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第31話 封印

――「あの~女神さま、これは……」

アリスの暴走を止める方法としてヤンキー女神がくれたものは能力ではなく道具だった。

 車の後部座席に現れたその道具はピアス、チョーカー、ブレスレット、指輪、アンクレットなどの金属でできた装飾品で、その他にもカチューシャ、リボン、サングラスなどが山になって後部座席に置かれていた。

「時間が無い、これでいいや……んっ? これは……」

悠長に選んでいる時間は無いので山の中に手を突っ込み山の中から一つ取り出すがミキトの手にはラバーのベルトに着いた赤い穴の開いたボールが付いているジョークグッズが握られていた。


「猿轡ですか!?」

俺の握っているジョークグッズを見てシーナが声を上げる。

『アンタ……最低ね……』

冷たいヤンキー女神の声が車のラジオから聞こえてくる。


「違うんです……これは……」

言い訳をしようとするが良い言い訳が思いつかない「これで拘束しようぜっ!!」と頭の中に浮かんだがそれを口にした瞬間シーナの拳が飛んでくるだろう。


「間違えました!!これです!」

素直に謝り自分の非を認めて猿轡を捨て、再び選び直してミキトは銀色のシンプルなデザインのアンクレットを手に取った。


「これをアリスに着ければ止まるんですよね!?」

『まあ、多分ね』

相変わらず曖昧な答えのクソヤンキー女神はこんな時でも通常運転だ。


「よしっじゃあ――」


――ドンッ。


封印の道具も決まったことでアンクレットをアリスに着ける方法を考えるがアリスはそんな時間を与えてくれないようで西棟の屋敷の壁を破壊し出てくる。

その姿はキャミソール姿であるが色気は無く可愛さも感じさせない、敵が歩いて向かってくる、それだけだった


「シーナ、アリスの動きを止められるか?」

女の子に今のアリスを止めてくれという自分が情けないが生身で強いのはシーナだ、役割分担では適任だった。

「大丈夫ですっ! アリスさんは友達です、友達は助けるものですよ!」

不安や不満は無いという明るい表情でシーナは快諾してくれたがキャミソール姿で見える足には微かな震えも見えた。


「行ってきます」

短い挨拶をしてシーナは車を降りる――


――「ごめん、やっぱりちょっと待って」

車から降りようとしたシーナの手を掴んで制止する。

「えっどうしたんですか!?」

「やっぱり女の子を危険に晒したくない、シーナは車の中で待っててくれ」

「ミキトさん……///」

アリスの動きを止めるのであればシーナが一番適任なのはわかっている、でもやっぱり危険だ、アリスを止める方法は他にある。


「神様……借金って出来ますか?」


『は?』

「え……」

ヤンキー女神とシーナの口から疑問と呆れの声が漏れる。


『で、できるわよ』

突然の借り入れに驚いているようだったがヤンキー女神はお金を貸してくれるようだった。

「時間がありません、俺の日用品・車部品・車関連商品の召喚能力の強化をしてください、強化は召喚場所の指定を可能となるようにお願いします」――


――「能力の強化は終わったわ」

「ありがとうございます」

ヤンキー女神に借金をして能力の強化をしてもらい確かめる時間も無くヘルメットを被りアンクレットを手にして車から降りる、シーナは心配そうにしていたが大丈夫だ、俺も自分の身が心配だから無茶な事はしない。


「アリス!!こっちだ!」

車に向かって歩いてくるアリスの注意を引き付けてシーナの乗っている車から引き離す、アリスは動くものを標的にするようで標的は直ぐに俺になる。

 西棟の屋敷から燃え上がった火が屋敷に完全に燃え移っている、燃え上がった火は暗い空をオレンジ色に輝かせ、無表情なアリスの顔の左半分を照らしている。

意思を持たないアリスの足は一歩ずつ俺に歩いてくる、その足取りにも感情は無くただ筋肉が動いて足が前に進んでいるだけだった。


”そう言えば、何で魔法を使わないんだ……?”


距離を保ちながらアリスの出方を窺がうミキトは疑問に思った、目の前に敵がいる、ならば直ぐに魔法で攻撃するのが楽なはずだ、わざわざ距離を詰めようと不用心に近づいてくる理由が分からない。


「――!インターバルが必要なのか?」


部屋の中でのアリスの攻撃でもそうだったが攻撃の合間、合間に時間があった、もしかしたら強力な魔法を使うとインターバルが必要になるのかもしれない。


「そう言う事か、問題は何分間のインターバルなのか……だな」


インターバルが必要と分ったが先ほどの攻撃から三、四分程が立つ、もしかしたらそろそろ攻撃に移ってくるかもしれない。


「時間稼ぎのついでに強化した能力を試すか……」

ミキトは日用品・車部品・車関連商品の召喚の位置指定ができるように課金してもらった能力の試しをぶっつけで行う。


”位置指定、アリスの四方。来い!フロントガラス!×4!”


右手をアリスに突き出し頭の中で唱えるとアリスの四方に透明な自動車のフロントガラスが現れアリスを囲む。アリスは突然現れた透明な壁をただ見ている。


「位置指定は意外と便利だな」


――ドウッ。


「!?」


位置指定の能力に感心していたミキトにフロントガラスが飛んでくる。


ガッ。

「うっ」

アリスによって吹き飛ばされたフロントガラスは四方八方に飛びその一つがミキトに直撃した。


「ぐはっ」

”迂闊だった、アリスは強力な魔法以外にも力を使えるんだった……”


地に倒れたミキトは体を起こしアリスの攻撃に備えようとする――が、アリスはもうミキトの三メートル前にいて右手をミキトに向けていた。


「コントリー…――」

アリスの右手は白く光り出してミキトを消そうとする――


――ドガッ。


もうダメだ、そう思い目を瞑ったミキトの目の前で何かが当たったような音がする。目を開けると目の前にアリスの姿は無くアリスの代わりに白いボディのグロリアが居た。


「……シーナ?」

「大丈夫ですか?ミキトさん」

グロリアの運転席にはシーナが座っている。

「シーナ車運転できたのか!?」

「運転……って程じゃないですけどミキトさんの動きを真似てみたら出来ました」

確かに、ただアクセルを踏んで突っ込んだだけで運転とは言えない物だったかもしれないが初めて車を運転して人を轢くのは相当なものだ、それに友達を……シーナの胆力には驚かされる。

「アリスさん大丈夫でしょうかっ?私、アリスさんを……」

「大丈夫だ、今のアリスは無敵状態だから」

車でアリスの事を轢いてしまった事でアリスの心配をしていたがきっとアリスには傷一つ付いていないだろう。その証拠にアリスは数メートル飛ばされた先で朝起きたように起き上がった。


「軽くターミネーターだな」

「たーみねーたー?」

「何でもない」

シーナは俺の言葉の意味を理解しようとしていたが直ぐにアリスの行動に気が向く。

 アリスは右手を車と車の傍にいる俺に向けていた、この距離では何もできない。


「やばいっ」

ガチャ。

車の中に退避しようとドアノブに手を掛けるが車のドアは開かない。


ガチャガチャガチャ。 開かない。

「シーナさん!?開けて開けてっ!入れてっ」

「えっえっ?どうすればいいんですかっ!?」

パニックになりながらミキトはドアノブを引き続ける――が、開かない。シーナが中でドアロックをしてしまったみたいだ。


「コントリーティオ」


――ヴンッ。


「ぬああああっ」

アリスの魔法が車に向かって放たれる。ミキトは車から離れ攻撃をかわしたがシーナの乗っている車は避ける事が出来ずにアリスの魔法で飛ばされ広い屋敷の庭で静止した。


「よしっインターバルに入った!」

”アリスは魔法を放ち直立姿勢で立ってる、インターバルに入ったんだ”


――ダッ。

今が好機と見たミキトは直ぐさまアリスに走って距離を詰める。


「ここだーー!!」

アンクレットをアリスの右足に着けようとしたその時――


――ボッ。


「うわあああっ!」

アリスの周りの空気が重くなったと感じた瞬間、ミキトは後方へと弾かれる。


ドサッ。

「ぐえっ」

アリスに弾かれ空を舞ったミキトは地面に叩き付けられる。


「クソッ動きを止めないと……」

アリスの動きを止める方法を頭の中で考える。


”ロープ?無理だ、拘束する前に弾かれる。コンクリート?これもダメだ、まず召喚できない……”


様々な方法を思考するが良い方法は浮かばない。


「召喚できる物で動きを止められるもの……――!いや、動きを止めることに拘らなくていいなら方法がある!」


不用心に隙だらけで歩いてくるアリスにミキトは右手を向ける――


”位置指定、アリスの頭上。来い!液体洗濯洗剤!”


ミキトが唱えるとアリスの頭上に洗濯用の洗濯剤が液体だけで現れアリスの身体を覆うが液体洗剤はアリスの身体に直接触れることは無く地面に流れて行った。


”やっぱり何か膜みたいなものが見えるな……予想どうりだ。位置指定、アリスの両腕含む胴体部。来い!タイヤ!”


続けてミキトはタイヤを召喚し召喚したタイヤはアリスの両腕と胴体を拘束した。


「……!?」

両腕を拘束されたことによってアリスは眼に少しばかりの驚きを映しバランスを崩して洗濯洗剤によって足を滑らせた。


「今度こそ……!!」

ミキトは転んで体勢を持ちなおそうとしているアリスにマウントを取る。洗濯洗剤で滑るアリスが抵抗するがミキトも足を絡ませアリスの抵抗をねじ伏せる。


「大人しくしろっ――あと少しっ」

両足の動きをミキトの力一杯で抑えながらアンクレットをアリスの右足に持っていく、アリスの足は押さえつけようにも抵抗してなかなかアンクレットを着けられない。


「これでどうだ!」

ミキトは足をアリスの右足の太ももの付け根辺りで足をクロスして絡ませ、捩じりながら両手でアリスの右足首を掴んで自分の首元まで持ってくる、アリスの足を首と肩で固定して右手で更に押さえる。


「フンっ」

固定されたアリスの右足首にアンクレットをはめる、するとアリスの足から力が抜け抵抗がなくなった。

アリスの眼は閉じて黒く染まった髪は本来のアリスの髪色の銀色に戻っていく。


「ありがとうよ……シゲタ……」

プロレス大好き野郎でヤンデレ好きの元世界のシゲタに感謝しながらミキトは地面に寝そべる。

 空は火によってオレンジ色に染められた空と太陽によってオレンジ色に染められた空に別れていた。

屋敷に燃え移った火は西棟を燃やし尽くし屋敷の中央棟の半分まで火の手を広げていた。


――やっぱり火が出てるぞっ! 水だ!水魔法が使える奴連れてこい!


屋敷の外で男の声が屋敷で火が上がっている事を他の者たちに伝える声が聞こえる。


「夜明けか……」

力が抜け屋敷の消火を行おうとするも体が動かない、視界も霞んで瞼が重くなり眼を開けられなくなり瞼を閉じた……


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