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一本。

「咲ちゃん。いらっしゃい」

私の母校の高校の後輩の咲ちゃんは、三年生になり、部活を引退した。引退したといってもオリンピックを目指せるような砲丸投げの選手なので、練習は続けてるし、東京の有名大学行くのかもしれない。部活の帰りに、よく食べに来てくれたので、卒業して、店にも来なくなると思うと寂しい。


「咲ちゃん。大学決めたの?」

リョウタが、聞いた。

「何校かに誘われてますが、悩み中です」

でも、地元には残らないだろうな。インターハイ優勝した選手なわけだし。


「よお。咲。来てたんだ」

バスケ部の絢斗くんが来た。絢斗くんも、すごいポイントガードだし、大学行くんだろうな。

「後輩に、教えてきたから、疲れた。腹減るー」


「いらっしゃ・ ・」

リョウタは、入ってきた女の子に驚いた。

かなりの体格の良い高校生が、すごい暗い顔で入ってきた。

「美鈴っ。どうしたの?」

咲ちゃんの友達みたいだ。

「咲っー。聞いてよー。私、告白したら、フラレたー」

その女の子は、美鈴ちゃんと言って、咲ちゃんと、絢斗くんと同じクラスらしい。柔道部で、インターハイにも出たかなりの有望選手らしい。

「田島くんに、卒業する前に、想いを伝えようと思って、勇気を出して告白したら、てめえーみてえなデブと付き合えるわけねーだろって、言われたー」

女の子に、デブって言うなんて、断るにしても、断り方があるだろうが。優しくない男の子だと感じた。

「なに、それ。田島のやつ、ちょっとモテるからって、調子のってんじゃないの」

咲ちゃんは、怒っていた。

「田島って、テニス部だろ。モテるかも、しんないけど、男子うけは、良くないな」

絢斗くんが言った。

どうやら、美鈴ちゃんは、イケメンが好きらしい。

イケメンが、女の子に、デブという事態が、イケメンとは思えない。

「やっぱり、私、太ってるから無理なのよ。こんなんじゃ、一生彼氏できない。柔道やめて、痩せてやるー」

ええっー。インターハイまで行った選手が、柔道辞めるなんて、もったいない。


「店長ー。店長は、ぽっちゃりの子好きですか」

咲ちゃんが、リョウタに聞いてきた。

「オレは、美味しそうに食べる子好きだから、ぽっちゃりでも、全然いいよ」

「ほら。美鈴、イケメンの店長は、こう言ってんのよ。田島が、女を見る目ないのよ」

「駿さんは、太った女の子好きですかね」

美鈴ちゃんは、駿くんのファンらしく、リョウタに聞いてきた。

「駿くん?駿くんは、好きなんじゃないかな」

励まそうと思ったのか、リョウタは適当なことを言った。

「そうよね。女は、スタイルじゃないよね。ハートよね。あーお腹すいた。ピザ食べよ」

そう言って、美鈴ちゃんは、ピザを二種類と、パスタを食べた。

「ここのピザ。うまっ。もう一枚頼もう」

美鈴ちゃんは、咲ちゃんを超えるくらい食べっぷりが良かった。


「後輩達、アップルパイの試食してちょうだい」

私は、試作のアップルパイを三人に食べてもらった。

「うまっ。このアップルパイうまーい。リンゴの甘さが丁度いい」

美鈴ちゃんは、アップルパイをばくばく食べた。

「美味しいー。疲れも吹っ飛ぶ」

咲ちゃんにも、好評みたいだ。

「今日、来て良かった。失恋して、無性にピザ食べたくて、咲が行きつけの店というから、来たんだよね」

美鈴ちゃんは、言った。



「お義母さん、京子は?」

「牛乳切らしてるからって、歩いて、コンビニ行ったわよ」

「歩いて?最近、この辺、痴漢出るっていう噂あるんだよ。もう暗いのに危ねーよ」

私は夕飯食べてから、牛乳を買いにコンビニに行った。


コンビニに入ると、美鈴ちゃんが立ち読みしていた。

「こんばんは」

美鈴ちゃんは、私に挨拶した。

「こんな時間まで、練習だったの?」

「はい。後輩に教えながら、練習してきました」

私は、牛乳を買って、コンビニを出た。


すると、私の後を着けてくる男がいた。

さっき、コンビニをウロウロしてた男?

私は小走りすると、男も小走りをした。

「奥さんー。はあはあ」

いつの間にか、男は、私の背後にピッタリと、くっつき、触ってきた。

「ぎゃーーー」

私は大声を出した。


京子の声だ。迎えにきたリョウタが、私の声だと気づくと、走ってきた。


「とりゃーー」


美鈴ちゃんの背負い投げが、きれいに決まった。

痴漢男は、逃げられないと堪忍したようだった。

「京子ー。大丈夫か」

リョウタが、きた。

「美鈴ちゃんが、助けてくれたの」



美鈴ちゃんは、警察から感謝状が送られた。

捕まった痴漢は、最近、この辺で何件も痴漢行為をした男だった。

私達は、痴漢が捕まり、安心した。



美鈴ちゃんに、店に来てもらった。

「美鈴ちゃん。オレの妻を体をはって、助けてくれて、ありがとう。よって、無期限ピザ無料券を差し上げます。」

リョウタは、ピザ無料券を美鈴ちゃんに渡した。

「RSKからは、RSKのライブ優待券を差し上げます。」

駿くんから、ライブ優待券を美鈴ちゃんに渡した。

「嬉しいーっ。」

美鈴ちゃんは、ピザ無料券も駿くんが来てくれたのも喜んでいた。

ちょっと、ぽっちゃりしてたって、強くて、正義感溢れる美鈴ちゃん。素敵な女性である。



「咲ちゃん。いらっしゃい」

咲ちゃんが、練習帰りにきた。

「シェフ。私、シェフと同じ大学に行くことにしたんで、大学も後輩になりますー」

咲ちゃんは、私が行った県内の私立大学に行くことにしたらしい。あまり、陸上では、実績のある大学ではないが、咲ちゃんが、行くなら、期待できる。

「あと。美鈴も同じ大学に行くみたいです。人気の憧れの大学に行って、女子大生ライフを楽しみたいみたいです。柔道も、もちろんやるみたいです。」



私の母校の大学から、オリンピック選手が二人でるかもしれない。



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