王都からの訪問者 にぃ
書籍『無自覚なオッドアイ 〜エミリア・ハウレットは今日も商いに忙しい〜』は、今月の13日に発売です!よろしくお願いします!
「ちゃんと護衛騎士と侍女が同行しておりますから、問題ありませんわ」
デュヴァル嬢はニコニコしながら言うけど、絶対に大騒ぎになっていると思う。
「それにしても辺境伯領が、こんなに遠いとは思いませんでしたわ。出来るだけ急ぎましたのに、王都から四日もかかってしまって。おかげで、あまり寝れなくて……」
言いながら大きなあくびをしたかと思うと、目をゆっくりと閉じて、長椅子に寄りかかる。そしてそのままズリズリ、ポテンッと横向きに倒れた。
「えっ?!」
三人一緒に驚いて慌てて側に寄ったら、「クー、スピー」と寝息が……。
「もしかして、寝ちゃった?」
「みたいだな」
「彼女、王都から四日でここまで来たと言ってましたよね」
デュヴァル嬢の寝顔を見ながら、わたしとエドガー、そしてマキシムがつぶやく。
(あー、それで寝不足だったんだ……)
だけど、いつまでも長椅子で寝かせておくわけにはいかない。急いでデュヴァル嬢の侍女さんを呼んでくるようにエドガーに頼むと、わたしは祖父さまに客間を使う許可をもらうために、走った。
**
「きっと、お疲れになったのでしょう」
客間のベッドにデュヴァル嬢を寝かせた侍女さんと護衛騎士さんも、かなりくたびれて見えた。
二人に話を聞くと、ホントに王都から辺境伯領まで、四日で来たらしい。
「馬車にはトイレが付いていますから、要所要所で水と食料を買い込み、御者と馬を替えながら……さすがに夜は、宿に泊まりましたが……」
今朝も日が昇る前に、宿を出発したらしい。二人とも目をショボショボさせているから、多分スゴく眠いんだろう。
レノーさんに頼むと、すぐに客間の両脇にある寝台付きの小部屋を開けてくれたので、
「絶対に、寝てください!」
そう言って、二人を小部屋に押し込んだ。
そんなこんなを祖父まに説明すると、
「商会から直接、デュヴァル公爵家に連絡を入れるのは、あまり勧められないな。家出に関わったと、思われかねん」
あっ、そうか。下手すると、そそのかしたとか思われたら、困る。
「だったら、どうしたら良いの?」
「そうだな。王都の騎士団に連絡を入れ、そこから公爵家に連絡を入れれば良い。わしが保護している事も、付け加えてな」
「そっか。祖父さまが保護していることを、伯父さま経由で伝えてもらえば良いんだ。ありがとう!」
お礼言って、応接室に戻る途中で、ふと、思い出した。わたし、騎士団の番号、知らないや……。
しかたがないから、父さまから騎士団に連絡を入れてもらうことにした。
「それにしても、五日かかる道のりを四日って……なんでそんなに急いだんだろ?」
父さま宛の連絡文を書きながら、ボソリと言うと、
「もしかしてカードをプレゼントにするつもりじゃないか? だってもうすぐ、アドリアン殿下の誕生日だし」
エドガーの言葉に、納得がいった。そうか、第一王子の誕生祭まであと七日、誕生日は八日後だ。
「ということは、デュヴァル嬢は王子へのプレゼントを誕生日に間に合わせるために、ここまで急いで来たって事か」
マキシムが感心したように言うけど、ホントにそう。無断で来たのは大問題だけど、それも全部、婚約者の事を大事に思っているからよね。
(できたら無断で出てきた事を、怒られないと良いな……)
送信板で父さまに連絡文を送ると、返事はすぐに送られてきた。
思っていた通り、騎士団で大騒ぎになっていたみたい。
どうやら令嬢がいない事はその日の夕方には騎士団に連絡が入っていたらしい。そしてデュヴァル公爵は、その日のうちに大勢の護衛と騎士を引き連れて、令嬢の後を追うために出発したという。
まぁ、あんなに目立つ馬車だから、後を追うのは簡単だろう。
『明日にもそちらに着くと思うよ』と書かれていたので、祖父さまと相談して、デュヴァル嬢にはここに泊まって待ってもらう事にした。
「あら、よろしいのですか?」
「もちろんです!」
だって、既に祖父さまが保護しているって連絡を入れた後だからね。
それにデュヴァル嬢とは身分は違うけど、なんか仲良くなれそうな気がするのよ。コレって、乙女の直感ってヤツかしらん?
翌朝、朝食を食べていると、バッタン、ドカドカと音がしたと思ったら、デュヴァル嬢よりもずっと短いけど、同じ色のクリンクリンな髪をしたおじさんが、叫びながら食堂に入って来た。
「アニーちゃん、パパが悪かったよ〜。ママとも仲直りしたから、戻ってきておくれ〜」
んっ? なんか大きな勘違いが、あるみたいだ。
どうやら公爵は、一向に仲直りしない両親に腹を立てた令嬢が二人をこらしめるために家出したのだと信じているみたい。誰?そんな嘘を教えたの。
あの書き置きを、どう読んだら『両親が仲直りするまで帰らない』と読めるんだろう?
でもおかげで、無断で屋敷を出た事を怒られずに済みそうなので、わたしの横でパンを手に驚いているデュヴァル嬢に、黙っておくよう耳打ちする。
それと同時に、ここに来たのは、わたしに会うためという事にした。元々パシェット商会の事務所を訪ねる来るのが目的だったから、これは嘘じゃない。
それにわたし、元辺境伯の孫だからね!
デュヴァル公爵は祖父さまにお礼を言うと、すぐに王都に戻ろうと急かす令嬢に、少しだけ待ってほしいと伝えた。
まぁ、少しは休憩を取らないとね。なんて考えていたんだけど、どうやら違ったみたい。
公爵の目的は、売店での買い物だった。
わたしは『公爵さまのお買い物』がどんなものか興味があったので、売店の案内がてら、ついて行くことにした。
もちろんエドガーとマキシム、そして デュヴァル嬢も一緒だ。
そして目にしたものは……
(恐るべし! お貴族様の最上位、公爵さまのお買い物は、半端ない!)
先ず一般向けオセローと装飾付き木剣を、同行してくれた護衛と騎士の人数分、お買い上げ。そして在庫五本となった木剣も、ご自分用としてご購入。
(うわぁ、急いで木工所に追加を頼まないと……)
そして高級オセローを二セットに、バトルカードを三セットお買い上げ。
コレだけ買ってくれたので、三枚セットのバトルカードの小袋、売店に置いてあった五十六袋全部を、オマケとして付けたわ。そして、なぜかコレが凄く喜ばれた。
令嬢がこっそり五袋ほど抜いていたのは、見なかったことにした。あれもきっと、殿下に上げるのだろう。
もちろん令嬢には、昨日のうちに引き換えカードは渡してある。それとは別にもう一つ、渡したけど、よかったかな?
お読みいただき、ありがとうございます。
次作の投稿は2月11日午前9時頃を予定しています。
評価及びブックマーク、ありがとうございます。
感謝しかありません。
また、<いいね>での応援、ありがとうございます!何よりの励みとなります。
誤字報告、ありがとうございます。




