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第22話 送迎

9/18 修正

「終わった……」

ミキトは床に寝そべり大きく伸びをした。部屋に差す光が明け方であることを示している。窓ガラスはミキトが召喚したガムテープで不格好に補強されていてとても修復したとは言えないものだった……


「また解雇されそうだな……」

そう言いながら疲れからミキトは眠りに落ちていった。


――「ちょっと、何寝てるのかしら?」

頭上で透き通る声がミキトに呼び掛ける。

「あ、おはようございます」

「窓ガラスはこれで修理したなんて言わないわよね?」

ガムテープで外の光を殆ど遮断しているガラスの役割をしていない窓ガラスを見てアリスは呆れ顔になる。

「本当に修復魔法使えないのね」

「ごめんなさい」

仰向けの状態から土下座へフォームチェンジする。俺の第三の能力DOGEZAだ。

「ほんっとうに……」

そう言うとアリスは右手を窓に向け唱える。

「Re:」

「り?」

唱えたというより一文字だけ発したという方が正しい。アリスの一文字の言葉でガムテープで不格好な姿の窓ガラスは新品同様になった。

「魔法の詠唱ってこんなに簡単なんだ……」

「簡単じゃないわ、それより朝ご飯できてるから早く来なさい」

一夜かけて頑張った俺の努力はアリスの魔法の一文字の詠唱で終わってしまいやるせない気持ちになりながら朝食を摂るためアリスについていく。


「なんで使用人雇用しないの?」

「……別にどうだっていいでしょ」

素っ気ない返事が返ってくる。お金持ちそうなのに使用人もいない、門番とかの警備する人もいない、どうなってんだ?

使用人が居ない広い廊下は更に広く感じられた。


「おはようございます。ミキトさん」

「おはよう」

アリス邸に泊まった初日に案内された広い部屋の中央にある長方形の長テーブルの上座に近い所にシーナは座っていた。

シーナの服装は昨日見たメイド服ではなく可愛らしい艶のある白いシルクのワンピースだった。 

「今日寝てねえよ~マジねみ~」

「お前の席はそこじゃないわ」

大学でよく言っていたセリフを口にしてシーナの向かい側に座ろうとするとアリスに注意される。

「シーナの隣?」

席を間違えシーナの隣の席に着こうとするとアリスは長いテーブルの端を指さして俺の席を指定する。

「お前の席はあそこよ」

指定された席は一番下座、つまり一番地位の低い席だった。

「そんな汚い作務衣で食事できるだけありがたいと思いなさい」

「うぃっす」

主の命によりミキトは下座の席へと着いた。


「美味い、すごい美味い」

宿泊初日もそう思ったが美味い、町で食堂開いた方がいいんじゃないの?アリスの作った食事は素直に言うとプロレベルだ。当のアリスはシーナと楽しそうにお喋りしている。対して俺はテーブルの端で独り寂しく食事している。


「お前」

そんな俺を気遣ってかアリスが声をかけてきた。

「ミキトって呼んでください」

「犬って呼んでください?分かったわ、犬!食事が終わったら直ぐに新しい服に着替えて一階の窓の掃除をしなさい。壊すんじゃないわよ」

「……」

「返事は?」

「ワン……」

ミキトけんはご主人様からの命令を承った。



――「あっつ」

屋敷の外は強い日の光が照っており直射日光が俺の肌を攻撃する。

「水ぶきで拭いてから乾拭きなんて二度手間だし、仕上がり汚いし、まず窓デカいし掃除できるわけがない」

独り大きな窓を見て呟くと効率よく掃除を行うためのアイテムを召喚する。

”来い!ワイパーブレード!”

右手にワイパーブレードが召喚された。

「まずは水拭きして……からのブレード!」

スゥーっとワイパーブレードは窓を滑り汚れを落としていく。

「うんっこれの方が楽だな」

綺麗になった窓に満足し次の窓の掃除に取り掛かる。しかし一階だけの窓でも相当数がある、気が遠くなりそうだ。

「なんで魔法使えないんだよ」

異世界に転生ならば普通魔法系の能力を貰えるがミキトには日用品・車部品・車関連商品の召喚能力しかない。

「課金で魔法とかの能力買えないかな?」

課金で能力を買うことを検討したミキトはお金を貯める方法を模索しながら窓をワイパーブレードで掃除してしていった。 



――「犬!私を送りなさい」

「何処にですか?」

一階の窓の掃除を全て終え庭の木陰で休憩していると屋敷の主のアリスから新しい任務を任される。どうやら護送任務のようだ。

「案内は私がするわ、いいから早く魔装兵器で私を運びなさい」

「しょうち~」

気だるげに返事をし車を取りに行く。


「お前も早く掃除しなきゃな」

林の中や砂利道を走った為タイヤには泥が付いていて車体も細かい砂と埃が見えた。屋敷に帰ってきたら掃除しようと考えながら運転席に乗り込みキーを挿しこんで回し、直ぐにエアコンをつける。日光によって車内は温められムワッとした空気が充満していた。

「これじゃあ絶対アリス怒るな……」

ご主人様の機嫌を損ねないように万全の準備をしておく、これが忠犬ミキ公の配慮である。


「遅いっいつまで暑い外で待たせるのかしら?早くドアを開けなさい」

「はいっ只今!」

ミキトは素早く運転席から降りてドアを開ける。アリスは開けられたドアから優雅にシートに着く。

「あら、涼しいわね」

「ありがとうございます」

「さっさと出しなさい」

「はい……」

労いの言葉は一つも無かった。

「取りあえずどちらまで?」

初乗り790円です。そうだこれだ、これで異世界で金を稼ごう。異世界では銀貨一枚ぐらいでいいかな?

資金調達の術を思い付き料金設定を考えていると主から指令が下される。

「この屋敷から出て丘を下って大通りに出なさい。後はまた言うわ」

ザックリとした説明で行き先を指定する。

「承知いたしました」

ミキトは車を出し行く先を告げられぬまま大通りに向かった。












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