どSのムチッ!!
「シエル……!」
「シエルた……ちゃん」
「シエルっ」
カメ朗たちは勇敢に進み出た猫耳メイドに注目。
黒いメイド服を着込んだ背中は、美しくキラキラと輝いているようにも見える。
実際、彼女のスタイルはずば抜けている。まるでモデルのような完成度だ。
「見ていてよ、ご主人様~。ちゃちゃっと【破壊・蹂躙】するからね~」
■くるりと回り、長いスカートを翻し■
■シエルは獰猛な笑みを浮かべる!■
「なによアンタ、生意気ねー」
「ふふん、ボクを舐めない方がいいよ。オークロボット風情がさ~。鏡貸そうか~?」
「かちんときたわっ」
睨み合う美女と野獣。
火花を散らす二人の間で、ハイハイしながら退避するリリ。
なんとか自分の元まで戻ってきた彼女に、どういう風に対応すべきか分からなくなるカメ朗。
「うわー、想像以上にぬるってんな」
「うう……なんでこんな……」
「なにがあったか、話せるか」
「無理……がくっ」
力尽きたリリを抱き締めようとするカメ朗だが、少し気持ち悪いのでやめた。
リリは無様に地面に伏す。
「安らかに眠れ……あ、やっぱり黒か」
■めくれたスカートを直してあげる優しいカメ朗■
■などと自分で思っている彼■
「さあ、次はお前の番だぞ。シエル!」
「はいはーい、了解だよ~。薄情なご主人様~」
カメ朗は黒いラジコンを持ち、メイド・シエルを操作する気まんまん。
二メートルを超えた巨体を持つロボット、ジゼル改に勝利する為の策を練る。
(一応、シエルの性能は調べたが……)
事前にシエルの操作はしていた彼だが、ある問題点が発見された。ステータスの基本的な能力値はリリを上回っているのだが……。
それが、足を引っ張ることがなければいいがと憂いるカメ朗。
「操作に集中っ。リリのようには行かんぞ!」
とにかくやるしかないと、格闘ゲームやる時みたいなテンションを見せる!
「行くわよ、あざといメイドォ!」
「ボクの趣味じゃないんだけど……。これは変態的で倒錯的でマヌケなご主人様の趣・味ィ」
少し顔を赤らめるシエルに向かって、突進を行うジゼル改の巨体!
すさまじい振動の中、シエルはそれを横にかわした!
「ふん、結構やるわね!」
「これでも、すごい組織の幹部だよー。どっかのリリとは違うの~」
「なら、これでどう!」
■ジゼル改の右目から、ビームが発射!■
「おあっ!?」
間一髪でしゃがんで避けるシエル。
背後にある銅像がどっかーんと破壊される!
砕けちったそれを見て、悲鳴を上げるのはジゼル!
「あわあぁ!? ロボットアニメ【超合金・シルバーメタリック】の、主人公機を模した像がーッ!?」
「一千万ペルもしたのに……!!」
悲しみの声が溢れるジゼルとメイド長の横で、カメ朗の瞳はゲーマーみたいにギラギラしている。
一瞬も気を抜けない、ジゼル改との戦い!
「右、左! ジャンプ! 必殺!!」
「旦那様、静かに操作できないんですか?」
やたらとうるさいカメ朗ではあるが、その目は真剣だ!
ジゼル改の動きを見切り、かなりの操作テクニックを駆使し、それなりに善戦しているようで。
「うふっ、なかなかやるじゃなーいっ」
「君もね~、ボクの動きについてこれるなんてー」
「気に入ったわ! シエルちゃん!」
スピードならシエルが上だが、ジゼル改はそれに対応は出来ていた!
互角の勝負を繰り広げる彼女たちに、必死に操作しているカメ朗。
「ぬおおおおおっ、操作難しいっ」
「だろうね~、本来の力が出せていないよー。ド素人だなぁ~、あははは」
「くそ、こんなはずではっ。こんなにクセのある操作感だとは思いもしなかったぜ!」
リリとは違った操作感にカメ朗困惑!
完全に足をひっぱっていた!
リリは初心者向けであったのだ。それすら手こずっていたのだが……。
「えいやーっ」
「なんのッ!」
シエルの右拳を、左腕で受けるジゼル改。
カメ朗と同じ超合金の体にはたいして効果がなく、じり貧である。
「ぬっふふふ、やはり攻撃力が足りないわね」
「実はその通り~、攻撃力だけ1000以下だからー。こんなポンコツでも壊せない、はずかしいほどの非力だよー」
「ふふ、言うじゃないの。それじゃあアンタはわたしにかてない!」
「うーん、否定できないかも~。せめてカメの操作がましならなぁー。ほんと使えなーい。いくら愛しいご主人でも限度があるよぉ~?」
「うるさいよ! これ以上おれの心を抉らないで!」
■カメ朗は泣きながらへたくそ操作、いまいち頼りない■
■このままではシエルの敗北が見えてしまう■
(つまり)
■彼女がぬるぬるになるということ■
「……」
■カメ朗の操作が鈍くなった!■
「――さて、わたしの奥義。とくと受けなさい!」
■にぶくなった操作のスキをつくように、ジゼル改はうごく!■
「くらいなさいなッ!!」
「わわっ!?」
■ジゼル改の口から吐き出された液体!■
■それをまともに受けてしまうシエル!■
「なにこれ~、わわっ。はてしなく気持ち悪いよ~」
「ふふ、受けたわね! わたしの奥義ィ!」
「……変な感じっ。こんな気持ち悪いのが奥義とか、ボクだったら自殺してるよ~やだやだぁー」
「ぐっ、今のはなかなか効いたわよ……!」
■口による攻撃では優勢なメイドVSロボ■
「な、なんだっ。シエルは特にダメージなさそうだが」
「謎ですね。……もしや」
「?」
メイド長が何やら知っている風なので、カメ朗は疑問を浮かべた。
ジゼルも何かを考えているようだ。
「とにかく、なんとか援護するぜ! おらー!」
「ファイトですわ! カメ朗様!」
「へへ、まあ見てなって! 主人公はこっから覚醒するから!」
■得意げなカメ朗!■
■気合いがさっきより入っている!■
「ここから逆転だぜ!! おれのターンSTART!! どりゃー!!」
「ふふん、カメ朗様ったら」
「?」
「もう、勝負はついているのにねぇ」
「な、なにを~? どういうこった!?」
「こういうことよ! シエルちゃん!」
満面の笑顔と共に右腕を振りかぶるジゼル改!
なんのそのと、シエルは回避行動を行う!
「うわぁっ!?」
しかし攻撃は直撃し!
シエルは大きく吹き飛ばされた!
「い、今のは!」
「目の錯覚でしょうか?」
ジゼル改が行った攻撃に驚く一同。
いったい、何が起きたのか!?
「まさか~、今のってー」
「あらん、まだまだ戦えそうねぇ。シエルちゃん」
「ボクの防御力はそれなりに高いよ~。鉄くずほどじゃないけどーね~」
戻ってきたシエルはそれなりに余力がありそう!
だが、彼女もジゼル改の特殊攻撃に警戒している!
避けられないだろうと思われる攻撃の正体は!?
「なら、こんどは全力でいくわよ! 覚悟しなさい!」
「むむ~、ちょっとやばいかも~。ただのポンコツロボかと~思ってた~」
さっきと同じような攻撃態勢に入ったジゼル改!
シエルは、ちらりと背中のカメ朗を伺う。
「……そうだな、やるかっ」
「そうこなくっちゃー。へたれカメ~。それでこそボクの愛しい人だよぉー」
■カメ朗とシエルの目つきが変わる!■
(事前に行っていた、シエルの性能調査!)
【スリーサイズは? さあさあ答えるんだ!】
【え、ええ~? なにいきなりー、どこかに頭ぶつけて破壊されたのかなぁ~】
【もしくは好きな下着の色でもOK! これは重要なことなんだー!!】
【本当にゲスだねぇ~。死んだらぁ? さっさとくたばって~?】
(その成果を見せてやるぜ!)
■シエルの好感度が一気に下がった過去……■
「ふふん、なにをしようとよけられないわよぉ!!」
「……」
「はあああ!!」
■振りかぶる、ジゼル改の強靭な右腕!■
(やっぱり体が重い~。まだド下手なカメ朗君の技術じゃダメダメだねぇ)
■シエルの肉体は、ぬるぬるに含まれる何かのせいでうまく動かない!■
「それに加えて――ロケットパーンチッ!!」
■ジゼル改の拳が、すさまじい轟音を発しながら解き放たれる!!■
「――だめだ、よけられないや」
「なら、撃たせなければ良い!! あはははは!」
■すごい輝きが炸裂した!!■
「!? これはぁ!?」
驚愕のジゼル改。
その超合金ボディが、光り輝く縄によって縛られている!
ふりほどけないほどの圧倒的な強度だ!
「なによぉ、鬱陶しいぃいい!」
「ふふー、ボクのオリジナル魔導。しかも【融合魔導】だよぉー。がらくたロボにはどうにもできないからさぁームダな抵抗やめようー?」
■ドSな笑みを浮かべて、シエルはジゼル改を挑発する■
「融合魔導?」
「特定の魔導を組み合わせて発動する、強力な魔導ですわ!」
「さすが、おれの嫁~。天才かよ~」
「むふー。それほどでもありませんわっ」
縄で全身を縛られたジゼル改は、完全に無防備な状態!
シエルは獰猛な笑みを浮かべて、右の掌から紫の光を発する!
「これがボクの魔導具~、【ベイン・シュトローム】ー!」
「なによ、そんな貧弱そうな武器で!」
「あは。節穴にはそう見えるー?」
■シエルの右手に握られた、金色の柄を持つ黒いムチ!■
■魔道具と言われる、魔導によって作成された道具だ!■
■それをジゼル改に向けてふるった!■
「むだよぉ、そんなんじゃかすり傷すらっ!」
■すごい爆音が炸裂!!■
「ごはっっ。な、んですってええええっ!?」
悲鳴を上げて上空に弾き飛ばされるジゼル改!
そのボディは、一撃で戦闘不能なほどに粉砕された!!
「言ったでしょうー、ボクは攻めるの好きなんだ~。スクラップにしてあげるねぇー不細工ロボさん」
■地面に落下したジゼル改は、もう戦えないようだ■
■シエルはムチをふるいまくり、舌なめずりしている■
「ふふん、ここまでのようね。スクラップ確定ってこと」
「……」
「カメ朗様……! 一度でいいから触れたかった……」
「ジゼル改……」
自分に純粋なまなざしを向けるので、カメ朗は少し罪悪感が。
ジゼル改は目を閉じ、別れの言葉を告げる。
「――一時撤退よぉ!! いずれカメ朗様のボディをちょめちょめしてやるわあああああっ!!」
「おわぁ!?」
「おさらば!!」
■いきなり霧を噴出するジゼル改!■
■それに包まれるカメ朗達!■
「逃げられた……! いろんな意味でやべぇやつだったな」
「ですわね。往生際の悪いっ」
霧が晴れた時にジゼル改の姿はなく、カメ朗達はぽかーんとしている。
しかも、なにやら女性陣の様子がおかしい。
「な、なんだか体が」
「熱いですわ……っ」
「ど、どうした。みんなっ」
息を乱すジゼルたち。
体が火照っているいるような状態の女性陣に、カメ朗の股間は反応を示す。
しかも、追い打ちをかけるような事態が!
「ふ、服がすけてるーっ!? うっそ!? やったー!! じゃなくて、なんでー!?」
霧の効果なのかジゼルとメイド長の服が少し透け、下着がうっすらとこんにちは。
シエルに至っては、完全に白い下着が見えてしまっている。
そういえば、リリの服も透けていたことに気付くカメ朗。
「……ッ。こ、これはッッ。不可抗力ですよね! みなさん! うんうん!!」
■反射的にガン見してしまう彼!■
■メイド長の顔がけわしくなった!■
「ゲス朗さま、覚悟よろしいですね? もはや許せません」
「そんなに他の女性が気になりますか……? ぷんぷん! 怒りました! ……ちょっとだけ!」
「ふふ~。ボクも便乗~。さっきの操作はなにぃ? ふざけているのかな~この変態カメは~」
怒った様子の女性三人。
カメ朗は逃げようとするが、右足を誰かにつかまれる。
「リリー!? なにを!?」
「ふふ、ふ、雑な操作を感謝しますっ。ご主人様ぁっ。たっぷりとお礼をしませんと、ねッッ」
「は、はなすんだYO!! 死にぞこないがぁああ!!」
「「「お仕置きです!!」」」
「ぐわあああああっ!? 三重奏!?」
立場逆転の昼時!!
カメ朗の悲鳴が中庭にて鳴り響く!!




