた、それによって癒されまくっているのだった。
「帰ったら、もふってやるさ」
「ふふ、楽しみに待っていますわ……」
「ジゼル……」
「カメ朗様……」
画面越しに見つめ合う二人。
メイド長がしかめっ面で通り過ぎるが、カメ朗はまるで気にしない。
「ジゼル……!」
「カメ朗様……!」
■見つめ合うこと■
■十数分……■
「ふぅ、満足した」
「ふふ。なんだかドキドキしてしまいましたわ。愛していますカメ朗様……」
「――お取り込み中もうしわけないですが、旦那様にお伝えしなければならないことがあります。なのでお嬢様はこちらへどうぞ」
「なにィ。メイド長貴様ァ!」
ジゼルが画面外に消え、勝ち誇った顔のメイド長が出現した。
彼女はカメ朗に対する敵意をびんびんに発しながら、ある筋から手に入れたという情報を開示する。
「大魔導連盟がなにやら怪しい動きをしているようで……、まあ念のため警戒しておいてくださいね。以上」
「めちゃくちゃどうでも良さそうなおれの安全!?」
■なんやかんやで通話終了!■
「……連盟か。屋敷の方はまず【完全防衛力】があるし心配いらないな。となるとおれが注意ってこった!」
存分にいちゃいちゃしたカメ朗は通信を切り、テーブルに置いてあった残りのうどんを啜る。
少し冷めているが、ジゼルとの愛という絆によって熱された彼のハートは気にしない。
それはそれとして物足りないのでお替り頼んだ。
「さーて、そろそろかな……」
首の左を押すことで、カメ朗の視界にデジタル表示で時刻が表示された。
朝の10時を回り、ブレインの復活は間近に迫っていると感じられた。
(……なんだかんだで、弁明を考える時間も出来たしよかったか?)
トラブルは起きたが結果オーライかもしれない。
そう思っているカメ朗の耳に、番号を呼ぶ放送が聞こえてきた。
カメ朗の持っている小さな紙に書かれた番号だ。
「よし、いくか!」
■フードコーナーから離れ■
■先ほどの扉の前に向かうカメ朗!■
(――準備はできた。あとは……!)
白銀の扉の前で待機する。
復活は済んでいるはずだが、まだ出てくる気配はない。
中から物音は聞こえるが。
(遅いな、ブレイン……せっかく色々準備したのに)
少し遅いので気になるカメ朗は、中の様子を伺うことに決めた。
予定とは違うが、やることは大きく変わらない。
(おれの弁明を聞け! ブレイン!)
■勢いよく扉を開くカメ朗■
「――え?」
「エ?」
■その先に立っていたのは■
(下着姿、美少女)
■どっかで会ったことがあるような人物■
■紺色のスポーツショーツ&ブラがフィットした、健康的な輝かしい肢体の持ち主!■
■つまり、また人違い!■
(ブレイン、許すまじ――)
■逆恨みのカメ朗!■




