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王都からの訪問者 いち 

 我が家の天使()が生まれて一ヶ月。日に日に可愛さが増していくシルヴァン(ラブリー天使)のために、お姉さんは今日も元気に稼ぎます!

 ってことで、バトルカードの新しい絵柄についてダミアンと話をするために、わたしはエドガーやマキシムたちと一緒に、砦跡の屋上に来ていた。

 日差しがちょっときついけど、風は気持ちいい。


「可愛いカードも、少し欲しいと思ってるんだけど、どうかな? 」

 

「可愛いって言われても、魔獣だしな……」


 わたしの質問に、スケッチブックをパラパラとめくっていたダミアンが、手をとめる。


「そうだな。ホーンラビットやブッシュミーアなら、まだ可愛いく描けそうだけど……」


「でも、あまり強くないよね。もう少し強い方が良いんじゃない?」


 マキシムに言われて、気づく。そうか、バトルカードば強さのバランスが大事だったわ。

 可愛くても、弱いカードが人気になるとも思えない。実際、人気の高いカードのほとんどが、ドラゴン系だし。


「あっ、だったら子供にすれば?」


「エドガー、子供って?」


「子供のドラゴン!それなら強いし、もしかしたら可愛い!」


(『もしかしたら』がちょっと気になるけど、そのアイデアは良いいかも?)


 なんて思った時、


 「今すぐ、パシェット商会の責任者を呼んでちょうだい!」


 女の子のキンキンと響く声が聞こえてきた。見ると門の前に豪華な馬車が停まっていて、扉が大きく開いている。どうやら声は、そこから聞こえたようだ。


「アレって、どう見てもお貴族さまの馬車だよね。だけど、ハウレット商会(うち)に何の用だろ?」


 わたし、エドガー、マキシム、ダミアンの四人で、門の近くに寄って、こっそり下を見ながら言う。


「前に来た、サンドラじゃないのか?」


 エドガーが聞くけど、


「ううん。声が違うもの。それにサンドラなら、わたしの名前も砦跡(ここ)に入れない事も知ってるし、用があったら事務所か、お屋敷に来ると思うよ」


「それもそうか。だったら、誰だろ?」


「あの馬車についている紋章は、デュヴァル公爵 家でのもののようですね」


 わたし達の横にしゃがんで、同じように下を見たアルノーさんが、説明してくれる。


「デュヴァル? あっ、だったら…」 


「エドガー、知ってるの?」


「顔を見たことがあるだけで、名前は知らない。同い年ってことと、王子の婚約者ってことはわかるけど」


 王子の婚約者? また面倒な事にならなきゃいいけど。だけどあの場所で騒がれるのも、困る。

 しかたがないから、検討材料としてダミアンからスケッチブックを借りると、門の横の外階段を使って下へと向かった。そして。


「あなたが責任者ね。今すぐ、カードを渡しなさい!」


 下に着いた途端、馬車から女の子が飛び出して来て、一番後ろのアルノーさんに向かって指を突き立た。まぁ、いつもの事だよね。

 それにしても、またお貴族さまが我儘を言いに来たのかと思ったその時、アルノーさんの前に立っていたわたしのオデコに貼り付けるような勢いで出されたのは、小さな紙切れ。


(えっ、コレって…)


 それは宣伝活動の冊子に付けていた、バトルカードの引き換え券だった。


(えっ、今頃?)


***


「どうぞ、ごゆっくり」


「ありがとう」


 お茶を入れてくれたレノーさんにお礼を言うと、目の前でハンカチを握りしめているデュヴァル嬢にお茶を勧める。

 あれ以上騒がれるのも困るし、かといって砦跡に入れるわけにもいかないので、とりあえず祖父様のお屋敷に来てもらったのだ。


「急に来て、驚かしてしまいましたわね。しかも焦っていたせいで、つい言葉がきつくなってしまって。その上、人違いまで……ごめんなさい」


 お茶を一口飲むと落ち着いたのか、デュヴァル嬢は言いながら、ペコリと頭を下げる。

 クリンクリンに巻いた亜麻色の髪が、ポヨンと揺れるのが、なんか可愛い。


「わたくし、アニエス・デュヴァルと申します」


「パシェット商会の商会頭、エミリア・ハウレットと申します」


 デュヴァル嬢の挨拶は、とっても優雅だ。これは乙女としては、ぜひ見習いたいとこね。


「では、デュヴァルさま。今回こちらに来られた理由を、お聞きしても?」


「もちろんですわ。実はもっと早くに交換する予定だったのですけど、わたくしが不在時に、父が他の家族分を代理で交換したのです。そして母と姉のカードを、勝手に他所様に渡したことがわかりましたの。兄の分は、ちゃんと当人に渡したのですが」


 あー、それって、よく聞く話かも。勝手に興味ないだろうと、決めつけるやつね。


「困った事に母と姉、それぞれがお友達に譲る約束をしていたらしく、父とひどく揉めることになりまして」


 ため息をつきながら、デュヴァル嬢の話は続く。 


「こうなると、うっかり家族に交換を頼むと、どうなるか分からないので、自分で替えに行こうと決めたまでは良かったのですが、なかなか機会に恵まれず。先日ようやくハウレット商会に出向いたのですが……」


「いざ交換しようと思ったら、期限が切れているから、無理だと言われた?」


 デュヴァル嬢が言い淀むので、わたしが続ける。引き換え券には小さくだけど、『交換開始から3か月以内に交換してください』と書いてある。そして、期日はとっくに過ぎていた。


「そうなんですの!しかも、すでに在庫も無いから、どうしようもないと……わたくしが何とかならないかと聞いた所、こちらにあるパシェット商会の事務所や工房になら、もしかするとあるのではと教えていただきましたの」


 その時、扉を叩く音がして、エドガーとマキシムが入って来た。二人には、わたしがデュヴァル嬢から話を聞いている間に、いろいろと調べてもらっていたの。


「確かにデュヴァル公爵家の領地で宣伝活動は行われていますね。その際、公爵一家五人が有料席を買われた事も、確認が取れました」


「券も本物だった」


 マキシムとエドガーの報告に頷く。

 だけど交換用の在庫が無いのも、事実なんだよね。だって期限が過ぎて一ヶ月たった時に、全部廃棄したのよ。

 もちろんエドガーとマキシムが欲しい分は、確保(各五枚迄)した後だけど。


「確かに交換時期は過ぎていますが、引き換え券もお持ちですし、わざわざ来てくださったので、今回は特別にお渡ししますね。ただ他の方には、この事は内緒にして下さいね」


 デュヴァル嬢に説明するわたしを、エドガーが心配そうな顔で見てくる。そんな顔しなくても、わたしの手持ちのカードを使うから!


「いただけますの?あぁ、良かった。わたくし、無断で出てきたので、出来るだけ急いで戻らなくてはなりませんもの」


「えっ、それって、今頃大騒ぎになってるんじゃあ……」


「あら、大丈夫ですわ。だってわたくし、ちゃんと書き置きを残しましたから!」


 なんか嫌な予感がするけど、一応聞いておこう。


「書き置きとは、どのような?」


「『目的を達成したら戻ります。それまでは帰りません。』って」


(ドヤ顔で言うけど、デュヴァル嬢、それって絶対家出だと思われるヤツだわ……)

お読みいただき、ありがとうございます。

次作の投稿は2月4日午前9時を予定しています。


評価及びブックマーク、ありがとうございます。

感謝しかありません。

また、<いいね>での応援、ありがとうございます!何よりの励みとなります。


誤字報告、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
公爵パパはあれかな、嫡男の男子にはちゃんと渡すけど女なら他所との繋がりのためにカード渡す方がええか!したのかな…。
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