第19話 リストラ
「じゃあ、始めるか」
「一人で外を掃除するんですか?」
「大丈夫だろ」
アリスの屋敷で一泊して朝を迎え屋敷の掃除に執りかかる。昨夜は夕食を頂き今朝も朝食を頂いた。屋敷を綺麗にするのが泊まらせてくれるお礼みたいなものだが食事まで頂くのは気が引ける、それもこの屋敷の主が直々に振る舞ってくれた手料理だ。屋敷の掃除以外でも何かしらのお礼がしたいがまずは屋敷の掃除からだ。
「やるか」
まずは屋根の掃除から始める。掃除は上からやれとおばあちゃんから教わった。今の俺の服装は執事服でなく黒い作務衣だ。シーナはメイド服でなく少し長めの黒いフリルスカートに白いフリルブラウスの白と黒のコントラストがとても合っている服に着替え靴はバレエシューズを履いていた。だがピンクのブランケットを三角形に折ったものを腰に巻いている事で違和感が生まれている。シーナは屋敷の中の掃除、俺は屋敷の外の掃除だ。
”これは俺の能力が活躍しそうだ”
日用品を召喚できるんだぜ?これでこの屋敷を無双(掃除)する。
「屋根に上るには……」
高い屋根を見上げ屋根の掃除方法を模索するとすぐに名案を思い付く。
「水路付きはしご車だ!」
高い所の放水、掃除にこれほどピッタリな車は無いだろう。
ミキトは車を屋敷の壁近くに停め水路付きはしご車に変形させる。
”水路付きはしご車になれ!!”
停めたグロリアの車体が大きく膨らみ車体カラーがレッドになり車の上には梯子が出てくる。
横にはホースが備わっている。
「よしっ、じゃあやるか」
屋根に上る為に梯子についているバスケットに乗る
”あ、俺一人じゃ動かせない……”
リフトの上下は他の人が居なければ動かせないしシーナが扱えるわけがない。
”……普通に屋根に向かって散水しよう”
ミキトは屋根に上らず地上からホースで散水して屋根の掃除を終わらせることにした。
”そういえば水の散水には水たまりとか水栓がないとできない”
ミキトは庭にある大きなプールの掃除から始めることにした――
――「これでいいかな?」
プールの底を掃除し水を張る。ミキトは大きなプールに飛び込みたくなる衝動に駆られるが掃除を優先する事にした。
「よし!いけぇぇぇ!」
水路付きはしご車を消防車に変形させ水をプールから吸い上げてホースの先端から勢いよく散水する。
「あっやべっ」
勢いよく散水した水は屋根の上でなく三階建ての屋敷の三階の窓に直撃し、勢いの強い水は窓ガラスを破壊して部屋の中に散水した。
「やばい、やばい」
誰か修復魔法でも使えませんか!?
唖然として割れた窓ガラスを眺めていると割れた窓ガラスの先に濡れた銀髪の女が立っていた。この屋敷の主のアリスだ。
「お前……ほんっとうに!!」
髪が濡れて顔に張り付いているため表情は分からないが絶対に怒ってる。
”あっ死んだ”
自分の命日が今日であることを悟ったミキトは自然と両膝が地面に着き土下座の形をとっていた。
「申し訳ございません!!」
そこでミキトの意識は途切れた……
――明るい、ここは何処だ?
目を開けると白い雲の混じった空が目に入ってくる。
”ああ、俺、生きてる”
ミキトは屋敷のプールサイドで仰向けになって倒れていた。
「アリスに謝んないと」
体を起こしアリスに謝罪するために屋敷に入ろうとするが屋敷の扉が開かない。
よく見ると扉に張り紙が張ってある。
【お前はクビ!無能!】
”なるほど、リストラか”
屋敷の窓を割ったんだ、リストラされても仕方ない。
作務衣のままミキトは消防車をグロリアに戻し運転席に着いて屋敷を後にした。
”シーナは三日後には解放されるだろう、その時に拾って王都に行こう”
ミキトは丘を下りシストの町中へと入っていく。
「お詫びの品でも探すか」
日はまだ落ちていない為町にも活気がある。異世界に来て初めて町らしい町で買い物ができる喜びと楽しみを抱え車を走らせた。




