両手に花をッ!!
「ひどいめにあった」
死んだ目でいるカメ朗は、昼のソファーにその超合金的な体を沈めていた。
先日の騒動で、ソルジャーに連行されたり色々あったのだ……。
ジゼルの権力とか使って、なんとか早い段階で誤解を解くことができたが、メイド長やメイドたちの目がきびしくなったのはいうまでもない。
【まったく、君のせいでひどい目に遭った!】
【お前のせいだろー!】
【なにをー!】
■知り合ったイケメンと喧嘩になった結果■
■連絡先を交換した!■
「はー、なにか奢らせないと気がすまんよっ。てか、今度会ったら絶対一発ぶんなぐる! ふん! ふん!」
ぐちぐち言っているカメ朗だが、その顔はわりと楽しそうでもある。
また会うのを嫌がっているわけではないようだ。
なんだかんだで、ブレインは悪いやつではないと感じてはいるようである。
カメ朗は、今度会ったら何して遊ぼうか考えている子供のような顔になっていた。ブレインが持っているであろう秘蔵本を、こっそり読ませてもらおうか等々……。
「旦那さま、災難でしたね」
「まーな、おれは被害者なわけよ。……なにその目?」
「……」
背後で待機しているメイド長の声は、冷ややかに聞こえてしまう。
下着泥棒&更衣室侵入の疑惑は、そう簡単に晴れるわけではない。そう言いたげな顔で、すっごい辛辣な視線を向けてくる。
カメ朗は悲しい。
「濡れ衣だぞ」
「はいはい、わかっておりますともゲス」
「ただのゲス!? メイド長さん!?」
メイド長の厳しい態度にショックを受けたカメ朗。
ここまで信用がないとはと、嘆いたのだが。
そんな彼をバカにするような声が聞こえてきた。
「当たり前ですよ、ご主人様」
「むう?」
「貴方様の普段の行いを、反省し反復し・見返し懺悔し・悔い改めてむせび泣くといいですよ」
紅茶を、カメ朗の前のテーブルに置くミニスカメイド・リリ。
その顔は、めちゃくちゃザマーミロ系の色が表れていた。若干、目の下に隈ができているようだが……。
カメ朗は少しむっとした表情。
「パンツ黒かー」
「!?」
「よし、当たり!」
カメ朗の言葉によって、ミニスカを押さえるリリ。顔が羞恥で赤く染まる。
それが答え合わせになっていた。
完全に遊ばれている。
カメ朗は勝ち誇ったどや顔を見せる。
「こ、このぉっ。わたしをコケにして……!!」
「くくく、愚かなメイドよ! 捕虜の分際で調子に乗るからだYO!」
「ゆるさないっ。スクラップにしてやるわ! この!!」
■カメ朗に襲いかかるメイド■
■その美脚が、しなやかに躍動し■
「はい、操作」
「んなぁっ!?」
■リリが四足歩行で部屋を走り回る!■
「お前の行動は、全ておれの掌の上であることを忘れるな。リリよ……」
「ううう、この外道ゥッ」
「ははは、まさしく負け犬の遠吠えだなァ!」
犬のように駆けるリリの動きを、にやにやしながら眺めるカメ朗。主人としての威厳を見せつけるためなのか、きっちりおしおきは執行していく。
リリの顔は羞恥で染まっていく。
メイド長がなにやら興奮しているようだが、二人は気付いていない。
「はい、お手」
「うがああああっ。犬扱いするなぁ!!」
「よくできたな、えらいぞー。よしよし」
カメ朗の右手にお手をしてしまうリリはすさまじい眼光であるが、彼に頭を撫でられてしまう!
さらに、カメ朗は甲羅からアイテムを取り出した。
それを見たリリは驚愕する。
「そ、それはッ」
「くく、さーて……ぐへへへ。これを使うかなァ! うへへ!」
「や、やめてぇええええッ。ゲス!!」
■カメ朗は薄い本の悪役みたいな笑みを浮かべ、取り出したアイテムをリリへと近づける■
■リリの悲鳴は空しくひびき、おしおきは成された……■
「う、あああっ! こ、こんなッ」
「くく、可愛いじゃないかよっ。おらおら!」
■リリの頭に犬耳が! それをカメ朗は右手でモフる■
■メイド長が密かにガッツポーズを決める■
■実は彼女の提案なのではないだろうか■
「疑似もふもふっ。もっふもふやで!!」
「うぎぎぎっ!」
「おれはモフモフ好きではなかったが……最近、あいつの気持ちが分かったよ」
■しみじみしているゲス朗■
■その左手は……■
「あわわぁっ。ボクの番か~」
「し、シエルさんっ」
■敵女幹部シエルの猫耳をもふっていた!■
■今日の彼女はリリと同様に、カメ朗のお世話を行っている■
(両手に花とな! 二人ともかわいすぎる!!)
どちらも敵ではあるが、極上の美少女である。それがこんなに近くにいるというだけで、テンションMAXになるのは当然の結果か。
二人にお菓子をあーんされてもらったりして、もう完全に調子に乗っている。
カメ朗の顔は満足そう。
「ふはははは、くるしゅうないぞォッ!」
「うにゃああああ。このバカ殿~」
「ぐるるるるっ。こんなゲスに……!!」
■羞恥の声が居間にひびく!■
「ははは……あれ? そういえば、ジゼルは」
「今日も作業場で機械いじりです。旦那様」
「おいおーい、最近ずっとじゃないかー? たまにはメイドジゼルたんとイチャイチャしたいよ~」
「その喋り方いらっときます。したいよ~って、かわいいアピールですか? コロすぞ」
「え」
「なんでもないです」
嫁の姿が見えず不安になったカメ朗。
いつも通りの作業を行っていると聞き、安心すると同時、心配にもなるのだ。
彼女は少し危ういというか、目を離せないところがあったりする。
「体壊さないだろうか……おれの、最高最かわの嫁っ。ううう心配だ! あんなにかわいいから、誰かに誘拐されたりとか!」
「おやさしいんですね。ゲスのくせに。かわいいのは同意します」
「ほめるなよ、へへ。給料は上げないぜ?」
「そこらへんの管理をしているのはワタシですが? おこづかい減らします? ……たくっ、最近は【侵入者】の尋問とかでも忙しいというのに」
いらっとくる笑顔100パーセントに、メイド長は実際いらっと来た。
カメ朗はジゼルのことが気になりそわそわ。
両手の花は変わらず愛でる。
そして、とうとう痺れを切らして立ち上がった。
「くそー、作業場に見にいくか~、ジゼル~待っていてくれ~」
「……その必要はないようです」
「?」
メイド長の言葉にカメ朗は疑問だが、居間入口の扉(四角い複数のガラスによって、向こう側がぼやけて見える)に映った影に反応。
間違いなく嫁のシルエットだ。
自分に会いに来たのだと、きっと寂しかったのだと、微塵も疑わないカメ朗の思考は恐ろしく自信過剰であった。
「カメ朗様ッ!!」
「ジゼルっ、よかったーっ。おれも会いたいと……」
「よくありませんわっ、お逃げくださいッ」
「はいっ?」
「カメ朗様の体を求めていますの! すごいかっこいいロボがッ」
「はい!??」
■館のどこかで、激しい爆発音がしたような■
■嫌な予感が止まらないカメ朗!■
■館内に鳴り響く警報音が、それを加速させていく!■
●■▲
「どわあああああ!?」
「きゃああああ!」
悲鳴を上げて廊下を疾走するカメ朗たち。
そして鳴り響く轟音!!
彼らの背後には、大きな鉄塊が迫っていた!
「カメ朗さまァッ!! お待ちになってぇえええ!!」
「いやだあああッ、待つかーッ!!」
「そんなに恥ずかしがって、いけずーッ」
「やかましいわぁああ!!」
その鉄塊は、ゴリラの如きボディと、オークの如き容姿を併せ持った……ようするにオーク+ゴリラのロボ! スーパーロボット!!
カメ朗と同種の存在である!!
廊下の壁を削りながら、ロボットはカメ朗を追跡する。
「うふふふふッ、たっぷり可愛がってあげるわーッ!! ぐへへへ!!」
「おれの知り合いにイケメンいるからー! そいつで勘弁してーッ!! やだぁー!!」
さりげなくブレインを生贄に捧げるつもりのカメ朗に、冷ややかな目を向けるリリ。彼女の頭にはまだ犬耳が。
それをモフモフしている楽しい時間を取り戻すため、カメ朗はなんとかせねばと奮起。気持ちだけで、特に逃げる以外の行動は起こさないが。
あんな恐怖に立ち向かえないのだ。
「うわあああ! ジゼルなんとかしてーー!」
「か、カメ朗さま……!」
■カメ朗の言葉に応じるように、ジゼルの目が鋭く細められる■
■彼女は覚悟を決めたように、右腕を水平に思い切り振った■
「ぬわあああッ!? なによォ!! これェッ!!」
まるでガトリング砲のような兵器が複数、壁や床から出現し、オークロボット目がけて多数の小さな槍状物体が射出される。
その勢いは凄まじく、カメ朗ですら自分に向けられた場合を少し想像し、ひやりとするレベル。
射出音がその場に響き渡り、鼓膜を勢いよく叩いていく蹂躙の音色を奏でる。
「……さらばですわッ。心苦しいですが、スクラップになってくださいまし」
顔をしかめながらも、冷酷にして冷徹な声色で粉砕を告げるジゼル。普段とのギャップに、カメ朗はまたしてもひやりとした。
正直ちょっと自分の嫁が怖いと感じてしまう。
気のせいでなければ、悪役のようなオーラすらあるのでは?
「……カメ朗さま。申し訳ありませんわ。お騒がせして」
「い、いや。別にいいんだけど……一体あいつは」
■カメ朗が、行動停止したオークロボに目を向ける■
■と■
「……ちょっとォ!! お肌に傷ついちゃうじゃなぁい!!」
「!?」
凄まじい攻撃の嵐を受けて、なおも動き出すオークロボの姿。その耐久力にカメ朗は目を丸くした。
これはさすがにマジヤバいかもしれんと。
そしてついに、主人からの命が下された。
「くそったれ、リリ! 出番だ!」
「ええ!? 無茶言わないでよッ!」
「大丈夫だ! おれの操作技術はあの時の比じゃない!」
「ゲームの話でしょうがッ」
■リリの鋭いツッコミも気にせず、ラジコンを取り出すカメ朗■
「いっけー! おれのメイドー!! ……某モンスターゲームみたいだ!」
「ノリノリね、このゲスッ」
■リリは魔導具ナイフを取り出し、ロボに立ち向かう!■
「って、なんで四足歩行になってるのよー!?」
「あ、いっけね。さっきの操作感がまだ残ってた」
「このアホガメ! ちゃんと操作しなさいよ!」
「任せろって! いざって時には頼りになるところを見せてやる!」
上手く操作すれば、肉体面をステータス以上に強化することが可能な、カメ朗の人体支配機能。
だが、肝心の操作技術がダメダメの極みであった。
リリは犬のように吠えながら、やけくそになってオークロボットへと突進する。
彼女は四つん這いで尻を突き出したような体勢のため、カメ朗は操作に集中できない。
「もうヤケよ、やってやろうじゃないッ」
「なによアンタ! カメ朗様に操作されるなんて羨ましい!」
「代わってくれないかしらっ、それならぁっ! 屈辱!」
ロボットへと飛びかかるリリの体躯。
動き自体は強化されていて、その勢いはまさしく俊敏な獣の如く!
カメ朗はリリのパンチラに気をそらされながら、それなりに上手くなった操作テクニックを発揮する!
「なによ。大して速くないじゃなーい」
「うぐあっ!?」
■勝負は一瞬で着いた■
「リリちゃんつっかまっえーた♪」
「そ、そんな!? こんなにあっさりと!?」
オークロボに鷲掴みされるリリ。
確かにカメ朗の操作によって動きは増したが、元々の能力値が低いために捉えるのは楽勝MAXだったようだ。
捕まったリリは屈辱に声を震わせながら、カメ朗たちに向けて助けを求める。
「た、たすけてー!? なんでいつもこんな目にッ!」
「よし、今の内に逃げるぞ! リリの犠牲を無駄にしてはいかんっ」
「さすがですゲス朗様!」
「リリー、ありがとうーッ! 僕は親友だと思ってたよぉ~」
「ごめんなさいリリっ。強く生きて!」
■わりと全員割り切りが早い!■
「ほらやっぱりー! やっぱりこれー! いっつもわたしだけのけ者! わたしだけ貧乏くじー!! 二人組つくってーじゃないのよおおお!?」
「うっふん、なによアンタ……よく見れば結構かわいいじゃなーい。お人形さんみたいねぇ」
「ひィ!?」
■リリは泣きそうになった!■
■そして数秒後、彼女の悲鳴が響く■
●■▲
「こっちだZE! 仲間は絶対に見捨てねぇ!」
「はいっ」
「うわー。説得力ないなぁ~カメ朗君。あはは」
■カメ朗を先頭にして、一行は全速力で駆け抜ける■
■そのまま広い中庭へ!■
■綺麗な花々や池、ベンチなどによって心ゆったり出来るスポットだが、今は全然休まらない■
「ひとまず外に出ないとなっ。さあ、ジゼルもっと説明を」
「は、はい……。あの、ジゼル改は――」
■ジゼルによる説明開始!■
【カメ朗様のような、超高性能ろぼっとぉおおおおお。作ってみせますわー!!】
■終了!■
「なるほど。それで、作成に失敗したと」
「てへぺろですわ」
「かわいいから許す! でもなんで、おれを狙っているわけー!」
「さっぱり分かりませんわっ。わたくしはただ、当然の知識をインプットしただけなのにっ」
■ジゼルの回想■
【カメ朗様は素晴らしい……最高……唯一無二……至高……!】
■元凶は明らかであった!■
「ふーむ、かわいいドジっ子嫁に対する説教(という名の愛でるタイム)はあとでするにして」
「申し訳ありません……うぅ。なんなりと処罰を」
「ふ、いいんだYO。そういうところも含めてジゼルなんだから!」
「カメ朗さまぁ! 好き!!」
■熱烈に抱きしめ合う二人は、凄まじいラブラブオーラを放っている■
■メイド長とシエルは白い目を向けている■
■追われている緊張感はまるでなし!■
「ふぅ……まあ問題は、あのロボットに対抗する方法だ」
■ようやく真面目になった模様なカメ■
■現在、リリと交戦中のはずだが……■
「――んっふふ、見ーーつけた!」
「ぞくり」
■噂をすればなんとやら■
■無駄に甘い声が聞こえて来た■
「あ、リリーっ。なんて姿に~」
館から出てきたジゼル改。
彼女(?)が右手に掴んでいるものに、シエルは驚きの声を上げた。
「ううう……ぬるぬるするぅー。もうやめてぇ……」
めっちゃてかてかしているメイド・リリ。顔も腕も、そしてその美脚も。やたらと艶めかしい光沢を放っていて、かなりセクシーさを強調していた。特に太ももからふくらはぎにかけてのラインが宝石のような輝きを持ち、メイド長とカメ朗が視線を強めまくっていた。
そして、敗北した彼女は力なく掴まれている。何をされたのかは、きっとリリに聞いても答えてはくれないだろう。
「あちゃー、魔導は封じていたからなぁ。アレ危険だし」
■周囲の被害が半端ない&自分にもダメージ&お色気展開など■
■様々な理由で彼女は魔導を使えなかった!■
■しかし時間稼ぎにはなったようなので、カメ朗は後でなでなでしてあげようと思ったりしているが、絶対逆効果である■
「なかなか骨があったわよ。リリちゃん。もっともっと愛でたかったけどぉ」
「ウうう……」
「でも、今はじゃま」
■ジゼル改は、中庭に設置されたベンチにリリを優しく寝かせた■
「リリも敗北かよっ。まいった……ていうか、なんでぬるぬる?」
「さあ……?」
リリに何が起きたかは、ジゼルにも分からないようだ。
だが、敗北したら同じ末路を辿るだろうという、そんなイヤな予感がカメ朗たちの頭をよぎった。
リリのめそめそと泣く声が聞こえてきて、さすがのカメ朗もちょっと申し訳なくなる。
「さーて、どうしたもんかね」
カメ朗は頭を悩ませる。
しかし、彼の背後に立つ彼女は……。
「ふふ、もうやることは決まってるんじゃないかなー?」
「……シエル」
■金髪の猫耳メイドが、カメ朗の前に出る!■
■すれ違う際に、一瞬だけ彼に熱っぽい視線を向けた■
「リリは元仲間だし、仇はとらないとー。あんな劣等生でもぉー」
「ほう、自信ありかよ」
「ボクを誰だと思ってるのー? ご主人様ー。バカかなぁー?」
■彼女は歩く■
■怪しい笑みを浮かべ、大きな山を揺らしながら!■
「大魔導連盟の幹部、【開拓者】のシエルだよー?」
「ふふん、アンタもわたしの奥義でぬるぬるしてあげるわよ」
「えー、それは困るなー? ご主人様の前でそれは、はずかしいしー」
■シエルは邪悪な眼光を攻撃対象へと向け■
「ボク、攻める方が好きだからー。スクラップにしてあげるよオーク君」
■ドSメイドがその牙を剥き出しにした!■
「それにーこんなクズであほなカメだけどー、ボクの愛しいご主人様にはちがいないし~。――わたさないよ? みにくい泥棒猫なんかには~」




