冒険キャンプに出発だ! にぃ
遅くなって、申し訳ありません!
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多量の魔力を受けて一気に伸びた『ペラの葉』の蔓は、わたしを拐った大きな鳥の足に絡みつくと、枝分かれを繰り返しながら、その胴体へと伸びていく。
そして、なぜか蔓以上に大きく広がって伸びまくった根っこは、次々と森の木々に絡みついていった。その結果。
ビンッ!
「クゥエ?」
当たりまえだけど、『ペラの葉』の蔓と根っこで森の木々に繋がれる形になった鳥は、それ以上前に進めなくなった。そして。
ヒュル〜ン、バサ、バサン、バッサン。ヒュル〜ン、バサ、バサン、バッサン。
落ちては羽ばたくを繰り返すけど、進むわけがない。
おかげで少しずつ地面が近づいてきたのは良いけど、伸び過ぎた根っこのおかげで、皆がどこにいるのか、ちっともわからない。
そしてようやく進めないことに気づいた鳥は、今度はグルグルと旋回をしはじめた。
すると広がり伸びた根っこが、捻じれた。そして旋回する度に、ドンドン捻じれて短くなっていく。その途中で木が何本か抜けたけど、さらに地面が近くなったから、良しとしよう。
さて、そろそろ降りる方法を考えないとね。
まずは今の状態の確認から。蔓はわたしにはほとんど絡んでないけど、リュックは鳥の足と一緒に蔓でグルグル巻きになっている。
肩ひもから腕は何とか抜けそうだけど、下手に抜くと一気に下に落ちるだろうし、あいにく飛び降りるには、まだ高すぎる。
どうしようかと悩みながら、広げられた尾羽根がキラキラ光るのを眺めていると、急に鳥が飛ぶのをやめた。
正確に言うと、捻れすぎた根っこのせいで、これ以上飛ぶことが出来なくなっていた。そして飛ばない鳥は、落ちるしかない。
(ありゃん、これってちょっとヤバいかも?)
急いで蔓を握ると肩ひもから腕を抜き、そのまま蔓をよじ登ると、
「クゥエ? クゥエー? クゥエ?」
それまでの旋回とは逆方向に、クルンクルンと回りながら落ちていく鳥の背に乗る。もちろん回るのは、わたしも一緒だ。
(うひゃー、目が回るー!)
そしてそのままドンドン落ちていって……。
ポヨ〜〜ン!
沢山の木に絡みついて、クモの巣のようになった根っこの上に落っこちた。
(ふぅっ、助かった……でもまだ少し、クラクラするや)
そのまま鳥の背中に寝転んで、クラクラがおさまるのを待つ。その後、適当に蔓や根っこを枯らしながら、一番近い木をつたい下りて、何とか地面に立つことが出来た。すると、
ズベベベ、ドンッ!
後ろで変な音と振動がしたので振り返ると、わたしを拐った大きな鳥が、地面にずり落ちていた。こうして見ると、ほんと、大きい。尾羽根まで合わせると、八フィルト以上ありそうだ。
それにしても、白目をむいて動かないけど、もしかして死んじゃったかな?
だってさっきまでキラキラした青色だった鳥の羽根が、今はくすんだ茶色になっているし、口が開いて、濃い紫色の舌がだらんと垂れ下がっている。
鳥の足回りの蔓を枯らしてリュックを取り戻しながら、これからどうしようかと考えていたら、
ガサッ!
少し離れた藪の中から、黒い塊が飛び出してきた。
「ウォン!」
「あっ、ウォルド!もしかして、助けに来てくれたの?ありがとう!」
お礼と同時に、可愛いワンちゃんを抱きしめる。
もう、ほんとにうちの犬ったら、なんていい子てお利口さんなの!
「エミィ!」
「エミリアさん!」
「娘よ、無事か?」
ウォルドが出てきた藪のずっと向こうから、みんなが走って来るのが見えた。どうやらウォルドが先導してくれたみたい。やっぱりうちの犬最高!
そして。
「エミィ、よかった、ほんと無事でよかった……」
わたしを見た途端、駆け寄ってきたマキシムが、抱きついて泣き出したのはちょっとびっくりしたけど、それと同時に、すごく嬉しかった。
だって、泣くほど心配してくれたって事だからね。まぁ、抱きつかれたのは、少し恥ずかしかったけどね……。
***
「ところでこの鳥って、食べられるの?」
アルノーさんに聞いたんだけど、答えたのは、ジルだった。
「恐ろしい事を言うな、娘。こいつは霊鳥シームグルだぞ」
その言葉に、全員が驚いた。
「まさか、こんなところに?」
「それって、伝説の巨大鳥だよね?!」
「俺、初めて見た……」
霊鳥シームグルは幻の巨大鳥で、その時々で色が変わる羽根には、癒しの力があると伝えられている。
「エミリアさん。霊鳥、霊獣の類は、国を超えて保護対象となっているので、食べるどころか、捕まえただけで罰せられたりするので……」
アルノーさんが、申しわけなさそうに言うけど、
「でもわたし、襲われたんだよ?その場合も、捕まえたらダメなの?」
「それは……」
いくら霊鳥でも、人を襲うような鳥をそのままにしておくなんて、絶対に無理だ。だってここは砦跡からも、それほど離れていない。
もしこんなのが砦跡に飛んできて、うちの従業員が拐われたりしたら、大変だもの。
だけどその為に捕まったり、罰を受けるのは嫌だよね、なんて考えていると、ウォルドが穴を掘り出した。それも、すっごく大きい穴。
これはもしかして、埋めろってこと?くふふん、いい考えだわ。証拠隠滅ってやつね。
「とりあえず、動かそう」
言いながら、尾羽根を持って引っ張った途端、鳥が目を覚まして暴れだした。
「あ、生きてた」
シームグルは、羽根を掴んでいるわたしとアルノーさんが持っているタンポポ色のリュックを見ると、驚いた顔で叫びだした。
「クゥエー、クゥアー、クゥエー!」
「うむ、なるほど」
「えっ、ジルはシームグルが何を言ってるのか、わかるの?」
わたしが驚くと、
「兄者は、フェンリルだぞ!それぐらい、わかるに決まってる!」
「そんな偉そうに言われてもなぁ」
ダミアンの言葉に、エドガーが困ったように返す。
「だって最初に会った時は、ベッタベタのヌルンヌルンだったし」
「おまけに耳から煙まで、出てたし」
わたしとマキシムも言いながら頷くと、とたんにジルが、酸っぱい物を食べたような顔になった。
「うっ……あー、どうやらコヤツは、娘をイエローカルゴと間違えたらしい」
「えっ、あのでっかいカタツムリの?」
イエローカルゴは「デッカマイマイ」とも呼ばれていて、殻だけでも50ミィルトはある、スゴく大きなカタツムリだ。
「クゥエー、クェクッ、クゥアー、クェクッ、クゥエー!」
「あぁ。どうやら三十年ぶりに孵ったヒナが、ひどい偏食で、それしか食べないらしい。それで朝から探し回っていたら、スゴく肥えたヤツを見つけたと喜んで捕まえたのに、それが人の子に化けたと驚いている」
その時、ぷっと吹き出す声が聞こえた。
(………)
ほう。ということは、このシームグルは可憐な乙女を『スゴく肥えたカタツムリ』と間違えて拐ったってことか。
「わかった。これはもう、成敗するしかないわ。ウォルド、穴掘りを続行!今笑った奴も一緒に埋めるから、大きめをお願い!」
「ウォン!」
お読みいただき、ありがとうございます。
年度末の作業のため、来週の更新はお休みします。
その為、次作の投稿は3月4日午前9時を予定しています。
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