友情の証は固くッ!!
「うおおおおおッ!!」
「おおおおおおッ!!」
狭い通りを疾走する二つの影は、イケメンとロボット。風を切る音は、一般人の耳にもイヤでも入ってくる。何事かと、視線を向けてくる人々は普通に多いレベル。
歩行者の目線など気にせず、己の大切なものを奪われた二人は疾走する!
そこには譲れない男の意地があるのだ。
「な、なんだアイツらぁ!?」
「こっちは就職者だぞ!?」
「くそぉ、しかも片方ロボットだ! スーパーロボットか!?」
「パンチが飛んだりするのかッ!? やばっ! それ少し見たいな!!」
逃走する四人の盗賊は、追いかけてくるカメ朗達の威圧感に押されて、必死に足を動かしている。
彼等は、能力値の中で速力(速さ関係の能力)に自信があるが……。
「うそだろ、追いつかれるッ」
「化けもんかよ! アスリートか!?」
「ならッ」
盗賊の一人が反転し、右の掌をカメ朗達に向ける。何度も繰り返してきたのだろう、動作の洗練。
その顔は悪党らしく歪み、速やかに詠唱は行われた。
そうして掌から撃たれるのは、電撃系統の魔導である!
「稲妻◆踏破◆拡散!!」
■広範囲に広がる雷光が、二人におそいかかる!!■
「甘いぜーッ!!」
「甘いよ!!」
■雷光はカメ朗の頭突きで砕かれ■
■周囲に広がったそれを、イケメンが掌に集めた!■
「な、なにをしたッ!?」
「気合いだッ!!」
「気合いだよッ。それと怒りのオーラ!」
カメ朗とイケメンは、息が合った言葉をそれぞれ発する。その適当さというか滅茶苦茶さは、普通に盗賊からすると怖い。
両者ともに厄介なことには変わりないが、謎の一体感のせいで余計に脅威だった。
「んな馬鹿なッ!?」
思わず目が飛び出そうになる盗賊。
彼の胸に、自分の放った電撃が突き刺さった!
「ぐあああッ」
「お返しだ。少しサービスしといたよ。感謝してくれ」
電撃を受けた盗賊は気絶し、倒れてしまった。
残った賊は迷いながらも逃走を続け、やがて分かれ道にさしかかる。
「くらいな! 烈風◆拡散!!」
「ぬッ!?」
■また盗賊の魔導攻撃!■
■周囲の物を切り裂きながら、風の刃がカメ朗達を襲う!■
「だから効かないんだよなぁー。無駄!」
「目くらましか!? どこまでも小癪な!」
■風の刃自体は効果がないが、それによって発生した木片や布の切れ端などが飛んで来る■
■様々な物で視界を遮られ、彼らは盗賊を数秒ぐらい見失った■
「く、あいつらどっちにッ! こしゃくなー!!」
「君たち、奴らはどっちに行ったッ!?」
赤髪イケメンは、通行人に賊たちの居場所を聞くことにした。
だがしかし、彼らは一様にはてなマークを頭の上に浮かべている。
「わ、わからん。いきなり消えちまったよッ!」
大剣を背負った、モンスター討伐の帰りらしきおっさんがそう言う。
分かれ道で消えた盗賊たち。
カメ朗とイケメンが目を離したのは、数秒程度だったというのに。その姿は、複数の通行人も見失ってしまったという。
右か左のどちらかに進んだと思われるが……。
「右!」
「奇遇だ! 俺も右だと思った!」
「よし! 友達だ!」
■がっちりと、イケメンと握手を交わすカメ朗■
■彼等は右の道を進む!■
「……」
「……」
■そして数分後■
■改めて少しだけ自己紹介した二人は、仲が深まったはず……なのだが■
「おいブレイン」
「……」
「姿を消した賊どもの探査は?」
「……どうやら、こっちではなかったようだッ。無念!」
赤髪イケメン……名はブレインは、魔導による探査を行ったが、どうやら違う道を選んでしまったようだ……。
カメ朗はがっかりする。
「このやろーっ、なにが右だよ!」
「君も言ってたくせにーっ。棚上げとは見苦しい!」
友情はすぐに壊れた。
いがみ合う二人は、完全に盗賊達を見失ってしまった!
●■▲
■その頃、左の道では■
「はは、どうやらまいたようだ!」
「おれたちの気配消しスキル、【隠者の歩み】!」
「職業、密偵が習得できるスキルだぜ! ……って、なんか説明口調だなオイ」
残り三人となった盗賊が、笑いながら通りを疾走している。
周囲の人たちはその存在に気付かない。
「さて、このまま第8番地の魔導車までいくかァ」
「へへへ、見ろよこの財布! 600ペルも入ってるぜ!」
裏に蛇が描かれた硬貨(異世界のお金で単位はペル)を眺める盗賊の男。
どうやら、彼らが奪ったのはそれだけのようで。
「お菓子買えるな! うっひょー!!」
「ひゃっほー! うまうま棒買い放題!!」
喜ぶ彼らの視界に、魔導車が停められた駐車場が見えてきた。
施設に備えられた、それなりに大きい場所だ。
そこそこの人影がいるが、誰も彼らに気付いている様子はない。盗賊たちは作戦成功を確信し、笑い声を上げる。
「うし! 乗り込むぞ!!」
■その瞬間、盗賊たちの体から光瞬く!■
「わぁああッ!?」
「なんだぁ!?」
■光は空に打ち上げられた!■
「な、なんだったんだッ」
「今のは――あッ!?」
盗賊の一人が空の彼方に影を見る。
それはすさまじい速さで近付いてきて、輪郭を確かにした。
「さっ」
「サーファーだーッッ!! 野郎! 【乗ってやがる】!」
■赤髪のイケメンが、カメの背に乗っていた!■
■まるで波の流れを乗りこなす、サーファーのように!■
「見つけたぞぉおおおッ!」
「仕込んでおいた魔導が役に立っただろう! カメ朗君!」
■ブレインは魔導を返した時■
■盗賊たちに別の魔導を仕込み、時間が経つと光を発するようにしていた!■
「はっきり見えたぜ! 空からなあああああっ!!」
「うわああああああッ」
「くるなああああッ!?」
■轟音ひびき、瞬殺される盗賊たち■
「ぐわああああ!?」
■追いかけっこは終わった……■
「いやー、助かったよカメ朗君」
「こっちもだブレイン。呼び捨てでいいぞ!」
二人は座り込み、倒した盗賊達を眺めている。
カメ朗の手には、おしゃれな黒い財布が握られていた。
(よかった、中には……ジゼルと一緒に撮った写真があるんだ)
宝があることを確認して、カメ朗は満足な笑み。ジゼルとの思い出の品を確認した後、大事そうにしまった。
ブレインはその顔を見てつられて笑う。
「ふ、目的のモノは無事か。よかったね」
「……ああ」
「ならば、ちゃんと守り切ることだ。大事ならさ」
少し悲し気な笑みを見せるブレイン。
彼は、既に大切なもの(エロ本)を壊されているのだ……。その心の傷は簡単に埋まらないものなのかも、しれない。
カメ朗の目にも、思わず涙が浮かびそうになった。
「ブレイン、一杯おごるか? どっかの店でアホ話しようぜ」
「なんだい、まるで友達みたいにさ」
「――何言ってんだ、おれ達はもう友達だろ」
「カメ朗……」
■二人は、戦友として笑い合う!■
「――よく、こんな状況で笑っていられるわね?」
「本当、大したものだわ」
「えっ」
「あっ」
■気付くと、彼らの目の前に水着の女性集団が■
■様々な凶器を持って、立っていた■
「……(あ、写真集で見た有名ファイターだ)」
「……(ほどよい腰の引き締まり……素晴らしいな)」
彼等が目を逸らしていた現在地は、プール施設の女子更衣室。周りにロッカーの残骸。
いつの間にやら、こんな場所に突入していたのだ。
女性たちの中には有名美女ファイターもいて、顔を赤らめながらカメ朗たちに殺気を向けている。
「ち、ちがう。これは!?」
弁明しようとするカメ朗。
己の無実を証明する為に口を開こうとした時、ズボンのポケットを見た。
(――ブラジャー。なんで――)
ポケットからピンクのブラジャーがはみ出ている。
混乱する彼の頭は、盗賊に受けた風の魔導攻撃を思い出す。
(あの時かあああああああッ)
反射的にブラジャーをポケットから出し、背中に隠してしまうカメ朗。
当然、女性たちの視線はそれを逃さない。
「ちがいます、たまたま入ったんです。本当です」
「へえ、更衣室にも?」
「うん」
「死になさい」
「「ぎゃあああああああ」」
■絶叫■
■逃走■
「ちくしょおおお、お前のせいだぞぉおおお!!」
「なにいってるんだっ、君が注意力不足だからだッ」
「なんだと、このやろっ」
「この、このッ」
「「絶交だああああああああぁ」」
■似た者同士の二人は■
■立場逆転で追いかけっこを再開した!■
●■▲
「……さて、ちゃちゃっと片付けてしまおう」
■カメ朗とブレインがトラブル中の頃■
■一人の侵入者が、カメ朗たちの館へと侵入していた!■
「大魔導連盟すら警戒する勢力と聞いていたけれど、こんなに簡単に侵入できるなんて……踏み台にもならなそう」
■黒いミディアムヘアを揺らしながら歩く、ぴっちり紺スーツに身を包んだ美女■
■美しいラインを描くお尻に張り付いたタイトスカート&黒いパンストが、彼女のモデル体型を強調している■
■館のエントランスに響く足音は、しかして静かさを保っていた■
「気配を消し、迅速に行動する」
密偵の職業である彼女は、気配消しスキルを用いて館への侵入を成功させた。かなりの練度で発揮されるそのスキルは、侵入者の実力を示している。
にやりと笑うクールな表情は、その内面にある高慢さを発露していた。
その歩みには自信が満ちている。今までどんな困難な任務もこなしてきたのだ。
「……」
■広いエントランスの半ばまで来たところで■
「は~い、ストップ~。それ以上進んだらだめだめ~。ザコの子ネズミちゃんー」
■人を小馬鹿にしたような声がかけられた■
「……へぇ、気付いたんだ。やるじゃん。完全に館の配置の隙を突いたと思ってたのに」
「あはは~。まあね~。ボクって鋭いからさぁ~。その程度のへなちょこ侵入、簡単に見破れるよぉー」
「ふぅん。強がるじゃん。……調子に乗ってると痛い目みるよ?」
女密偵はシエルに鋭い視線を送り、それをシエルはいつもの不敵な笑みで受け流す。
その場に満ちる緊張感にも構わず、シエルは侵入者に問いかけた。
「一応、聞いておくけどぉ~。目的はぁー?」
「ジゼルお嬢さまの拉致。でいい?」
「!」
■素直な女密偵の言葉■
■大魔導連盟に関係しているのでは?と、思わせるには十分だった■
■それに驚きつつも、シエルは手に持った得物を振るった■
「拉致して、こっちであのお嬢さまの自由を奪う。絶対に逃さないし、徹底的にやるよあたし達は」
■襲いかかる長物状の武器を、侵入者は裏拳で弾いた■
■あまりに機敏な動きに、シエルは少しだけ驚きの表情を見せる■
■同時に、自分の得物魔導具を瞬時にしまった■
「うぅ~ん、相性が悪いかもぉ~? 肉体派だねぇ~」
「さっさとどいてくれる? それとも力ずくで……」
女密偵が、シエルに接近しようと身構えた。
「その必要はありませんわ。わたくしはここに」
「!!」
身構えた瞬間、女密偵の背後からジゼルの声がかけられる。それに反応し、即座に防御態勢をとった女密偵は、振り向いたその先に目標の姿を見た。
間違いなくターゲットであるお嬢さま。
整った顔立ち。紫の長髪はとても綺麗で、同姓であっても思わず見とれる魅力はあった。
「隙だらけ……だよっ!」
■柔和な笑みを向けてくる緊張感皆無・あまりに無防備なジゼルに向けて、女密偵は気絶させるための拳を放った■
■それは確実に相手を捉え■
「え?」
■そのまま彼女の体をすり抜けた■
「――完全に敵ですわね。貴方は。ならば遠慮なく……無様な姿をさらしてくださいな」
「なっ」
ジゼルがそう言った瞬間、女密偵の体を槍状の極細物体が貫いた。
それはあまりに早く、とても避けられるスピードではなく、さらに彼女の体から自由を奪う麻痺機能付きだ。
一瞬にして女密偵は窮地に追い込まれた。
「がッなッッ」
さらにどこからともなく飛んできた複数の拘束ベルトが、女密偵の頭からつま先まで、がっちりと巻き付いて拘束。彼女の肉感的な肢体が強調されるほど、かなり頑丈に縛られてしまう。
さらに、気を付けの姿勢で完全固定されたまま、いつの間にか背後に立っているベッドへと縛りつけられる。
あまりの速攻に、女密偵は混乱と恐怖の中にいた。
「こ、この……ッ! むぐッッ!?」
■最後に口枷を装着され、そのままベッドは床に空いた穴へと急降下する■
■数々の戦いで、クールに任務をこなしてきた女密偵。それを達成した美しく強い肢体も今では少しも動かせず、太ももや首を固定するベルトの強固さからくる圧迫感に絶望する■
■不気味な機械音と共に運ばれていく彼女は、屈辱の表情を浮かべたまま闇の中へと消えていった■
「館の深淵へとご案内しますわ……まあ、帰りの便はないかもしれませんが。フフフ」
■悪役令嬢のような邪悪な笑みを浮かべたジゼルは、女密偵を一歩も動かずに撃破した■
「わぁあ~。もしかしたらぁーこれー」
もしかしたら、この館内であればカメ朗ですら危ういのでは?
そう思わせるほどのジゼルの脅威に、シエルは背筋が凍るのだった。
「カメ朗さまとわたくし、メイド長……この鉄壁を子ネズミごときに破れると思いましたかしら?」
■館の支配者・ジゼル■
■彼女は絶対の自信と共に、そう言うのであった■
「お嬢様、旦那さまが女子更衣室に侵入して逮捕されました」
「……はい?」
■メイド長からの連絡で、鉄壁の一人が欠けた■




