祭前夜
全体的な見直しの結果、ゲーム内における物価を若干上げる形で修正掛けました。
また、冒険者ギルドとプレイヤーたちのギルドとの名称の差別化を図る為に、冒険者が入会する組織を『冒険者協会』に名称変更致しました。
朝練の終了後、私達はいつもの調子で街中を巡りつつ昼食をとる事に。しかし、今日の大通りは普段とは違った。
東西南北に走る大通りのすべてに人が多いのだ。
リオレという都市は元々大きな都市であるが、今日は何時にも増して人でごった返している。
人混みをかき分けて歩いてみたが、中央広場を中心として四つの通りは派手に装飾され、皆が忙しそうに店や屋台の準備に勤しんでおり、その原因は普段から各所に配置されている市街掲示板にて確認出来た。
『【豊穣祭、開催!!】
リオレ市に滞在中の皆さんにお知らせを致します。
今年もまた、リオレ市の四つの大通り商店会が主催する豊穣祭が開催される運びとなりました。
スタートは明日、正午ジャストより!
北大通り・西大通り・南大通り・東大通りは、それぞれ馬車の通行を禁止して沢山の店舗がお祭り仕様で出店を致します。
各店舗では大安売りを行ったり、当日限りの品も出揃う特別な祭りとなります。
ぜひ皆で春の訪れを祝い、楽しんで下さい---』
…という事だそうだ。お祭りを目当てに、各地からプレイヤー、NPC共に集まってこの様相な訳ね。
毎年恒例という事なら、集まってるのは常連客と情報通な者達って事か。
お祭りは大歓迎だけど、ハメを外す人や騒動を起こす様な良からぬ人達が流入しないといいけどね。
それとも、それすらも解決すべき仕事だと、冒険者なら考えるべきなのかな。
取り敢えず明日はお祭りに参加する事にして、私は裏通りで手早くパンを購入して協会へと顔を出した。
今日はあちこちに買い物に出ると邪魔をしてしまいそうだし、近場で時間をつぶすつもりだったのだ。
「コトさん、簡単な依頼が出てますけど…如何です?」
ナルハさんから切り出されたのは、東大通り商店会からのお手伝いの依頼だった。
毎年、冒険者協会もお祭りに協賛しているらしいのだが、東は協会員が少ないから人手が足りずに困っているそうだ。
勿論私の答えはOK。折角のお祭りだし、何事も経験だ。
手伝いクエストは、人によって空き時間が違うという事から、どうやら時給換算で計算してくれるらしい。
時給と言っても一時間で30パカシというボランティア価額という事なので、ナルハさんは済まなそうにしていたが、こういうのは金額の問題ではないと言うのが私の心情だ。
そんな訳で、三時からはいつもの訓練があるため二時間程街の皆さんと一緒に飾り付けや荷運び、店舗の補修や掃除などに勤しませてもらった。
近隣のお店の店主さんやおかみさん達と知り合い、とん汁の様なものまでご馳走になってしまった。昼がパンかじっただけだったのでホントに有り難い。参加して正解だったよ。
… … …
夕刻は東支部会館の二階でのんびり読書タイム。
二階は会議室やスタッフオンリーの部屋などがあって奥にこそ行けないのだが、上がってすぐは書棚があり、長机と椅子が並ぶ読書スペースとして解放されていたりする。
私はちょっとした空き時間にここにいる事が多いのだが、このスペースで閲覧可能な協会の所蔵本は地理や風土、歴史などについてのものが多くて結構参考になるのだ。
今日読んで分かった事だが、トマホークと戦ったあの緑磁岩についても、ここでは読む事が出来た。
年間を通して霧の降り頻る『ティナル水林峡』や、中央連峰の奥にあるとされる秘境『永久氷壁』や、大魔道『狂猾卿』の住まう塔等々、リオレ周辺だけでも気になる場所は幾つもあったりする。
「コトさん、ちょっとよろしいですか?」
ナルハさんが階段を登ってくる。今日の仕事終わったのかな?
「度々で悪いかと思ったのだけど…本部からの依頼が入ったの。今日、この後ってご予定如何でしょう?」
「あ、もしかして商店会ですか?」
「いいえ。協会員が個人的に出した特別依頼みたいね」
「一応、聞かせて下さい」
「ある協会員……というか名前もちゃんと公表されているわ。南方都市の支部で登録されている新鋭クラン『New World Order』の代表、ジークレインと言う人ね。これまでに特別な賞罰は無いわ」
「聞いた事ないですね、お祭りに乗じてリオレ入りしたクチでしょうか?」
「どうかしら。で、その彼の依頼なんだけど…ちょっと変わってるの。依頼する対象として、リオレの本部及び各支部で三ヶ月以内に登録を行った新人で、かつ協会職員から見て期待出来る者全てに声を掛けて欲しいと言う事。会合に参加するだけで依頼は完了し、参加者には報酬として50パカシが支払らわれるわ。また、追加依頼がある様なのだけど、その会合の内容に賛同したメンバーでのみで行う事になるみたい。そして会合のみの参加者を『依頼成功』、追加依頼参加者を『依頼大成功』として扱い、追加依頼報酬には5000パカシが支払われると明記されているわ。以上の条件で人を集めたい。というのが協会に提出された内容の全てよ」
「何か、意味深で変わってますね。こういう依頼って、よくあるんですか?」
「協会員からの依頼というのは、特殊なケースや長期継続的なものもあるから変わった内容な場合も多いの。今回のケースとしては、話だけ聞いて帰ってもお咎めなしとあるし、協会を通しての依頼だと違約は犯罪と取られる場合もあるから下手なことをして来る可能性も低いと思う。もしコトさんに受ける気持ちがあるのなら、私が紹介状を書けるのだけど……」
… … …
約二十分後、私は西街区の外れにある貸倉庫へと訪れていた。
依頼の待ち合わせは、現実時間での午後七時に『西街区にある赤い屋根の倉庫の中で、一番大きなもの』という指定だった。
曖昧な指定方法から察するに、恐らく簡単な審査も兼ねているのだろう。この程度で遅れを取る様な者ならば、必要ないという訳だ。
私も西街区の全てを知っている訳じゃないんだけど、裏路地を散歩する調子でじっくりと歩けば、自然とそれらしい建物は見出だす事は出来た。
まあ、この程度で脱落はしたくないもんね。
「お、アンタも呼ばれて来たクチかい?」
入口扉に手を掛けようとした私は背後からの声に振り返る。
「おっと、いきなりで失礼。俺達も同じ参加者だよ。ま、お互い時間内に到着出来たって訳だ」
そこには、二人のプレイヤーが立っていた。眼帯をしたマントの人と、革鎧姿に木製の棍を持った人。どちらも初めて見る顔だね。
「どうも。えーと、初めまして…ですよね?」
「ああ。俺は二日前にリオレに入ったばかりだ。デミトスの方から来たんだが、今は本部ギルドに所属してる」
眼帯さんは軽く会釈した程度だが、棍…棒術の人がベラベラと説明してくれる。
デミトスってのは覇道国にある都市だと思う。
「それはそれは、国越えは大変でしたか?」
「いや。三ヶ月に一度、それとリオレの祭の時期は各都市から商隊が行き来するらしくてな。護衛の依頼は溢れてるし、フリー冒険者達にとっては越境のチャンスなんだ」
へー、そういうので活動場所を変えるのか。成程、初心者がずっと初期の街に缶詰め状態だと飽きるだろうし、初期都市が肌に合わないって人も中にはいるのかも。
成程、三月に一度の救済措置という訳だ。
「……」
ひょいと私を避けて、眼帯さんが扉を開ける。どうやら、彼はさっさと入りたかった様だ。邪魔したみたいだね、ごめんよ。
彼に続いて内部へと入ると、中はガランとしていた。炊かれたかがり火が内部にいる人々の陰影を大きく見せる。
なんか秘密集会って感じの不思議な雰囲気だね。
「ようこそ。さあ、こちらへどうぞ!」
豪奢なローブを着た女性が、にこやかに近付いて来る。どうやら、彼女はここで紹介状の提示を求めているらしかった。
「あの、主催の方ですか?」
紹介状を渡しつつ、一応聞いてみる。
「いえ、私は『流還師』のアルマリと言います。主催は別におりますので、しばしお待ち下さいね」
思い思いに屯している参加者の人達に習い、私ら三名も適当に待つ。
協会の推薦者達がどれ程の連中なのか…という気負いもあったけれど、ここにいる人々を見る限りでは、ふらりぃさん達の様なヤバさは感じない。まあ全員が三ヶ月以内のルーキーな訳だから、あのおぞける様なヤバさを身に付ける人はまず居ないだろうね。
… … …
その後、最初は疎らだった会場内も時間がギリギリになる頃には六十人程にまで膨れ上がった。そして、七時の鐘。
鐘が鳴ってすぐ、倉庫の奥の扉から二十人程の男女が現れた。彼等は立ち位置が決まっているとばかりにズラリと整列した。
中心として左右に整列する様に広がって立つ。
「皆さん、よくぞ集まって下さいました!」
中央に居る聖騎士風の銀髪優男が、そう言って切り出した。どうやらあの人が代表のジークさんとか言う人か。
「僕が今回の依頼者、戦闘特化クラン『New World Order』の団長、【銀なる慈雨】ジークレインだ」
周囲からは、ざわざわとした呟き声が上がる。
「まずは我が団の幹部達を紹介しよう!クランの副団長、【魔爪】バーゲスト・ボーグル!」
団長の右隣にいた黒ずくめの暗殺者っぽい男が一歩前に出ると軽く手を上げた。
団長は聖騎士然としてるのに、副長はアサシンなのか…
「参謀、【雷槍】のクレハ!」
今度は左隣から、羽をあしらった黒マントで槍を携えた女性が前に出て会釈する。
青みがかったロングヘアで、切れ長の目が特徴的。
「戦闘部隊長、【刃将】ダース!」
光沢のある銅色のフルアーマーを着た大剣使いが、手を一振りした。
大剣の刃がギザギザして波打っている、フランベルジュとかいうやつだよ。
「法術顧問、【流還師】アルマリ!」
でた、アルマリさんだ。彼女も幹部だったのか。
彼女は丁寧に頭を下げる。今は杖を装備しているし、完全に術師系だね。
「武術顧問、【神機剣】ラドー!」
今度はいかにも荒くれって感じ。
綺麗に染め上げた派手な毛皮のプロテクターと、身体のあちらこちらに巻いたカラフルな帯がやたらと目立つ剣士。
カブキモノスタイルって言えばいいのかな。青竜刀を振り翳してアピールをしている。
「以上の六人を中心として活動している、南部出身のクランだ。以後、覚えておいて欲しい」
クランというのは、戦闘メインのチームの事だ。傭兵だったり、戦士団だったり、国家に仕える戦闘部隊だったりするプレイヤーの集まりがクランと名乗る。
逆に商業系や製造等がメインのチームはギルドと称している。
勿論、絶対という訳でも無いし両立してる所だってあったりするので、あくまで目安だ。
「あの……彼等って有名なんですかね?」
私は、思わず隣にいた棒術の人に小声で聞いてみる。
「ん?……どうだかな。南部出身と言ってるし、向こうで少しは名を売ってる可能性もあるが、少なくとも四大国やリオレの出身者からは聞いた事無いな。たとえ南部でも、名のある連中の噂とかなら北にも入ってくるもんだけどな」
うわぁ……何て言うか、『うわぁ』としか言い様が無い人達だな~というのがぶっちゃけた感想だ。
名が売れてないって事は、クラン内で自分達で通り名付けてメンバーに呼ばせる事で互いを評価し合ってる人達っていう風に思えてしまうのだが、これは私の思い過ごしであろうか。
「今回、我々は冒険者協会に依頼して開始三ヶ月以内の有望なプレイヤーに来てもらった。これはNPC…即ち運営側の評価にて有望と見なされた新人のみが集まった形である。さて、諸君は今のこのゲーム内の実状をどう思うだろうか?少ない参加枠を手にしても、初期組を始めとする古参達によってあらゆる道への可能性は狭められている。実際、商会を立ち上げて潰されたり、国に仕官して上位クランに粛清されたり等という事例は枚挙に暇がない!今こそ、我々新人の中でも優秀とされる面々は団結してそれ等に立ち向かうべきだ!」
う~ん、言わんとする事は分かるけど闇雲に徒党を組むってどうなのかね。まず、この人数だけでも足並み揃わないでしょ?
そんな私の感想を裏付ける様に、周囲からはガヤガヤと否定的な意見が出始めるのだが、それは次の一言でピタリと止んだ。
「我々は、とあるルートでレベルをMAXにする秘宝を手に入れた!!」
ジークレインはわざとらしく一呼吸置いて続けた。
「我々と共にこのゲームの新たなる支配者を目指す者には、この秘宝を使う権利を与えたいと思う!古参との埋め難きレベル差を埋め、我ら主導の新時代を築くのだ!これだけの数のレベルを極めたチト族が揃えば、必ずや現ランカー達を抑えて上位に食い込める!ゆくゆくは此処にいるメンバーを中心として、あらゆるジャンル、部門に別れて我らが席巻する!」
あ、ここに要るのって皆チト族か!?
私も手袋してるからバレてはないけど…これはもしや、手っ取り早くチートしたいチト族ルーキーを糾合してトップを狙うという選民主義プレイヤーの集まりなのでは?だとすれば私はお呼びじゃないよね。
私の考えを余所に、周りからは少しずつ肯定的な反応が出始めていた。
「言い分は御立派ですこと!でも、そちらのクランの幹部と古参だけが支配する中で、わたくし達は手駒扱いって事じゃないの?利用されるのはゴメンですわ!」
ゲッ……出た、ライザ・ネル。やはりと言うべきか、この手の集まりには寧ろ居る方が自然か。
ナイト気取りの銃士、ロズウェル・コードウェルも横で相槌を打っている。
取り巻きのMakiさんだけ居ないみたいだね。
「それについては、訂正をさせて下さい。勿論、実績の無い方を重く用いる事は出来ません。ですが、我々が必要としているのは優秀な仲間です。今後の組織改変の中で、最終的には幹部を二十人位までに増やす予定でおります。本隊である中心組織を幹部会として、幹部それぞれがギルドやクランを率い、有事の際には本隊を中心にしてレイドを可能とする、ゲーム内最大級のグループ組織を構築するつもりです。貴女に、幹部へとのし上がる自信と実力があるのならば、是非上を目指して我々に示して見せて下さい!」
ライザだけではなく、他の者達にも安心させ、競わせる様に彼は言った。私の様なプレイヤーでなく、一旗挙げたい連中にとっては、結構効果的かも。
「……いいわ。入るわ!実力を示してやろうじゃない!」
ライザを皮切りにして、少しずつ入隊の声が上がり始める。参加を表明した者達は、今後の話をする為に奥の扉へと一人、また一人と消えて行く。
「今参加を決めた奴らは、一定の実力と自信があるアクティブな連中だな」
棒術の人が、したり顔でそう語る。
「優秀者の集いって言ったって、ああいう言動が共に備わってる奴もいれば、ステータス的な意味で優秀だとされた奴もいる。その辺で右往左往してる奴等は後者の類いだろうな。ああいう連中ってのは、群集心理に流されて行動しやすい。入隊しても下っ端にされるのがオチだな。見ろよ、主催クランの平団員達を」
勝手に始まった主張だが、何となく団員達を見てみる。
「全員の視線がバラバラだろ?あれ、入隊時までのそれぞれの仕草や優柔不断さなんかをチェックしてるハズだぜ。まあ、キョドって最後まで残ってても何の得にもならねえってこったな」
「あ、いえ、私別に隊に興味は……」
「さて、俺もそろそろ行くわ!言い分通りのクランに成るかは判らんが、レベルを上げてくれるってのはオイシイしな。ま、クランがクソだったらシステム上、抜けもアリだしな!」
そう言い残して、彼は奥の扉へと向かった。
扉前に並ぶ列を目指し、僅差の所で眼帯さんに先を越されてブツブツ言ってるのが見えたが、私は視線を外して団長のジークさんを探した。
「あの、済みません…」
「ん?ああ、何か質問でもあるかな?」
次第に長くなってゆく入団者の列をじっと見ていた彼は、満足げな表情で私に向き直った。
彼の左右には、剣士風の団員が控え、後ろにはアルマリさんという布陣で対応する様は、さながら政治家とSPみたいだ。
「お話はスゴいと思ったんですけど、私…マッタリのんびりとゆるいプレイをしてる者なので、ここでお暇をさせて頂きたいかと…」
「……それは残念ですね。今はまったりでも、今後挽回するって事もアリかと思いますが…」
「済みません。ログイン率も悪くて、皆さんのお邪魔になると失礼かと思いますし、協会からは演説の拝聴だけでもクエストは問題ないと伺っていたのですが……」
「……。勿論ですよ!今回はご参加頂き、有難うございました。アルマリ、彼女の紹介状にクエスト完了のサインを」
一瞬、含みがあった様にも感じたが、私は無事倉庫から出る事が出来た。
私が見た限り、棒術の人が言っていた『日和見組』は未だにウロウロしてたし、あのまま残ってなしくずし的に全員参加だなんて言われたら困るから、さっさと出たかったんだよね。
やっぱりだけど、公共機関と事を構えたくはないみたいだったから、協会の名を出して正解だったね。
「しかしまあ、色んなグループがあるもんだよ…」
そそくさと路地裏を歩く私だったが、ふと後ろから声を掛けられて振り返った。
「やあ、君も断ったんだね。途中まで一緒に帰ろ!」
追って来たのは同年代位の女性だった。
茶髪のベリーショートで、赤く染めた革のジャケットは胸と肩位しか隠れない程に丈が短い。
その下に着込んだ戦闘用とおぼしき灰緑のボディースーツには、カラビナサイズの安全ピンが無数に刺さっており、足はアーミーブーツという独特な格好の子である。
「どうも。なんか、私のスタンスには合わないみたいでした」
「アタシもだよ、なんかつるむのは性に合わなくてさ……あ、アタシ『薄荷』。アンタは?」
「コトです。よろしくです」
「ふ~ん。ね、アイツ等の計画さ、成功すると思う?」
「どうでしょうかね?レベルを極めるのに、何のリスクも無いのかどうか不明ですし、上位ランカーが本気出した時ってヤバいですよ。ただレベル上げただけで差が補填出来るとは思えないんだけどなぁ…」
「だよね!ふ~ん……アンタ、見かけによらず上位連中のマジバトル見た事あるんだね。それで生きてるんなら、大したもんだよ」
「あ、いえ、別にそんな……」
などとアレコレ話している内に、西大通りが見えてきた。飲み屋街はきっと今日も賑わっているのだろう。
「チッ……アイツ等、大口叩く割に腰抜けな連中だねぇ」
「え?」
「話を蹴ってやればさ、秘密の漏洩防止とか言ってPKしに来るかと期待して裏通りを歩いたってのに、襲って来ないじゃん!」
不意に口調と表情が豹変する彼女。私は思わず立ち止まってしまう。
「ま、まさか…それが狙い!?」
「弱い者イジメとかダサイけどさ、自分が強いと思って襲ってくる奴返り討ちにすんのって愉しいじゃん!」
嬉々とした表情で彼女は言い放った。
「そうやってレベル上げるのがアタシの楽しみなんだよねぇ~。アンタも、もしかしてそうなのかなって思って声掛けたんだけどさ……違ったみたいだね」
「……」
「あ~あ、なんか退屈だし……アンタ、アタシと殺る?」
口元を歪めて、彼女が笑う。
不意に、街の雑踏が遠くなった。目の前の女の気配だけが、大きく膨れ上がったかの様な錯覚を覚える。
あくまで錯覚だ。だが、目の前の女は、『闘い』という狂気に見入られた存在に違いなかった。絶対ヤバすぎる。
「……いえ、遠慮しておきます」
「そっか。残念だね。いつか勝てる自信が出来たら、バトルに誘ってよ。楽しみに待ってるからさ!」
凶暴な笑みを残して、彼女は夜の街に消えて行った。
先程の下剋上…いや、革命クランもこの先どうなるか気にはなったが、私にとっては彼女の方こそいずれ悪名を轟かせそうなヤバさがあると感じずにはいられなかった。
明日は祭りだって言うのに、その影でリオレを混乱させようとする者達が蠢いている事に身震いを覚えつつも、私は帰路を急いだ……
… … …
NAME:コト・イワク 種族:タト族・マニスリング(獣化箇所:センザンコウの鱗の手甲)
LV20 キャラクタークラス:転売屋 RANK:F
STR75 VIT68 DEX79 MEN80 SPD76
《所持金》
36013P
《師事》
『弧を描く餓狼』ガラム・マサラ
《習得技能》
工芸(LV1) ※工芸品知識及び製造におけるプラス補正。補正値はレベルに準ずる。
目利き(LV10) ※一定の商業系スキルにプラス補正。NPC商店訪問時にレアアイテム出現率が微細にアップ。
体術(LV24) ※格闘系スキル。強力な武術ではないが、あらゆる格闘技の基本となっているスキル。
《タト族の力》
尖山甲 ※生命エネルギーを込めた拳の強撃。一日に二発まで使える。
《フィート》
【綺羅星の加護】
【寄り道の王者】
《装備品》
木綿のセーラー、布のナックルガード、紺のベレー、皮のくつ
《所持品》
肩掛けカバン(12)×2、水筒(小)、ペン付き手帳、遠眼鏡、小型ナイフ、初期財布(100)、お菓子の巾着、指ぬき軍手(白、赤、橙、緑、黒)、指ぬき軍手(左手)
《アーティファクト》
鑑定魔のモノクル(C) ※レア度C以下のアイテムの鑑定。
《フレンドリスト》
●ミミナガ・メデカ
●ぷみら・みにま
●ぐすたふ
●アイアン
●ライ・クライ
●エスプレッソ・デミタス
《登録ペット・使い魔》
『コルベル号』【ロットワイラー】♂(通い・ポルカ牧場所属)
《宿泊部屋の金庫(99)》
ロセオの花瓶、クルリエの錆びたスプーン、クルリエの錆びたナイフ、クルリエの錆びたフォーク、クルリエの錆びた包丁、???の皿、蒼き???水差し、チュチャチュッチョ・チャチャチュッチオの手織りペナント、きれいな石ころ、エマ・ランナのサンダル(左)、耳長新報(創刊号)
… … …
~リオレ探訪メモ~
◆『リオレ豊穣祭』
毎年行われているという春を祝うお祭。リオレは大陸の中心に位置する中央連峰のお膝元に位置する立地上、その深奥にある永久氷壁に眠る魔女『悠久のアントワーゼ』の信奉者が多い。
今年も冬を越して無事春を迎えられた事への感謝の意を、時を司る魔女たる彼女に贈る為に始められたのが起源。
※追記
レベル20になった事により、またしてもフィートを覚える事が出来た。ホール師範に教えを受けはじめてから、レベルの成長率も上がったので有り難い限りだ。
フィートは、前回選ばなかった二つも選択肢として出てはいたけど、また新しく出てきた【寄り道の王者】というのに決めた。何か、人とは違った出会いや発見が期待出来るかも知れない……という展開を願って。まあ、この辺は賭けだけどさ。取り敢えず明日も頑張ろう!




