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金策とおいはぎ

遅くなりましたが、第48話を投稿させて頂きます。

「よし、その『吸魔珊瑚の化石』とやらを使ってみるか!」

「えー。私、もう一つの腕輪は非戦闘系にしてみたいんですって。吸魔っていうぐらいだから、絶対ドレイン系とか魔法打ち消しとかになるっしょ?材料費は出すから、別のにしてよ~」

「別の~?そりゃ蓄えは幾つかあるが、料金だって馬鹿にならんぞ。嬢ちゃん、いくらまで出せるんだ?」

「だから金策の為にココ来たんだって。もうちょい待ってて下さいよぉ」


 今日は朝っぱらからスクラップ売買の『がらん堂』に来ていたのだが、その流れで店の奥に隠されている武具工房の『紺凝堂』に寄り、方天さんとあーでもないこーでもないと話している感じなのだけれど、これには訳があった。


… … …


「おはようコトさん。ノンからの伝授は修了したみたいですね。」

「ええ。なんとか」

「では、次は私がお教えしましょう。私も色々と研究が有りますので、手っ取り早くスパルタで参りましょう」

「ちょ、ちょ、待っ……」

「なーに、コトさんなら大丈夫ですって」


 ログイン直後から強引に話を進めようとするアカシさん。知識の探究に忙しいのは分かるけど、コッチはここ暫く修行に振り回されて自由に動けていない。

 本日は色々としたい事もあった。と、言う訳でここはとっておきのカードを切らせてもらおうかね。


「チラッ……チラッ……」


 私は口で擬音を出しながら一枚のスクリーンショットを開く。親指と人差し指はスマホの要領で動かし、SSを拡大・縮小と繰り返して見せた。

 読めそうで読めないギリギリのラインで、アカシさんの興味を刺激していく。


「なんですかそれ」

「近い、近い、近い~っ!!」


 一気にゼロ距離まで詰めてくるアカシさん。食い付き良過ぎだろ……。


「私、今日は金策に動きたいんですっ!それがうまく行きそうなら、SSを開く手も弛くなって、コピーを送信する位は出来そうです!!」

「何ですかそれは?何なんですかそれはっ?」

「精神世界を覗くアイテムで見た、『夢幻郷』って場所の風景の一幕にあった書物の一頁を私がスクショしたものですっ!多分、私以外に所有者は居ないと思いますよっ!!」


 アカシさんの丸眼鏡が完全に曇った。コレは落ちたな。


「ノックス・N・トリノを紹介致しましょう。賢人会に所属する開発部門の技術者で塵やカビ、ゴミ、苔などをリサイクルして活用する分野の第一人者でして、【埃の錬金術師】と呼ばれる人物です」

「錬金術師ですか」

「即席のマジックアイテム等の作成を得意としている男でして、造り手をぼかして見せたコトさんの『ダーク・マテリアル』に対しても強い興味を示しております。私の方から一つ一万五千で買い取る様、話をつけましょう」

「是非、紹介をお願いします!」

「ところで……」

「はい。解読内容を私にも開示して頂けるなら、今すぐにでもコピーして送信しましょう!」

「OKです。それで手を打ちましょう!」


… … …


 てな感じで、スクショ一枚で暇と人脈と金策法を手に入れた私は、東支部の裏手の水路で砂利拾いを行ったのだが、前回大分採ってしまった為に300個程度しか見付からなかった。

 その為、方天画戟さんの店で屑鉄を都合してもらおうと思った次第であり、今に到る感じだ。


その後は、材料となる屑鉄の仕入れ交渉。優遇してもらえる件はブキョウさんと来た時に話が着いてるのでタップリ五万位を要求してみたんだけど……


「お前……鬼か!?そんないっぺんに用意出来る訳ないだろう!屑鉄って、ゴミアイテムの様に思えるが、大量に山になって採れる訳じゃないんだぞ。遺跡の中の壊れた機工類や、鍛冶場のゴミ、破損した武具なんかを見付けては二束三文で買い叩いて来て初めて山に出来るんだからな?優遇はするが、供給がパンクする程に都合したりはせんぞ!オレだって、リサイクルして使ってんだし」

「買い付けも方天さんがしてるの?」

「いや、ウチの下っ端連中だな。アイツ等は反乱軍に入りたかったり、庇護を受けたかったりする連中で、それの資格テストの代わりにオレんとこじゃ鉄集めとかの廃品回収をさせてんのよ。三食昼寝付きで、下積みさせてんだよ」


 色々と苦労話も聞きながら、私は20000個の屑鉄の購入する事で話を着けた。更に、5000個のサービスも追加してもらう。

 まあ、これは一回こっきりではあるけど、BNGメンバーにケンカを吹っ掛けたって体でここまで融通してもらった。

 方天さんは『堪んねぇよ…』って調子だったが、節々の表情や口調等からは、ここら辺が落とし所だろう?っていう打算が見え隠れしていたのである意味双方に取っては『和解』の為の予定調和だと言えた。

 私個人としては、屑鉄が手に入るのなら何でも良かったんだけどさ。


 4000パカシを支払い、工房へと戻る。さあ、そっからは合成地獄の始まりである。

 取り敢えずは、香炉に薬草を入れて火を点した。これで精神力の方は常時回復してくれるので、まずは25300個の屑鉄と石ころを合成していく。

 目的のブツは『黒い塵芥』なので、『失敗しろ~』と念じたり、余所見したり、ボケ~っとしたりと失敗を促すやり方を敢えてしまくってみた。

 特に、寝っ転がってやると楽な姿勢かつ、延々と失敗してくれるのでなかなかに便利だ。

 お茶を飲みながら鼻唄混じりでするのもまたよいみたいで、結果として八個程が塵芥に成らなかったが、12642個の塵芥が手に入った。

 え?八つは何に成ったかって?八つは『鉄インゴット』になったよ。

 この件に関しての私なりの見解なのだが、どうも屑鉄二つを合成すると、基本の成功が鉄のインゴットと設定されているみたいなのだ。まあ、鍛冶には欠かせない需要の減らない物だからそれを基本とするのは当然なのかもね。

 以前は『ナット・リング』や『ボルト手裏剣』なんかも造れたけど、あれって小成功や中成功の類っぽいし、既に造り慣れたお遊びアイテム(ちゃんと使用は出来るけど、インゴットとかと見比べると見劣りする玩具程度という感じかな?)は、逆に私のイメージ内にレシピとして出来上がってしまっているみたいで、ある程度スキルレベルが上がった私にとって勝手に造られる事はないっぽい様なのだ。

 実は試しに屑鉄二つを用いてボルト手裏剣を造った所、あっさりと造れたので今後は私自身が造るか否かを決められるらしい。

 一応、ここでは『レシピ習得』をしたものと考えておく。

 そして、今後屑鉄二つの合成で得られる結果の予想なのだが、成功が鉄インゴット。失敗が黒い塵芥。更に、大成功が純鉄のインゴットでレア成功が魔鉄のインゴットなのではと推測される。

 それ以上のレアもあるかも知れないが、今までの経験と憶測から現時点ではこんな感じなのだと思っておくことにする。


 そして次に、12642個の『黒い塵芥』をまた二個ずつくっつけるのだが、こちらは真剣にやっても適当に試しても問題なく全てを『もっと黒い塵芥』へと合成出来た。

 どうやら黒い塵芥同士を合成するという事自体がダークマテリアル生成へのフラグになっているらしく、他のモノになる余地が設定されてないっぽかった。

 とはいえ、このスキルは運営が偽りを流してない限り、私以外に使っていないものなのだから、確かめ様もないのだけどね。


 その後、『もっと黒い塵芥』×6321→『すごく黒い塵芥』×3160→『黒い結晶』×1580→『もっと黒い結晶』×790→『すごく黒い結晶』×395→『ダークマター』×197+1(在庫が一つあった)→『ダークマテリアル』×99という感じに昇華させるに到った。

 どうよ?前回の比ではないこの数!今回は本気で稼ぎに来てるからね!


… … …


「いやあ、この度は取引のお話を頂きまして有り難うございます」


 北街区の裏通り、ボロボロに老朽化した空きテナント群の一角に、ノックスさんの工房はあった。

 アッパータウンである筈の北街区にスラムの様な一角があるのは異様に見えたが、一昔前に上流階級がお抱えの技師達を近所に囲ったのに由来しているらしい。

 サービス開始時には既にこのボロさで、設定上はその囲い混み合戦の末期がサービス開始時という感じで、北住みのプレイヤーに格安工房を提供する事が運営の裏事情だったと言うのは、アカシさんの談。

 そう言われると私も借りておきたかった気もするが、本拠地に工房を手に入れちゃった後だしね。

 格安なだけあって住まいとしても設備としてもかなりショボいらしく、新人が減った今では閑古鳥が泣いているそうで、現在は大半がリアルな廃墟っぽくなっているそうだ。


 そんなとこに何故、賢人会の重鎮が!?と思ったのだが、作業に関しては高レベルスキルや所有アイテム等で充分研究に支障ないらしく、むしろ安全な街中でかつ人の少ない所が良いという希望が叶っているんだってさ。

 まあ、アカシさんのお仲間!?な訳だし、多少変わってたり研究バカだったりはご愛敬でしょ。え?自分を棚に上げるなって?さて、何の事でしょうか。


「アカシさんから品物を見せて頂いた時は、流通経路も不明で手に入らなそうとの事でしたが、こうしてご紹介を頂けるとは思いませんでした」

「まだ新参の若輩者ですので、色々と準備もありました。ノックスさんは、マテリアルを大変気に入って下さったと伺ってますのでそういう方ならば、と判断させて頂きました」

「ざっと見せて頂いた限り、素晴らしい純度ですからねぇ。まさか、アカシさんの新しいお仲間の作品だったとは驚きです……あ、守秘義務に関しましてはご安心下さい!我ら賢人会には『情報』を軽んずるものはおりません。そういう者達を淘汰して来て、今がある集まりですから」


 ノックスさんは灰色のクセっ毛に灰色ずんだの白衣?を来たイケメンよりのフツメンという感じで、地味だがプロの研究者然とした人だった。

 なんか、全体的にモノクロな感じがするが、わざとそういう色合いにしているのかな。


「むさ苦しい所ですみませんねぇ。午前中から『灰』の研究でバタバタしておりまして……コトさんが来るまでになんとか粉塵が収まって良かったです」


 それ汚れかよッ!!


「……い、いえ。こちらこそ、すぐに対応頂いて感謝です。ウチのアカシがサンプル不足でお渡し出来なかったと聞いておりますので、本日は充分な数量を取り寄せて参りました!」

「それは有り難いです。では、今回は6つ程ご都合頂けますか?」

「え、あっ、あの……アカシさんのご紹介ですし、もっとご用意致しますが……」

「まずは私の持つ素材とどの様に組み合わせて利用出来るかを知る事から始めたいですからね、6つもあれば大丈夫です」

「…………あっはい、お買い上げ有り難うございます。では、また御入り用の時は直に私にご連絡を頂けますでしょうか?」

「ええ、その時は是非!」


 こうして、ノックスさんとの取引はあっさりと終了した。


… … …


 うーん、甘かった。いや、6つでも買って頂けるのはもちろん有難いのだが、アカシさんの研究仲間という事で大量購入を予想していたけど……そう簡単には売れないか。

 これまでが調子よく売れ過ぎたのかもしれない。


 さぁて、あと93個をどう捌くかな。このままでは不良在庫を抱え込む事になるぞ。


 そんな事をブツブツと考えつつ、北街区の裏路地から西大通り、そして南街区の裏路地へと抜けて歩いていた時だった。


「おねえさん、なんかいい匂いする……」


 うわっ……!!突然掛けられた声に思わずバックステップ。声の主を探すと、さっき私が立ってた位置の腰辺りに顔がくる感じでしゃがんでる幼女の姿が……。


「ねぇ、なんか美味しそうな匂いのするやつ持ってるでしょ?」


 幼女は私の方へ顔向け、クンクンと匂いを嗅いでいる。


 黒ずんだ皮の胸当てに薄汚れたシャツ、ショートパンツ姿のその子は、身体中には様々な紋章とかロゴの描かれたピンバッジをゴテゴテと着けていた。

 何この子?この街は治安良いからストリートチルドレンとか居ない筈だし、見掛けない感じからも多分、余所の子だよね?


「ねえ、ねえ、持ってるよねぇ~?それ、ちょうだい!」


 うーん、ヘンな子になつかれてしまった。


「ちろる、意地汚ないです」


 ん?良く見ると、隅っこに置かれた樽の上に、もう一人女の子がいた。こっちはグレーのゴスロリっ子で、ストリートチルドレンには見えない感じだ。

 取り敢えずメンドイので、私は巾着から駄菓子を取り出して見せた。


「ホラ、じゃあコレあげるよ!」

「むー、ちゃんとくれない気だなー!バカにして~」


 なんか怒ってるし。面倒くさい子だなぁ。


「くれないと酷いぞぉ~っ!」


 女の子はズビシと私を指差して睨む。無闇に人を指差しちゃいけませんよ!


「ねぇ~じぃ~れぇ~ちゃ~え~~~……」


 トンボを捕まえる様な仕草で、指をぐるぐるする少女。その瞬間、私の背筋に凄まじい怖気が走った。

 思わず、横っ飛びで地面を転がる。次の瞬間、直前まで立っていた場所で、見えない半透明の何かが弾けた。


 バシュッ……


 今、コイツ……何か飛ばしたぞ!?いや、まさか……。


「ねぇ~じぃ~れぇ~ちゃ~え~~~ッ!!」


 横っ飛びをしながらもポーチからナット・リングを取り出し、元々立っていた辺りに投げる。同時に活眼を発動!


 バシュッ……


 さっき私の身体があった辺りの位置に、半透明の何かが渦を巻き、一瞬で拳大位にすぼまる。それに巻き込まれたリングは、グシャグシャの屑鉄となって地に落ちた。


「…………空間歪曲!!」


 あのぐるぐるモーションがあるから避ける事は可能だけど…あれ多分、完全防御無視で貫通してくるやつだ。恐らくは致死ダメー ジ。


「おねーさん、賢いね。ちろるの事止めてあげたいけど、私達追い剥ぎなの」

「ちょっとぉ、ハクアも手伝ってよ!!」

「私は『闇の森』の外じゃ私掠行為はしないよ。勝手に始めたんだからちろるの自己責任!」


 勝手に喋り始める二人。こいつらは追い剥ぎなのか……リオレで強盗行為とはいい度胸だ……と言いたい所だが、今の私は生き残る事が肝要だ。

 さっきの技、まともに食らうのだけは絶対にNGだ。避けやすい技だが、恐らく『ハクア』とか呼ばれるゴスロリ娘が参戦したらマズい事になるのかと思う。

 不戦宣言があったとはいえ、追い剥ぎコンビである以上『ちろる』とか言うぐるぐる娘を討ち取ろうとしようものなら、きっとこちらが不利となるだろう。


「ちょっと待った!この街の中は監視されてるよ!だからもっと穏便に……」


 バシュッ……


 聞く耳無しか……こうなったら仕方ない。私はポーチからボルト手裏剣を取り出す。

 これで怯ませて、大通りに戻る!


「助太刀するぜッ、チビ共ぉーーーーー!!」


 ふと、そんな声が後方から近付いて来た。迂闊……コイツら三人組だったのか。横にスライドしながら肩越しに後ろを確認すると、襲撃者の拳が背中に振るわれるのが分かった。


「『仕立て屋の叡智(ひとうちななつ)』!!」


 ヒットした拳が、閃光を放つ。次の瞬間、一発の拳の衝撃が複数となり、背中全体に襲い掛かってきた。


「ぐへっ」


 その攻撃によって私は路地内をゴロゴロと転がる様に吹っ飛び、脇に積み上げてあった空の木箱やら粗大ゴミやらの山へとおもいっきり突っ込んだ。


「ぐっ…………いッ……」


 なんとかガラクタから這い出す。が、左腕がうまく動かせない。肩周辺にかなり深刻なダメージを追ってしまったみたいだ。

 これでも、食らう時に角度と体勢をずらして軽減を図ったつもりだったんだけどな……まだ、私のレベルでは『野生の超反応』も最大限には発揮出来ないっぽい。


「ほー、無名っぽい奴の割に耐えきったか。なかなかやるじゃん。わざわざ『アウルヘルゲン』から来た甲斐があったぜ!」


 そう言って拳をポキパキと鳴らしているのは、革の胸当て、革の護拳、ショートのデニムジャケット、黒のレザーパンツ姿で、身体のあちこちに金属片を装着しているというちょっとサイバーパンクな感じの女である。

 鮮やかなワインカラーのショートヘアで、額には人差し指位の長さの白い角が特徴的なタト族だ。何の種族だ?腕っぷし的に鬼族とかだろうか。


「おい、ちろる!あんま余所モンにナメられんなよ」

「ナメられてないし!それに、ハクアが手伝わないから……」

「オーロラ、此処では余所者は私達。それに、私達は『暗闇林道』、及び『闇の森』以外での私掠許可権は与えられていない」


 ズタズタのボロボロである私を前にして、余裕でおしゃべりする三人。

 くそぅ……悔しいなぁ。でも、このままでは終わってやるものか!せめて、せめてコイツ等の悪行を…………

 私は最後の足掻きとばかりに、ポーチへ右手を突っ込んだ。


… … …


「……オラ、さっさと失せな。お前等全員失格~!」


 目の前でグッタリしている連中に、ヘルは慈悲なくそう言い放った。昔は殺す気でやっていた試験官の業務も、今は程々にしており、それなりの覚悟を持ってきた奴ならば生き残れる位に調整してやっている。

 自分でも甘くなったとは思うが、ただ殺し尽くすという行為には趣を感じなくなったのだから、仕方がないとも思う。

 とは言え、常に相手のプライドをズタズタにしてやる位の痛め付け方をしているので、篩の役割としては上等だろう。


 今もまた、目の前の新生クランとおぼしき連中を徹底的に叩きのめした所なのだ。

 騎士見習い風の戦士に侍志望の剣士、ヒーラー、シーフ、アーチャー三人というメンツのクランは、比較的バランスの良いチームではあるが、如何せんバランス良いだけに小さくまとまってしまい、凡庸に思えた。

 もちろん、パーティー編成にバランスは必要なのだが、そういうパーティーやクランに限って、中堅止まりが多いというのもこの世界のあるあるであった。

 国家間での生存競争に勝ち抜き、一端の上位陣に食い込める者は、そう言ったチームバランスとは別のベクトルで突出する。

 例えるとすると、スキルで言えば特化した手腕や特異能力、戦闘で言えば、個や集団を凌駕する特有の『力』みたいなもの。

 そして、狡猾さやカリスマ性といった他者にないものなどである。


 当然、国家への仕官を審査する試験であるから、中堅となる戦闘部隊として役に立つ連中はウェルカムである。

 それ故の理由もあって、ヘルは彼等を半殺しで済ませたのだ。もし彼等の覚悟や向上心が本物ならば、今回の心折れる様な惨敗にもめげず、次もより精進した上で再挑戦をして来るであろう。

 そういうのこそヘルの好みであり、もしそうなってくれた暁には、彼等をお気に入りとして徹底的に虐め抜いてやるつもりでいた。

 今回の失格はそれを狙っての可愛がりなのだが、その意思を知っているのはヘルの戦闘部隊に所属する面々と、一部の妖国幹部位であった。


 さて、この後は何をして暇を潰そうかと考えつつ、倒れた連中から目を反らした直後のことである……


(ヘルさん……ヘルベティアさん…………ご無沙汰してます……)


 入って来た遠距離フレンド通信をONにした途端、途切れ途切れの声が飛び込んできた。


(お前、コトか?おい、久々じゃんか!今日は何だい?急にどうしたよ?)

(今、裏路地で襲われてまして……ヘルさんの国の首都から来た人達みたいです ……)

(何ィ!おい、お前大丈夫なのか?どんな奴等だ)

(闇の森……私掠許可権がどうって……えと、『ちろる』、『ハクア』、『オーロラ』?私のアイテム目当てで、今ぶっ飛ばされた所で……)

(………………ちょっと、待ってろ!)


 ヘルは、国家所属軍団長仕様の幹部回線を開き、大きく息を吸い込んだ……


… … …


 わいわいと騒いでいた三人だったが、不意にハクアが気付いた。


「ねえ、あの子……何かアイテム使ってるよ」

「お目当てのヤツかな??」

「おっ、まだヤル気かぁ!?よーし、『ユニ…」


 その時、三人同時に通信が入った。軍用の通信は緊急性が高い事が多いので、皆が一斉に回線を繋いだ。


『てめぇ等ソレ以上コトに手ェ出したら、ブッ殺すぞクソがぁーーーーーッ!!!』


… … …


 フラフラとしながらもヘルさんに通信を送ったのは、三人の会話の断片が妖国に関するものだったからである。

 正直、今この瞬間に何処に居るか不明なギルメンに助けを求めても、この分からず屋達を相手に何分も持ちそうに無かったので、それならば彼女等が地元で暮らしにくくなる可能性を信じてヘルさんに頼った次第だ。

 折角、遠距離フレンド通信のアイテムもあったしね。


 しかし、その通信の半ばまでくっちゃべってた三人は、私の行動に気付いた様で、角付きの女が一歩前に出た。

 くそぅ、まだ左手は動かないし……口で腕輪を操作できるかな?


「なっ……」

「キャッ……」

「うぅ~……」


 耳元に手を触れたと思った直後、三人はビクッとして飛び上がり、後ずさった。


… … …


(おい、どういう事だ喧嘩屋?てめぇ、リオレでカタギに手ェ出してんのか?)

「いや、アタシはちろるの奴が難癖付けられてんのかと思って助太刀を……」

(おかしいな。コトって奴はリオレ中、うろうろしてる感じだが、お前みたいに喧嘩吹っ掛けていくタマじゃねぇんだがな?)

「それについては私が答えられる。ちろるはあの人の持ってる何かに反応して、勝手に仕事を始めた」

「だって……美味しそうな匂いが……」

「何っ!じゃあ、アタシは……カツアゲの手伝いをしてたってことか?」

(ハァ……ちろるの悪い癖と、お前の早とちりが原因か……)

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!そんな理由で揉め事なんて起こしたら……うおっ!」

「キャッ……」

「ひうッ……」

(どーした?)

「ま、待ってくれ……ミズチが襲って来やがった……」

(クソッ!)


 ヘルは急いで網膜内に映っている回線状態の表示欄から、フロランたんを選択して応答状態にする。

 一方、当の呼び出しを受けたフロランたんは、余り友好的でない通信者一覧を見たのか、妹分のフレイムたんも招待したらしく、同時に入り込んで来た。

 国軍内には幾つか派閥があるので、多対一で妙な言質を取られぬ様にという常套の対策の一つである。


(ア~ラ、そっちから掛けてくるなんて珍しい事。で、何かしら一体?)

(10秒待ってくれ。ハクア、そっちの当事者二人をゲストに迎えてくれ!)


………


 ヘルさんと通話した後の展開は、本当に目まぐるしかった。三人組が飛び上がったと思ったら、慌て始め次の瞬間にはなんと、表通りの方から凄い勢いの水流が流れて来て三人を凪ぎ払った。

 その水流の正体は水で出来た大蛇で、私の目の前まで来ると収束し、ミシュラさんになった。


「ウチの子が世話になったねぇ。アカシから頼まれて、ログイン早々来てみたら、コレ?」


 不機嫌そうに言いつつ、ミシュラさんは三人を見据えて構える。左手には瓢箪を持っているが、飲みの途中という訳ではないらしい。ミシュラさんのバトルスタイル、私はまだ見た事ないけどあれも武器だろうか?

 対する向こうのオーロラとかいう人も呼応して構えてはいるが、顔色を見る限り完全に狼狽している様だった。


「待って……」


 ハクアという子がそう言うと、メッセージウィンドウが飛んできた。


---ハクアさんから専用グループチャットへの招待がありました。交信を行いますか?---


 私と、そして恐らくミシュラさんも交信をONにした。


「よし、これで揃ったな」


 交信とともにヘルさんの声が飛び込んでくる。表示されたウィンドウを見るに、参加しているのは『ヘルさん』、『フロランたん』、後は前にヘルさんとぷみらさんの会話に出てきた『フレイムたん』という人、目の前の三人組、私とミシュラさんだ。


「この面子で、一体何が聞けるのかしら?」


 非常に機嫌が悪そうな調子で、フロランたんが言う。ちょっと、体感気温が下がったかも。


「リオレにいるフレンドのコトから、通信があったんだよ。それによると、三馬鹿がチョンボしたらしい。アイテムをよこせと、市内でコトをボコったそうだ。どうせリオレ入りしても、フロランたんのとこに顔出してないんだろ?だから関係者全員、ここに繋いだ次第だ」

「『蟒蛇(うわばみ)』がいるという事は、それをBNGに見咎められたって事かしら?三馬鹿……よくも私の顔に泥を塗ってくれたわね。ちなみにヘル、貴女が焚き付けてお膳立てした訳じゃないでしょうね?」

「だったらもっと拗らせるだろ。少なくとも、お前をこの段階で呼ばねーよ。つーか、アタシだってダチをやられて頭に来てんだ。おい、フロランたん!今回の責任に関する賠償やペナは、全部コイツ等三馬鹿から搾り取れよ!」

「当然よ。まったく……街道で賊徒狩りするから、此方に向かってるのは知ってたけれど、リオレ市内のプレイヤーからカツアゲするなんて呆れ果てたわ!」


 フロランたんは事実上、リオレの駐留武官だ。前回、エリディスが立場を危うくした様に、今回の様な妖国人の暴挙は彼女の失点に成りかねないのだろう。

 いやー、私としてはヘルさんに繋いだ結果、すぐに対応してもらえたからラッキーである。

 しかも有難い事にミシュラさんまで来てくれた。きっとアカシさんの情報網から、辿って来てくれたのだと思う。本人は解読の真っ最中だろうけれどもね。


「ま、待ってくれ!アタシはカツアゲなんてつもりは……」

「勘違いでも、ちろるの強奪に荷担したのは事実だろ!お前は腕っぷしだけでのし上がって来た分、考えが迂闊なんだよ」

「ミシュラ、今回の件はリオレ駐留者としてキッチリと落とし前を付けるし、必要ならBNGにも話し合いで筋を通しに伺うわ!後はこちらのプレイヤーさんにも納得のいく形で話をするので、此処は引いて頂けないかしら?」

「そうは問屋が卸さないねぇ。コトにどんな形で償うのか知らんが、ウチのメンバーに手を出したんだ。ここは先輩として、私も同席させてもらわないとねぇ!」

『!』


 暫し、フロランたんの罵声が三人に浴びせられた。私を個人プレイヤーだと思って示談にしようと目論んだのだろうが、よりにもよってBNGメンバーともなればウチの先輩方が無関係では無くなってくる。

 彼女にとってそれは恐らく、かなり厄介な事なのだろう。

 賠償や補填を大きくされて、陣営にデカいマイナスが付く恐れがあるというのは想定の範囲外だった様だ。

 勝手をされたのが余程気に食わなかった様で、文句をたれている内にこちらの位置を把握したらしく、屋根伝いにもの凄い速さで跳躍してくるのが遠目に見えた。どうやら単独で猛ダッシュして来た様で、取り巻きのオタ芸集団は居ないみたい。

 そして最後の跳躍と共にカボチャ色のパラソルを開き、パラシュートの要領で悠然と降りて来るのであった。


「こんな所でコソコソと動いてた訳ね……」


 フロランたんは名目上、『リオレ中央市場』の広告塔アイドルという事になっている。中央市場というのは、東西南北四本の大通りに店を構える大棚と各通りの市場組合からなる商業組合だ。

 そして此処は西大通りから南街区にちょっと入った裏路地。つまりは彼女のテリトリーのすぐ横と言ってもいい場所でなのだ。

 見付からない訳がないのである。


「これは問題になりましてよ!お姉様、本国にてヘルさんだけの言い分ではお沙汰が甘くなるかも知れませんわ。幹部会を召集して、女王陛下の名の元で三人にはガッツリと罰を受けて頂きませんと。こちらの事は是非私にお任せ下さいませ!」

「アタシもそれで構わないぜ、自分達のやった事には責任は取るべきだ。こちらではアタシとフレイムたんで話を通しておく」


 話を聞いて、三人は色を失う。


「にしてもコト!お前、よりにもよってBNGに入っちまったのかよ!?お前はいつかウチに来て欲しかったが……残念だぜぇ」

「済みませんヘルさん、誘って頂いてたのに。今度、馬車で旅する予定も立ててるんで、いつか菓子折り持って伺いたいですね」

「おう、そんときゃまた遊ぼうぜ!」

「ええ、是非!」

「BNGが人を増やしたと言うのも驚きなのだけれど、貴女……思い出したわ。確か以前、ふらりぃとアカシが連れ歩いてた子よね?見覚えあるわ。何処でだったかしら?」

「豊穣祭の……下剋上ギルド掃討戦で。その節はどうも」

「ふーん……ああ、お馬鹿さん達を処理した時に居たのね」


 値踏みするように見られている。派手な彼女からしてみれば、地味な私はさぞやつまらない存在に見えるのではないかな。

 今はボコられて肩外れたみたいにプラプラしてるしね。


「ところで、示談交渉はどうするのかしら?」


 フロランたんはミシュラさんに向き直って問う。


「その前に一つ。被害を受けた以上、謝罪の意があるなら答えてもらおう。三人のリオレへの派遣理由はなんだ?」


 ミシュラさんの……否、うちのギルドの一番大事な所はやっぱりそこだと思う。

 正直、ギルドの総意としては、妖国に対して領地や金品、首級や服従なんかは求めていない。そういうものより、むしろ何を企んでるか?今後こちらとどう事を構えるのか?という事に限るのだろう。


「……そうよね、BNGに見咎められるどころか、こちらから戦闘を仕掛けたのだもの、説明せざるを得ないわよね」


 フロランたんは溜め息を吐きつつ、仕方なさそうに話を始めた。


「先日、我が国の街道沿いで起きた馬車強盗団の件よ。アレを追って、下位幹部三名が討伐部隊として派遣されたわ。殴路羅は純粋な戦闘員として。盗賊ペア(アウルベア)は国で唯一の私掠許可を持つ盗賊団としてモグリの抹殺の為って経緯ね。なのに……チンタラしてた挙げ句、結局は対象をリオレ入りさせてしまったわ。私の方でも連中を捕捉してたけど、女王陛下の命で来た以上、三人に落とし前を着けさせるつもりだったのよ。で、リオレに入ったら本来私のとこに出頭するのが筋なのだけれど、それすらも怠って……後は今、此処にいるのがその結果って所かしら」


 ミシュラさんは腕を組んだまま、冷ややかに彼女等を見ていたが、その件だったら私も関係があったので、思わず口をはさんでしまった。


「あの……それって、『イバラ鬼』のナントカっていう奴等ですか?30人位の」

「ええ、確かにそんな名前だったわね。国の採用試験にも受からない程度の小物なのだけど、我が国発行の行商認可を得ている馬車を何台か襲っているのよ」

「えっと……その連中、もう居ませんよ。昨日、私とノンさんで水林峡におびき寄せて、その後ノンさんが一人残らずバラしちゃいました。リオレ市議会からの依頼だったんです」

「あらあら!先にターゲットを始末した相手を逆に襲ったとか、目も当てられないわね。私も、市議会とやり合うつもりはないし、庇いだて出来ないわよ」


 三人に向き直って言うフロランたん。後は三人を煮るなり焼くなりしろとばかりに数歩引き下がる。


「さて……それではミシュラ、改めて示談交渉を行いましょうか?」

「それなんだがな、折角なのでこちらは当事者であるコトにやってもらおうかと思う。私は正当に話し合いが行われるかを見極める立会人という形だ」


 そう言って、ミシュラさんも数歩下がってしまった。うーん、そうきましたか……これは、試されてるよね?

 とは言っても争う事が目的じゃないし、何らかの補填はしてもらいつつ、関係はそのままってのがいいのかな。

 うちの方針は、あくまで世界のパワーバランスを脅かした場合に、大きく動くんだものね。


「そう……了解したわ。ではこちらも三人に直接対応させるわ。私が立会人としてね!ヘルもフレイも、それでよくって?」


 ヘルさん達妖国の本国組も了承し、私と三人が向かい合う形になった。


… … …


「あ、その、なんだ……済まなかったな。いきなり殴っちまって」

「ええ。ちょっと驚きました。まさか三人目がいるとは気付かなかったもので……ところで、薬とか持ってたら頂けますか?」

「あ、これは失礼」


 中ランクのポーションを一つもらって飲む。少し身体を動かして見るがまだギクシャクしているみたいだ。

 結局、三本のポーションを飲み干した所で身体から違和感が消えた。

 かなりダメージを負っていたみたいである。


「うん、これ位で大丈夫そうです!」

「本当に済まなかった。アタシ等の倒すべき連中を始末してくれた相手……しかも、ヘル姉さんのフレンドに攻撃しちまうなんて……不覚だった」

「幾つか、順を追ってお話をして行きたいのですが」

「ああ、そうしてくれて構わない。非があるのはこっちだからな」

「まずは、ヘルさんを呼び出すのに3000パカシ相当のアイテムを消費してしまいました。数量限定の品という事で今月はもう手に入らないのですが、それを加味した上で補填して頂けますか?」

「分かった。限定品と言う事なら現金での賠償という形になってしまうが、毎月入荷するものというのならば三倍の額位で如何だろうか?」

「そうですね、分かりました。それで結構ですよ」

「で、賠償の方はどうすればいい?」

「その前に、お互いちゃんと自己紹介しませんか?そちらのお二人も一緒に」

「あ、ああ……そうだな。おい!」


 恐る恐る、ちょこまかとやって来る二人。幼女と称したが、マジマジと見ればとても背が低いだけで一応二人とも中1くらいにはなっていそうである。流石に小学生ではゲームルールの把握や他者との折衝など厳しいものがあるが、二人はそこまで幼くはない様で互いに頷き合うと堂々と私に対峙した。


「うー、あの…………さっきはゴメン。私、妖牙軍(ロイヤル・タスクフォース)第19位、『アウルベア』の一人【ねじくれ】ちろるって言うんだ」


 唇を尖らせて、上目遣いにちろるは謝罪した。この子は、ちょっとヤンチャなタイプなんだね。


「先程は失礼を致しました。同じく『アウルベア』にして妖牙軍(ロイヤル・タスクフォース)第20位、【闇食い】ハクアって言います。私達二人は妖都から闇の森を抜ける間道をナワバリとする暗闇林道盗賊団、通称『森のくまさん』の団長と副団長を務めております」


 こっちのハクアは落ち着いた感じのおしゃまさんだ。が、タイプの違うちろるとはうまい具合に気が合うのだろう、彼女の無茶やワガママに呆れながらも留め立てしない位には無法も容認する感じらしい。

 この子は術師系っぽいが、万一か弱そうなこの子を集中して反撃していたら(状況次第ではそれも考えてた)、ヘルさん呼ぶ前に完全に拗れてたと思う。三人同時に襲われて、命無かったんじゃないかな。

 てゆうか、この二人も幹部なの?てっきりオーロラとか言う人のギルド員とかで、我が儘言って着いて来た感じに思ってたのだが、二人で一団を率いているって事なのね。


「どうも。リオレ市のギルド『BNG』の新入り、コト・イワクです」

「最後はアタシだな、妖牙軍(ロイヤル・タスクフォース)第18位、【喧嘩代行業者】の殴路羅だ!」


 文字通り、『路地で殴る修羅』って訳だ。うん、身を以て刻み込まれたからね。一発で覚えた。もう絶対に忘れられなくなったよ。


「ところで……ちろるさんがさっき言ってた美味しそうな匂いって……何の匂いでしょうか?」

「私とちろるの二人は、闇属性の素材を好んで収集してるです。ちろるは悪食なので、素材を食べたりして魔力に闇属性を補ってるのですよ。ちろるが『美味しそうな匂い』と言うのはそういったモノの事です」


 成る程ね。私はダーク・マテリアルを一個取り出すと、ニコリと営業スマイルを作る。


「ちろるさん、もしかしてこちらですか?」

「あー、美味しそうな匂い!それっ!!」


 よし、コレは怪我の功名だね!


「そうですか……襲われた原因はこちらでしたか……。ところで、お三方は今……幾らお持ちですか?」

「手持ちか?アタシは24万くらいだ。討伐任務に大枚は要らないしな」

「ハクアは、18万くらいです」

「ちろるは……5万、かな」

「ウソです。ちろる、胸当ての裏地に付いたスリットにいつも10万持ってる」

「うー……」


 よし。全員合わせると57万だね。


「そうですか。実は私、コレを販売してる途中だったんです。いくつかは既に買い手が着いてまして、そちらに今手持ちの分を流すつもりだったんですが、実はまだ契約前なんですよ。こちらは純粋な闇属性の結晶体でして、凡そですが『シャドウ・ボルト』百発分の闇属性魔力を内包してます。現在は単価1万5千で販売をしているのですが、コレを1コ2万で所持金の限界まで買って頂けますでしょうか?そうして頂ければ、肩の痛みも随分と和らぎそうです」


 三人は一瞬情けない顔をしたが、互いに顔を見合わせると一様に頷き合った。


「まあ、その程度は妥当だよな。むしろ、罰金とかじゃなく割り増し売買程度で済ませてくれるってのは、温情だよな」

「美味しいのもらえるから、ちろる的にはそれでいいや」

「ハクアも闇の魔法を使うから、有難いかも」


 話は纏まりそうだ。ギルドの先輩達がこういう時、どれ程締め上げるかはまだよく分からないけれど、私的にはしこりをなるべく残さずに今後も有利に取引出来るってくらいの方がよく思えたのだ。どうせ彼女達三人は本国でも絞られるんだろうし、ヘルさんの妹分っぽい連中を潰しにかかるってのも、何だかねぇ。

 それに妖国に何派閥あるのかは不明だけど、ここで三人を潰す事によってフロランたんとフレイムたんは、ヘルさんの勢力を弱めようという思惑を持ってそうだし。

 大きな派閥勢力の変化は、パワーバランスの乱れに繋がるかも知れない。そして、それは恐らくBNGの思惑からずれる様な気がした。


「ふーん。どんな償いをさせるか、おねーさん気になってたけれど、案外商売上手じゃない。アタシは、嫌いじゃないよ。バカンス達にも、上手く報告しといてあげるわね」


 ニコリとするミシュラさん。きっと、甘くてもキツすぎても、判断出来なくても駄目出しされたんだろうな。

 まあ、組織同士の手打ちなら56万の臨時収入ってのは安めかも知れないが回復も済んだし、マテリアルの買い手も付いたし、私がボコされた事を水に流せばリオレにマイナス収支はない筈である。


 そんなこんなで本日は修行のない、金策メインかつちょいバトルな一日となりました。


… … …


NAME:コト・イワク 種族:タト族・マニスリング(獣化箇所:センザンコウの鱗の手甲)

LV46 キャラクタークラス:アイテム合成士 RANK:E

STR159 VIT155(+1) DEX161 MEN154 SPD155


《所持金》

1112386P


《師事》

『弧を描く餓狼』ガラム・マサラ


《習得技能》

工芸(LV16) ※工芸品知識及び製造におけるプラス補正。補正値はレベルに準ずる。

目利き(LV25) ※一定の商業系スキルにプラス補正。NPC商店訪問時にレアアイテム出現率が微細にアップ。

体術(LV51) ※格闘系スキル。強力な武術ではないが、あらゆる格闘技の基本となっているスキル。

シンセサイズ(LV27) ※二種のアイテムを合成して別の何かを造り出す事が出来る固有スキル。

八十五式和合婚刻拳(LV11) ※相手の回避にマイナスの補正が掛かる固有武術。レベルに応じ覚える三連打突技毎に威力が上がって行く。

活眼(LV17) ※周囲の者の力量を推し測ったりオーラを見たりするスキル。成功率はレベルに準拠。

調理(LV2) ※簡単な料理を作り出すスキル。レベルに応じて成功度が上昇する。

暗闇の歩法(LV0) ※暗殺者などが用いる歩行術。盗賊の忍び歩きの上級版で、足音・気配を消して達人ともなれば存在まで希薄にし、ステルス化する。戦闘にも組合わせて使用が可能。


《タト族の力》

◇尖山甲 ※生命エネルギーを込めた拳撃。打撃系『突き』属性。タト族の能力は一日にLV÷10回使用可能。

◇暗帰路 ※生命エネルギーを込めた裏拳。打撃系『払い』属性。タト族の能力は一日にLV÷10回使用可能。

◇破斬 ※生命エネルギーを込めた手刀。打撃系『斬り』属性。タト族の能力は一日にLV÷10回使用可能。


《フィート》

【綺羅星の加護】

【寄り道の王者】

【応用技術万能】

【野生の超反応】


《装備品》

木綿のセーラー、布のナックルガード、腕輪『乾坤一擲』、鼬鼠のベレー(1)、皮のくつ、クローバー・ピンズ、黄色いマグネット

(予備装備:肩掛けカバンにクラウン・ピンズ、タンブラー・ピンズ、ドロップ・ピンズ、ハートフル・ピンズ、赤マグネット、青マグネット、緑マグネット、白マグネット)


《所持品》

肩掛けカバン(12)×2、鼬鼠のウエストポーチ(3)、鼬鼠のプラントホルダー、水筒(小)、ペン付き手帳、遠眼鏡、小型ナイフ、初期財布(100)、お菓子の巾着、指ぬき軍手(白、赤、橙、緑、黒)、コルキントンの香炉、バンジーの急須、水琴窟の小壷、30%ポーション×7、80%ポーション×1、中級薬草×8、獣の牙、石のサイコロ、茶碗『湧水郷』、紺のベレー、ナットリング×75、石器ナイフ×9、火口箱×2、ティンダースティック、砥石×3、石筆×5、茶壺『密林の欠片』、蜥蜴鳥の朝採り卵(激臭)×3、念話の結晶石


《アーティファクト》

鑑定魔のモノクル(C) ※レア度C以下のアイテムの鑑定。

蒼き水源の水差し(B) ※清水が無限に湧く(ON/OFF可)。

夢幻のカレイドスコープ(C) ※夢幻郷の一部を覗き見る事が出来る。



《所属ギルド》

【B・N・G】

◆【混沌(コントン)】バカンス・デカダンス

◆【禍つ女(マガツメ)】点(トモ)

◆【檮杌(トウコツ)】ブキョウ・キナガシ

◆【饕餮(トウテツ)】ゲイン・バショク

◆【窮奇(キュウキ)】明石・暮紅人(アカシ・クレコウド)

◆【獣王(スタンピード)】ふらりぃ

◆【インビジブル】NON(ノン)・EMPTY(エンプティ)

◆【大蟒蛇】魅酒螺(ミシュラ)

◆コト・イワク

◆ミミナガ・メデカ


《フレンドリスト》

●ぷみら・みにま

●ぐすたふ

●アイアン

●ライ・クライ

●エスプレッソ・デミタス

●ヘルベティア・ローゼンリース

●ロータス・ピットフォール

●TOWA

●方天画戟

●ノックス・N・トリノ


《従士隊》

◆プルカリ【リビングメイル】♀(ガーディアン)

◆コルベル号【ロットワイラー】♂(番犬)

◆シュロ【白猫】♂(ストレイキャット)

◆フレデリック【うりぼう】♂(ゴミ漁り)

◆がじゅまる【アギル・カクタス】?(観葉植物)


《ギルド部屋の金庫(99)》

ロセオの花瓶、クルリエの錆びたスプーン、クルリエの錆びたナイフ、クルリエの錆びたフォーク、クルリエの錆びた包丁、クロウトの皿、きれいな石ころ、エマ・ランナのサンダル(左)、耳長新報(創刊号)、厚手の手袋(左)


《工房の所持物品》

古びた荷車、空の頭陀袋×42、リサイクル・ピンズ×73(内訳:クローバー13ヶ、王冠9ヶ、酒杯11ヶ、雫石10ヶ、ハート11ヶ、剣9ヶ、渦巻9ヶ)、小さなメダリオン×67、ワッシャー・タグ×38、付与マグネット×26(内訳:赤5、黄7、青5、緑3、白6)、石のフィギュア×11、宝石の卵×2、何かの化石×3、バルグナン・パフェグラス、もっと黒い塵芥×1、すごく黒い塵芥×1、黒い結晶×1、すごく黒い結晶×1、ダークマテリアル×65


… … …


 その後、ミシュラさんと共に戻る帰り道の事。


「アカシの情報網から辿って何があるかと来てみたらや、まさか幹部三人を相手どってるとはねぇ……向こうの横暴にも応じずにボコられて、ウチ等に助けを求めるでもなしに相手国のフレンドに話を着けちゃうとか……コト、あんたは変わってるねぇ」

「ハハハ……もう駄目かと思ってました。最後の反抗ってやつです」

「まあ面白いものも見れたし、負けん気の強さも嫌いじゃないさ。ただね、『一度死んでも次があるから』なんて安易に考えるのはおよしよ。そういう、『やり直し』を視野に入れて戦略を練る様な奴は、真っ先に消えて行くからね。そんな奴等をこれまで嫌と言う程に見てきたからさ」

「そう……ですよね。相手が見逃してくれなきゃ、一度の復活すら出来ないんですよね。どこかに、復活を考える甘さがあったかもです……」

「ま、釘を差したのは私だけどそんなに悄気なさんなって!想定外のピンチが糧になる事だってあるし、時には無茶も必要さ。どっかで凡庸さやセオリーを突き抜けなきゃ、上位にゃ食い込めないしな!今後、更なる高みを目指すにはそういう無茶や、人とは違う行動も必要とされてくるだろうよ。あの三馬鹿にしたって、無茶と慎重の間をすり抜ける様にして貪欲に生き抜いた結果、あの位置に居る訳だ。ま、一朝一夕にゃ勝てんわなァ!」


 そんな会話をしつつ歩くと、不意にミシュラさんは寄り道を提案して来た。


「まさか、呑みのお誘いですか?私は飲めませんよ」

「いやいや、それは仲間達と後でね。ちょっとさ、冒険者協会に寄ってこうよ。今回の件を踏まえて、一つ知恵を授けてあげよう!」


 こうして、私は二日連続で協会本部へと訪れる事となった。


「いらっしゃいませ!こちらは特別相談の窓口です。本日はどのような御用向きでしょうか?」

「こんにちは、ルエタさん。ペット探しのクエストではお世話になりました!」

「こんにちは。覚えていて下さって光栄ですわ、コト・イワクさん」


 このゲームのこういうとこ、本当好き!しっかりと相手と向き合ってロールプレイすれば、こんなにもフレンドリーな対応をしてくれる様なAIを使ってるんだもの。


「えと、今日は先輩の勧めで伺いました」

「これはこれは、魅酒螺様!ようこそお越し下さいました」

「お邪魔するわね。実はコトもなかなかに稼ぐ様になって来たものでね、そろそろ『冒険被害者救済基金』にお金を入れるべきだと思うのだけど……如何かしら?」


 ん、何それ?何か支払い義務が発生するのか??


「まあ、それは素晴らしいですわ!コトさんの頑張りは同僚のナルハからも聞いていますし、一人前を目指すなら是非ともご入会をお願い致しますわ」


 私が手持ちの金額を考えつつ、迷っているとミシュラさんが耳打ちした。


「5000パカシ以下は止めろ。損するだけだぞ」


 寄付なのに、額面に指定があるのか?だがまあ、ここは助けてくれたミシュラさんの言うとおりにすべきだと思う。


「ろ、6000パカシ程でもよろしいでしょうか?」

「勿論です!コトさん、貴女のその寄付金は、リオレ市内で怪我をした冒険者達の義手や義足、薬代等に使用される事となります。貴女の行いに答えるべく、冒険者協会からは『勢力別協会加盟者上位リスト』をさしあげますわ。今後の旅のお供として、是非ともお持ち下さいませ」


 ルエタさんから一枚の羊皮紙を受け取ると、それは手の中に消え、代わりにウィンドウが開いた。

 こ、これは……


… …  …


【大アルカディア帝国】 

『宝剣議会(フラーズダルム)』

1

2『?????』【大魔道】ジゼル (氷魔)

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15『楔の騎士』【????】エリディス (超越者)

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【バルバラント覇道国】

『二十魔将(マレフィック)』

1

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6『????』【????】鉄LOW (リビング・メイル) 《鉄靴の足跡》

7

8『暗黒医師(ドクトル)』【ヴォーパルバニー】枯虚愛(ここあ) (ラビットリング・レッキス氏族)

9

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11『??』【????】??・?・?????

12『????』【??????】????・???

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15『????』【???????】魔熊 

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18

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20【??】『?????』TOWA (超越者)


【アクラソシス幻妖国】

『妖牙軍(ロイヤル・タスク・フォース)』

1

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6

7『メルティ・ローズ』【奈落に咲くもの】ヘルベティア (マンドレイク) 《悲鳴をあげるものたち(シュリーカーズ)》

8『死霊術パティシエール(マジカル・スウィート)』【??????】ふろらんタン (ジャック・オー・ランタン) 《ヴァルプルギス》

9

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11『????』【煉獄剣】ふれいむタン (火精)

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18『喧嘩屋』【戦闘代行業者】殴路羅 (ユニコンリング)

19『アウルベア』【ねじくれ】ちろる (ベアリング) 《暗闇林道盗賊団・森のくまさん》

20『アウルベア』【闇食い】ハクア (アウルリング) 《暗闇林道盗賊団・森のくまさん》


【聖ディバイルド法国】

『守護聖人(ディバイン・ガード)』

1

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4『??????』【銀なる拳】??

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7『第三使徒』【治の司祭】ぷみら・みにま (アルラウネ) 《玉手箱グループ》

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15『?????』【黄の司祭】シャンメリー (地精) 《地母の庭》

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『トロイメライ革命軍』

1

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4『第四軍司令』【百錬将】方天画戟 ♂ (超越者)

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7

8

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10


… … …


「み、ミシュラさん!これって……」


 待ち合い用の卓までミシュラさんを連れて行って聞いて見る。


「そう、大勢力に名を列ねるランカー達の一覧よ。5000Pより高い寄付で手に入るものは、見知った者しか表示されないから、自分で増やして行く感じね。30万を越す寄付だと、全員の名が全て埋まった状態で手に入るけど、若手の内は自分で埋めて行くのも、良い経験よ」


 成程……今日会った三人や、まだ会ってない時雨さんとこのボス、フレンドになったトワさんなんかも載ってるね。これはコンプしたくなりますね!


「あの、コレって人によって表記が違うみたいですが?」


 私は一覧表ウィンドウを拡大具現化してミシュラさんに見せる。


「ああ、新参プレイヤーにしては多少は埋めているな。感心感心!表記に関しては、実際に会っているのならば開示内容も多くなると思うが、『幹部としての役職や通称』、【プレイヤーとしての二つ名】、(種族)、《所属ギルド》と言った基本情報が知り得た分だけオート表記される。それら全部が開示されると、メモ機能も実績解除されるぞ。例えば、『ぷみらのギルドは表向き薬品の大手販売業だが、その顔の広さを利用して裏では異端審問の執行が生業』なんて事も自分で書いておけるって仕様だ」

「だから、聞いたことある二つ名だけとかの人もいるんですね。あれ、でも全部『?』で表示されてる箇所があるんですけど……」

「それは、恐らくニアミスだろう。知らない間にすれ違ってたんだろうさ」

「えっ、じゃあここの二人はリオレに潜伏してたんですかね?ヘルさんやさっきの三人の様に!?」

「…………ああ、ソイツ等か。多分、その二人は来てないと思うぞ」


 うーん、じゃあ何処で会ったんだろうか?


「まあ、そこからは地道に埋めていけばいいだろう。上手く活用出来れば、初見の時に対応方法のヒントになるかも知れないしな。まあ、持ってて損はないだろう?」


 そう言って笑い、彼女は手を振って黄昏時の路地を酒場の方へと消えていった。やっぱり、ギルドには帰らずに呑み歩くらしい。

 私は一人、ホームへの道を帰路に着くのだった……

複数人の会話パートの繋ぎがかなり難産で思いの外時間掛かってしまいました。


次回は幾人かのキャラを主にした外伝を書く予定でおります。

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